歩くような速さで
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自宅に帰りベッドに鞄を放り出してコンビニに行ける程度のジャージに着替えて髪をまとめた。部屋の作業台にはやりかけの作品が散らばっていてそれを見ても続きをする気にはなれず、キッチンに向かいエプロンを巻いて冷蔵庫からカルボナーラの材料を取り出し鍋にお湯を沸かしていると何となく無音が寂しくなりテレビを付けた
新宿での殺人事件や高速での車事故のニュースが流れていてふと、何故かついこの間の未来を思い出した。今はこんな風に穏やかに過ごしているし隆も私を幸せにするって言ってくれているけれど、東京卍會がこの先どんなきっかけで反社になるかなんて分からない。もし、マイキーやドラちゃんが何かしらの理由があって、その道に行くって決めた時に「三ツ谷はついてきてくれるよな」何て言われたらあれに繋がるのかなと思った
彼は私と穏やかに結婚して暮らすよりもそちらを取ってしまうんだろうか。「大丈夫だから」と言ってくれたマイキーの笑顔を信じたいけれど、薬中の隆の姿が過ぎると何だか心配になってしまう。そんな事を考えながら鍋にパスタを放り込み、グツグツと沸騰する鍋の中で踊るパスタを見ながらボンヤリしているとインターホンが鳴り顔を上げた。来客の予定は1人しかいないけど、隆ならチャイムは鳴らさない筈だし誰だろうと玄関からスコープを覗くと、久しぶりに見た顔に思わず自然と笑みが溢れてしまったが支えられている隆の様子を見てハッとした
鍵を掛け忘れていた扉を急いで開けると、柄が悪そうな服を来た一虎君とジャージ姿の圭ちゃんは2人共傷だらけで気まずそうに私の目を見て罰が悪そうに少しだけ微笑んだ
「悪ぃ、雪那ちゃん。」
「どうしたの?何でそんなに怪我してんの?」
「とりあえず三ツ谷寝かして良い?」
「……病院行かなくて大丈夫?」
「ちょっと気失ってるだけだからさ」
はははと少し気まずそうに笑った一虎君に私が首を傾げていると、圭ちゃんは隆の事を背に乗せてから靴を脱がせ玄関に上がった。「どこに置けばいい?」と辺りを見渡しながら聞いてくる圭ちゃんに、「リビングのソファに寝かせて。ちょっと手当もするから」と言いながら私は急ぎ足でリビング脇の救急セットが入っている棚に向かった
ソファに横になって眠っている隆の鼻血を吹いてから額の傷を消毒していると、ラグに座ってこちらを見つめている二人の顔も血が滲んでいる。「3人で喧嘩したの?」と少しだけ眉を潜めた顔をした私に「まぁ」と言って頬をかく圭ちゃん。「 雪那ちゃん何か飲んで良い?」とにっこり微笑んで来る一虎君に頷くと彼は冷蔵庫に向かっていった
「……喧嘩は分かるんだけど……何で失神したの?」
「……てかさ、三ツ谷何かあった?」
「ん?何で?」
「今日様子がおかしくてさ。会った時から何か荒れてる感じだったんだよ。喧嘩の時もいつもなら絶対突っ込んで行かないんだけどよ」
思い当たる節が無いといえば無いけれど、あると言えばあるのだろうか。私の身に起きた事、彼に話した事がストレスになっていたのかと少しだけ思った。黙りとしている私に少しだけ気まずそうな顔をしながら私を見る圭ちゃんに「……隆に負担かけてたかも」と呟くと「喧嘩でもしたのか?」と気遣う様に優しく微笑んでくれる
「……喧嘩は無いかな」
「 雪那を安心させたいけど、東京卍會に居たいって今日ポロッと三ツ谷が言ってたからよ。雪那ちゃんに東京卍會やめろって言われたのかって聞いたら違うって言っててさ」
「……今は……別にやめろと思ってないよ」
「ん?……どうゆう事だ?」
「…………」
「ま、二人で話す事だよな。」
「ごめんね圭ちゃん。一虎君も……」
「 雪那ちゃん、謝んなよ。別に雪那ちゃん悪い事してねぇんだから」
「……私があんまりにも心配して怖くて隆にベラベラ話したから良く無かったのかもしれない。今は反省してる」
「……何の事か分かんねぇけど、三ツ谷だけには話して良いんじゃね?」
「だな」
「負担になる」と言った私に、2人は優しく微笑んで好きな女の負担くらい背負えなかったら男じゃねぇと言って笑っていた。2人共かっこいいなぁと私が呟くと「きっと三ツ谷だってそう思ってる」と言ってくれたけど、何だか素直にうんとは頷け無かった。隆は昔からお母さんの負担を減らそうと頑張っていたし、妹達のお世話も愚痴を零さずにしっかりとやっていた。
前に付き合った時は子供だった自分は彼の負担が全く分からずにいつも甘えていたなと今思う。だから今回は彼の負担になるんじゃなくて少しだけでも軽減して貰える様に頑張りたかった
「……2人共もうすぐ出来るからカルボナーラ食べていきなよ。隆運んで来たから疲れたでしょ?」
にししと歯を出して笑った私にガッツポーズをした2人は「腹減ってたんだ」と嬉しそうに笑う。そんな2人が可愛くて隆の目の横の傷に適当にテープをペチリと貼って、「ちょっと待っててね」と言ってキッチンに向かった。火を止めるのを忘れていた鍋を見てガックリしながら1度火を止めた。中のパスタを箸で救い食べてみれば少し柔らかい位で特に問題は無かったのでそのままパスタをザルに取り出してからソース作りに取り掛かっていると、「おっ、起きたか」と圭ちゃんの声が聞こえてくる
「隆起きた?」
「 雪那ちゃん、起きたよ」
「ごめん今手が離せないからどっちか隆にお水飲ませてあげてくれる?」
目を擦りながら起き上がった隆の姿が見えて、「自分で飲める」と言った隆は自分の手当てされている顔を擦りながらこちらに向かって来ると私を罰が悪そうな顔で見て少し頭を下げた
「……悪ぃ。お前が手当てしてくれたんだな」
「んもぉ。……心配したんだからね」
何だか本当はもっと怒りたかったけれど、彼の顔は本当に悪いって顔をしていたのと、もしかしたら私が負担をかけていたのかもって思ったら何だかそれ以上何も言えなかった。冷蔵庫から麦茶を取り出した隆にあの二人にも次いであげてと言えば軽く頷いた。2人がテレビを見ているのを確認した隆は私の肩に軽く頭を乗せて「本当にごめんな」と小さな声で呟いた
それから4人でカルボナーラとサラダをつつきながら話をしていると、一虎君は聞いていたよりも明るくて元気な子だったし圭ちゃんも昔よりも随分と大人になっていて話していて安心してしまった。私が居るから少し気を使ってくれているのか、隆の話ばかりしてくれる一虎君が微笑ましい。そんな一虎君をお兄ちゃんみたいに見守っている圭ちゃんにも何だかジンわりと心にくるものがあった
「三ツ谷は全然嫁の話してくれねぇからどんな子かと思ってたんだけど、思ってたよりもずっと普通の子だったな」
「一虎君はどんな子想像してたの?」
「うーん。女番長みたいな子かなぁ。三ツ谷が振り回されてたら面白ぇなって」
ぷっと吹き出した私と圭ちゃんと違い、「そんな彼女怖ぇよ」と言って呆れた様な顔をした隆はふと、思い付いた様な顔をすると「一虎のがそうゆう子合ってるんじゃね?」と首を傾げた
「……喧嘩が凄まじい事になりそうだけどね。一虎君には5つくらい上の癒し系お姉ちゃんタイプのが良い気がする」
「……俺もそう思う」
「年上いいなぁ。誰か紹介してくれねぇかな」
「ふふふ。一虎君てやんちゃなイメージがあるけど素直で可愛いらしいんだね」
「一虎が可愛く見えるなら大したもんだよ。なぁ三ツ谷」
「全くだな。まぁ……うちの嫁はちょっと同年代より大人びてるからな」
「へぇ。三ツ谷って惚気たりするんだなぁ」
関心したとゆうよりも、本当に珍しい物を見たって顔をした一虎君に「惚気じゃねぇよ」と言った隆はフッと薄く笑った。大人びてると言われて思い出したけれど、自分はそういえば25歳だったんだなってこの時思ってあれ?ってなった。すっかり年齢の事何て忘れてそのまんまで生きていた気がする
体はその時その時その体だから当たり前なのかもしれないけれど、最近何だか飛ばされる事にも慣れてきてしまっているなと思った。反社だった隆が言っていた言葉、「……このお前は俺を置いていく」それを思い出して何だか悲しくなった。私が飛ばされた後はどんな私がそこに存在しているのだろう……。あの隆は何回もまた置いていかれた。居なくなったと思ったのかなって思うと何だか凄く寂しい思いをさせたんだなって思う
「 雪那?」
「……ん?何?」
「珈琲いれてもいいか?お前らも飲む?」
「俺達はもう行くよ。ごちそーさん」
「2人共飲んでけばいいのに」
「また来るよ、ありがとうな雪那ちゃん」
ニッと笑った2人に「また来てね、ありがとう」と言って少し微笑むと席を立った。2人がエレベーターに消えて行く所まで背を見送ると、辺りはもうすっかり暗くて真ん丸の月が優しく辺りを照らしていた
「綺麗だねぇ。今日は満月だよ」
そう言った言葉に返事は無くて、代わりに優しく後ろから抱きしめられる。お腹に回って来た温かい両手を握ると隆の頬がゆっくり私の頬に触れた
「……マジで今日はごめんな」
「……私もごめん。負担かけてたね」
「何の事だ?」
「私が色々怖い思いしてさ……全部話すからストレスになっちゃったかなって」
「いや、ストレスにはなってねぇよ。ただ…俺はこの先ちゃんとした未来を選べるかなって心配になっただけだ」
「…………」
「なぁ、ずっとお前が隣に居てくれたら俺は大丈夫な気がするんだ」
「私が居ても……駄目な未来はあった」
「……分かってる。でも、聞いてちゃんと高校からデザイナーになるってもう1度ちゃんと考えた。東京卍會は中学までだって、……決めたから」
「……皆がそうなってくれたら良いよね」
「俺が頑張るからさ。ドラケンもマイキーもきっと分かってくれる」
「……ごめんね」
俯いた私の頭を優しく抱き締めてくれた隆は「俺とお前の未来なんだから俺も頑張らないとな」と言って頭に口付けしてくれる。好きになった人がこの人で良かったと思うと何だか目頭が熱くなってきて彼の胸に飛び付いてぎゅっと力強く抱き締めた
「ねぇ、隆」
「ん?」
グレーの綺麗な髪を撫でると、気持ちが良さそうに目を閉じて撫でている手を優しく取り口付けしてくれる
「……少し先の未来で私達1度別れててさ」
「……何で?」
「隆が言ってたのは、お前には俺しか居ない、お前を守るのは俺だけだって決め付けて、その考え方がお前を追い詰めたって言ってた」
「…………」
「……でも、それ聞いて思った。そこまで私を思ってくれる人何てこの世にいないんじゃないかって」
「……1番な自信はある」
ニィっと笑った隆にぷッと吹き出すと、お前はどうなんだよと鼻を摘まれてしまう
「隆が思ったままだと思う」
「……じゃあ俺はお前にすげー愛されてると思うよ。うちの家族ひっくるめて」
「……それが言動で伝わっててくれて嬉しい」
「ああ。」
「……私思ったんだ。隆とよりを戻した時に。どんな事があってももう二度と離れないって」
「俺は、経験してないからその辺は分からねーけど、これからもずっとお前だけを見てるから」
私の決意を話すことが出来た。その返事が凄く嬉しくて肩に顔を埋めてキツく彼を抱き締める。私の頭をヨシヨシと頭を撫でる手がいつもより優しく感じた
「なぁ、別れた時っていくつ?」
「高校2、3年だったよ、隆のデザイナーとしての頭と腕は素晴らしかった」
「……そっか。ちなみに気になるんだけど、俺別れた時大丈夫だったのか?」
「大丈夫とは?」
「いや、納得出来てた?」
「うーん。どうなんだろう……でもその後仕返しされた」
ぷっと私が吹き出すと、何だそれと言って眉を寄せた隆に、ドラちゃんが撃たれて亡くなった事は伏せて隆が別れたらガリガリになっちゃった事、それなのに馬鹿な私は他の男とデートしていた事。それでもしっかり話し合い寄りを戻せた事をなるべく詳しく話した
「……へぇ」
明らかに空気が変わって、珍しく額に筋が入ってる隆に私は自然と顔が引き攣るのを感じた。……色々あるけど話し合えば必ず戻れるって言いたかったとアタフタしながら彼のお腹を摩り機嫌を取るように腕に擦り寄った
「……仕返しって俺に何されたの?」
「…うぅ…朝まで抱き潰された……」
その瞬間に顎を優しく掴まれてむにゅっと口を潰される。喋れないので目をぱちぱちしながら無表情の隆を見つめた
「……俺、以外に許さねぇから」
あ、知ってますと言おうとしたが喋れずにニッコリと微笑むと急に膝を抱かれ持ち上げられて、そのまま抵抗する事無く彼の首に抱き着いた。玄関を入り寝室のベッドに優しく置かれた私は「…朝までは無理だからね」と隆の瞳を見つめた。知らねみたいな顔をした隆に眉を寄せるとそんな私の顔を見てフッと薄く笑った隆は「……ずっと愛してるよ雪那」と言って唇を優しく重ねてきた
耳鳴りがする
暖かい日差しが眩しくて目を開けた
目の前のテレビには知らない芸人が漫才をしていて、テーブルには湯気がたっていない紅茶が入ったマグカップが置かれていた。辺りを見渡してインテリアは違うけれど自宅だなって事に安心して目を擦りながら欠伸をする
テーブルに置かれた黒い携帯を開けば時刻は15時過ぎ。日付と西暦からして私は25歳
隆が亡くなった日の1週間前だった。慌ててLINEを開き、三ツ谷の名前を探そうとしたが、そんな手間はいらなかった
LINEページの1番上にある隆の名前
確か前のこの時期は、今度飲みにいこうぜ
時間があったらまた連絡する
了解で終わっていた筈だ。
最後のLINEは一昨日で、私からミルクティーが飲みたいと送っている
また、違う未来か。でも、内容からして穏やかそうな感じで安心していると何か体に違和感を感じた
立ち上がり柔らかな生地のワンピースの上から腹を摩る。少しポッコりとしたお腹に驚愕してしまいそのまま立ち尽くしてしまった
良く見ればテレビ横に置いてある写真立てには沢山の仲間との写真がずらり。窓辺には誰かのおさがりのベビーカーにおもちゃなどが置かれていた
お腹に子供がいる
呆然としていると、リビングのドアから入ってきたのはメッシュを入れ眼鏡を掛けた隆だった
「……何その顔」
「た、たかし?だよね?メッシュ入れたの?」
「……雪那?寝ぼけてんの?」
「………さっきまで中学生だったんだ。……って言ったら分かってくれる?」
そう言ってニィと笑った私に隆は1度凄くビックリした顔をしてから私の腕を掴んで引いた。「会いたかった」と切ない声を漏らし首に顔を埋めてきた隆の声色は少しだけ泣いているように感じて胸が締め付けられる
「……未来のお前がずっと俺を支えてくれた」
「……お互い様だよ」
「…… 雪那だ。……本当に会いたかった」
ポロポロと隆の瞳から溢れ落ちていく涙を見ていたら、何だか私迄泣けてきてしまって二人で抱き合って泣いてしまった。私の涙に優しく唇を這わせる大人の隆の瞳は、反社の時とは違いとても優しい瞳をしていた
「……子供いて……ビックリしたよ」
「…そりゃビックリするよな。………皆さ、元気だよ、俺達みたいに幸せだ」
「……そっか。本当に良かった」
何だか、もう何処にも行かない気がした。此処が1番私の居場所だって何故だかしっかりと思うのだ
「……もう何処にもいかない」
「戻りたいなんて思わせないように俺がするよ」
そう言って歯を見せてニッと笑った隆に私は満面の笑みで微笑んだ
新宿での殺人事件や高速での車事故のニュースが流れていてふと、何故かついこの間の未来を思い出した。今はこんな風に穏やかに過ごしているし隆も私を幸せにするって言ってくれているけれど、東京卍會がこの先どんなきっかけで反社になるかなんて分からない。もし、マイキーやドラちゃんが何かしらの理由があって、その道に行くって決めた時に「三ツ谷はついてきてくれるよな」何て言われたらあれに繋がるのかなと思った
彼は私と穏やかに結婚して暮らすよりもそちらを取ってしまうんだろうか。「大丈夫だから」と言ってくれたマイキーの笑顔を信じたいけれど、薬中の隆の姿が過ぎると何だか心配になってしまう。そんな事を考えながら鍋にパスタを放り込み、グツグツと沸騰する鍋の中で踊るパスタを見ながらボンヤリしているとインターホンが鳴り顔を上げた。来客の予定は1人しかいないけど、隆ならチャイムは鳴らさない筈だし誰だろうと玄関からスコープを覗くと、久しぶりに見た顔に思わず自然と笑みが溢れてしまったが支えられている隆の様子を見てハッとした
鍵を掛け忘れていた扉を急いで開けると、柄が悪そうな服を来た一虎君とジャージ姿の圭ちゃんは2人共傷だらけで気まずそうに私の目を見て罰が悪そうに少しだけ微笑んだ
「悪ぃ、雪那ちゃん。」
「どうしたの?何でそんなに怪我してんの?」
「とりあえず三ツ谷寝かして良い?」
「……病院行かなくて大丈夫?」
「ちょっと気失ってるだけだからさ」
はははと少し気まずそうに笑った一虎君に私が首を傾げていると、圭ちゃんは隆の事を背に乗せてから靴を脱がせ玄関に上がった。「どこに置けばいい?」と辺りを見渡しながら聞いてくる圭ちゃんに、「リビングのソファに寝かせて。ちょっと手当もするから」と言いながら私は急ぎ足でリビング脇の救急セットが入っている棚に向かった
ソファに横になって眠っている隆の鼻血を吹いてから額の傷を消毒していると、ラグに座ってこちらを見つめている二人の顔も血が滲んでいる。「3人で喧嘩したの?」と少しだけ眉を潜めた顔をした私に「まぁ」と言って頬をかく圭ちゃん。「 雪那ちゃん何か飲んで良い?」とにっこり微笑んで来る一虎君に頷くと彼は冷蔵庫に向かっていった
「……喧嘩は分かるんだけど……何で失神したの?」
「……てかさ、三ツ谷何かあった?」
「ん?何で?」
「今日様子がおかしくてさ。会った時から何か荒れてる感じだったんだよ。喧嘩の時もいつもなら絶対突っ込んで行かないんだけどよ」
思い当たる節が無いといえば無いけれど、あると言えばあるのだろうか。私の身に起きた事、彼に話した事がストレスになっていたのかと少しだけ思った。黙りとしている私に少しだけ気まずそうな顔をしながら私を見る圭ちゃんに「……隆に負担かけてたかも」と呟くと「喧嘩でもしたのか?」と気遣う様に優しく微笑んでくれる
「……喧嘩は無いかな」
「 雪那を安心させたいけど、東京卍會に居たいって今日ポロッと三ツ谷が言ってたからよ。雪那ちゃんに東京卍會やめろって言われたのかって聞いたら違うって言っててさ」
「……今は……別にやめろと思ってないよ」
「ん?……どうゆう事だ?」
「…………」
「ま、二人で話す事だよな。」
「ごめんね圭ちゃん。一虎君も……」
「 雪那ちゃん、謝んなよ。別に雪那ちゃん悪い事してねぇんだから」
「……私があんまりにも心配して怖くて隆にベラベラ話したから良く無かったのかもしれない。今は反省してる」
「……何の事か分かんねぇけど、三ツ谷だけには話して良いんじゃね?」
「だな」
「負担になる」と言った私に、2人は優しく微笑んで好きな女の負担くらい背負えなかったら男じゃねぇと言って笑っていた。2人共かっこいいなぁと私が呟くと「きっと三ツ谷だってそう思ってる」と言ってくれたけど、何だか素直にうんとは頷け無かった。隆は昔からお母さんの負担を減らそうと頑張っていたし、妹達のお世話も愚痴を零さずにしっかりとやっていた。
前に付き合った時は子供だった自分は彼の負担が全く分からずにいつも甘えていたなと今思う。だから今回は彼の負担になるんじゃなくて少しだけでも軽減して貰える様に頑張りたかった
「……2人共もうすぐ出来るからカルボナーラ食べていきなよ。隆運んで来たから疲れたでしょ?」
にししと歯を出して笑った私にガッツポーズをした2人は「腹減ってたんだ」と嬉しそうに笑う。そんな2人が可愛くて隆の目の横の傷に適当にテープをペチリと貼って、「ちょっと待っててね」と言ってキッチンに向かった。火を止めるのを忘れていた鍋を見てガックリしながら1度火を止めた。中のパスタを箸で救い食べてみれば少し柔らかい位で特に問題は無かったのでそのままパスタをザルに取り出してからソース作りに取り掛かっていると、「おっ、起きたか」と圭ちゃんの声が聞こえてくる
「隆起きた?」
「 雪那ちゃん、起きたよ」
「ごめん今手が離せないからどっちか隆にお水飲ませてあげてくれる?」
目を擦りながら起き上がった隆の姿が見えて、「自分で飲める」と言った隆は自分の手当てされている顔を擦りながらこちらに向かって来ると私を罰が悪そうな顔で見て少し頭を下げた
「……悪ぃ。お前が手当てしてくれたんだな」
「んもぉ。……心配したんだからね」
何だか本当はもっと怒りたかったけれど、彼の顔は本当に悪いって顔をしていたのと、もしかしたら私が負担をかけていたのかもって思ったら何だかそれ以上何も言えなかった。冷蔵庫から麦茶を取り出した隆にあの二人にも次いであげてと言えば軽く頷いた。2人がテレビを見ているのを確認した隆は私の肩に軽く頭を乗せて「本当にごめんな」と小さな声で呟いた
それから4人でカルボナーラとサラダをつつきながら話をしていると、一虎君は聞いていたよりも明るくて元気な子だったし圭ちゃんも昔よりも随分と大人になっていて話していて安心してしまった。私が居るから少し気を使ってくれているのか、隆の話ばかりしてくれる一虎君が微笑ましい。そんな一虎君をお兄ちゃんみたいに見守っている圭ちゃんにも何だかジンわりと心にくるものがあった
「三ツ谷は全然嫁の話してくれねぇからどんな子かと思ってたんだけど、思ってたよりもずっと普通の子だったな」
「一虎君はどんな子想像してたの?」
「うーん。女番長みたいな子かなぁ。三ツ谷が振り回されてたら面白ぇなって」
ぷっと吹き出した私と圭ちゃんと違い、「そんな彼女怖ぇよ」と言って呆れた様な顔をした隆はふと、思い付いた様な顔をすると「一虎のがそうゆう子合ってるんじゃね?」と首を傾げた
「……喧嘩が凄まじい事になりそうだけどね。一虎君には5つくらい上の癒し系お姉ちゃんタイプのが良い気がする」
「……俺もそう思う」
「年上いいなぁ。誰か紹介してくれねぇかな」
「ふふふ。一虎君てやんちゃなイメージがあるけど素直で可愛いらしいんだね」
「一虎が可愛く見えるなら大したもんだよ。なぁ三ツ谷」
「全くだな。まぁ……うちの嫁はちょっと同年代より大人びてるからな」
「へぇ。三ツ谷って惚気たりするんだなぁ」
関心したとゆうよりも、本当に珍しい物を見たって顔をした一虎君に「惚気じゃねぇよ」と言った隆はフッと薄く笑った。大人びてると言われて思い出したけれど、自分はそういえば25歳だったんだなってこの時思ってあれ?ってなった。すっかり年齢の事何て忘れてそのまんまで生きていた気がする
体はその時その時その体だから当たり前なのかもしれないけれど、最近何だか飛ばされる事にも慣れてきてしまっているなと思った。反社だった隆が言っていた言葉、「……このお前は俺を置いていく」それを思い出して何だか悲しくなった。私が飛ばされた後はどんな私がそこに存在しているのだろう……。あの隆は何回もまた置いていかれた。居なくなったと思ったのかなって思うと何だか凄く寂しい思いをさせたんだなって思う
「 雪那?」
「……ん?何?」
「珈琲いれてもいいか?お前らも飲む?」
「俺達はもう行くよ。ごちそーさん」
「2人共飲んでけばいいのに」
「また来るよ、ありがとうな雪那ちゃん」
ニッと笑った2人に「また来てね、ありがとう」と言って少し微笑むと席を立った。2人がエレベーターに消えて行く所まで背を見送ると、辺りはもうすっかり暗くて真ん丸の月が優しく辺りを照らしていた
「綺麗だねぇ。今日は満月だよ」
そう言った言葉に返事は無くて、代わりに優しく後ろから抱きしめられる。お腹に回って来た温かい両手を握ると隆の頬がゆっくり私の頬に触れた
「……マジで今日はごめんな」
「……私もごめん。負担かけてたね」
「何の事だ?」
「私が色々怖い思いしてさ……全部話すからストレスになっちゃったかなって」
「いや、ストレスにはなってねぇよ。ただ…俺はこの先ちゃんとした未来を選べるかなって心配になっただけだ」
「…………」
「なぁ、ずっとお前が隣に居てくれたら俺は大丈夫な気がするんだ」
「私が居ても……駄目な未来はあった」
「……分かってる。でも、聞いてちゃんと高校からデザイナーになるってもう1度ちゃんと考えた。東京卍會は中学までだって、……決めたから」
「……皆がそうなってくれたら良いよね」
「俺が頑張るからさ。ドラケンもマイキーもきっと分かってくれる」
「……ごめんね」
俯いた私の頭を優しく抱き締めてくれた隆は「俺とお前の未来なんだから俺も頑張らないとな」と言って頭に口付けしてくれる。好きになった人がこの人で良かったと思うと何だか目頭が熱くなってきて彼の胸に飛び付いてぎゅっと力強く抱き締めた
「ねぇ、隆」
「ん?」
グレーの綺麗な髪を撫でると、気持ちが良さそうに目を閉じて撫でている手を優しく取り口付けしてくれる
「……少し先の未来で私達1度別れててさ」
「……何で?」
「隆が言ってたのは、お前には俺しか居ない、お前を守るのは俺だけだって決め付けて、その考え方がお前を追い詰めたって言ってた」
「…………」
「……でも、それ聞いて思った。そこまで私を思ってくれる人何てこの世にいないんじゃないかって」
「……1番な自信はある」
ニィっと笑った隆にぷッと吹き出すと、お前はどうなんだよと鼻を摘まれてしまう
「隆が思ったままだと思う」
「……じゃあ俺はお前にすげー愛されてると思うよ。うちの家族ひっくるめて」
「……それが言動で伝わっててくれて嬉しい」
「ああ。」
「……私思ったんだ。隆とよりを戻した時に。どんな事があってももう二度と離れないって」
「俺は、経験してないからその辺は分からねーけど、これからもずっとお前だけを見てるから」
私の決意を話すことが出来た。その返事が凄く嬉しくて肩に顔を埋めてキツく彼を抱き締める。私の頭をヨシヨシと頭を撫でる手がいつもより優しく感じた
「なぁ、別れた時っていくつ?」
「高校2、3年だったよ、隆のデザイナーとしての頭と腕は素晴らしかった」
「……そっか。ちなみに気になるんだけど、俺別れた時大丈夫だったのか?」
「大丈夫とは?」
「いや、納得出来てた?」
「うーん。どうなんだろう……でもその後仕返しされた」
ぷっと私が吹き出すと、何だそれと言って眉を寄せた隆に、ドラちゃんが撃たれて亡くなった事は伏せて隆が別れたらガリガリになっちゃった事、それなのに馬鹿な私は他の男とデートしていた事。それでもしっかり話し合い寄りを戻せた事をなるべく詳しく話した
「……へぇ」
明らかに空気が変わって、珍しく額に筋が入ってる隆に私は自然と顔が引き攣るのを感じた。……色々あるけど話し合えば必ず戻れるって言いたかったとアタフタしながら彼のお腹を摩り機嫌を取るように腕に擦り寄った
「……仕返しって俺に何されたの?」
「…うぅ…朝まで抱き潰された……」
その瞬間に顎を優しく掴まれてむにゅっと口を潰される。喋れないので目をぱちぱちしながら無表情の隆を見つめた
「……俺、以外に許さねぇから」
あ、知ってますと言おうとしたが喋れずにニッコリと微笑むと急に膝を抱かれ持ち上げられて、そのまま抵抗する事無く彼の首に抱き着いた。玄関を入り寝室のベッドに優しく置かれた私は「…朝までは無理だからね」と隆の瞳を見つめた。知らねみたいな顔をした隆に眉を寄せるとそんな私の顔を見てフッと薄く笑った隆は「……ずっと愛してるよ雪那」と言って唇を優しく重ねてきた
耳鳴りがする
暖かい日差しが眩しくて目を開けた
目の前のテレビには知らない芸人が漫才をしていて、テーブルには湯気がたっていない紅茶が入ったマグカップが置かれていた。辺りを見渡してインテリアは違うけれど自宅だなって事に安心して目を擦りながら欠伸をする
テーブルに置かれた黒い携帯を開けば時刻は15時過ぎ。日付と西暦からして私は25歳
隆が亡くなった日の1週間前だった。慌ててLINEを開き、三ツ谷の名前を探そうとしたが、そんな手間はいらなかった
LINEページの1番上にある隆の名前
確か前のこの時期は、今度飲みにいこうぜ
時間があったらまた連絡する
了解で終わっていた筈だ。
最後のLINEは一昨日で、私からミルクティーが飲みたいと送っている
また、違う未来か。でも、内容からして穏やかそうな感じで安心していると何か体に違和感を感じた
立ち上がり柔らかな生地のワンピースの上から腹を摩る。少しポッコりとしたお腹に驚愕してしまいそのまま立ち尽くしてしまった
良く見ればテレビ横に置いてある写真立てには沢山の仲間との写真がずらり。窓辺には誰かのおさがりのベビーカーにおもちゃなどが置かれていた
お腹に子供がいる
呆然としていると、リビングのドアから入ってきたのはメッシュを入れ眼鏡を掛けた隆だった
「……何その顔」
「た、たかし?だよね?メッシュ入れたの?」
「……雪那?寝ぼけてんの?」
「………さっきまで中学生だったんだ。……って言ったら分かってくれる?」
そう言ってニィと笑った私に隆は1度凄くビックリした顔をしてから私の腕を掴んで引いた。「会いたかった」と切ない声を漏らし首に顔を埋めてきた隆の声色は少しだけ泣いているように感じて胸が締め付けられる
「……未来のお前がずっと俺を支えてくれた」
「……お互い様だよ」
「…… 雪那だ。……本当に会いたかった」
ポロポロと隆の瞳から溢れ落ちていく涙を見ていたら、何だか私迄泣けてきてしまって二人で抱き合って泣いてしまった。私の涙に優しく唇を這わせる大人の隆の瞳は、反社の時とは違いとても優しい瞳をしていた
「……子供いて……ビックリしたよ」
「…そりゃビックリするよな。………皆さ、元気だよ、俺達みたいに幸せだ」
「……そっか。本当に良かった」
何だか、もう何処にも行かない気がした。此処が1番私の居場所だって何故だかしっかりと思うのだ
「……もう何処にもいかない」
「戻りたいなんて思わせないように俺がするよ」
そう言って歯を見せてニッと笑った隆に私は満面の笑みで微笑んだ
