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気付けば窓からはサンサンと太陽が照りつけていた
ソファでそのまま眠ってしまったのか、いつの間にか仙道を押し潰す様に寝ていた私はボンヤリとしたまま携帯を取って時刻を確認する
そこに表示されていたのは8時15分の文字で、わぁーと叫んだ私に仙道がビックリしたのか飛び起きた
「あれ?…なんで白野?夢?」
「夢じゃ無い仙道、8時過ぎてる遅刻だよ」
「あーそっか俺家帰らなかったのか。忘れてたわ」
あくびをしながらのっそりと立ち上がった仙道の脇をすり抜けてダッシュで顔を洗い歯ブラシをしながら新しい歯ブラシに歯磨き粉を付けて洗面所に入って来た仙道に渡す
ガシガシと歯ブラシをしていると、何だか猛烈に寒くて立ち眩みがする。身体に違和感を感じてこれは風邪をひいてしまったんじゃないかとげんなりした
「んふーふーふー」
「んー?はひ?」
全く通じないので、その場座り込み歯ブラシを続けると様子を見ていた仙道は座り込んだ私の額にそっと手を置くと静かに首を横に振った
それから学校に行くと言って聞かない私を、仙道は軽々と抱き上げてベッドに下ろし布団をかけてくる
「微熱だし大丈夫だよ」
「駄目。微熱じゃない。薬どこ?」
「リビングの白いチェストの1番上の棚」
「食欲は?」
「プリンなら食べたい」
「今買ってくるから寝てな」
バタンと扉が閉まり直ぐに玄関の開く音が聞こえた
優しいなと思いながらそのまま布団の温かさにぬくぬくとしていると
段々とやって来た睡魔に流される様に目を瞑った
近くのコンビニでプリンとスポーツドリンク、冷えピタをカゴに入れていると
トントンと肩を叩かれて振り返ると何と学校の副担任が立っていて思わず苦笑いしてしまう
「仙道くん。学校は?もう9時だけど」
「あー、同じクラスの白野さんが風邪をひきまして。今食料と冷えピタを買いに来ました」
そう言った俺の買い物かごの中身を見た副担任は、ふむ。確かにと言ってから少しだけ優しい顔をする
「白野さんは学校に欠席の連絡はしたの?仙道くんは何時から行くの?」
「してないかなー。俺は彼女を病院に連れて行くんで休みます」
「薬は?」
「…家にあります」
「なら食べさせてから薬飲ませて仙道くんは学校行きなさい。明日までに良くならなかったら白野を病院に連れてってあげなさい。大変なら先生が車出してあげるから言いなさいな」
「すんません」
「仙道は部活もあるんだからね。とゆうか2人付き合ってたのね。美男美女でお似合いじゃない」
「あー、はぁ。どうも」
「でも仙道、健全な付き合いをしなさいよ」
「ははは。まぁ頑張ってみます」
嬉しそうに言った副担任にあえて違うと言わなかったのは、彼女だと皆に言っておいた方が諦めて嫌がらせも止まるかなと経った今思いついたからだ。
健全なと言われて、つい昨日付き合ってもいないのに彼女に欲情して自身にストップをかけた事を思い出して内心少し笑ってしまった
先生は財布からお札を取り出すと、白野の物はこれで買いなさいと言って俺にお札を渡しコンビニを出た。外まで送りお礼を言ってから、買い物を済ませると直ぐに自転車に乗り急いで家に戻った
寝室をノックして開けるとスースーと規則正しい寝息が聞こえてホッとした。
顔を覗けば、気持ちよさそうに寝ていたので安心する
整った顔に白く綺麗な肌、モデルの様な手足の長さに小さな顔
愛は容姿では無いのだろうけれど、彼女の美しさを隣の席になってから毎日間近で見て来た
たまに横顔に見惚れてしまう時もあるくらい彼女は全てが綺麗だった
美しさを鼻にかけず、お笑いが好きで気さくな所も気に入っていた。
俺の事を応援してくれている女の子達が嫌がらせをした事は申し訳ないと思ったけれど、彼女に触れて2人で夜を過ごせたのはその子達のおかげでもあるかな何てこっそり考えていた
彼女の額に冷えピタを貼ってから冷蔵庫にプリンやお粥などを入れて鍵を持って家を出た。外から鍵を掛けると、ポケットに鍵をしまってから自転車に乗り学校に向けて走り出す
足取りは軽やかで、気分がとても良かった
部活が終わったら、また何か買って行って明日は日曜日だし看病してあげようなんて考えたが部活がある
来週は湘北と試合だし、そろそろ田岡先生にどやされるな何て考えながら潮風の中を爽快に走っていると直ぐに学校に着いてしまった
お腹が空いて目が覚めると、身体が熱くて寒い
毛布にくるまりながらへリビングにのその外歩いて行くとテーブルの上に薬と書き置きがあった
冷蔵庫にお粥とプリンがあるから食べてから薬飲んで寝て
冷えピタは起きたら新しいのに変える事
部活終わったら行くから欲しいものがあったら連絡してきて
その下にはLINEのIDが書かれてあったので、まず全く気づかなかった熱くなった冷えピタを剥がして新しい物に変えた
冷蔵庫からパウチのお粥を取り出して、常温保存で平気なのになと笑ってしまいながら温める
お粥を食べながらIDを入力して出て来た仙道のLINEアカウントにメッセージを送った
起きたよ、ご飯ありがとう。
今食べてるから終わったら薬飲む
すると、何分かしてから直ぐに返事が来た
熱は?欲しい物ある?
熱はちょっと上がってきた。欲しいものはアイス
病院いく?
行かなくて平気。薬飲んでちょっと寝るね
鍵預かってるから、部活終わったら夕飯買って行くから寝てなね
ありがとう、お礼は今度改めてするね
そんなやりとりをしていると直ぐに食べ終えたので薬を飲んで直ぐに横になった。中々眠れなくて携帯でゲームをしているとウトウトとしてきたので布団を掛け直してから目を瞑った
髪を優しく撫でられている感覚に目をゆっくり開けると、仙道がベッドの脇に座り頭を撫でているのが目に入った
「…おかえり」
「…何かいいな。それ。…ただいま」
「アイスは?」
「夕飯食べたらね。倉橋さんと池上さんが連絡くれってさ。心配してた」
「すぐするね」
携帯を開きLINEを見ると、美智と菜摘からおめでとうと来ていて首を傾げた
「あれ?誕生日だっけ?私秋生まれなんだけど」
「どした?」
「おめでとうって入ってるからさ」
「あー。2人が心配してたから、鍵を見せて昨日から泊まってるし部活後に看病に行くから心配しないでって言ったら、ちゃんと付き合ってるの?って言われて。うんて言っちゃったからかな」
「言っちゃったからかなって…」
「彼女になれば嫌がらせも止まるかなって」
「ヒートアップしそうなんですけど…」
「ちゃんと俺が守るから大丈夫だよ」
真剣な目で手を握られて、好きとかは無い付き合いなの?と首を傾げると
ふふっと笑った仙道は私に口付けてくる
ビックリして目をパチクリしていると、好きじゃなかったら触らないよと笑った
「名前で呼んでいい?俺も彰って呼んで」
「う、うん。何か急展開でビックリしたかも」
「実は1年の頃からいいなとは思ってたんだよね。話す機会があんまり無かったけど」
「えっ?全然分かんなかった。何が良かったの?」
「最初は綺麗だったからだけど。気さくな所かな。2年になって思ったのは良く笑うし、ちょっと変わってるけどサッパリしてていーなーって」
「そう言われると嬉しいかも。私も、せ、彰が隣の席になってから楽しかったし。バスケ見る度にカッコよくて、恥ずかしいけど初めて男の身体に触りたいなって思ったのも彰だけだったから」
何か凄い恥ずかしいなと小さく呟いた私は顔が赤くなっていたと思う。チラっと彰を見れば口を開いて固まっていて
目の前で思わず手をブンブンと振った
「ど、どしたの?」
「…可愛すぎる。でも、触りたいな何て言われたら俺もう我慢出来ないよ」
「ふふふ。優しくしてね」
「優しくしてあげたいけど…。はぁ、今はこの話よそう。雪那は風邪を治さなきゃ」
あったかい珈琲が飲みたいと言った私に、淹れておくよと言ってくれた彰。キッチンに行って珈琲メーカーの使い方を説明してから洗面所に向かった
歯磨きをして顔を洗っていると、顔が赤いのは熱では無い様な気がした。実際に悪寒や眩暈も無いし、お腹も空いてる
昼に飲んだ薬が良かったのか、額を触ればもう熱はやはり無かった
キッチンに戻ると湯気が経つ珈琲が二つ並んでいた
隣にはロースカツ弁当大盛りと、卵うどんが2つとサラダやお惣菜が並んでいる
「彰、こんな食べれるの?」
「このくらい朝から食べれるよ」
胸焼けしそうだな何て思っていると、湯気が経つ卵うどんと書かれた容器を渡されたので笑顔でお礼を言って頂く事にした
ロースカツ弁当の大盛りをペロリと平らげた彰は卵うどんをすすると、半分まで食べた私のうどんを見て
無理しなくていいから食べれるだけ食べて薬飲みなと
優しく頬を撫でて来た
彼氏か…と彰を見て内心嬉しい様な恥ずかしい様な不思議な感覚を感じていると、ますます食欲が失せて来て箸を置いた
「ご馳走様?」
「うん、ご馳走様。彰見てたら食べれなくなっちゃったよ。薬飲んでくるね」
「えっ?何で??」
「うーん。何か初めての彼氏かって思ったら胸がいっぱいになった」
そう素直に話しながら薬を水で流し込むと、彰は小さく笑っていた
「ぶー。どうせ初めてですよーだ。モテる仙道くんとは違うもーん」
「ふふ、いや。俺は初めてでは確かに無いけど…。かーわいーなー」
本当初めてで良かったと呟いて箸を置き抱きついて来た彰に、初めてのが嬉しいの?と聞くと、色々初めてのが俺は嬉しいかなと言って額に口付けられた
「色々?」
「そ、色々。それはゆっくりね。」
食事を済ませた彰とテレビを見てゆっくりしていると薬が効いてきたのか眠気で瞼が重い
甘えて良いかな?と思い、肩にゆっくりもたれ掛かると風邪引いてるからベッドで寝ようねと軽々持ち上げられて寝室まで運ばれる
優しくベッドの中で抱きしめられて、胸板に顔がくっついていて温かい。勇気を出して顔を上げると彰はどうしたの?と言ってやわやわと頭を撫でてきた
少し恥ずかしいけれど、彰の後頭部に手を置いて触れるだけの口付けを唇に落とす
恥ずかしくて目を合わせずに、おやすみと言ってからゆるゆると胸板付近まで顔を戻してから目を瞑った
可愛いくて、このまま抱いてしまおうと我慢出来なくなった衝動につき動かされて左手で彼女の腰を掴み目尻にキスをすると、ほんのりと彼女の熱い肌に理性
を取り戻しておやすみと声を掛けてから唇を噛み締めて目を瞑った
朝起きると彰は居なくて、LINEに一度家に帰って部活に行ってくる、具合が悪くなったら遠慮なく電話してきてと入っていた。
洗面所で顔を洗い歯を磨いて久しぶりに綺麗にメイクをしてから髪を結い、念の為熱を計りながら珈琲を飲んでいると36、5度と表示された文字にホッとした
時刻は10時半で、またけっこう寝たな何て思いながら洗濯を始めて掃除を済ませると冷蔵庫にあったプリンに目がとまる
ふと、日曜まで部活の彰は昨日も寝不足なんじゃないかなと少し申し訳無くなり野菜室から母が送ってきたレモンとオレンジをカットすると蜂蜜に漬けた
おにぎりを握って小さい方を二つ食べると、大きい二つをラップで包む
水筒にたっぷりと麦茶を入れて、蜂蜜漬けのタッパー
とおにぎりを一緒にエコバッグに入れると着替えて家を出た
ムワンとした熱気で少し自転車を走らせれば汗が出てくる。こんな中でやってるんだな何て考えながらいつもの道を走り、ワーワーと騒がしい体育館に着くと適当に自転車を停めた
すぐに開け放しの出入り口からちょこっと顔を覗かせると
すぐにこちらに気付いたのは福田で、私を見てすぐに近くに居た彰を見た
両手でごめんねのポーズをすると、段々と部員からギャラリーの女の子の視線まで集まってきてしまったので、覗かせ顔を引っ込めると体育館からヒョイと出て来たのは越野だった
「やっぱり白野か、仙道に用事?」
「うん、忙しい所ごめんね。これ渡しといて貰えたりする?」
「いいよ。てか何の匂い?甘いもの?」
「蜂蜜漬けだから、良かったら越野と福田も食べて」
「まじで?ありがとうな」
「じゃあよろしくね」
練習見ていかねーのー?とゆう越野の声にまだ病み上がりだからと言って自転車に乗ろうとすると、体育館から走ってきた彰が私の名前を呼ぶ
「待って待って、ストップ」
「お疲れ様、汗だくだね。」
タオルで汗を拭いてあげると、後ろからキャーとゆう叫び声がしてチラリと見れば、体育館から部員やギャラリーが全員こちらを覗いていて私はゆっくりと彰の影に隠れる
「差し入れは越野に渡しておいたから。部活の邪魔だから行くね」
「今日のワンピースすげー可愛い」
「そこ??」
「髪も可愛いし。てか、具合は?」
「あ、ありがとう。あ、彰。先生出て来たから行くね。具合は大丈夫だから」
仙道!!と物凄い声がして、ゲェと嫌そうな顔をした彰に苦笑いをしてから可愛いと言われた余韻に浸る暇も無く逃げる様に自転車でその場を去った
止まらない汗をタオルで拭き、バッグに入っていた水筒の麦茶を流し込む。雪那が帰ってから2試合目が終わり、部員全員が肩で息をしながら座り込んでいる中俺はご機嫌だった
バッグからおにぎりを取り出して齧り付いていると、横に居た越野がバッグから無言でタッパを取り出して中身のオレンジとレモンを口に入れた
「何で食うんだよ」
「白野が俺と福田も食べてって言ってきたから」
「…なら俺も食う」
そう、福田の声が聞こえて振り返ればもう1つのおにぎりはもう福田の口の中に半分が消えていた
「おい!食うなよ」
「仙道の彼女からの差し入れ食う人ー」
越野がタッパを掲げると、そこらに居た部員全員が手掴みでハチミツ漬けを口に入れていく。その様子をげんなりとしながら見ていると
後輩の何人かが、俺の元に寄ってくる
「仙道先輩の彼女って白野さん何ですか?」
「知ってるのか?」
「1年にファンクラブがあるんですよ、白野さんの親御さんのファンも沢山いますから。やっぱり仙道先輩凄いです、彼女と付き合えちゃうなんて」
そう目を輝かせて言ってきた後輩達にありがとさん。と言って素直に喜ぶと、お似合いですと最後に言われた言葉が何だか胸にジンときた
越野に渡されたタッパにはもう1つも残っていなくて、俺が溜息を吐いていると魚住さんが励ます様に肩を優しく叩いて来た
越野がその魚住さんの様子を見て、仙道1番食ってたの魚住さんだぞとチクリを入れて来て
それを聞いた魚住さんは一度咳払いをしてからロッカーに歩いて行ってしまった
着替えをしている間も俺と彼女の話題で持ちきりだったけれど、全員が全員応援している様な口ぶりだったので特に嫌な気はしなかった
越野何かは自分がまるで彼女が出来た様な喜び方で内心少し笑ってしまう場面も多々あった
来週の日曜日は湘北との練習試合だな
着替えを済ませた俺に魚住さんは一言だけ言って意志の強い目で投げかけてくる
「勝てますよ。絶対」
「ああ。頼りにしている仙道。俺の事も頼りにしてくれよ」
「赤木キャプテンは魚住さんに任せますよ」
「仙道…」
「はい?」
「か、彼女は来週の試合は見にくるのか?」
「いや、聞いてないですね」
「良かったら、見にくる様に伝えてくれ。礼が言いたいからな」
「はい」
「ああ。後池上の妹と仲が良いのならマネージャーもやってもらえないか聞いてくれ」
「…魚住さん。何でですか?」
「…小さい時から彼女の父親のファンなんだ…。」
「マネージャーねぇ。やりたがらなそうですけど…。一応聞いておきますよ」
珍しく少し照れくさそうに話した魚住さんに一応聞いとくと話を濁して荷物を持つと外の自転車置き場に向かう。部員にお疲れ様と声を掛けて歩いていると
携帯のバイブレーションが鳴り、ポケットから電話を取った
「もしもし」
「彰?私雪那。終わったかな?」
「ああ、今終わって帰る所だけど。どしたの?」
「夕飯作っておいたんだけど、良かったら食べていかない?おにぎり2つじゃお腹空いたでしょ?」
「まじで?めっちゃ腹減ってる。今から行くわ」
「彰の大好きなコロッケは来てから揚げるね」
「よっしゃ!ダッシュする」
「危ないから安全運転にしてよ」
電話を切るとポケットにしまい、疲れていた事も忘れ自転車に乗り彼女の家に向かい走り出した
走りながら、元気そうだったし体調はもう万全なのかなと頭によぎるともう我慢せずに抱いてしまおうなんて考えが出て来て頭を振る
まだ付き合って日も浅いし、勿論避妊はするが子供が出来たらと考えると踏み出せない気がしたが
ふと、彰に触りたいと言ってくれた雪那の顔を思い出す
我慢は無理そうだな…何て思いながら自転車を停めてからインターホンを押した
ソファでそのまま眠ってしまったのか、いつの間にか仙道を押し潰す様に寝ていた私はボンヤリとしたまま携帯を取って時刻を確認する
そこに表示されていたのは8時15分の文字で、わぁーと叫んだ私に仙道がビックリしたのか飛び起きた
「あれ?…なんで白野?夢?」
「夢じゃ無い仙道、8時過ぎてる遅刻だよ」
「あーそっか俺家帰らなかったのか。忘れてたわ」
あくびをしながらのっそりと立ち上がった仙道の脇をすり抜けてダッシュで顔を洗い歯ブラシをしながら新しい歯ブラシに歯磨き粉を付けて洗面所に入って来た仙道に渡す
ガシガシと歯ブラシをしていると、何だか猛烈に寒くて立ち眩みがする。身体に違和感を感じてこれは風邪をひいてしまったんじゃないかとげんなりした
「んふーふーふー」
「んー?はひ?」
全く通じないので、その場座り込み歯ブラシを続けると様子を見ていた仙道は座り込んだ私の額にそっと手を置くと静かに首を横に振った
それから学校に行くと言って聞かない私を、仙道は軽々と抱き上げてベッドに下ろし布団をかけてくる
「微熱だし大丈夫だよ」
「駄目。微熱じゃない。薬どこ?」
「リビングの白いチェストの1番上の棚」
「食欲は?」
「プリンなら食べたい」
「今買ってくるから寝てな」
バタンと扉が閉まり直ぐに玄関の開く音が聞こえた
優しいなと思いながらそのまま布団の温かさにぬくぬくとしていると
段々とやって来た睡魔に流される様に目を瞑った
近くのコンビニでプリンとスポーツドリンク、冷えピタをカゴに入れていると
トントンと肩を叩かれて振り返ると何と学校の副担任が立っていて思わず苦笑いしてしまう
「仙道くん。学校は?もう9時だけど」
「あー、同じクラスの白野さんが風邪をひきまして。今食料と冷えピタを買いに来ました」
そう言った俺の買い物かごの中身を見た副担任は、ふむ。確かにと言ってから少しだけ優しい顔をする
「白野さんは学校に欠席の連絡はしたの?仙道くんは何時から行くの?」
「してないかなー。俺は彼女を病院に連れて行くんで休みます」
「薬は?」
「…家にあります」
「なら食べさせてから薬飲ませて仙道くんは学校行きなさい。明日までに良くならなかったら白野を病院に連れてってあげなさい。大変なら先生が車出してあげるから言いなさいな」
「すんません」
「仙道は部活もあるんだからね。とゆうか2人付き合ってたのね。美男美女でお似合いじゃない」
「あー、はぁ。どうも」
「でも仙道、健全な付き合いをしなさいよ」
「ははは。まぁ頑張ってみます」
嬉しそうに言った副担任にあえて違うと言わなかったのは、彼女だと皆に言っておいた方が諦めて嫌がらせも止まるかなと経った今思いついたからだ。
健全なと言われて、つい昨日付き合ってもいないのに彼女に欲情して自身にストップをかけた事を思い出して内心少し笑ってしまった
先生は財布からお札を取り出すと、白野の物はこれで買いなさいと言って俺にお札を渡しコンビニを出た。外まで送りお礼を言ってから、買い物を済ませると直ぐに自転車に乗り急いで家に戻った
寝室をノックして開けるとスースーと規則正しい寝息が聞こえてホッとした。
顔を覗けば、気持ちよさそうに寝ていたので安心する
整った顔に白く綺麗な肌、モデルの様な手足の長さに小さな顔
愛は容姿では無いのだろうけれど、彼女の美しさを隣の席になってから毎日間近で見て来た
たまに横顔に見惚れてしまう時もあるくらい彼女は全てが綺麗だった
美しさを鼻にかけず、お笑いが好きで気さくな所も気に入っていた。
俺の事を応援してくれている女の子達が嫌がらせをした事は申し訳ないと思ったけれど、彼女に触れて2人で夜を過ごせたのはその子達のおかげでもあるかな何てこっそり考えていた
彼女の額に冷えピタを貼ってから冷蔵庫にプリンやお粥などを入れて鍵を持って家を出た。外から鍵を掛けると、ポケットに鍵をしまってから自転車に乗り学校に向けて走り出す
足取りは軽やかで、気分がとても良かった
部活が終わったら、また何か買って行って明日は日曜日だし看病してあげようなんて考えたが部活がある
来週は湘北と試合だし、そろそろ田岡先生にどやされるな何て考えながら潮風の中を爽快に走っていると直ぐに学校に着いてしまった
お腹が空いて目が覚めると、身体が熱くて寒い
毛布にくるまりながらへリビングにのその外歩いて行くとテーブルの上に薬と書き置きがあった
冷蔵庫にお粥とプリンがあるから食べてから薬飲んで寝て
冷えピタは起きたら新しいのに変える事
部活終わったら行くから欲しいものがあったら連絡してきて
その下にはLINEのIDが書かれてあったので、まず全く気づかなかった熱くなった冷えピタを剥がして新しい物に変えた
冷蔵庫からパウチのお粥を取り出して、常温保存で平気なのになと笑ってしまいながら温める
お粥を食べながらIDを入力して出て来た仙道のLINEアカウントにメッセージを送った
起きたよ、ご飯ありがとう。
今食べてるから終わったら薬飲む
すると、何分かしてから直ぐに返事が来た
熱は?欲しい物ある?
熱はちょっと上がってきた。欲しいものはアイス
病院いく?
行かなくて平気。薬飲んでちょっと寝るね
鍵預かってるから、部活終わったら夕飯買って行くから寝てなね
ありがとう、お礼は今度改めてするね
そんなやりとりをしていると直ぐに食べ終えたので薬を飲んで直ぐに横になった。中々眠れなくて携帯でゲームをしているとウトウトとしてきたので布団を掛け直してから目を瞑った
髪を優しく撫でられている感覚に目をゆっくり開けると、仙道がベッドの脇に座り頭を撫でているのが目に入った
「…おかえり」
「…何かいいな。それ。…ただいま」
「アイスは?」
「夕飯食べたらね。倉橋さんと池上さんが連絡くれってさ。心配してた」
「すぐするね」
携帯を開きLINEを見ると、美智と菜摘からおめでとうと来ていて首を傾げた
「あれ?誕生日だっけ?私秋生まれなんだけど」
「どした?」
「おめでとうって入ってるからさ」
「あー。2人が心配してたから、鍵を見せて昨日から泊まってるし部活後に看病に行くから心配しないでって言ったら、ちゃんと付き合ってるの?って言われて。うんて言っちゃったからかな」
「言っちゃったからかなって…」
「彼女になれば嫌がらせも止まるかなって」
「ヒートアップしそうなんですけど…」
「ちゃんと俺が守るから大丈夫だよ」
真剣な目で手を握られて、好きとかは無い付き合いなの?と首を傾げると
ふふっと笑った仙道は私に口付けてくる
ビックリして目をパチクリしていると、好きじゃなかったら触らないよと笑った
「名前で呼んでいい?俺も彰って呼んで」
「う、うん。何か急展開でビックリしたかも」
「実は1年の頃からいいなとは思ってたんだよね。話す機会があんまり無かったけど」
「えっ?全然分かんなかった。何が良かったの?」
「最初は綺麗だったからだけど。気さくな所かな。2年になって思ったのは良く笑うし、ちょっと変わってるけどサッパリしてていーなーって」
「そう言われると嬉しいかも。私も、せ、彰が隣の席になってから楽しかったし。バスケ見る度にカッコよくて、恥ずかしいけど初めて男の身体に触りたいなって思ったのも彰だけだったから」
何か凄い恥ずかしいなと小さく呟いた私は顔が赤くなっていたと思う。チラっと彰を見れば口を開いて固まっていて
目の前で思わず手をブンブンと振った
「ど、どしたの?」
「…可愛すぎる。でも、触りたいな何て言われたら俺もう我慢出来ないよ」
「ふふふ。優しくしてね」
「優しくしてあげたいけど…。はぁ、今はこの話よそう。雪那は風邪を治さなきゃ」
あったかい珈琲が飲みたいと言った私に、淹れておくよと言ってくれた彰。キッチンに行って珈琲メーカーの使い方を説明してから洗面所に向かった
歯磨きをして顔を洗っていると、顔が赤いのは熱では無い様な気がした。実際に悪寒や眩暈も無いし、お腹も空いてる
昼に飲んだ薬が良かったのか、額を触ればもう熱はやはり無かった
キッチンに戻ると湯気が経つ珈琲が二つ並んでいた
隣にはロースカツ弁当大盛りと、卵うどんが2つとサラダやお惣菜が並んでいる
「彰、こんな食べれるの?」
「このくらい朝から食べれるよ」
胸焼けしそうだな何て思っていると、湯気が経つ卵うどんと書かれた容器を渡されたので笑顔でお礼を言って頂く事にした
ロースカツ弁当の大盛りをペロリと平らげた彰は卵うどんをすすると、半分まで食べた私のうどんを見て
無理しなくていいから食べれるだけ食べて薬飲みなと
優しく頬を撫でて来た
彼氏か…と彰を見て内心嬉しい様な恥ずかしい様な不思議な感覚を感じていると、ますます食欲が失せて来て箸を置いた
「ご馳走様?」
「うん、ご馳走様。彰見てたら食べれなくなっちゃったよ。薬飲んでくるね」
「えっ?何で??」
「うーん。何か初めての彼氏かって思ったら胸がいっぱいになった」
そう素直に話しながら薬を水で流し込むと、彰は小さく笑っていた
「ぶー。どうせ初めてですよーだ。モテる仙道くんとは違うもーん」
「ふふ、いや。俺は初めてでは確かに無いけど…。かーわいーなー」
本当初めてで良かったと呟いて箸を置き抱きついて来た彰に、初めてのが嬉しいの?と聞くと、色々初めてのが俺は嬉しいかなと言って額に口付けられた
「色々?」
「そ、色々。それはゆっくりね。」
食事を済ませた彰とテレビを見てゆっくりしていると薬が効いてきたのか眠気で瞼が重い
甘えて良いかな?と思い、肩にゆっくりもたれ掛かると風邪引いてるからベッドで寝ようねと軽々持ち上げられて寝室まで運ばれる
優しくベッドの中で抱きしめられて、胸板に顔がくっついていて温かい。勇気を出して顔を上げると彰はどうしたの?と言ってやわやわと頭を撫でてきた
少し恥ずかしいけれど、彰の後頭部に手を置いて触れるだけの口付けを唇に落とす
恥ずかしくて目を合わせずに、おやすみと言ってからゆるゆると胸板付近まで顔を戻してから目を瞑った
可愛いくて、このまま抱いてしまおうと我慢出来なくなった衝動につき動かされて左手で彼女の腰を掴み目尻にキスをすると、ほんのりと彼女の熱い肌に理性
を取り戻しておやすみと声を掛けてから唇を噛み締めて目を瞑った
朝起きると彰は居なくて、LINEに一度家に帰って部活に行ってくる、具合が悪くなったら遠慮なく電話してきてと入っていた。
洗面所で顔を洗い歯を磨いて久しぶりに綺麗にメイクをしてから髪を結い、念の為熱を計りながら珈琲を飲んでいると36、5度と表示された文字にホッとした
時刻は10時半で、またけっこう寝たな何て思いながら洗濯を始めて掃除を済ませると冷蔵庫にあったプリンに目がとまる
ふと、日曜まで部活の彰は昨日も寝不足なんじゃないかなと少し申し訳無くなり野菜室から母が送ってきたレモンとオレンジをカットすると蜂蜜に漬けた
おにぎりを握って小さい方を二つ食べると、大きい二つをラップで包む
水筒にたっぷりと麦茶を入れて、蜂蜜漬けのタッパー
とおにぎりを一緒にエコバッグに入れると着替えて家を出た
ムワンとした熱気で少し自転車を走らせれば汗が出てくる。こんな中でやってるんだな何て考えながらいつもの道を走り、ワーワーと騒がしい体育館に着くと適当に自転車を停めた
すぐに開け放しの出入り口からちょこっと顔を覗かせると
すぐにこちらに気付いたのは福田で、私を見てすぐに近くに居た彰を見た
両手でごめんねのポーズをすると、段々と部員からギャラリーの女の子の視線まで集まってきてしまったので、覗かせ顔を引っ込めると体育館からヒョイと出て来たのは越野だった
「やっぱり白野か、仙道に用事?」
「うん、忙しい所ごめんね。これ渡しといて貰えたりする?」
「いいよ。てか何の匂い?甘いもの?」
「蜂蜜漬けだから、良かったら越野と福田も食べて」
「まじで?ありがとうな」
「じゃあよろしくね」
練習見ていかねーのー?とゆう越野の声にまだ病み上がりだからと言って自転車に乗ろうとすると、体育館から走ってきた彰が私の名前を呼ぶ
「待って待って、ストップ」
「お疲れ様、汗だくだね。」
タオルで汗を拭いてあげると、後ろからキャーとゆう叫び声がしてチラリと見れば、体育館から部員やギャラリーが全員こちらを覗いていて私はゆっくりと彰の影に隠れる
「差し入れは越野に渡しておいたから。部活の邪魔だから行くね」
「今日のワンピースすげー可愛い」
「そこ??」
「髪も可愛いし。てか、具合は?」
「あ、ありがとう。あ、彰。先生出て来たから行くね。具合は大丈夫だから」
仙道!!と物凄い声がして、ゲェと嫌そうな顔をした彰に苦笑いをしてから可愛いと言われた余韻に浸る暇も無く逃げる様に自転車でその場を去った
止まらない汗をタオルで拭き、バッグに入っていた水筒の麦茶を流し込む。雪那が帰ってから2試合目が終わり、部員全員が肩で息をしながら座り込んでいる中俺はご機嫌だった
バッグからおにぎりを取り出して齧り付いていると、横に居た越野がバッグから無言でタッパを取り出して中身のオレンジとレモンを口に入れた
「何で食うんだよ」
「白野が俺と福田も食べてって言ってきたから」
「…なら俺も食う」
そう、福田の声が聞こえて振り返ればもう1つのおにぎりはもう福田の口の中に半分が消えていた
「おい!食うなよ」
「仙道の彼女からの差し入れ食う人ー」
越野がタッパを掲げると、そこらに居た部員全員が手掴みでハチミツ漬けを口に入れていく。その様子をげんなりとしながら見ていると
後輩の何人かが、俺の元に寄ってくる
「仙道先輩の彼女って白野さん何ですか?」
「知ってるのか?」
「1年にファンクラブがあるんですよ、白野さんの親御さんのファンも沢山いますから。やっぱり仙道先輩凄いです、彼女と付き合えちゃうなんて」
そう目を輝かせて言ってきた後輩達にありがとさん。と言って素直に喜ぶと、お似合いですと最後に言われた言葉が何だか胸にジンときた
越野に渡されたタッパにはもう1つも残っていなくて、俺が溜息を吐いていると魚住さんが励ます様に肩を優しく叩いて来た
越野がその魚住さんの様子を見て、仙道1番食ってたの魚住さんだぞとチクリを入れて来て
それを聞いた魚住さんは一度咳払いをしてからロッカーに歩いて行ってしまった
着替えをしている間も俺と彼女の話題で持ちきりだったけれど、全員が全員応援している様な口ぶりだったので特に嫌な気はしなかった
越野何かは自分がまるで彼女が出来た様な喜び方で内心少し笑ってしまう場面も多々あった
来週の日曜日は湘北との練習試合だな
着替えを済ませた俺に魚住さんは一言だけ言って意志の強い目で投げかけてくる
「勝てますよ。絶対」
「ああ。頼りにしている仙道。俺の事も頼りにしてくれよ」
「赤木キャプテンは魚住さんに任せますよ」
「仙道…」
「はい?」
「か、彼女は来週の試合は見にくるのか?」
「いや、聞いてないですね」
「良かったら、見にくる様に伝えてくれ。礼が言いたいからな」
「はい」
「ああ。後池上の妹と仲が良いのならマネージャーもやってもらえないか聞いてくれ」
「…魚住さん。何でですか?」
「…小さい時から彼女の父親のファンなんだ…。」
「マネージャーねぇ。やりたがらなそうですけど…。一応聞いておきますよ」
珍しく少し照れくさそうに話した魚住さんに一応聞いとくと話を濁して荷物を持つと外の自転車置き場に向かう。部員にお疲れ様と声を掛けて歩いていると
携帯のバイブレーションが鳴り、ポケットから電話を取った
「もしもし」
「彰?私雪那。終わったかな?」
「ああ、今終わって帰る所だけど。どしたの?」
「夕飯作っておいたんだけど、良かったら食べていかない?おにぎり2つじゃお腹空いたでしょ?」
「まじで?めっちゃ腹減ってる。今から行くわ」
「彰の大好きなコロッケは来てから揚げるね」
「よっしゃ!ダッシュする」
「危ないから安全運転にしてよ」
電話を切るとポケットにしまい、疲れていた事も忘れ自転車に乗り彼女の家に向かい走り出した
走りながら、元気そうだったし体調はもう万全なのかなと頭によぎるともう我慢せずに抱いてしまおうなんて考えが出て来て頭を振る
まだ付き合って日も浅いし、勿論避妊はするが子供が出来たらと考えると踏み出せない気がしたが
ふと、彰に触りたいと言ってくれた雪那の顔を思い出す
我慢は無理そうだな…何て思いながら自転車を停めてからインターホンを押した
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