HH シャルナーク 中編
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新しい新居に来てから一週間が経った。
シャルは4日前から仕事に行くと出て行ったきりで。毎日メールは来るけど、内容はとてもありきたりで簡単なメールばかりなので正直つまらない。何処にいるのかも分からないけれど、フェイタンさんと飛行機で向かうと言っていたから場所は遠いのかもしれない。
私は私で毎日基礎トレーニングと念修行の毎日をおくっていた。家が広くなった分掃除は大変だし、日々自分の為だけに作る料理の味気なさに3日でげんなりしていた。そんな所に思いもよらぬお客さんが来てくれたのだった
「やあ、元気そうだな」
「クロロ、どうしたの?」
「シャルが忙しいからな。少し様子を見にね」
そう言って靴を脱ぐとスタスタと階段を上がっていく
。珍しい構造なので迷わないかなと思ったけれど、そういえばここはクロロが住んでいた事もあったんだっけと思い出して彼の後ろに続いた
3階まで階段を上がったクロロはリビングに入りソファに座り込んだ。そのまま懐から出した手紙のようなものを読み出したので私は珈琲でも淹れようとキッチンで支度をする事にした
「良い香りだ。」
「今出来るからね」
「シャルから連絡は?」
「毎日来るけどメールだけ。」
「そうか。」
クロロは忙しくないの?と言って珈琲カップと茶菓子をクロロのテーブルの前に置くと
俺は俺でやる事があってな。と相変わらずマイペースのクロロに変わって無くて良かったとホッとした
「レイ、夕飯は俺がご馳走する。珈琲の礼だ」
「やったね、蟹かステーキが良い」
「奮発してル.パンのワインも付けてやろう」
「るぱんが分からないけど、やったー」
支度してくると言って、笑顔で部屋を出て行った彼女に同じ女性でもマチやシズクと違って良くはしゃいで良く笑うなと思う。明るいから良い訳では無いけれど
不思議な魅力を感じる女だ
リビングの一角にはシャルと彼女が寄り添い笑顔で写る写真が飾ってある。それを見ていると、昔のシャルナークを女癖を思い出し笑いが込み上げて来た
彼女の事を俺が団員の候補にしたいなと思っているのはシャルにはどうせバレているだろうし、シャルが忙しい今の内に色々な事を叩き込んでおきたくてウズウズしていた
基礎的なものは出来ているから治療系の念を何段階か引き上げて、身体的能力を少し向上させれば
そんな事を考えていると口に少し出てたのか、クロロ独り言?と笑って部屋に入ってきた彼女は外行きの服装に着替え終わっていた。
手にはバッグと厚めのコートも持っている
「ああ。早くお前をしごきたいなと思ってな」
「何それ怖いんだけど」
「シャルから聞いた。トレーニングをしているんだろう」
「ああ、うん。やるだけやるんだけど全然何処目指せば良いかわからなくてね。」
「たまには人に習うのも良い。」
「クロロなら良いかも」
「…言ったな、では今日は良く食べ良く飲んで明日からハードトレーニングだ」
そう言ってから、エスコート致しますと手を差し出してくるクロロに笑って手を取ると私達はお店に向かった。
食事中はずっとシャルの話で盛り上がっていた。
シャルの勇敢な話から馬鹿な話題まで、本当の笑顔で話をするクロロは色んな意味で魅力があった
途中、シャルから珍しく電話がかかってきて喜んで電話をとると彼の声は怒りに満ちていた。誰かさんから写真が送られてきたと開口1番に不機嫌に言われて、チラリとクロロを見ると先程お店に向かう途中にクロロが意地悪い笑みで2人で写真を撮ろうと言ってきたがこうゆう事かと納得した
「シャルは仕事どう?こっちはシャル居なくて寂しいけど部屋掃除したりトレーニングしたりで何だかんだやってるよ」
不機嫌な彼の機嫌をとろうと少し猫撫で声でそう言えば、早く終わらせたいのに誰かさんがどんどん仕事送ってくるんだと言ってシャルは溜息をついた。
そんな中、満面の笑みでワインを飲み干すクロロは最高の肴を手に入れたように上機嫌だった
そこから2時間くらいワインを飲んで酔っ払って笑って家に着いたのは深夜だった
朝からトレーニングだからなと言うクロロがソファに横になったのを確認してから寝室に入りベッドにそのままダイブした
肩を揺らす様な振動を感じて目が覚めた
部屋は薄暗く窓から見える鈍いオレンジの光が暗闇を少しだけ照れしていた
起きたか?と静かな声が耳に入り、クロロが私の肩を揺らしているんだと分かる
「まだ早いよ」
「少しトラブった様だ。シャルとフェイは重症、ウボォーも怪我をしたらしい」
「えっ?」
すぐに支度しろと言われ、飛び起きて簡単に身支度を済ませると外から車のクラクションが1度鳴った
必要な物だけ鞄にしまいガスの元栓を閉めてから外に出ると玄関の前で待っていたクロロの車に乗り込んだ
車がバラバラになるんじゃ無いかってくらいのスピードで、朝日もあがっていない暗い道をひたすら車を走らせるクロロは無表情だった
シャルとフェイタンさんが重症何てそんな事があるのかと未だに信じられない私の考えを読んだのか
クロロはチラリと私を見て静かに口を開く
「マチが2人の傷を縫い合わせたと言っていた。血は止まっているし死ぬ心配は無い」
「はぁ、良かった。…ちなみに何の仕事だったの?」
「簡単に言うとあるルートからの強奪って所だな」
「シャルがルートを探して、フェイタンさんとウボォーさんとマチちゃんが強奪するって事?」
「ルートを探し当てるまでも大分時間が掛かったが…いざ探し当てて現場に着けばマフィアが雇っていた用心棒が居たらしくてな。」
「そのメンバーで勝てないとかあるの?」
「どうして怪我をしたのかは詳しく聞いていないからな。使い手には相性もある、それに戦ってみて肉弾戦が弱くても切り札で致命傷になる事もあるからな」
そう言ったクロロに頷くと、車はそこから少し走った山の手前で止まった
ここから空で行くと行ったクロロは車を乗り捨てると急に林の中に突っ込む様に走り出した
それにつられて私も後ろを走り出す、足に集中していないと直ぐに離されてしまいそうだと思いながらひたすら無心で彼の後を追った
小さな飛行機を運転するクロロに、何て彼は万能なんだと思いつつも大きく揺れる振動に二日酔いも重なり白目になりそうだった。
自分の特技はすぐ寝れる事なので、クロロに一言断りを入れてから後ろの席で足を投げ出して寝てしまう事にした
スヤスヤと小さな寝息が聞こえてきて思わず笑ってしまった
電話を手に取ってシャルナークに発信ボタンを押すと何コールかしてから不機嫌な声が聞こえて来た
「調子はどうだ?」
「良いと思う??ボロボロなんだけど」
「ははは、お前がそんな事言うのは珍しいな。フェイタンの怪我はどうだ?」
「切れて不貞寝してる。傷は大分良いよ、マチのおかげかな」
「お前達をやった奴は?」
「死んだよ。あそこまで潔いと敵ながらアッパレだったよ」
「他に脅威になりそうなのは?」
「さすが金持ちで、もう他に腕利きを何人か雇ってる
んだけど…ちょっと待って…。最新で雇われてる奴は書いてある感じでは特に俺でも大丈夫そうなレベルかな。それよりも前から雇われてる奴の詳細が分からないし、特攻してくる感じが怖いから今は団長とフィンクスが来るまで待ちかな」
「まぁ、妥当だな。目当ての物は?」
「ウボォーが1つ取って来たよ。今の所手に入ったのは魔境だけだね」
「そうか。今そちらに向かっているから今日中には到着する。それまで治療に専念してくれ」
「はいはい、あっ、それからレイには怪我した事言わないでよ」
「何故だ?」
「心配かけたくないんだよ。頼むよ」
「ああ、分かった」
そんな会話をしながらレイをチラリと見れば彼女は口から涎を垂らして寝ている
フッと笑った俺にじゃあ後でと言って電話を切ったシャルナークに大きな土産を見せた時のアイツの顔を想像して楽しくなった俺は猛スピードで空の旅を楽しむ事にした
意識がボンヤリとしている。ゆさゆさと揺れていて体が温かく感じる
人の声が聞こえて、その声がシャルに似ていて愛おしい
怪我をしているんじゃないか、大丈夫なのか何て考えていると急にグイッと腕と背中周りに強い力を感じて飛び起きた
「ビックリ、した」
「ごめん、起こしちゃったね」
「全く、そんな強く剥ぎ取るからだろ」
目を開ければシャルが目の前に居て、その姿に思わず目を見開いてしまう。上半身半分包帯だらけで片目は大きなアザで目は開かず口の横から頬にかけて大きな切り傷が出来ていた
片手を伸ばして彼の頬に優しく触れる
思わず出た言葉は痛く無い?だった
「痛く…はあるけど、泣かないでよ。レイに泣かれたら仕事嫌になるから」
「男前だぞシャルナーク」
「団長は勝手に連れて来たくせに何言ってんの?」
「俺がレイを抱えて来た時の顔を写真で撮っておけば良かったな」
「うるさいなぁ」
「はぁ、シャルがなんだかんだ元気で良かった。フェイタンさんは?」
「まぁね。でもマチが居なかったら飛び出た内臓に絡まって今頃死んでたかも。フェイなら奥にいるよ」
「…何それ…考えたくない」
クロロが、内臓が飛び出たシャルも男前だと言って吹き出した所でげんなりした私は話し込む2人を置いて奥の部屋に足を進めた
何だか段ボールばかりの部屋がいくつも並んでいて扉は全て開けっぱなし。埃臭いのにご綺麗な不思議な倉庫みたいな建物だ
奥の部屋に入ると簡単に作られたベッドが何個か並んでいて、小さな黒い塊が丸まっていた
寝ている様なので静かに傍に座り触れない様に手をかざす
少しづつ集中してきて相手の骨がゆっくりくっついていく感覚と、千切れた皮膚が再生していく感じがしてくる
最近はあまり重症な人は治していないから出来るか分からなかったけど、この感じなら大丈夫だろうと確信した
イメージしてから20分も経つと後ろに人の気配がしたけれど、最後の最後で集中を切らす訳にはいかないのでそちらを振り返りもせずに目の前のフェイタンだけを再度見つめる
ゆっくりと私に右から近づいて来た手が私の額の汗を優しく拭ってくれる
その優しさに少し感動しながらも最後まで集中力はきらさなかった
「ふぅ、出来た」
思わず呼吸を忘れていた様で深く吸ってから吐くと、横からまた手が伸びて喉元まで垂れた汗が拭われる
あ、どうもと言いながらそちらを向けば紫色の髪をした綺麗な女性が、これ使いなと言いながらハンカチを渡してくる
「…マチちゃん?」
「…ああ、レイだろ。ありがとね、フェイタンあんたもお礼言いなよ」
マチの見ている目線を追えば、プランケットから半分顔を出しこちらを凝視している目にビクリとした
「フェイタンさん、起きてたんだ」
「入ってきた時から起きてたね。あたりまえよ」
バサリとプランケットを投げ出して立ち上がるとゴキゴキと首と腕を鳴らしながら一言ありがとさんねと言ってスタスタと歩いて行ってしまった
疲れたと私が呟くと、お疲れさん。そこで休んでなと言って部屋を出ていくマチちゃんの背中を目で追いながら私はゴロリとプランケットに丸まって目を閉じた
目を開ければ辺りは暗かった
電気が消されているって事は皆寝ているのだろうか
今日は寝てばかりいるなとふと思う
自分のお腹に置かれた太い腕は私を軽く抱き締めていた、首をそちらに向ければシャルがスヤスヤと寝ていた。只、目の傷は炎症をおこしているのか赤紫色になっている
痛々しいその姿に居ても経ってもいられずに寝て回復した力を使って彼を起こさない様に目と頬、それから裂かれたお腹を同じ様に修復、再生させているとフェイタンにした治療のおかげかイメージがスムーズで短時間でシャルの傷は回復した
少し嬉しくなって目を凝らして見たが、まるで最初から無かった様に綺麗に治っていた
何度か深呼吸を繰り返しながら久しぶりにシャルを見た
サラリとした髪を撫でながら寝息をたてる唇に優しく口付けをする。我慢していた気持ちを解放する様にゆっくりと大きな胸の中に埋まって鎖骨に顔を擦り付けると
それに反応したのかシャルは優しく抱きしめてくれる
スースーと規則正しい寝息をかきながら私の髪に顔を埋めた。その姿が愛しくて私はその余韻のまま眠りについた
朝から大きな音と声とで騒がしくて、眠たい目を擦りながら目を開け体を起こす
部屋の中で木の箱に座りながら窓の外に発砲しているクロロを見つけて唖然とした
パシンとガラスに外側から発砲された弾が当たる
「おはよう、起きたか?悪いが珈琲を淹れてくれないか?」
「それは良いけど、誰と戦ってるの?」
「シャル達をやった奴の仲間さ」
「何で外に出ないの?」
「皆んながサバイバルゲームをしたいって聞かないんだ」
はぁとわざとらしく溜息をついたクロロは何故か少し嬉しそうに感じた
向こうからしたらゲームをしに来た訳じゃないと思うんだけどな。と思いながら部屋を出て顔を洗い歯を磨いているとオールバックのデカい男が私を見つめている事に気付いて歯ブラシを咥えながら片方の手を上げる
「…おう、久しぶりだな」
「はう。」
「レイ、支度終わったなら前線に行くか?シャルもいるぜ」
コクコクと頷いた私に戦えんのか?と少し馬鹿にしたようなフィンクスをジトリと睨んでから、喋れないので右腕を叩いてから自慢げに鼻を鳴らせば
腕には自信あるって事か?と私の冗談が分かった様で言うじゃねーかと笑っていた
お前は此処で留守番だと1番に良いそうなフィンクスが私に来るか?と声を掛けてくる事が少し不思議だったが、そんな事もあるかと気にしない事にした
口をゆすいでから、行くぞと言って走り出したフィンクスの後ろを追う
扉を出て階段を降りるとヒュンヒュンと銃弾が惜しみなく降り注いでくる
避け損ねた弾が右足に当たりガードで弾いたが少しだけ痛みが走った
コンテナや木の影に隠れながらフィンクスを追っていると、物凄い巨大の男が森の中からシャルと現れて私達はスピードを緩めながら足を止めた
「状況は?」
「こちらが優勢かな、能力者も今は1人も来てないし。それよりレイは何してんの?」
「起きたから来てみた。良かった、怪我綺麗に治ってるね」
「ああ、寝てる間に治してくれてありがとうね。てかフィンクスが連れて来たの?珍しいね」
「ん?ああ。こんな弱っちい奴ら相手なら危なくねーだろ」
「おい、誰だ??」
グイと顔を近づけられて思わず上から下まで見てしまう。とにかくデカい
シルバーグレイの髪が揺れて、ニカッと豪快に笑った彼はウボォーだと言って私の3倍ある手を差し出してきた
「よ、よろしく。ウボォーさん」
「さん何ていらねーよ」
そう言って肩を軽く叩かれると、先程当たった銃弾の2倍の衝撃に思わず笑ってしまった
サバイバルゲームをしたいと言ったのはフェイタンとウボォーとフィンクスらしい。横で話を聞いていて大体わかった
敵が弱いからこそ肉弾戦では無く拳銃で戦いたいと言ったウボォーに私とシャルは良くわかんねーと言ってお手上げのポーズを取った
フィンクスはそれが分かるようで、うんうんと頷きながら慣れた手付きでハンドガンやライフルの手入れをしている
「フェイタンは?」
「フェイは拳銃いらないってさ。サバイバルナイフだけで良いって」
「あ…そう」
ウボォーが弾倉を荒々しく入れると、パカリと力で拳銃自体が割れてしまい、私はもう笑うしか無かった
無言でサバイバルナイフをウボォーに渡すシャルに、ウボォーが涙目でフィンクスを見れば彼は首を横に振った
気付けば弾の飛んでくる音が少なくなっている気がして、私は近くのコンテナの上に上がってキョロキョロと辺りを確認する
黒いスーツの様な服を着た男が何十人もそこらじゅうに倒れていて、近くの停まっているトラックの脇から2人の男が建物の窓にいるクロロにマシンガンで発砲している様だ
借りていたハンドガンでトラックの脇にいる男に発砲すると、グラリと一瞬で倒れた
それに続く様にクロロの放った弾がもう1人に着弾した。そして辺りは静けさを取り戻した様に思えたが
一瞬でゾワリとした感覚が私を包むと体中が痺れる様に危険信号を出した
バク転して近くの木に飛び移るとネイビーのフードを被った男が私の居た場所に立ち尽くしている
目が合った瞬間に鳩尾に拳を入れられ、その衝撃を感じながら顎に強烈な蹴りを叩き込んでやる
仰け反った男の一瞬の隙をついてシャルが私を後ろから抱き地面に着地すると
ウボォーに顔面に拳を入れられた男は膝を着いていた
「つぇぇなぁ」
嬉しそうに笑ったウボォーの声を無視して直ぐに立ち上がった男は空に向かってピンク色の信号弾を無言で撃った
「怪我は?」
「無い、あれ仲間呼んでるの?」
「洗礼されたオーラだ、あれが20人来たら全滅だな」
フィンクスがカラカラと笑うと、クロロがこちらに向かってくるのが分かって全員がネイビーのフードの男を見つめながら動きを止めた
シャルは4日前から仕事に行くと出て行ったきりで。毎日メールは来るけど、内容はとてもありきたりで簡単なメールばかりなので正直つまらない。何処にいるのかも分からないけれど、フェイタンさんと飛行機で向かうと言っていたから場所は遠いのかもしれない。
私は私で毎日基礎トレーニングと念修行の毎日をおくっていた。家が広くなった分掃除は大変だし、日々自分の為だけに作る料理の味気なさに3日でげんなりしていた。そんな所に思いもよらぬお客さんが来てくれたのだった
「やあ、元気そうだな」
「クロロ、どうしたの?」
「シャルが忙しいからな。少し様子を見にね」
そう言って靴を脱ぐとスタスタと階段を上がっていく
。珍しい構造なので迷わないかなと思ったけれど、そういえばここはクロロが住んでいた事もあったんだっけと思い出して彼の後ろに続いた
3階まで階段を上がったクロロはリビングに入りソファに座り込んだ。そのまま懐から出した手紙のようなものを読み出したので私は珈琲でも淹れようとキッチンで支度をする事にした
「良い香りだ。」
「今出来るからね」
「シャルから連絡は?」
「毎日来るけどメールだけ。」
「そうか。」
クロロは忙しくないの?と言って珈琲カップと茶菓子をクロロのテーブルの前に置くと
俺は俺でやる事があってな。と相変わらずマイペースのクロロに変わって無くて良かったとホッとした
「レイ、夕飯は俺がご馳走する。珈琲の礼だ」
「やったね、蟹かステーキが良い」
「奮発してル.パンのワインも付けてやろう」
「るぱんが分からないけど、やったー」
支度してくると言って、笑顔で部屋を出て行った彼女に同じ女性でもマチやシズクと違って良くはしゃいで良く笑うなと思う。明るいから良い訳では無いけれど
不思議な魅力を感じる女だ
リビングの一角にはシャルと彼女が寄り添い笑顔で写る写真が飾ってある。それを見ていると、昔のシャルナークを女癖を思い出し笑いが込み上げて来た
彼女の事を俺が団員の候補にしたいなと思っているのはシャルにはどうせバレているだろうし、シャルが忙しい今の内に色々な事を叩き込んでおきたくてウズウズしていた
基礎的なものは出来ているから治療系の念を何段階か引き上げて、身体的能力を少し向上させれば
そんな事を考えていると口に少し出てたのか、クロロ独り言?と笑って部屋に入ってきた彼女は外行きの服装に着替え終わっていた。
手にはバッグと厚めのコートも持っている
「ああ。早くお前をしごきたいなと思ってな」
「何それ怖いんだけど」
「シャルから聞いた。トレーニングをしているんだろう」
「ああ、うん。やるだけやるんだけど全然何処目指せば良いかわからなくてね。」
「たまには人に習うのも良い。」
「クロロなら良いかも」
「…言ったな、では今日は良く食べ良く飲んで明日からハードトレーニングだ」
そう言ってから、エスコート致しますと手を差し出してくるクロロに笑って手を取ると私達はお店に向かった。
食事中はずっとシャルの話で盛り上がっていた。
シャルの勇敢な話から馬鹿な話題まで、本当の笑顔で話をするクロロは色んな意味で魅力があった
途中、シャルから珍しく電話がかかってきて喜んで電話をとると彼の声は怒りに満ちていた。誰かさんから写真が送られてきたと開口1番に不機嫌に言われて、チラリとクロロを見ると先程お店に向かう途中にクロロが意地悪い笑みで2人で写真を撮ろうと言ってきたがこうゆう事かと納得した
「シャルは仕事どう?こっちはシャル居なくて寂しいけど部屋掃除したりトレーニングしたりで何だかんだやってるよ」
不機嫌な彼の機嫌をとろうと少し猫撫で声でそう言えば、早く終わらせたいのに誰かさんがどんどん仕事送ってくるんだと言ってシャルは溜息をついた。
そんな中、満面の笑みでワインを飲み干すクロロは最高の肴を手に入れたように上機嫌だった
そこから2時間くらいワインを飲んで酔っ払って笑って家に着いたのは深夜だった
朝からトレーニングだからなと言うクロロがソファに横になったのを確認してから寝室に入りベッドにそのままダイブした
肩を揺らす様な振動を感じて目が覚めた
部屋は薄暗く窓から見える鈍いオレンジの光が暗闇を少しだけ照れしていた
起きたか?と静かな声が耳に入り、クロロが私の肩を揺らしているんだと分かる
「まだ早いよ」
「少しトラブった様だ。シャルとフェイは重症、ウボォーも怪我をしたらしい」
「えっ?」
すぐに支度しろと言われ、飛び起きて簡単に身支度を済ませると外から車のクラクションが1度鳴った
必要な物だけ鞄にしまいガスの元栓を閉めてから外に出ると玄関の前で待っていたクロロの車に乗り込んだ
車がバラバラになるんじゃ無いかってくらいのスピードで、朝日もあがっていない暗い道をひたすら車を走らせるクロロは無表情だった
シャルとフェイタンさんが重症何てそんな事があるのかと未だに信じられない私の考えを読んだのか
クロロはチラリと私を見て静かに口を開く
「マチが2人の傷を縫い合わせたと言っていた。血は止まっているし死ぬ心配は無い」
「はぁ、良かった。…ちなみに何の仕事だったの?」
「簡単に言うとあるルートからの強奪って所だな」
「シャルがルートを探して、フェイタンさんとウボォーさんとマチちゃんが強奪するって事?」
「ルートを探し当てるまでも大分時間が掛かったが…いざ探し当てて現場に着けばマフィアが雇っていた用心棒が居たらしくてな。」
「そのメンバーで勝てないとかあるの?」
「どうして怪我をしたのかは詳しく聞いていないからな。使い手には相性もある、それに戦ってみて肉弾戦が弱くても切り札で致命傷になる事もあるからな」
そう言ったクロロに頷くと、車はそこから少し走った山の手前で止まった
ここから空で行くと行ったクロロは車を乗り捨てると急に林の中に突っ込む様に走り出した
それにつられて私も後ろを走り出す、足に集中していないと直ぐに離されてしまいそうだと思いながらひたすら無心で彼の後を追った
小さな飛行機を運転するクロロに、何て彼は万能なんだと思いつつも大きく揺れる振動に二日酔いも重なり白目になりそうだった。
自分の特技はすぐ寝れる事なので、クロロに一言断りを入れてから後ろの席で足を投げ出して寝てしまう事にした
スヤスヤと小さな寝息が聞こえてきて思わず笑ってしまった
電話を手に取ってシャルナークに発信ボタンを押すと何コールかしてから不機嫌な声が聞こえて来た
「調子はどうだ?」
「良いと思う??ボロボロなんだけど」
「ははは、お前がそんな事言うのは珍しいな。フェイタンの怪我はどうだ?」
「切れて不貞寝してる。傷は大分良いよ、マチのおかげかな」
「お前達をやった奴は?」
「死んだよ。あそこまで潔いと敵ながらアッパレだったよ」
「他に脅威になりそうなのは?」
「さすが金持ちで、もう他に腕利きを何人か雇ってる
んだけど…ちょっと待って…。最新で雇われてる奴は書いてある感じでは特に俺でも大丈夫そうなレベルかな。それよりも前から雇われてる奴の詳細が分からないし、特攻してくる感じが怖いから今は団長とフィンクスが来るまで待ちかな」
「まぁ、妥当だな。目当ての物は?」
「ウボォーが1つ取って来たよ。今の所手に入ったのは魔境だけだね」
「そうか。今そちらに向かっているから今日中には到着する。それまで治療に専念してくれ」
「はいはい、あっ、それからレイには怪我した事言わないでよ」
「何故だ?」
「心配かけたくないんだよ。頼むよ」
「ああ、分かった」
そんな会話をしながらレイをチラリと見れば彼女は口から涎を垂らして寝ている
フッと笑った俺にじゃあ後でと言って電話を切ったシャルナークに大きな土産を見せた時のアイツの顔を想像して楽しくなった俺は猛スピードで空の旅を楽しむ事にした
意識がボンヤリとしている。ゆさゆさと揺れていて体が温かく感じる
人の声が聞こえて、その声がシャルに似ていて愛おしい
怪我をしているんじゃないか、大丈夫なのか何て考えていると急にグイッと腕と背中周りに強い力を感じて飛び起きた
「ビックリ、した」
「ごめん、起こしちゃったね」
「全く、そんな強く剥ぎ取るからだろ」
目を開ければシャルが目の前に居て、その姿に思わず目を見開いてしまう。上半身半分包帯だらけで片目は大きなアザで目は開かず口の横から頬にかけて大きな切り傷が出来ていた
片手を伸ばして彼の頬に優しく触れる
思わず出た言葉は痛く無い?だった
「痛く…はあるけど、泣かないでよ。レイに泣かれたら仕事嫌になるから」
「男前だぞシャルナーク」
「団長は勝手に連れて来たくせに何言ってんの?」
「俺がレイを抱えて来た時の顔を写真で撮っておけば良かったな」
「うるさいなぁ」
「はぁ、シャルがなんだかんだ元気で良かった。フェイタンさんは?」
「まぁね。でもマチが居なかったら飛び出た内臓に絡まって今頃死んでたかも。フェイなら奥にいるよ」
「…何それ…考えたくない」
クロロが、内臓が飛び出たシャルも男前だと言って吹き出した所でげんなりした私は話し込む2人を置いて奥の部屋に足を進めた
何だか段ボールばかりの部屋がいくつも並んでいて扉は全て開けっぱなし。埃臭いのにご綺麗な不思議な倉庫みたいな建物だ
奥の部屋に入ると簡単に作られたベッドが何個か並んでいて、小さな黒い塊が丸まっていた
寝ている様なので静かに傍に座り触れない様に手をかざす
少しづつ集中してきて相手の骨がゆっくりくっついていく感覚と、千切れた皮膚が再生していく感じがしてくる
最近はあまり重症な人は治していないから出来るか分からなかったけど、この感じなら大丈夫だろうと確信した
イメージしてから20分も経つと後ろに人の気配がしたけれど、最後の最後で集中を切らす訳にはいかないのでそちらを振り返りもせずに目の前のフェイタンだけを再度見つめる
ゆっくりと私に右から近づいて来た手が私の額の汗を優しく拭ってくれる
その優しさに少し感動しながらも最後まで集中力はきらさなかった
「ふぅ、出来た」
思わず呼吸を忘れていた様で深く吸ってから吐くと、横からまた手が伸びて喉元まで垂れた汗が拭われる
あ、どうもと言いながらそちらを向けば紫色の髪をした綺麗な女性が、これ使いなと言いながらハンカチを渡してくる
「…マチちゃん?」
「…ああ、レイだろ。ありがとね、フェイタンあんたもお礼言いなよ」
マチの見ている目線を追えば、プランケットから半分顔を出しこちらを凝視している目にビクリとした
「フェイタンさん、起きてたんだ」
「入ってきた時から起きてたね。あたりまえよ」
バサリとプランケットを投げ出して立ち上がるとゴキゴキと首と腕を鳴らしながら一言ありがとさんねと言ってスタスタと歩いて行ってしまった
疲れたと私が呟くと、お疲れさん。そこで休んでなと言って部屋を出ていくマチちゃんの背中を目で追いながら私はゴロリとプランケットに丸まって目を閉じた
目を開ければ辺りは暗かった
電気が消されているって事は皆寝ているのだろうか
今日は寝てばかりいるなとふと思う
自分のお腹に置かれた太い腕は私を軽く抱き締めていた、首をそちらに向ければシャルがスヤスヤと寝ていた。只、目の傷は炎症をおこしているのか赤紫色になっている
痛々しいその姿に居ても経ってもいられずに寝て回復した力を使って彼を起こさない様に目と頬、それから裂かれたお腹を同じ様に修復、再生させているとフェイタンにした治療のおかげかイメージがスムーズで短時間でシャルの傷は回復した
少し嬉しくなって目を凝らして見たが、まるで最初から無かった様に綺麗に治っていた
何度か深呼吸を繰り返しながら久しぶりにシャルを見た
サラリとした髪を撫でながら寝息をたてる唇に優しく口付けをする。我慢していた気持ちを解放する様にゆっくりと大きな胸の中に埋まって鎖骨に顔を擦り付けると
それに反応したのかシャルは優しく抱きしめてくれる
スースーと規則正しい寝息をかきながら私の髪に顔を埋めた。その姿が愛しくて私はその余韻のまま眠りについた
朝から大きな音と声とで騒がしくて、眠たい目を擦りながら目を開け体を起こす
部屋の中で木の箱に座りながら窓の外に発砲しているクロロを見つけて唖然とした
パシンとガラスに外側から発砲された弾が当たる
「おはよう、起きたか?悪いが珈琲を淹れてくれないか?」
「それは良いけど、誰と戦ってるの?」
「シャル達をやった奴の仲間さ」
「何で外に出ないの?」
「皆んながサバイバルゲームをしたいって聞かないんだ」
はぁとわざとらしく溜息をついたクロロは何故か少し嬉しそうに感じた
向こうからしたらゲームをしに来た訳じゃないと思うんだけどな。と思いながら部屋を出て顔を洗い歯を磨いているとオールバックのデカい男が私を見つめている事に気付いて歯ブラシを咥えながら片方の手を上げる
「…おう、久しぶりだな」
「はう。」
「レイ、支度終わったなら前線に行くか?シャルもいるぜ」
コクコクと頷いた私に戦えんのか?と少し馬鹿にしたようなフィンクスをジトリと睨んでから、喋れないので右腕を叩いてから自慢げに鼻を鳴らせば
腕には自信あるって事か?と私の冗談が分かった様で言うじゃねーかと笑っていた
お前は此処で留守番だと1番に良いそうなフィンクスが私に来るか?と声を掛けてくる事が少し不思議だったが、そんな事もあるかと気にしない事にした
口をゆすいでから、行くぞと言って走り出したフィンクスの後ろを追う
扉を出て階段を降りるとヒュンヒュンと銃弾が惜しみなく降り注いでくる
避け損ねた弾が右足に当たりガードで弾いたが少しだけ痛みが走った
コンテナや木の影に隠れながらフィンクスを追っていると、物凄い巨大の男が森の中からシャルと現れて私達はスピードを緩めながら足を止めた
「状況は?」
「こちらが優勢かな、能力者も今は1人も来てないし。それよりレイは何してんの?」
「起きたから来てみた。良かった、怪我綺麗に治ってるね」
「ああ、寝てる間に治してくれてありがとうね。てかフィンクスが連れて来たの?珍しいね」
「ん?ああ。こんな弱っちい奴ら相手なら危なくねーだろ」
「おい、誰だ??」
グイと顔を近づけられて思わず上から下まで見てしまう。とにかくデカい
シルバーグレイの髪が揺れて、ニカッと豪快に笑った彼はウボォーだと言って私の3倍ある手を差し出してきた
「よ、よろしく。ウボォーさん」
「さん何ていらねーよ」
そう言って肩を軽く叩かれると、先程当たった銃弾の2倍の衝撃に思わず笑ってしまった
サバイバルゲームをしたいと言ったのはフェイタンとウボォーとフィンクスらしい。横で話を聞いていて大体わかった
敵が弱いからこそ肉弾戦では無く拳銃で戦いたいと言ったウボォーに私とシャルは良くわかんねーと言ってお手上げのポーズを取った
フィンクスはそれが分かるようで、うんうんと頷きながら慣れた手付きでハンドガンやライフルの手入れをしている
「フェイタンは?」
「フェイは拳銃いらないってさ。サバイバルナイフだけで良いって」
「あ…そう」
ウボォーが弾倉を荒々しく入れると、パカリと力で拳銃自体が割れてしまい、私はもう笑うしか無かった
無言でサバイバルナイフをウボォーに渡すシャルに、ウボォーが涙目でフィンクスを見れば彼は首を横に振った
気付けば弾の飛んでくる音が少なくなっている気がして、私は近くのコンテナの上に上がってキョロキョロと辺りを確認する
黒いスーツの様な服を着た男が何十人もそこらじゅうに倒れていて、近くの停まっているトラックの脇から2人の男が建物の窓にいるクロロにマシンガンで発砲している様だ
借りていたハンドガンでトラックの脇にいる男に発砲すると、グラリと一瞬で倒れた
それに続く様にクロロの放った弾がもう1人に着弾した。そして辺りは静けさを取り戻した様に思えたが
一瞬でゾワリとした感覚が私を包むと体中が痺れる様に危険信号を出した
バク転して近くの木に飛び移るとネイビーのフードを被った男が私の居た場所に立ち尽くしている
目が合った瞬間に鳩尾に拳を入れられ、その衝撃を感じながら顎に強烈な蹴りを叩き込んでやる
仰け反った男の一瞬の隙をついてシャルが私を後ろから抱き地面に着地すると
ウボォーに顔面に拳を入れられた男は膝を着いていた
「つぇぇなぁ」
嬉しそうに笑ったウボォーの声を無視して直ぐに立ち上がった男は空に向かってピンク色の信号弾を無言で撃った
「怪我は?」
「無い、あれ仲間呼んでるの?」
「洗礼されたオーラだ、あれが20人来たら全滅だな」
フィンクスがカラカラと笑うと、クロロがこちらに向かってくるのが分かって全員がネイビーのフードの男を見つめながら動きを止めた
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