朝の日が眩しくて瞼をあける
体を起こして伸びをするが右腕に痛みは無い
ふと、小さなテーブルに花が飾ってある事に気づいた
誰が持って来てくれたんだろう。テーブルの前に座り花を手に取った
可愛いらしい小さな花。野原に咲いているような野草だった　女将さんが飾ってくれたのかな？自然と見ていると笑顔になる。少しだけ癒されてから何日も洗っていない頭のかゆみに耐え切れず湯浴みに向かった

湯から出て食事を頂いてから身支度をする
もう傷もかなり良いし、後1日くらいで復帰出来る気がした。湯浴みの時も食事の時も呼吸を忘れずに続けていた。
夕方近くになって、お礼に食事の用意を手伝いたいと申し出ると寝てなさいと言われたが早くも瘡蓋が出来ている私の傷口を見せると
貴方達は普通の人間じゃあないみたいに凄いのね、流石鬼狩様だわと目をキラキラされた

煮物や焼き物を作り終わるくらいに、女将さんから鬼殺隊の人に食事を運んで欲しいとお願いされた

「えっ？私の他にもまだ隊士がいるんですか？」
「貴女を心配してくれていた男性だよ、昨日花を片手に夜戻ってきたんだよ」
朝あんたの様子を見に行ったら、テーブルに飾ってあったやつ。いいねぇ若いって
と言ってニヤニヤしながら肩をぱしーんと叩かれる

冨岡さんが。帰ってきてる
私に花をくれたのは冨岡さんだったんだ

自分でも顔が綻んでるのが分かっていたけれど、今はすぐにでも彼の顔が見たかった
食事を勝手に全て大盛りにしてお盆にのせると彼の部屋を聞いてから小走りに向かう
浮き足たっていて部屋を一度通り過ぎてしまったけれど、改めて部屋の前まで来ると軽くノックする

はい、と小さな声で返事が聞こえて私は食事を持ってきましたと言って部屋をあけた
机でかきものをしていたようで、部屋の戸が開くと振り返った冨岡さんと目が合う
何で寝ていないんだ。と言わんばかりの表情だったけれど
なんだか顔を見たら嬉しくてたまらなかった。

「冨岡さん、お帰りなさい。食事を持ってきました」
テーブルにお盆を置いて、私もちゃっかり座らせてもらう。
「もう身体はいいのか？それより、何故配膳をしているんだ？」
「治ってきたので、お礼になるか分からないのですが食事を作らせて頂きました」
お前が作ったのか、と椅子から立ち上がるとお盆の前に座り直す
量が多くないか？と聞かれたので、お花が嬉しかったのでサービスですと笑顔で言えば
フッと笑ってバレたかと冨岡さんぽくない返しがきて笑ってしまった

冷めてしまうな、とすぐに箸を持って食事に手をつけてくれる。
「煮物、うまいな」
口に合ったみたいで、少しご機嫌の冨岡さんの表情をみて嫌々ながらも料理を学んでいて本当に良かったと初めて思った。

食事の量はかなり多かったはずだが、ペロリと平然な顔で平らげてしまった。美味かった、ご馳走様と丁寧にお礼までくれて私も思わずお粗末様ですと頭を咄嗟に下げてしまった

「白石、傷を見せろ」と急に真剣な表情になってこちらに体ごと向けて右手を掴まれる
「はい。」大人しく掴まれる右手の包帯をとると少しビックリしていた
「治りが早いな、呼吸を使ったのか？」
「あまり上手くは無いのですが一応やってみました」
「……そうか。」
そして2人は向かいあって無言になった


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