ケンちゃんのお姉ちゃん 大寿君の妹ちゃん
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小学校5年の時にいきなり俺の前に現れたのは自称俺の姉貴だった。学年は1つ上、鼻筋と口元がやけに俺と似ていた
「龍宮寺雪那です。よろしくね弟ちゃん」
そう言って柔らかく笑った姉ちゃんに、俺は何だか複雑な気持ちで彼女の存在を良くは思えず、無表情でそっけなくどうも。としか言わなかった。「片親が違うから半分しか血は繋がってないんだ」と言って手を握ってくる自称姉貴の手を握り返さずにいると、そんな俺を察したのか「困った事があったらいつでも言ってね」と寂しそうに笑った姉ちゃんの顔をいまだに思い出す
あれからあっとゆう間に4年が経った。ヘルスに住む俺に毎月の様に一緒に暮らそうと言ってきたのはもう昔の事。一緒の家に住むのは諦めたようで最近は煩く不良をやめろとも言わなくなってきた。
中学の2年から家事をこなしながら学校に通って1人で暮らす姉貴に生活の大変さを学んだ俺は絶対に口には出さないが彼女を尊敬までする様になったが、ちょいちょい煩いのとすげぇ阿呆な所はやっぱり初めて会った時からずっと変わらない
「ケンちゃん、最近また喧嘩した?」
「……してねーよ。何だよそれ」
うちの学校の子がケンちゃんが高校生みたいな大きな男の子をボコボコにしてたの見たって。そう言って心配そうに目を向けるとケンちゃんは「知らねー」とそっけなく言いながら見ているバイク雑誌に目を戻した。そんな態度に頭に来て見ていたファッション雑誌を丸めて頭をポカリと叩いてやると「いて」と小さい声で呟いてから何事も無かった様に無視をされる
「……ぐぬぬぬぬ」
「……姉さん、すみません。麦茶もらっていいですか?」
「いいよ、待っててね」
毎回毎回ちょっと照れたように話しかけてくる可愛いちーちゃんをケンちゃんもちょっとは見習って欲しい。キッチンに向かい冷蔵庫から麦茶と棚からグラスを3つ取ると、昨日焼いておいたクッキーをお皿に並べてトレーに置いた。両手でトレーを持って部屋に戻ると「すみません」と言って立ち上がり私からトレーを受け取ったちーちゃんはグラスに麦茶を注いでくれる
「ちーちゃん、クッキーも食べてね」
「あ、いつもありがとうございます」
「お礼はいらないから後で抱っこしていい?」
「……馬鹿姉貴やめろや」
「ケンちゃんは黙ってて。夕飯作る前にヤル気出さないといけないからちーちゃん抱き締めて頑張るの」
「阿呆か」
両手でちーちゃんの頭を抱き締めて頬にすりすりしていると、段々と耳まで赤くなるちーちゃんが可愛くてニヤニヤしてしまう。その時急に「スパン」と大きな音がして頭に走る衝撃に「ぎゃあ」と声から自然に出た。「やめんか馬鹿」と言いながら丸めた雑誌を振りかざしてくるケンちゃんに頬を膨らませた
私とケンちゃんを捨てた親からは今まで1度も仕送りをして貰えた事は無く、私を拾ってくれた弁護士の養父と養母から2週間に1回は顔を見せるとの約束で仕送りをして貰っている。最近は家事もこなせる様になってきたし、最初は心配していた義両親から生活の面で信頼される様にもなり何だかやっと当初から立てていた目標を達成出来た気がする
高校からはバイトも出来るので、お金を貯めつつ恋をしたり普通に平和に暮らせたらいいなと思っていた
「ちーちゃんはさっきから何読んでるの?」
「ペット特集ですよ」
「ふふ、動物もちーちゃんも両方可愛い。ちーちゃん今日は夕飯食べてく?」
「勿論食べます。姉さんのご飯美味しいので」
ニシシと歯を見せて笑うちーちゃんの笑顔を見たらヤル気に溢れてきて「よし」と言ってその場に立ち上がると雑誌から目を離さずに「姉貴俺も飯ー。大盛り」
と言ってくるケンちゃんをジトっと睨み付けた
最近は口をひらけば姉貴飯しか言わないケンちゃん。でも、小学校の時はまともに話すらしてもらえなかった。初めて会ってからゆっくりと色んな話をして、ご飯を一緒に食べて色んな事があってここまで来た。相変わらず恐ろしい髪型をしているけんちゃんを見て溜息をつくと、そんな私を見て「大盛りだからな」と言ったけんちゃんについ笑ってしまった
朝起きてシャワーを浴びて支度をすると昨日の残り物を詰めてお弁当を作り自転車に乗り込んだ
共学で公立、費用が1番安くてなるべく安全な高校を選んだ。養父にはお金は気にしなくて良いんだよと毎回言われるが私的に「はいそうします」とは簡単には言えなかった。頼ってない訳じゃないし、凄く有り難いからこそ此処を選んで自分でも頑張りたいと言えば、養父は喜んだ様な驚いた様な顔をした
高校までは徒歩15分程度の道のりを自転車で通う
どこの学校にも何人かは不良みたいな子がいるけれど私は昔からけんちゃんが居たからか絶対に絡まれないし、クラスの男の子にも目すら合わせてもらえなかった。絡まれないのはありがたいけれど、いまだにこの歳で仲良い男性は弟の友達のみは少し悲しい気がする
授業が終わりクラスの女の子達と談笑しながら近くのカフェでお茶をしていると雪那ちゃん見てみてと隣に座ってきてスマホの写真を見せてきたのは、まだ中学から友人になったばかりの由美ちゃんだった。写真を覗き込むと綺麗な顔の男の子が写っていて、カッコイイ子だね彼氏?と私が首を傾げると「 実は雪那ちゃんに紹介したいの」と微笑まれて私は驚愕した
「……何でそんなに驚くの?」
「…………男の子紹介された事無くて……。どちらかと言うと絶対紹介出来ないって今まで言われてきたからさ」
「…そ、…そうなんだ」
はははと乾いた笑みを浮かべた私に由美ちゃんも少しだけ困った様に笑うと「物静かな子だけど根は優しい子だから会ってみなよ」と言って微笑んだ
「……てか、この子うちの学校??」
「ううん。隣だよ。確か1個下かな」
「年下?……でも何で私なの??」
「……この子昔近所に住んでてさ。最近バッタリ会ってね。色々長話してたらさ彼女欲しいなって言ってて、タイプ聞いたら雪那ちゃんがバッチリだったからさ」
まぁ、別に深く考えずに1回会ってみなよと笑った由美ちゃんに私はそうだねと微笑んだ
家に帰ると、さっそく教えてもらった彼の連絡先に由美ちゃんの友達の雪那ですとドキドキしながらメッセージを送った。ソワソワしながらずっと携帯を眺めていると既読になったメッセージを見て返事返ってくるかな何てちょっと不安になる。それから1分も経たずに返ってきた返信からは何だか丁寧で誠実さを感じて不良に囲まれて育ってきた私からすると新鮮だった
初めまして、乾といいます。良かったら仲良くして下さい。雪那さんて呼んで良いですか?
はい、大丈夫です。こちらこそ仲良くして下さい
そんなやりとりをしていると自然に顔がニヤニヤしている事に気付き自分でちょっと笑ってしまう。ご機嫌のまま携帯を弄っていると玄関が開く音がして、ガヤガヤと沢山の声が聞こえバタバタと廊下を歩いてくる足音が近付いてきた
今はそちらには目を向けずに乾君とのLINEを楽しんでいるとリビングからひょっこり顔を出したのは久しぶりに会うタカちゃんだった
「 雪那さん、お邪魔してます」
「タカちゃん久しぶりだね」
「久しぶりって言っても2週間くらいだけど。あ、雪那さん、もう中3なんでタカちゃんじゃなくて隆って呼んでよ」
ニッと歯を見せた彼が可愛くて「隆可愛い」と言いながらソファから立ち上がり、彼の手を握ってブンブン降ると少し困った様な顔で笑う隆はまた顔付きが少しだけ大人になったなと思った。何か飲む?と言えば雪那さんの分買ってきましたと紅茶を渡されて、それ好きでしたよねと言って笑う隆の腕にスリスリするとちょっと照れた顔で頬をかいた
「隆は本当にけんちゃんより可愛い。そして優しい」
「……可愛いよりカッコイイのが嬉しいけど、雪那さんは可愛い子好きだもんな」
「だーいすき」
私がそう笑顔で言うと隆も優しく微笑んでくれていた
乾君とのLINEはゆっくりだけど夜まで続いていた。
合間にチャーハンを作って皆に渡し、洗濯を回して乾燥機をしている間もお風呂の時もずっとLINEをしていた。風呂上がりにリビングで誰かが買って来たであろうアイスに齧り付いていると、ぞろぞろと全員がリビングに入ってきて冷凍庫からアイスを取っていくのが見えた。俺のアイスがねーじゃんと騒ぐぱーちゃんの声に知らん顔をする事にした
「……姉貴さっきから何でニヤニヤしてんの?」
そのけんちゃんの一言でビクリとすると、パーちゃんが「姉ちゃん男?」と真顔で言って来たので違うと言おうと思ったが私は嘘が付けないし、多分ついても直ぐにバレるからちょっと照れたけどこくこくと頷いた。「後それ俺のアイス」と言われたのでこちらにもこくこくと頷くとパーちゃんはこの世の終わりみたいな顔をしていた
マイキーだけがアイスを貪りながら「姉ちゃんも女になるんだな」と真顔で言うと、シーンと部屋が静まり返り何だかその空気に耐えられなくなった
「……私部屋でLINEするからごゆっくり」
部屋に戻りベッドにダイブしてLINEを開き直すと、乾君から良かったら今週の日曜日に映画に行きませんか?と来ていて私の頬は少し熱くなった。いても経っても居られなくなってクローゼットを開いてデートに着ていけそうな可愛らしい服を漁るが、今まで生きてきて弟の友達としかデートをした事が無い。雑誌の知識を借りながらピンクや白のスカートやワンピースを手に取った
洋服を腕に掛けたまま部屋を出てリビングのドアを開けると、その音で談笑していた皆がこちらを向いたので私は高々と服を掲げた
「ねぇねぇ、ちょっと聞いて聞いて。デートする時の服この中でどれが1番良いかな?」
私の一言でまたガヤガヤしていた部屋が静まり返った。1番に目が合ったマイキーが今度は他のお菓子を貪りながら「……右のやつ」と指をさし、それに続く様にパーちゃんが「白のワンピース」と言うとケンちゃんが「んなもん何でもいいじゃん」とつまらなそうに言ってくる。その台詞に腹が立って右手に持っていたスカートをケンちゃんの頭に被せると皆ゲラゲラと笑っていた
部屋に戻り、ベットに服を放り投げるとその横に寝っ転がりながらメイクの雑誌を広げた。直ぐにトントンとノックされたドアを見つめ「入って平気だよ」と言えばドアが開いて隆が部屋に入って来る
「どしたの?もうお腹空いたの?」
「いや、腹は大丈夫」
そう言って寝転ぶ私の横に座った隆は、私の見ている雑誌に目を向けると少しだけ眉を下げた
「……デートするの?男と」
「……うーん。多分」
「多分て事は好きな人じゃねぇの?」
「隆の同い歳の子にデートに誘われたんだけど初めて会う子なんだよね」
「……俺の同い歳?」
「うん。高校の友達の紹介なんだ」
「……そっか」
「仲良くならないとどんな人か分からないからね。まずは会ってくるよ」
ニシシと笑った私に隆は少しだけ呆れた様な顔をすると「それはそうだけど、気をつけろよ」と言われて私は首を傾げた。 雪那さんは危なっかしいからなと続けてから私の髪をサラりと持ち上げてきた隆にそうかな?と言えば小さく溜息を吐いた隆はそのまま部屋を出て行ってしまった
直ぐに土曜日はやってきて、朝から予約しておいた美容院で少し髪を切ってもらって新しいカラーにして貰いご機嫌で家に帰ってきた。美容院の帰りに寄ったデパートで買ったばかりのピンク色の薄いニットのワンピースを着てお気に入りのアクセサリーを付けてみる
姿鏡に写る自分に、我ながら可愛い何て思ってその場でくるくる回っていると、開けっ放しだったドアからこちらを見つめている視線に気付きくるくるするのをやめて皆をジロリと睨みつけた
「……は、恥ずかしいから黙って見てんのやめてくんない?」
「ドラねーめっちゃ可愛いじゃん、これから男でも落としにいくの?」
「かずちゃんが落とすとか言うと、かかと落としにしか聞こえないんだけど……」
「物騒だなぁ。でも本当に似合ってるよ。なぁパーに三ツ谷」
そのかずちゃんの言葉に、アイスを食べながらうんうんと頷いたパーちゃんと無表情で私を見つめる隆。いつもなら1番に「可愛い」と言って頭を撫でてくれるのにその冷めたような瞳に少し寂しくなってしまう。大袈裟に悲しい顔をして「隆冷たい。悲しい」と呟くと隆はギョっとした顔をした
「ドラねーちゃん、三ツ谷は妬いてるんだぜ」
と相変わらずチンピラみたいな格好をしながら顔を覗かせたぺーちゃんが言った一言に、かずちゃんが吹き出して、奥に居たケンちゃんが呆れた様に溜息をついた。
「隆が!そ、そうなの!?」
その言葉に嬉しくなって、隆の腕に飛び付いて「ヤキモチ可愛い」と二の腕にスリスリすると無表情な隆は「ハイハイどうせヤキモチですよ」と目を細めてカタコトで返してくる
「たく、余計な事言ってんじゃねーぞ。ぺーやん」
「俺何か悪ぃ事言ったか?」
「隆は本当に可愛いなぁ。今日はご飯大盛りにしてあげるね」
「……ども」
「姉ちゃん俺も大盛り」
「パーちゃんはいつも特盛でしょ」
翌日、鏡の前に立ちピンクのニットはブリッコし過ぎかな?意識し過ぎとか思われたら嫌だな何て思って、急遽出掛けるギリギリ10分前にマイキーが指を指したベージュのワンピースに着替え直した。昼の12時ピッタリになったのを携帯で確認すると鞄を持ち、忘れ物が無いかチェックしてから家を出て早足で待ち合わせ場所に向かう
映画何て見るの久しぶりだな何て浮かれながら新品の靴でうきうきしながら歩いていると、乾君が指定してくれた噴水公園に着いたのは待ち合わせ時間5分前だった。ベンチか何かに座って待とうかなと座れる場所を探していると優しく肩を叩かれそちらを振り向いた
「初めてまして、乾です。雪那さん」
「あ、こんにちは。初めまして雪那です」
わぁ、大人っぽい。それが第一印象だった
サラサラの髪に色素の薄い様な眉や睫毛。大人びた雰囲気と綺麗な顔立ちにドキドキしてしまう。額にある火傷の痕に内心ドキリとしたけれど何か事情があるんだろうなと思い、とりあえず笑顔を作って頭を下げた
「聞いてた通り可愛い人で嬉しいです」
「いや、えと。どうも……。今日はよろしくお願いします」
「じゃ、行きますか」
はいと言う前に手を取らて、口からマグマが出るんじゃないかって思いながら彼の背中についていく。初対面で手を握れるなんて女の子慣れしてるなって思ったけど、そういえば良く考えて見ると私だけ慣れてないのかな?何て思った
ケンちゃんとはそうゆう話は全くしないけど、皆が話しているのを聞いているとチラホラそんな話が出ていた気がする。中学からの友人何かはみんな彼氏が居て、何だかんだ高校も一緒の所に行っているし色々経験済みだと言っていた
乾君と恋人繋ぎをしている自分の手を見ながら、熱く赤くなった顔を何とか冷ましたくて、フーフーと息を吐いてると笑いを我慢している様な顔で乾君が顔を覗きこんでくる
「……大丈夫?何、やってるの?」
「は、恥ずかしくて。顔が熱いので息を吐いてます」
「……それって効果あるの?」
「わ、分かりません……」
そう言ってから、また阿呆な事をしてしまったと項垂れている私に乾君は声を出して笑っていた
映画館について、ポップコーンとジュースを買ってくれたので「半分払います」と言うといらないよと微笑む彼にいちいち照れてしまう。この時にこんなカッコイイ人が彼氏になってくれたらちょっと嬉しいな何て素直に思った
休日の昼過ぎなので映画館はけっこう混んでいて、人とぶつかりそうになる前に乾君がスっと手を引いてくれたり、荷物を持ってくれたりして私の中で彼への好感度は上がりっぱなしだった
恋愛映画でも見るのかな?と思っていたが、最近公開されたアクション映画だった所も嬉しかった
席についてパンフレットを渡され、感謝を伝えると
これ見たかったから付き合ってくれて本当に嬉しいと言った乾君はパンフレットを捲り真剣な眼差しを送っている
中学生に見えないな、てか可愛い人ってサラっと言える所は凄いなと噴水公園で顔合わせした時を思い出しているとふと気になった。私は彼の顔を写真で知っていたけど乾くんは私の顔は知っていたのだろうか……
肩を叩かれて、雪那さんですよね?と言ってきたから知ってたのかもしれない。まぁ、由美ちゃんが写真でも見せたのかな?何て思っていると映画が始まった
映画が終わり簡単にファーストフード店で軽食を食べながら映画の話題で盛り上がっていると、あっとゆう間に時間は過ぎて時刻は20時を過ぎていた
「そろそろ帰らないと」と私が言えば乾君は送りますと言ってトレーを2人分持ち片付けてくれた。お店から出て直ぐに私の手を取り車道側を歩いてくれる彼に何だか最後まで優しいなと感動してしまった
「乾君、今日は本当に沢山ありがとう」
「別にお礼を言われる事は何もしてないですよ」
「ううん、何か色々ご馳走になったり手を繋いでエスコートしてくれたり。凄く嬉しかったよ」
「……そうですか。雪那さんが良かったらまた遊んで下さいね。俺も楽しかったです」
疲れているのか、表情が少し暗くて心配になったけど、次の瞬間には微笑んでいたので安心した。握られている手が温かいな何て思いながら自宅の傍まで歩いてくると、聞き慣れたバイクの音が近付いてきて内心ソワソワしてしまう。皆みたいにバイクの音で誰が乗ってるかなんて分からないけど、このやかましい音のバイクは多分あのメンバーの誰かだと思った
「……乾君、ここで大丈夫。ありがとうね」
「平気なんですか?」
「もう近くだからさ、暗いから乾君も気をつけて帰って」
少し微笑んで彼を見ると「分かりました」と一言言った乾君は私の瞳を見つめ、繋がれている手をゆっくりと引いた。彼の胸に顔が触れて背中に回って来た手にギュっと1度強く力が込められた
「……迎えの方がいるみたいなので、これくらいで止めておきます。またね雪那さん」
返事をする前に彼の体はスっと離れ、私に背中を向けて遠ざかっていく乾君に「ありがとうね」と声を掛けた。多分赤くなっているだろう自分の熱い頬を触りながら自宅に帰ろうと振り向いた
「…あれ?…隆?」
「……おかえり」
「ただいま」
そこに居たのは無表情の隆で、単車から降りたばかりなのか鼻の頭が少しだけ赤かった
「……隆何でこんな所にいんの?」
「偶然見えたから迎えにきただけ」
「……何か機嫌悪いね」
私のその言葉に「別に」と言った隆はフイっと顔を背けて先に歩いて行ってしまう。「またヤキモチ?可愛い」と言って背中に抱き着くと足は止めてくれず、いつもみたいにあしらう様な返事も無くてちょっぴり悲しくなった。玄関の前に着くと鍵を開けた私の腕を急に掴んできた隆に少し驚いて目を見開いた
「えっ?な、何?」
「……アイツと付き合ったの?」
「ううん。付き合ってとかも言われてない……。」
「へぇ、それなのに触らせるんだ」
「……触らせるっていうか……。急に抱き締められたみたいな感じかな」
「手、繋いでたじゃん」
「ああ。うん。そうだね」
そう言えば眉を寄せた隆は私に少し顔を寄せた
「……何か様子おかしいけど、どしたの?」
不意打ちでグイっと引かれた腕にそのまま体が持っていかれる。ギュッと抱き締められ隆の胸に顔が埋まると隆の香りがして、何だか肩の力が抜けて安心してしまった
「…… 雪那さん、俺さ」
「……隆の匂いがする。……今日1日緊張してたからかな?何か安心しちゃう」
グリグリと顔を胸に押し付けるといつもみたいに背中に手を回した。暫くしても何の反応も無いので顔を上げて上目で彼を見れば何だか凄く不服そうな顔で私を見つめてくる
「何か嫌な事でもあったの?今日何か甘えん坊で可愛い」
今日は添い寝してあげようか?と頭を撫でると、隆は呆れた様にはァと小さく溜息を吐いた。
「……もういいや」
「ねぇねぇご飯食べた?夕飯軽かったからお腹空いちゃったな。一緒に何か食べよ」
「……たまには俺作りますよ」
やった!と言って「隆大好き」と微笑むと、久しぶりに呆れた様な顔で「俺も大好き」と返ってきて機嫌直ったなぁと安心した。「後で添い寝してあげるからね」と微笑んだ私に「ははは」と乾いた様に笑う隆の手を取りリビングに歩き出した
冷蔵庫の中を見て色々考えてる隆によろしくねと言ってお風呂に入り髪を乾かしてリビングに行くと、テーブルに並んでいたのは美味しそうなシチューだった
「洋食久しぶりで嬉しい」
「俺も久しぶりかも。適当に余ってた野菜全部入れた」
「……人のご飯て美味しいんだよね。見たら涎が出てきたわ、頂きます」
「 雪那さん、スプーンどこだっけ?」
「白い引き出しの1番右」
「あった、はいどーぞ」
差し出されたスプーンを手に取り、頂きますと言ってからシチューを口にいれると優しい味がして思わず微笑むと隆も優しい顔で微笑んだ。
玄関のドアが開く音がして、ケンちゃんかな?と首を傾げると美味そうな匂いがすると言ってリビングに入って来たのはやっぱりケンちゃんだった
「あれ?姉貴デートとか言ってなかったか?三ツ谷とデートしてたの?」
「デートは乾君として来たよ、今は隆とデート中」
「ふーん。玄関にアマゾンの箱あったけどあれ姉貴の?」
「届いたか!早かった~」
パタパタとスリッパを鳴らし玄関に向かった雪那さんの背を見送りながら「シチュー食う?」とドラケンに聞けば「食うけどよ……」と言い少し目を細めた
「お前、言わないの?」
「……何を?」
「好きだって事を姉貴に。小学校の時から三ツ谷あいつの事好きじゃん」
「さっき言った」
「はっ?好きだって伝えたのか?姉貴の返事は?」
「私もだーいすき。今日は甘えん坊で可愛いから添い寝してあげるってよ」
フッと遠くを見つめる俺にうわぁみたいな顔をしたドラケンは俺の肩を優しく叩く。ちなみに抱き締めたけど、落ち着くって言って顔をぐりぐり擦り付けてきたと言ったら、あの阿呆のどこに惚れるのか意味がわかんね。と盛大に溜息を吐かれた
アマゾンの箱を持ちながら嬉しそうにスリッパを鳴らしご機嫌でリビングに入ってきた雪那さんを見て俺達は会話を終わらせた。嬉しそうに椅子に箱を置き、バリバリと素手で箱を開けてく彼女の姿を見ながらシチューを口にしていると
「可愛い?似合う?」
と嬉しそうにフリルが付いた下着を自分に当て、ポーズを決めてくる彼女にシチューを吹き出してしまう
「……馬鹿姉貴、下着見せてくんな」
「新品だから良いじゃん」
「「そうゆう問題じゃねぇよ」」
「2人して合わせてこないでよ、ビックリしたなぁ」
「雪那さん、その下着さっきの男の為に買ったの?」
「三ツ谷、目が座ってる」
「ううん。雑誌に男の子とデートする時は可愛い下着で行きましょうって書いてあったから買っただけ」
「姉貴さ、子供の作り方とか知ってる?」
「……うーん。まぁ少しだけ」
「少しって何!?」
内緒と言って食事に戻った雪那さんを見ながら俺は盛大に溜息をつく
「んで?デートはどんな感じだったの?姉貴の事だからドジしたりしたんじゃねーの?」
「それがさ、転びそうになる前に手を引いてくれたり。沢山ご馳走してくれたり、人混みではさずっと手を握っててくれて。何か王子様みたいだった」
「……へぇ。んで?付き合うの?」
「……いや、何も言われなかったからどうなんだろ。まだ分かんないよ」
「王子様ねぇ。あいつはそんな柄じゃねーと思うけどな」
雪那さんを抱き締めるあの男を睨みつけた時、あいつはビビリもせずに真っ直ぐに俺を睨み返してきた。
「へぇ、隆から見るとそうなんだ」
「三ツ谷相手の顔見たんだ、どんな奴だった?」
「……何か見た事ある奴だった。どこで見たかは分かんねーけど」
「見た事ある奴ねぇ。」
「何か……嫌な予感がするな」
そう言ったドラケンはシチュー食うぞと言ってキッチンに向かっていった。隆のシチュー最高だよと小さな口でシチューを頬張る彼女を見て、今日は溜息しかついてねーなと思った
「龍宮寺雪那です。よろしくね弟ちゃん」
そう言って柔らかく笑った姉ちゃんに、俺は何だか複雑な気持ちで彼女の存在を良くは思えず、無表情でそっけなくどうも。としか言わなかった。「片親が違うから半分しか血は繋がってないんだ」と言って手を握ってくる自称姉貴の手を握り返さずにいると、そんな俺を察したのか「困った事があったらいつでも言ってね」と寂しそうに笑った姉ちゃんの顔をいまだに思い出す
あれからあっとゆう間に4年が経った。ヘルスに住む俺に毎月の様に一緒に暮らそうと言ってきたのはもう昔の事。一緒の家に住むのは諦めたようで最近は煩く不良をやめろとも言わなくなってきた。
中学の2年から家事をこなしながら学校に通って1人で暮らす姉貴に生活の大変さを学んだ俺は絶対に口には出さないが彼女を尊敬までする様になったが、ちょいちょい煩いのとすげぇ阿呆な所はやっぱり初めて会った時からずっと変わらない
「ケンちゃん、最近また喧嘩した?」
「……してねーよ。何だよそれ」
うちの学校の子がケンちゃんが高校生みたいな大きな男の子をボコボコにしてたの見たって。そう言って心配そうに目を向けるとケンちゃんは「知らねー」とそっけなく言いながら見ているバイク雑誌に目を戻した。そんな態度に頭に来て見ていたファッション雑誌を丸めて頭をポカリと叩いてやると「いて」と小さい声で呟いてから何事も無かった様に無視をされる
「……ぐぬぬぬぬ」
「……姉さん、すみません。麦茶もらっていいですか?」
「いいよ、待っててね」
毎回毎回ちょっと照れたように話しかけてくる可愛いちーちゃんをケンちゃんもちょっとは見習って欲しい。キッチンに向かい冷蔵庫から麦茶と棚からグラスを3つ取ると、昨日焼いておいたクッキーをお皿に並べてトレーに置いた。両手でトレーを持って部屋に戻ると「すみません」と言って立ち上がり私からトレーを受け取ったちーちゃんはグラスに麦茶を注いでくれる
「ちーちゃん、クッキーも食べてね」
「あ、いつもありがとうございます」
「お礼はいらないから後で抱っこしていい?」
「……馬鹿姉貴やめろや」
「ケンちゃんは黙ってて。夕飯作る前にヤル気出さないといけないからちーちゃん抱き締めて頑張るの」
「阿呆か」
両手でちーちゃんの頭を抱き締めて頬にすりすりしていると、段々と耳まで赤くなるちーちゃんが可愛くてニヤニヤしてしまう。その時急に「スパン」と大きな音がして頭に走る衝撃に「ぎゃあ」と声から自然に出た。「やめんか馬鹿」と言いながら丸めた雑誌を振りかざしてくるケンちゃんに頬を膨らませた
私とケンちゃんを捨てた親からは今まで1度も仕送りをして貰えた事は無く、私を拾ってくれた弁護士の養父と養母から2週間に1回は顔を見せるとの約束で仕送りをして貰っている。最近は家事もこなせる様になってきたし、最初は心配していた義両親から生活の面で信頼される様にもなり何だかやっと当初から立てていた目標を達成出来た気がする
高校からはバイトも出来るので、お金を貯めつつ恋をしたり普通に平和に暮らせたらいいなと思っていた
「ちーちゃんはさっきから何読んでるの?」
「ペット特集ですよ」
「ふふ、動物もちーちゃんも両方可愛い。ちーちゃん今日は夕飯食べてく?」
「勿論食べます。姉さんのご飯美味しいので」
ニシシと歯を見せて笑うちーちゃんの笑顔を見たらヤル気に溢れてきて「よし」と言ってその場に立ち上がると雑誌から目を離さずに「姉貴俺も飯ー。大盛り」
と言ってくるケンちゃんをジトっと睨み付けた
最近は口をひらけば姉貴飯しか言わないケンちゃん。でも、小学校の時はまともに話すらしてもらえなかった。初めて会ってからゆっくりと色んな話をして、ご飯を一緒に食べて色んな事があってここまで来た。相変わらず恐ろしい髪型をしているけんちゃんを見て溜息をつくと、そんな私を見て「大盛りだからな」と言ったけんちゃんについ笑ってしまった
朝起きてシャワーを浴びて支度をすると昨日の残り物を詰めてお弁当を作り自転車に乗り込んだ
共学で公立、費用が1番安くてなるべく安全な高校を選んだ。養父にはお金は気にしなくて良いんだよと毎回言われるが私的に「はいそうします」とは簡単には言えなかった。頼ってない訳じゃないし、凄く有り難いからこそ此処を選んで自分でも頑張りたいと言えば、養父は喜んだ様な驚いた様な顔をした
高校までは徒歩15分程度の道のりを自転車で通う
どこの学校にも何人かは不良みたいな子がいるけれど私は昔からけんちゃんが居たからか絶対に絡まれないし、クラスの男の子にも目すら合わせてもらえなかった。絡まれないのはありがたいけれど、いまだにこの歳で仲良い男性は弟の友達のみは少し悲しい気がする
授業が終わりクラスの女の子達と談笑しながら近くのカフェでお茶をしていると雪那ちゃん見てみてと隣に座ってきてスマホの写真を見せてきたのは、まだ中学から友人になったばかりの由美ちゃんだった。写真を覗き込むと綺麗な顔の男の子が写っていて、カッコイイ子だね彼氏?と私が首を傾げると「 実は雪那ちゃんに紹介したいの」と微笑まれて私は驚愕した
「……何でそんなに驚くの?」
「…………男の子紹介された事無くて……。どちらかと言うと絶対紹介出来ないって今まで言われてきたからさ」
「…そ、…そうなんだ」
はははと乾いた笑みを浮かべた私に由美ちゃんも少しだけ困った様に笑うと「物静かな子だけど根は優しい子だから会ってみなよ」と言って微笑んだ
「……てか、この子うちの学校??」
「ううん。隣だよ。確か1個下かな」
「年下?……でも何で私なの??」
「……この子昔近所に住んでてさ。最近バッタリ会ってね。色々長話してたらさ彼女欲しいなって言ってて、タイプ聞いたら雪那ちゃんがバッチリだったからさ」
まぁ、別に深く考えずに1回会ってみなよと笑った由美ちゃんに私はそうだねと微笑んだ
家に帰ると、さっそく教えてもらった彼の連絡先に由美ちゃんの友達の雪那ですとドキドキしながらメッセージを送った。ソワソワしながらずっと携帯を眺めていると既読になったメッセージを見て返事返ってくるかな何てちょっと不安になる。それから1分も経たずに返ってきた返信からは何だか丁寧で誠実さを感じて不良に囲まれて育ってきた私からすると新鮮だった
初めまして、乾といいます。良かったら仲良くして下さい。雪那さんて呼んで良いですか?
はい、大丈夫です。こちらこそ仲良くして下さい
そんなやりとりをしていると自然に顔がニヤニヤしている事に気付き自分でちょっと笑ってしまう。ご機嫌のまま携帯を弄っていると玄関が開く音がして、ガヤガヤと沢山の声が聞こえバタバタと廊下を歩いてくる足音が近付いてきた
今はそちらには目を向けずに乾君とのLINEを楽しんでいるとリビングからひょっこり顔を出したのは久しぶりに会うタカちゃんだった
「 雪那さん、お邪魔してます」
「タカちゃん久しぶりだね」
「久しぶりって言っても2週間くらいだけど。あ、雪那さん、もう中3なんでタカちゃんじゃなくて隆って呼んでよ」
ニッと歯を見せた彼が可愛くて「隆可愛い」と言いながらソファから立ち上がり、彼の手を握ってブンブン降ると少し困った様な顔で笑う隆はまた顔付きが少しだけ大人になったなと思った。何か飲む?と言えば雪那さんの分買ってきましたと紅茶を渡されて、それ好きでしたよねと言って笑う隆の腕にスリスリするとちょっと照れた顔で頬をかいた
「隆は本当にけんちゃんより可愛い。そして優しい」
「……可愛いよりカッコイイのが嬉しいけど、雪那さんは可愛い子好きだもんな」
「だーいすき」
私がそう笑顔で言うと隆も優しく微笑んでくれていた
乾君とのLINEはゆっくりだけど夜まで続いていた。
合間にチャーハンを作って皆に渡し、洗濯を回して乾燥機をしている間もお風呂の時もずっとLINEをしていた。風呂上がりにリビングで誰かが買って来たであろうアイスに齧り付いていると、ぞろぞろと全員がリビングに入ってきて冷凍庫からアイスを取っていくのが見えた。俺のアイスがねーじゃんと騒ぐぱーちゃんの声に知らん顔をする事にした
「……姉貴さっきから何でニヤニヤしてんの?」
そのけんちゃんの一言でビクリとすると、パーちゃんが「姉ちゃん男?」と真顔で言って来たので違うと言おうと思ったが私は嘘が付けないし、多分ついても直ぐにバレるからちょっと照れたけどこくこくと頷いた。「後それ俺のアイス」と言われたのでこちらにもこくこくと頷くとパーちゃんはこの世の終わりみたいな顔をしていた
マイキーだけがアイスを貪りながら「姉ちゃんも女になるんだな」と真顔で言うと、シーンと部屋が静まり返り何だかその空気に耐えられなくなった
「……私部屋でLINEするからごゆっくり」
部屋に戻りベッドにダイブしてLINEを開き直すと、乾君から良かったら今週の日曜日に映画に行きませんか?と来ていて私の頬は少し熱くなった。いても経っても居られなくなってクローゼットを開いてデートに着ていけそうな可愛らしい服を漁るが、今まで生きてきて弟の友達としかデートをした事が無い。雑誌の知識を借りながらピンクや白のスカートやワンピースを手に取った
洋服を腕に掛けたまま部屋を出てリビングのドアを開けると、その音で談笑していた皆がこちらを向いたので私は高々と服を掲げた
「ねぇねぇ、ちょっと聞いて聞いて。デートする時の服この中でどれが1番良いかな?」
私の一言でまたガヤガヤしていた部屋が静まり返った。1番に目が合ったマイキーが今度は他のお菓子を貪りながら「……右のやつ」と指をさし、それに続く様にパーちゃんが「白のワンピース」と言うとケンちゃんが「んなもん何でもいいじゃん」とつまらなそうに言ってくる。その台詞に腹が立って右手に持っていたスカートをケンちゃんの頭に被せると皆ゲラゲラと笑っていた
部屋に戻り、ベットに服を放り投げるとその横に寝っ転がりながらメイクの雑誌を広げた。直ぐにトントンとノックされたドアを見つめ「入って平気だよ」と言えばドアが開いて隆が部屋に入って来る
「どしたの?もうお腹空いたの?」
「いや、腹は大丈夫」
そう言って寝転ぶ私の横に座った隆は、私の見ている雑誌に目を向けると少しだけ眉を下げた
「……デートするの?男と」
「……うーん。多分」
「多分て事は好きな人じゃねぇの?」
「隆の同い歳の子にデートに誘われたんだけど初めて会う子なんだよね」
「……俺の同い歳?」
「うん。高校の友達の紹介なんだ」
「……そっか」
「仲良くならないとどんな人か分からないからね。まずは会ってくるよ」
ニシシと笑った私に隆は少しだけ呆れた様な顔をすると「それはそうだけど、気をつけろよ」と言われて私は首を傾げた。 雪那さんは危なっかしいからなと続けてから私の髪をサラりと持ち上げてきた隆にそうかな?と言えば小さく溜息を吐いた隆はそのまま部屋を出て行ってしまった
直ぐに土曜日はやってきて、朝から予約しておいた美容院で少し髪を切ってもらって新しいカラーにして貰いご機嫌で家に帰ってきた。美容院の帰りに寄ったデパートで買ったばかりのピンク色の薄いニットのワンピースを着てお気に入りのアクセサリーを付けてみる
姿鏡に写る自分に、我ながら可愛い何て思ってその場でくるくる回っていると、開けっ放しだったドアからこちらを見つめている視線に気付きくるくるするのをやめて皆をジロリと睨みつけた
「……は、恥ずかしいから黙って見てんのやめてくんない?」
「ドラねーめっちゃ可愛いじゃん、これから男でも落としにいくの?」
「かずちゃんが落とすとか言うと、かかと落としにしか聞こえないんだけど……」
「物騒だなぁ。でも本当に似合ってるよ。なぁパーに三ツ谷」
そのかずちゃんの言葉に、アイスを食べながらうんうんと頷いたパーちゃんと無表情で私を見つめる隆。いつもなら1番に「可愛い」と言って頭を撫でてくれるのにその冷めたような瞳に少し寂しくなってしまう。大袈裟に悲しい顔をして「隆冷たい。悲しい」と呟くと隆はギョっとした顔をした
「ドラねーちゃん、三ツ谷は妬いてるんだぜ」
と相変わらずチンピラみたいな格好をしながら顔を覗かせたぺーちゃんが言った一言に、かずちゃんが吹き出して、奥に居たケンちゃんが呆れた様に溜息をついた。
「隆が!そ、そうなの!?」
その言葉に嬉しくなって、隆の腕に飛び付いて「ヤキモチ可愛い」と二の腕にスリスリすると無表情な隆は「ハイハイどうせヤキモチですよ」と目を細めてカタコトで返してくる
「たく、余計な事言ってんじゃねーぞ。ぺーやん」
「俺何か悪ぃ事言ったか?」
「隆は本当に可愛いなぁ。今日はご飯大盛りにしてあげるね」
「……ども」
「姉ちゃん俺も大盛り」
「パーちゃんはいつも特盛でしょ」
翌日、鏡の前に立ちピンクのニットはブリッコし過ぎかな?意識し過ぎとか思われたら嫌だな何て思って、急遽出掛けるギリギリ10分前にマイキーが指を指したベージュのワンピースに着替え直した。昼の12時ピッタリになったのを携帯で確認すると鞄を持ち、忘れ物が無いかチェックしてから家を出て早足で待ち合わせ場所に向かう
映画何て見るの久しぶりだな何て浮かれながら新品の靴でうきうきしながら歩いていると、乾君が指定してくれた噴水公園に着いたのは待ち合わせ時間5分前だった。ベンチか何かに座って待とうかなと座れる場所を探していると優しく肩を叩かれそちらを振り向いた
「初めてまして、乾です。雪那さん」
「あ、こんにちは。初めまして雪那です」
わぁ、大人っぽい。それが第一印象だった
サラサラの髪に色素の薄い様な眉や睫毛。大人びた雰囲気と綺麗な顔立ちにドキドキしてしまう。額にある火傷の痕に内心ドキリとしたけれど何か事情があるんだろうなと思い、とりあえず笑顔を作って頭を下げた
「聞いてた通り可愛い人で嬉しいです」
「いや、えと。どうも……。今日はよろしくお願いします」
「じゃ、行きますか」
はいと言う前に手を取らて、口からマグマが出るんじゃないかって思いながら彼の背中についていく。初対面で手を握れるなんて女の子慣れしてるなって思ったけど、そういえば良く考えて見ると私だけ慣れてないのかな?何て思った
ケンちゃんとはそうゆう話は全くしないけど、皆が話しているのを聞いているとチラホラそんな話が出ていた気がする。中学からの友人何かはみんな彼氏が居て、何だかんだ高校も一緒の所に行っているし色々経験済みだと言っていた
乾君と恋人繋ぎをしている自分の手を見ながら、熱く赤くなった顔を何とか冷ましたくて、フーフーと息を吐いてると笑いを我慢している様な顔で乾君が顔を覗きこんでくる
「……大丈夫?何、やってるの?」
「は、恥ずかしくて。顔が熱いので息を吐いてます」
「……それって効果あるの?」
「わ、分かりません……」
そう言ってから、また阿呆な事をしてしまったと項垂れている私に乾君は声を出して笑っていた
映画館について、ポップコーンとジュースを買ってくれたので「半分払います」と言うといらないよと微笑む彼にいちいち照れてしまう。この時にこんなカッコイイ人が彼氏になってくれたらちょっと嬉しいな何て素直に思った
休日の昼過ぎなので映画館はけっこう混んでいて、人とぶつかりそうになる前に乾君がスっと手を引いてくれたり、荷物を持ってくれたりして私の中で彼への好感度は上がりっぱなしだった
恋愛映画でも見るのかな?と思っていたが、最近公開されたアクション映画だった所も嬉しかった
席についてパンフレットを渡され、感謝を伝えると
これ見たかったから付き合ってくれて本当に嬉しいと言った乾君はパンフレットを捲り真剣な眼差しを送っている
中学生に見えないな、てか可愛い人ってサラっと言える所は凄いなと噴水公園で顔合わせした時を思い出しているとふと気になった。私は彼の顔を写真で知っていたけど乾くんは私の顔は知っていたのだろうか……
肩を叩かれて、雪那さんですよね?と言ってきたから知ってたのかもしれない。まぁ、由美ちゃんが写真でも見せたのかな?何て思っていると映画が始まった
映画が終わり簡単にファーストフード店で軽食を食べながら映画の話題で盛り上がっていると、あっとゆう間に時間は過ぎて時刻は20時を過ぎていた
「そろそろ帰らないと」と私が言えば乾君は送りますと言ってトレーを2人分持ち片付けてくれた。お店から出て直ぐに私の手を取り車道側を歩いてくれる彼に何だか最後まで優しいなと感動してしまった
「乾君、今日は本当に沢山ありがとう」
「別にお礼を言われる事は何もしてないですよ」
「ううん、何か色々ご馳走になったり手を繋いでエスコートしてくれたり。凄く嬉しかったよ」
「……そうですか。雪那さんが良かったらまた遊んで下さいね。俺も楽しかったです」
疲れているのか、表情が少し暗くて心配になったけど、次の瞬間には微笑んでいたので安心した。握られている手が温かいな何て思いながら自宅の傍まで歩いてくると、聞き慣れたバイクの音が近付いてきて内心ソワソワしてしまう。皆みたいにバイクの音で誰が乗ってるかなんて分からないけど、このやかましい音のバイクは多分あのメンバーの誰かだと思った
「……乾君、ここで大丈夫。ありがとうね」
「平気なんですか?」
「もう近くだからさ、暗いから乾君も気をつけて帰って」
少し微笑んで彼を見ると「分かりました」と一言言った乾君は私の瞳を見つめ、繋がれている手をゆっくりと引いた。彼の胸に顔が触れて背中に回って来た手にギュっと1度強く力が込められた
「……迎えの方がいるみたいなので、これくらいで止めておきます。またね雪那さん」
返事をする前に彼の体はスっと離れ、私に背中を向けて遠ざかっていく乾君に「ありがとうね」と声を掛けた。多分赤くなっているだろう自分の熱い頬を触りながら自宅に帰ろうと振り向いた
「…あれ?…隆?」
「……おかえり」
「ただいま」
そこに居たのは無表情の隆で、単車から降りたばかりなのか鼻の頭が少しだけ赤かった
「……隆何でこんな所にいんの?」
「偶然見えたから迎えにきただけ」
「……何か機嫌悪いね」
私のその言葉に「別に」と言った隆はフイっと顔を背けて先に歩いて行ってしまう。「またヤキモチ?可愛い」と言って背中に抱き着くと足は止めてくれず、いつもみたいにあしらう様な返事も無くてちょっぴり悲しくなった。玄関の前に着くと鍵を開けた私の腕を急に掴んできた隆に少し驚いて目を見開いた
「えっ?な、何?」
「……アイツと付き合ったの?」
「ううん。付き合ってとかも言われてない……。」
「へぇ、それなのに触らせるんだ」
「……触らせるっていうか……。急に抱き締められたみたいな感じかな」
「手、繋いでたじゃん」
「ああ。うん。そうだね」
そう言えば眉を寄せた隆は私に少し顔を寄せた
「……何か様子おかしいけど、どしたの?」
不意打ちでグイっと引かれた腕にそのまま体が持っていかれる。ギュッと抱き締められ隆の胸に顔が埋まると隆の香りがして、何だか肩の力が抜けて安心してしまった
「…… 雪那さん、俺さ」
「……隆の匂いがする。……今日1日緊張してたからかな?何か安心しちゃう」
グリグリと顔を胸に押し付けるといつもみたいに背中に手を回した。暫くしても何の反応も無いので顔を上げて上目で彼を見れば何だか凄く不服そうな顔で私を見つめてくる
「何か嫌な事でもあったの?今日何か甘えん坊で可愛い」
今日は添い寝してあげようか?と頭を撫でると、隆は呆れた様にはァと小さく溜息を吐いた。
「……もういいや」
「ねぇねぇご飯食べた?夕飯軽かったからお腹空いちゃったな。一緒に何か食べよ」
「……たまには俺作りますよ」
やった!と言って「隆大好き」と微笑むと、久しぶりに呆れた様な顔で「俺も大好き」と返ってきて機嫌直ったなぁと安心した。「後で添い寝してあげるからね」と微笑んだ私に「ははは」と乾いた様に笑う隆の手を取りリビングに歩き出した
冷蔵庫の中を見て色々考えてる隆によろしくねと言ってお風呂に入り髪を乾かしてリビングに行くと、テーブルに並んでいたのは美味しそうなシチューだった
「洋食久しぶりで嬉しい」
「俺も久しぶりかも。適当に余ってた野菜全部入れた」
「……人のご飯て美味しいんだよね。見たら涎が出てきたわ、頂きます」
「 雪那さん、スプーンどこだっけ?」
「白い引き出しの1番右」
「あった、はいどーぞ」
差し出されたスプーンを手に取り、頂きますと言ってからシチューを口にいれると優しい味がして思わず微笑むと隆も優しい顔で微笑んだ。
玄関のドアが開く音がして、ケンちゃんかな?と首を傾げると美味そうな匂いがすると言ってリビングに入って来たのはやっぱりケンちゃんだった
「あれ?姉貴デートとか言ってなかったか?三ツ谷とデートしてたの?」
「デートは乾君として来たよ、今は隆とデート中」
「ふーん。玄関にアマゾンの箱あったけどあれ姉貴の?」
「届いたか!早かった~」
パタパタとスリッパを鳴らし玄関に向かった雪那さんの背を見送りながら「シチュー食う?」とドラケンに聞けば「食うけどよ……」と言い少し目を細めた
「お前、言わないの?」
「……何を?」
「好きだって事を姉貴に。小学校の時から三ツ谷あいつの事好きじゃん」
「さっき言った」
「はっ?好きだって伝えたのか?姉貴の返事は?」
「私もだーいすき。今日は甘えん坊で可愛いから添い寝してあげるってよ」
フッと遠くを見つめる俺にうわぁみたいな顔をしたドラケンは俺の肩を優しく叩く。ちなみに抱き締めたけど、落ち着くって言って顔をぐりぐり擦り付けてきたと言ったら、あの阿呆のどこに惚れるのか意味がわかんね。と盛大に溜息を吐かれた
アマゾンの箱を持ちながら嬉しそうにスリッパを鳴らしご機嫌でリビングに入ってきた雪那さんを見て俺達は会話を終わらせた。嬉しそうに椅子に箱を置き、バリバリと素手で箱を開けてく彼女の姿を見ながらシチューを口にしていると
「可愛い?似合う?」
と嬉しそうにフリルが付いた下着を自分に当て、ポーズを決めてくる彼女にシチューを吹き出してしまう
「……馬鹿姉貴、下着見せてくんな」
「新品だから良いじゃん」
「「そうゆう問題じゃねぇよ」」
「2人して合わせてこないでよ、ビックリしたなぁ」
「雪那さん、その下着さっきの男の為に買ったの?」
「三ツ谷、目が座ってる」
「ううん。雑誌に男の子とデートする時は可愛い下着で行きましょうって書いてあったから買っただけ」
「姉貴さ、子供の作り方とか知ってる?」
「……うーん。まぁ少しだけ」
「少しって何!?」
内緒と言って食事に戻った雪那さんを見ながら俺は盛大に溜息をつく
「んで?デートはどんな感じだったの?姉貴の事だからドジしたりしたんじゃねーの?」
「それがさ、転びそうになる前に手を引いてくれたり。沢山ご馳走してくれたり、人混みではさずっと手を握っててくれて。何か王子様みたいだった」
「……へぇ。んで?付き合うの?」
「……いや、何も言われなかったからどうなんだろ。まだ分かんないよ」
「王子様ねぇ。あいつはそんな柄じゃねーと思うけどな」
雪那さんを抱き締めるあの男を睨みつけた時、あいつはビビリもせずに真っ直ぐに俺を睨み返してきた。
「へぇ、隆から見るとそうなんだ」
「三ツ谷相手の顔見たんだ、どんな奴だった?」
「……何か見た事ある奴だった。どこで見たかは分かんねーけど」
「見た事ある奴ねぇ。」
「何か……嫌な予感がするな」
そう言ったドラケンはシチュー食うぞと言ってキッチンに向かっていった。隆のシチュー最高だよと小さな口でシチューを頬張る彼女を見て、今日は溜息しかついてねーなと思った
