昼食のサンドイッチを作り、ダイニングテーブルに置いてから、ひいた豆をフィルターにセットしていると、布団から彼は立ち上がり少しだけおぼつかない足取りでリビングの椅子に座った
洋服が届くまで使ってと言って渡した大きめのベージュのバスローブがやけに似合っている

「持っていってあげるから横になってなよ」

「座るくらい大丈夫だよ、えっとそういえば名前聞いて無いね」

俺はシャルナーク。周りからはシャルって呼ばれてると言って、ツナと胡瓜のサンドイッチを手に取ると頂きますと私に微笑んでから口に放り込む。

「私はレイ、よろしくねシャルナーク」

名前を呼ぶと、咀嚼しながら頷いたシャルナークに顔も綺麗だなぁと内心思いながら蒸らしていた珈琲にお湯を注いだ
湯気が立ち昇り、部屋全体に良い香りがしてくる

「俺も珈琲欲しい」
「はいはい」

シャルナークに珈琲を出してから私も椅子に腰かける

卵のサンドイッチにかぶりつきながら、聞いてみたかった質問をする事にした。

「ねえ、シャルナークはどうしてあの人達にからまれてたの？かつあげ？」

「カツアゲって笑えるな」

レイ面白いね、でも腹が痛いからあんまり笑わせないで欲しいんだけどな。と言ってシャルナークはお腹を手でお腹を抑えながらケラケラと愉快そうに笑っていた。
何だか、呑気で明るい人だなと内心思いつつ、空になったシャルのカップに珈琲のおかわりをいれた。

「ありがと、レイから見たら俺はあいつらに怪我させられていたように見えたのかもしれないけど、この怪我は他の奴にやられたんだよね。」

「そうなの？？他の奴ってマフィアとか？」

「レイがどんな想像してるのか聞きたいかも」

「うーん。マフィアの彼女とか奥さんに手を出しちゃって追われてるとか？」

「アイツらがマフィアか、凄い傑作だね」

そう言ったシャルナークは目に涙を溜めながら大笑いする。何秒か笑うとイタタタと言ってまたお腹を抑えた

結局、あの危険な人達の素性も彼がなぜこんな怪我をしたのかは今はもう聞かない事にした。シャルナークははぐらかしている訳では無いのかも知れないけど。詳しく言う気は無い様に感じたからだ。まあ、彼が話してくれるまで今は待とうと思い、シャルナークの痛がりながらまだ笑っている姿を見て私も笑ってしまった。

そういえば、シャルナークの着ていた黒のコートのみは無事だった事を思い出して洗って乾かしていると伝えると
色々助かるよと言って最後のサンドイッチを口に入れて珈琲で流し込んでいた。


「私買い出し行ってくるけど、何か必要なものある？」
食べ終えた食器を洗ってから布団に戻ったシャルナークに声をかける。

「あのさ、コートのポケットに財布が入ってるからその中のお金使って」

「いいの？」
確かにポケットに財布のような物が入っていた。開けてはいないけれど、洗濯する前にポケットから出して脱衣所に置いてあるはずだ。

「食料とか、もし買うの大変じゃないなら適当に服も買って来て欲しい。ネットで買ったのはジャージだからさ。」
「分かったよ、好きな飲み物は？」
「ビールかな」
「まだビールは駄目だよ」
「あはは。じゃあ紅茶かジンジャエール」
「何で笑うのさ」

女の子にお説教されちゃったと彼はちょっと嬉しそうに笑った。鼻歌を歌いながら携帯を操作する彼は自分が怪我をした事や、私に保護？してもらっている状況を少し楽しんでいる様にみえた。
いや、怪我した事を楽しんでる訳では無いのだが。
　

自室で軽くお化粧してからジーパンとカットソーに着替えてコートとマスクを手に取ると、リビングにいるシャルナークに行ってくるねと声をかけた。

「シャルナーク、凶悪な人達に狙われてるんだから誰か来ても開けちゃだめだよ。絶対に大人しくしててね」

カウンターに置かれている鍵を手に取って、テレビを見ている彼にそう言うと
彼はまた盛大に笑ってから、ハイハイ、分かってますよと言って手を降ってきた。



近くの商店街で野菜や果物、シャルナークが食べるかなといつもは買わないような骨付き肉や1人暮らしでは食べないような魚も買ってから男性用の衣類が置いてある店に入った

店の中の衣類はパンツもニット類も中々安く手軽に買える額だ
男性の服なんて買った事があまりないから、無難にジーンズに黒のタートルネックのニットや似合いそうなベージュのカットソー何かを、かごに入れていく。
どうして先に食料品を買ってしまったんだと、自分の失敗にため息がでた。

そう言えば、予算はと思って持ってきていたシャルナークの財布を開けると20万ジェニー近く入っていた。
3着で1万ジェニーするかしないかの洋服に悩んでいた自分が馬鹿らしくなる。

ジーパンだけでは無く、他に外出も出来そうな黒のセットアップも買って2万ジェニーを支払った私は大量の紙袋と食料を軽々と持って帰路についた。
途中でファーストフード店に寄って、紅茶とクッキーにケーキなども買わせてもらった。

そういえば、シャルナークの靴は雨と土で泥まみれだったと今になって思い出して、帰ったら洗わなきゃと思ったがせっかくだから買っていこうかなとあたりの靴屋を探すが。
ふと、右手と左手に重なる荷物がある事に気づいて辞めておく事にした。


歩く度に紅茶が溢れやしないか気にしなきゃいけないのが疎ましい。傾けれない荷物が増えて最悪な事には歩き始めてから気付くのだった。



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