短編 シリーズ
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レイキャビクの外れにあるこの街に到着してから1ヶ月が過ぎ、ここでの暮らしにも多少慣れて来た。相変わらずの寒さで運が良ければオーロラが見えるこの場所を段々と好きになっていけているのは勿論隆が居るからだけど、タケミチ君やヒナ、千冬君の存在もかなり大きかった
言語問題はまだまだ解決出来ず買い物が一苦労の時もあるけれど、ブラブラと隆と二人でフリマに行ったり有名な湖に連れて行って貰ったりと生活は十分充実していた。当初から内心心配していたお金の問題は「リビングの戸棚にある現金は好きに使って良いから」とサラリと言われ、戸棚を開ければまだ見慣れ無いこの国の現金が束になり置いてあった。「この時計も指輪も持っている宝石類も必要なら全部売るから、金の事は心配するな」と言ってくれた隆に小さく頷くと「私の方の貯金は2人の老後にとっとくね」と言って彼の手を握った
「……俺がじーさんになっても一緒にいてくれるんだ」
「……その頃は私もばーさんだし」
「50年後とかも仲良くやれてるといいよな」
「……うん」
ここに着いて直ぐに、あの3人に結婚するからと言ってくれたけれど隆は一緒に寝ていても頬に口付けするだけで私に手は一切出さなかった。結婚の事もあれ以来何も言ってくれないけれど、散歩の時や出かける時には必ず手を繋いでくれたり優しく気遣ってくれるのでそれだけで今の私には十分だった
二人で朝起きて朝食を食べて、掃除をしたり散歩に出かけて夜は5人でBBQをしたりお酒を飲んだりして毎日が日曜日感覚のまま日々はのんびりと過ぎて行った
その日は朝から隆は千冬君と釣りに出かけていたので、市場で買っておいた野菜を常備菜にしようとキッチンで料理を楽しんでいた。つまみ食いをしていたからか昼になってもお腹は余り空かず、一応作ったパスタをそのまま放置して庭いじりでもしようかと玄関のドアを開けると、少し先の路地を曲がろうとしていた2人組が私がドアを開いた音で振り返った。こちらを振り返りジッと私を見つめている2人の顔はどう見ても日本人だった
この小さな街で日本人は私達しか居ないと花垣君から聞いているし、もしかしたら隆達を探しているのか?と恐ろしくなり直ぐに家に入り扉を閉めて鍵を掛けた。ドキドキと高鳴る胸を押さえながらどうしようか考えていると、家の中からした突然の物音にビクリと体が跳ねる。「……えっ?何……」震える足に力を入れてゆっくりと音がしたであろうリビングに向かいドアを静かに開け中の様子を伺うと、その瞬間にぬっと出て来た手に腕を掴まれて思わず叫びそうになる。「シー」と聞こえると、直ぐに口を塞がれてしまい「大丈夫だからな、叫ぶなよ」と耳元で安心させる様な優しい声がした
「……三ツ谷…の知り合いだよな?彼奴は今居ないのか?」
こくこくと頷くと「あ、ごめんな」と言って口を塞がれていた手は離れていった。男の顔を見ればやはり面識は無い。隆とどんな関係かも分からないけれど、表情や仕草からこちらを攻撃する様には見えないのでとりあえず信用はまだ出来ないけれど乱暴にはされなかったので少しだけ安心した
「あの、どちら様ですか?……てか……どこから入ったの?」
「裏庭の窓から。……兄貴こいよ」
眼鏡の男が大きな声で庭に向かって叫べば、裏庭に通じる開いた窓から入って来た短髪の背の高い男は私を見て目を一瞬見開いた
「……あれ?松野ってこんな可愛いっけ?」
「兄貴ボケかましてる場合じゃねぇだろ。」
「……」
とりあえず黙っている私に二人は目を見合わせてから小さく溜息を吐くと、「座っていい?一応三ツ谷の知り合いなんだよね。待たせてもらっても?」と言って返事をする前にソファに腰を降ろした。良く見れば二人の身なりは余り綺麗とは言えないし疲れている様な顔をしている。ここに来た時の自分達の事を思い出して私は彼等の前に腰を降ろした
「……あの、日本から来て今着いたんですか?」
「ああ。途中色々あってかなり遅れたけどな。君には上手く説明出来ないかもしれないけど、三ツ谷とは元々敵同士だけど今は敵じゃない」
「……つまり?貴方達も逃げてきたんですか?」
「まあ、色々あってね。……てか、三ツ谷と松野と花垣と花垣の女の4人じゃ無かった?君は誰?何でここに居るの?」
「……えっと、私は三ツ谷の嫁……です」
「えっ?三ツ谷結婚してたんだ。へぇ、名前は?」
「 雪那です。貴方達の名前は?」
「灰谷蘭」
「竜胆。蘭の弟だ」
「あれ?灰谷さんて……、クラブ経営してた兄弟ですか?」
「おっ、何で知ってんの?」
「私はアマルフィに居たんです」
「へぇ、アマルフィか。行った事あるよ」
直接知っている訳では無いけれど、灰谷兄弟は有名だったし店長の話や色々とクラブ繋がりの話をしていると徐々に彼等の事を身近に感じ危険だとは思わなくなっていった。蘭さんの気の抜けた様なラフな感じが私の緊張を徐々に解いてくれたのかもしれない
「飲み物持って来ますね。……あ、お腹空いてます?何か出しましょうか?」
「実はすげぇ腹減ってんだよね。助かるよ」
「パスタとサラダ持って来ます、食べたらお風呂沸かしとくので良かったら入って下さい」
「助かるわ、あのさ…… 雪那ちゃん。もう1個頼んでいい?」
「何ですか?」
「抗生物質ある?後消毒液」
「もしかして……怪我してるんですか?」
「兄貴の足がちょっとね」
「今持って来ます」
「悪いね~ 」
直ぐに戸棚にある救急セットを取り出し蘭さんの隣に座ると、彼が捲ったズボンの裾には大量の血液が付着していて脹脛の傷は膿んでしまっていた
「これは……ちょっと酷いので病院行きましょう」
「悪ぃ、俺ら今金無くてさ……」
「スられたんだよなー竜胆」
「…………嫌味な奴だなぁ」
「お金なら大丈夫ですよ、蘭さん歩けます?」
「ああ。平気」
竜胆君が肩を貸す形で蘭さんはゆっくり歩いて車庫にある車に乗ってくれた。直ぐに車を出して病院に向かい、ジェスチャーと携帯の翻訳で何とか彼を先生に治療して貰う事が出来たのは家を出てから1時間半後の事だった。お会計を済ますと頭を下げてきた2人に「お礼なら隆に言って下さい」と言えば2人は頷いてから車に乗り込んだ
「蘭さん、足は大丈夫でしたか?」
「何言ってたのか全然分かんねぇけど、大分痛くは無くなったな」
「はぁ、腹減った」
「ふふふ。もう直ぐ家着きますから。そういえば蘭さんは足にビニール巻けばシャワー浴びれますか?」
「すげー風呂入りたい。雪那、洗うの手伝って」
「……兄貴、頼むから三ツ谷と喧嘩になる様な発言すんなよ」
「冗談だよ」
そんなやりとりをしながら坂を登れば自宅が見えて来て、家の前に居る人影は隆と千冬君だと直ぐに分かりクラクションを1度鳴らした。こちらを見た2人にゆっくり車を近付けると、助手席に座って居た蘭さんがニッコリとしながら2人に手を振っていた。蘭さんの姿を見た隆と千冬君の驚愕した顔に私が思わず苦笑いしてしまうと、停車した途端に私は直ぐに車から降ろされてしまった
「……灰谷……」
「よぉ、三ツ谷久しぶりだな。今嫁ちゃんに病院連れて行って貰ったんだけど治療費出させちゃったから貸しにしといてくんね?」
「……悪ぃな三ツ谷、……兄貴がマイキーに撃たれてな」
「……何だと?マイキーもここにいんのか?」
「いや、マイキーは日本にいる。…… 雪那ちゃん居るから後で話すわ」
その言葉に頷いた隆は千冬君に車を車庫に入れる様に頼むと、私の手を引き家の中に向かって歩き出した。振り返るとお兄さんに肩を貸しながらこちらに向かってくる竜胆君の姿を見てそういえば彼等がお腹を空かせている事を思い出した。「……竜胆君と蘭さん、お腹空いてるみたいだからパスタ温め直してくるね」そう言って、いつもと違い笑顔無く頷いた隆の背中を1度撫でて直ぐにキッチンに向かった。多分聞かれたくない話をするのだろうと思ったのでパスタを温め直してからサラダと一緒にテーブルに置くと、「ありがとうな」と言って来た2人に微笑んでから直ぐにリビングを出た。お風呂の掃除をしてからお湯を沸かして、2階の空き部屋の掃除をしていると窓の外はもう日が暮れている事に気づいてキッチンに戻る事にした。リビングのドアを開くと千冬君も交え4人でソファに座っていた。皆の顔に笑顔は1つも無かったが、私が部屋に入ると皆こちらを見て少しだけ気遣うように微笑んでくれた
「 雪那、お前どこにいたの?」
「2階の空き部屋掃除してたよ。竜胆君、蘭さんお風呂沸いてるので良かったらどうぞ、2階の部屋も使って下さいね」
「助かるよ、雪那ちゃん。ありがとな」
「 雪那、悪いけど足に巻くビニール頂戴な」
「あ、そうでしたね。持ってきます」
「……灰谷、人の嫁呼び捨てにすんなよ」
「三ツ谷可愛いなぁ」
「…………」
ニヤニヤとする蘭さんの足を隆がニッコリしながら軽く掴むと「いってぇなボケ」と言って眉を寄せた蘭さんに「兄貴が悪い」と言って溜息を吐く竜胆君を見ながら私と千冬君は笑ってしまっていた。蘭さんに肩を貸して竜胆君が立ち上がると隆が2人をお風呂場に案内していたので千冬君が座るソファの横に腰を降ろした
「……あ、千冬君。車ありがとうね」
「いえ、雪那さんもお疲れ様でした」
「…………言えない話なら良いんだけど……、大丈夫そう?」
「……良い話も聞けました。生き残ってた仲間がこちらに向かってます」
「……悪い話もあったって事?」
「…はい…でも……きっと大丈夫です。」
少しだけ微笑んだ千冬君は話題を変えるように「三ツ谷君もたけみっちもお嫁さん居て良いよなぁ。俺も早く嫁さん欲しいぜ」何て笑いながらソファに寄りかかる
「……私達は……夫婦に見えるかな?」
「……えっ?」
「……私と違って隆は……、友人が死んで心が弱ってた時に私が近くに居たから……。彼は私の事を本当に愛してる訳じゃないと思う」
「………… 雪那さん」
「付き合ってた訳でも無いしね。……でも私は彼の傍に居れるだけで幸せ」
「 雪那さんがそう思うなら、これから沢山雪那さんを知って貰って好きになってもらえば良いんじゃないですか?」
「……千冬君……」
そう言って私の瞳を真っ直ぐ見つめる千冬君は真剣な表情をしていた。その言葉がやけに胸に刺さり、何だか良い意味でジンとした。「三ツ谷君は……」と口を開いた千冬君の言葉は隆がリビングに入って来た事で聞けなかったけれど、「夕飯どうする?」と私の隣に座った隆に「ピザがいいな」と少し微笑むと私の頭を撫でた隆は「ならそうするか」と言ってくれた
私達を優しい眼差しで見つめながら「タケミッチ達呼んできます」と言って立ち上がった千冬君に隆は頷いいた。千冬君が部屋から出て行くのを確認してから私の肩を抱いた隆に少し驚いたけれど、何だか嬉しくて彼の肩に頭をちょこんと置いた
「……どしたの?隆が肩抱いたりするなんて……珍しい」
「…… 雪那が家に居なくてすげぇ心配した。電話も出ねぇし、何かあったのかと思った」
「ごめん。蘭さんの怪我がかなり酷くて焦っちゃってさ。隆に電話するべきだった」
「いや、良いんだ。ただ、無事で良かった」
下を向いた隆の瞳は何だか少しだけ揺れている気がした。マイキーさんが誰だかは分からないけれど、竜胆君が「マイキーに兄貴が撃たれた」と言った時の隆の顔はかなり驚愕していた。色々と聞きたいけれど、話してくれるまで待つべきだと思い隆の手を握った
「……ねぇ、隆」
「……ん?」
「……あのさ、もし隆が嫌じゃ無かったら……」
「……何だよ、ハッキリ言えよ」
「私の事、抱いて欲しいの」
「………………」
「……嫌?」
「……嫌な訳ねぇだろ」
フッと薄く笑った隆に心底安心してドキドキしていた胸を撫で下ろした。「嬉しい。……ずっとこうしたかった」そう心から思っていた気持ちを口にしてから彼の胸に飛び込んで背中に手を回す。トクトク聞こえる心音を聴きながら目を瞑ると「えっ?抱くってそっち?」と隆が何か言っているのが聞こえたけれど、私は今この瞬間が幸せ過ぎて返事はせずに彼の胸に頬を寄せていた
「……三ツ谷は奥手なんだな」
「兄貴本気でやめろ、 聞いてたのバレんだろ」
「……お前ら2階行けよ。……空気読めや」
そんな会話も聞こえて来たけれど、背中に回された隆の手が温かくてその余韻に浸る様に目を瞑っていた。その後直ぐにタケミチ君とヒナちゃん、千冬君が家に来て皆でわいわいと夕飯を食べた。灰谷さん達も一緒に食べていたけれど、やはり疲れがあるのが1時間もしないうちに休むと言って部屋に戻って行ってしまった
皆が帰ってからお風呂に入り、出た後に片付けをしたり軽く掃除機をかけていると時刻は23時を過ぎていた。今日は灰谷さん達の事もあったし、少し疲れたなと思いながらソファに腰を下ろせば窓の外は雪がちらついている。湯冷めする前に布団に入ろうと立ち上がると急に手を引かれて体が包まれた
「……ビックリした」
「雪降ってきたな。冷えるからもう寝ようぜ」
「……隆……」
優しい笑みを浮かべながら私の頬に口付けを落とす隆も何だか少しだけ疲れている様な表情をしていた。抱き締められた体を少し離し彼の手を取って寝室に向かうと大人しく後ろから付いてきてくれる。ベットに辿り着くと欠伸をしながら横になった隆の隣に私も横になった
隆から手を出される迄ゆっくり待とうと思っていたけれど、先程彼に抱き締めてもらってしっかりと分かった。彼に愛されてるって確信が欲しくて、「好きだ」って言葉も欲しくて自分を求めて欲しい。そんな事を考えながら彼の横顔を見つめていると、胸が高鳴り自然と隆に触りたくなって柔らかな黒髪に手を伸ばした
「……ん?どした? 」
「……触っていい?」
「……ああ?いいけどよ……」
何だよと少しだけ笑った隆を見つめながらリモコンで電気を消した。まだ目が慣れておらず、暗闇の中で上半身を起こすと隆の頬に手探りで手を添えた。「ん?」と聞こえた声を塞ぐ様に彼の唇に口付けを落とすと、何秒かしてから私の後頭部に手が添えられてゆっくりと唇の中に侵入してきた舌が舌を絡めとる
拒絶はされない事は勿論分かっていたけれど、私に応える様に引き寄せてくれた隆の手が嬉しかった
反対の手が服の中に入って来て、温かい手が胸の膨らみを触り指先が突起に触れると「ふっ」と自分の唇から声が漏れた。その瞬間に上体を起こして上に被さって来た隆は私の耳たぶを優しく噛むと「……していい?」と囁いてくる。コクと首を縦に振ると、ゴツゴツとした手が服と下着を剥ぎ取っていく。露になった胸の突起を優しく舐められ、太ももを撫でられると少しづつ気持ちが良くなってきて恥ずかしさも忘れ喘いでしまっていた
「……んん、はぁ、……気持ちいい」
「……ん」
「……隆のも触っていい?」
「……いいよ」
彼の下着に手を入れると大きくなった熱い物を優しく撫でて包む様に触る。暗くて表情は余り見えないけれど「ん」と少しだけ漏れた声に何だか嬉しくなって下着を下ろして口に入れ、優しく舌を這わせた
「……やべぇ。すげぇきもちぃ」
「……んん」
余裕が無い様な隆の声を聞いた事が無かったからか、思っていた以上に嬉しくて弱い所を見つけながら舌を這わせている自分がいた。目が暗闇に少し慣れてきて、彼の歯を食いしばる表情を見ているともっとしてあげたくなってしまう。いつの間にかぴちゃぴちゃと水音が響き、割れ目をなぞっていた指が滑るように中に入って来ると久しぶりだったから快感が強くて少し動かされただけで直ぐに果ててしまった。「んあ、あぁ」と隆の物を口に入れながら達してしまうと「……わりぃ、もう限界」と呟いた隆は私の手を引いて寝かせるとそのまま遠慮なく中に入ってくる
「んん、あ、あぁぁぁ」
「…… 」
果てたばかりの中がビクビクと彼を締めつけるのが良く分かった。寒いのに何だか体が熱くて、うっすらと汗ばんだ私の額やこめかにキスを落としながら奥を突く彼の背中に手を回すと隆の背中も汗ばんでいた。「はぁ」と彼の気持ち良さそうな吐息が漏れる度に私も気持ちが良くて頭が真っ白になりそうだった。「……はぁ、き、きもちぃ。……またイっちゃう」涙声でそう言った私に少しだけ嬉しそうに笑い「俺も」と言った隆の背を優しく撫でると「好きだよ、雪那」と言った彼は深い口付けをくれた
終わってからも裸のまま、後ろから私を抱き締めて離さない彼が愛おしい。私のお腹を優しく撫でる隆の手を撫でると、1度ちゅっと音を立てて頭に口付けた隆は耳元で囁く様に口を開いた
「……なぁ、雪那 。俺ずっとお前を抱いて良いのか迷ってた」
「……何で?夫婦なのに」
「きっかけがあんな感じでさ。付き合ってもねぇのに急に同棲して……。それにお前が好きだったのは小学校の時の俺だっただろ?」
「小学校の時に好きだったのは確かだけど、…今の隆が好きだよ」
「……雪那。」
「……私は隆に好かれてるか……不安だった。けっこう無理矢理ついていったからさ」
「……無理矢理何かじゃねぇよ」
「…今日、…抱いてくれて本当に嬉しかった」
「俺も……嬉しかったよ」
体の関係だけが全てでは無いけれど、深い繋がりを持てた気がして嬉しかった。と言ってくれた隆の言葉は私にもピッタリな気がした。今迄遠慮していた気持ちを解放する様に隆に向き直り、沢山の口付けをすれば彼は嬉しそうに笑ってくれて私を力強く抱き締めて息が出来ない程の口付けをくれた。そのまま二人で裸で抱き合って眠ると、この街に来て何だか1番幸せな気持ちで眠れた様な気がした
それから、灰谷兄弟と4人での生活が始まって何かと私に構う蘭さんに隆は良い顔はしなかったけれど
良く観察していると、私に構いたいんじゃなくて妬いてる隆をおちょくる事が蘭さんは楽しいみたいだった。「兄貴はタチが悪ぃ」と呆れている竜胆君と、言い合いをしてじゃれている2人を見ながらお茶をすする事が毎日の日課になってきていた。
3週間が過ぎて、ドラケン君、エマちゃん、パーさんとぺーやん君、パーさんの奥さんがこの街に到着した。隆の交友関係は知らないけれど、隆の嬉しそうな顔で彼等がどれだけ隆にとって大切なのかが直ぐに分かった気がした。隆が手続きしておいた3つの小さな家に灰谷さん兄弟、ドラケン君とエマちゃん、パーさんと奥さん、ぺーやん君が住める事になってまた仲間が増えて賑やかになった。最初は少し複雑な表情をする事が多かったドラケン君とエマちゃんはここで生活するにつれて、少しづつだけど笑顔が増えていった気がする
そんな2人を見守っていた隆の横で彼をずっと支えて生きたいと私はもう1度固く誓った。千冬君に言われた言葉を思い出し、隆に愛してもらえる様に日々努力を惜しまずに頑張ろうと思った
それから春が来て雪も少しづつ溶け始めた頃、体の不調に気付き病院に行けば妊娠している事が分かった。
「パパでちゅよー早く産まれてきてね」
「……離れろ蘭、本当に殴んぞ」
「……ははははは」
ソファで寛ぐ私の大きくなったお腹に耳を当て、にんまりとしながら隆を見つめる蘭さん。本気で殴ろうとしている隆を止めるのはいつも竜胆君の役目になっていて、それを微笑ましく眺めれる様になった私は随分と肝が座ったと思う
「あ、雪那。エマちゃん来たぞ」
「本当だ、蘭さん、竜胆君ちょっと散歩行って来るね」
「気をつけて行ってこいよ~」
お腹を支えながら立ち上がると優しく腰に手を添えてくれた隆に微笑んだ。カーテンの隙間から手を振るエマちゃんに手を1度振ると、フワリと暖かいコートが背中に掛けられて手をギュっと握り締めてくれる
「パパは優しいですね~」
「当たり前だろ。2人の事愛してるからな」
サラッと口から出てくる隆の言葉に頬が熱くなる。玄関の扉を開ければ私と同じでお腹が少し大きくなったエマちゃんと、そんなエマちゃんを優しい瞳で見つめるドラケン君が立っていた
「一緒に連れて行って」と言って二人で飛行機に飛び乗った日。私はこんな幸せな未来を想像していなかったし、過酷な未来が待っているかもしれないと覚悟をしていた。でも、過酷な未来だったとしても私はきっと隆の傍にいれた事を後悔しなかったと思う。
「ん?……三ツ谷、ポストに手紙入ってんぞ」
「ああ、本当だ」
「うちに手紙何て送ってくる人いるの?」
「…………ルナとマナと……お袋だ。」
「えっ??」
「雪那と……子供に会いたいから見に来るって」
「……良かったな、三ツ谷。お前会いたがってたもんな」
「ああ」
ドラケン君から渡された手紙を開きながら、隆は少しだけ瞳を潤ませていた。隆にとって妹とお母さんがどれだけ大事な存在かはここに来てから聞いていたし、ずっと安否を心配していたからこれ程嬉しい事は無いと思った。「本当に良かったよ、三ツ谷」と言って泣き出したエマちゃんを見て、私とドラケン君はそんな彼女を見てつい微笑んでしまう
「ありがとうな、会えるのが楽しみだ。子供にも、家族にも……」
そう言って私に穏やかな微笑みを向ける隆の体を優しく抱き締めた
言語問題はまだまだ解決出来ず買い物が一苦労の時もあるけれど、ブラブラと隆と二人でフリマに行ったり有名な湖に連れて行って貰ったりと生活は十分充実していた。当初から内心心配していたお金の問題は「リビングの戸棚にある現金は好きに使って良いから」とサラリと言われ、戸棚を開ければまだ見慣れ無いこの国の現金が束になり置いてあった。「この時計も指輪も持っている宝石類も必要なら全部売るから、金の事は心配するな」と言ってくれた隆に小さく頷くと「私の方の貯金は2人の老後にとっとくね」と言って彼の手を握った
「……俺がじーさんになっても一緒にいてくれるんだ」
「……その頃は私もばーさんだし」
「50年後とかも仲良くやれてるといいよな」
「……うん」
ここに着いて直ぐに、あの3人に結婚するからと言ってくれたけれど隆は一緒に寝ていても頬に口付けするだけで私に手は一切出さなかった。結婚の事もあれ以来何も言ってくれないけれど、散歩の時や出かける時には必ず手を繋いでくれたり優しく気遣ってくれるのでそれだけで今の私には十分だった
二人で朝起きて朝食を食べて、掃除をしたり散歩に出かけて夜は5人でBBQをしたりお酒を飲んだりして毎日が日曜日感覚のまま日々はのんびりと過ぎて行った
その日は朝から隆は千冬君と釣りに出かけていたので、市場で買っておいた野菜を常備菜にしようとキッチンで料理を楽しんでいた。つまみ食いをしていたからか昼になってもお腹は余り空かず、一応作ったパスタをそのまま放置して庭いじりでもしようかと玄関のドアを開けると、少し先の路地を曲がろうとしていた2人組が私がドアを開いた音で振り返った。こちらを振り返りジッと私を見つめている2人の顔はどう見ても日本人だった
この小さな街で日本人は私達しか居ないと花垣君から聞いているし、もしかしたら隆達を探しているのか?と恐ろしくなり直ぐに家に入り扉を閉めて鍵を掛けた。ドキドキと高鳴る胸を押さえながらどうしようか考えていると、家の中からした突然の物音にビクリと体が跳ねる。「……えっ?何……」震える足に力を入れてゆっくりと音がしたであろうリビングに向かいドアを静かに開け中の様子を伺うと、その瞬間にぬっと出て来た手に腕を掴まれて思わず叫びそうになる。「シー」と聞こえると、直ぐに口を塞がれてしまい「大丈夫だからな、叫ぶなよ」と耳元で安心させる様な優しい声がした
「……三ツ谷…の知り合いだよな?彼奴は今居ないのか?」
こくこくと頷くと「あ、ごめんな」と言って口を塞がれていた手は離れていった。男の顔を見ればやはり面識は無い。隆とどんな関係かも分からないけれど、表情や仕草からこちらを攻撃する様には見えないのでとりあえず信用はまだ出来ないけれど乱暴にはされなかったので少しだけ安心した
「あの、どちら様ですか?……てか……どこから入ったの?」
「裏庭の窓から。……兄貴こいよ」
眼鏡の男が大きな声で庭に向かって叫べば、裏庭に通じる開いた窓から入って来た短髪の背の高い男は私を見て目を一瞬見開いた
「……あれ?松野ってこんな可愛いっけ?」
「兄貴ボケかましてる場合じゃねぇだろ。」
「……」
とりあえず黙っている私に二人は目を見合わせてから小さく溜息を吐くと、「座っていい?一応三ツ谷の知り合いなんだよね。待たせてもらっても?」と言って返事をする前にソファに腰を降ろした。良く見れば二人の身なりは余り綺麗とは言えないし疲れている様な顔をしている。ここに来た時の自分達の事を思い出して私は彼等の前に腰を降ろした
「……あの、日本から来て今着いたんですか?」
「ああ。途中色々あってかなり遅れたけどな。君には上手く説明出来ないかもしれないけど、三ツ谷とは元々敵同士だけど今は敵じゃない」
「……つまり?貴方達も逃げてきたんですか?」
「まあ、色々あってね。……てか、三ツ谷と松野と花垣と花垣の女の4人じゃ無かった?君は誰?何でここに居るの?」
「……えっと、私は三ツ谷の嫁……です」
「えっ?三ツ谷結婚してたんだ。へぇ、名前は?」
「 雪那です。貴方達の名前は?」
「灰谷蘭」
「竜胆。蘭の弟だ」
「あれ?灰谷さんて……、クラブ経営してた兄弟ですか?」
「おっ、何で知ってんの?」
「私はアマルフィに居たんです」
「へぇ、アマルフィか。行った事あるよ」
直接知っている訳では無いけれど、灰谷兄弟は有名だったし店長の話や色々とクラブ繋がりの話をしていると徐々に彼等の事を身近に感じ危険だとは思わなくなっていった。蘭さんの気の抜けた様なラフな感じが私の緊張を徐々に解いてくれたのかもしれない
「飲み物持って来ますね。……あ、お腹空いてます?何か出しましょうか?」
「実はすげぇ腹減ってんだよね。助かるよ」
「パスタとサラダ持って来ます、食べたらお風呂沸かしとくので良かったら入って下さい」
「助かるわ、あのさ…… 雪那ちゃん。もう1個頼んでいい?」
「何ですか?」
「抗生物質ある?後消毒液」
「もしかして……怪我してるんですか?」
「兄貴の足がちょっとね」
「今持って来ます」
「悪いね~ 」
直ぐに戸棚にある救急セットを取り出し蘭さんの隣に座ると、彼が捲ったズボンの裾には大量の血液が付着していて脹脛の傷は膿んでしまっていた
「これは……ちょっと酷いので病院行きましょう」
「悪ぃ、俺ら今金無くてさ……」
「スられたんだよなー竜胆」
「…………嫌味な奴だなぁ」
「お金なら大丈夫ですよ、蘭さん歩けます?」
「ああ。平気」
竜胆君が肩を貸す形で蘭さんはゆっくり歩いて車庫にある車に乗ってくれた。直ぐに車を出して病院に向かい、ジェスチャーと携帯の翻訳で何とか彼を先生に治療して貰う事が出来たのは家を出てから1時間半後の事だった。お会計を済ますと頭を下げてきた2人に「お礼なら隆に言って下さい」と言えば2人は頷いてから車に乗り込んだ
「蘭さん、足は大丈夫でしたか?」
「何言ってたのか全然分かんねぇけど、大分痛くは無くなったな」
「はぁ、腹減った」
「ふふふ。もう直ぐ家着きますから。そういえば蘭さんは足にビニール巻けばシャワー浴びれますか?」
「すげー風呂入りたい。雪那、洗うの手伝って」
「……兄貴、頼むから三ツ谷と喧嘩になる様な発言すんなよ」
「冗談だよ」
そんなやりとりをしながら坂を登れば自宅が見えて来て、家の前に居る人影は隆と千冬君だと直ぐに分かりクラクションを1度鳴らした。こちらを見た2人にゆっくり車を近付けると、助手席に座って居た蘭さんがニッコリとしながら2人に手を振っていた。蘭さんの姿を見た隆と千冬君の驚愕した顔に私が思わず苦笑いしてしまうと、停車した途端に私は直ぐに車から降ろされてしまった
「……灰谷……」
「よぉ、三ツ谷久しぶりだな。今嫁ちゃんに病院連れて行って貰ったんだけど治療費出させちゃったから貸しにしといてくんね?」
「……悪ぃな三ツ谷、……兄貴がマイキーに撃たれてな」
「……何だと?マイキーもここにいんのか?」
「いや、マイキーは日本にいる。…… 雪那ちゃん居るから後で話すわ」
その言葉に頷いた隆は千冬君に車を車庫に入れる様に頼むと、私の手を引き家の中に向かって歩き出した。振り返るとお兄さんに肩を貸しながらこちらに向かってくる竜胆君の姿を見てそういえば彼等がお腹を空かせている事を思い出した。「……竜胆君と蘭さん、お腹空いてるみたいだからパスタ温め直してくるね」そう言って、いつもと違い笑顔無く頷いた隆の背中を1度撫でて直ぐにキッチンに向かった。多分聞かれたくない話をするのだろうと思ったのでパスタを温め直してからサラダと一緒にテーブルに置くと、「ありがとうな」と言って来た2人に微笑んでから直ぐにリビングを出た。お風呂の掃除をしてからお湯を沸かして、2階の空き部屋の掃除をしていると窓の外はもう日が暮れている事に気づいてキッチンに戻る事にした。リビングのドアを開くと千冬君も交え4人でソファに座っていた。皆の顔に笑顔は1つも無かったが、私が部屋に入ると皆こちらを見て少しだけ気遣うように微笑んでくれた
「 雪那、お前どこにいたの?」
「2階の空き部屋掃除してたよ。竜胆君、蘭さんお風呂沸いてるので良かったらどうぞ、2階の部屋も使って下さいね」
「助かるよ、雪那ちゃん。ありがとな」
「 雪那、悪いけど足に巻くビニール頂戴な」
「あ、そうでしたね。持ってきます」
「……灰谷、人の嫁呼び捨てにすんなよ」
「三ツ谷可愛いなぁ」
「…………」
ニヤニヤとする蘭さんの足を隆がニッコリしながら軽く掴むと「いってぇなボケ」と言って眉を寄せた蘭さんに「兄貴が悪い」と言って溜息を吐く竜胆君を見ながら私と千冬君は笑ってしまっていた。蘭さんに肩を貸して竜胆君が立ち上がると隆が2人をお風呂場に案内していたので千冬君が座るソファの横に腰を降ろした
「……あ、千冬君。車ありがとうね」
「いえ、雪那さんもお疲れ様でした」
「…………言えない話なら良いんだけど……、大丈夫そう?」
「……良い話も聞けました。生き残ってた仲間がこちらに向かってます」
「……悪い話もあったって事?」
「…はい…でも……きっと大丈夫です。」
少しだけ微笑んだ千冬君は話題を変えるように「三ツ谷君もたけみっちもお嫁さん居て良いよなぁ。俺も早く嫁さん欲しいぜ」何て笑いながらソファに寄りかかる
「……私達は……夫婦に見えるかな?」
「……えっ?」
「……私と違って隆は……、友人が死んで心が弱ってた時に私が近くに居たから……。彼は私の事を本当に愛してる訳じゃないと思う」
「………… 雪那さん」
「付き合ってた訳でも無いしね。……でも私は彼の傍に居れるだけで幸せ」
「 雪那さんがそう思うなら、これから沢山雪那さんを知って貰って好きになってもらえば良いんじゃないですか?」
「……千冬君……」
そう言って私の瞳を真っ直ぐ見つめる千冬君は真剣な表情をしていた。その言葉がやけに胸に刺さり、何だか良い意味でジンとした。「三ツ谷君は……」と口を開いた千冬君の言葉は隆がリビングに入って来た事で聞けなかったけれど、「夕飯どうする?」と私の隣に座った隆に「ピザがいいな」と少し微笑むと私の頭を撫でた隆は「ならそうするか」と言ってくれた
私達を優しい眼差しで見つめながら「タケミッチ達呼んできます」と言って立ち上がった千冬君に隆は頷いいた。千冬君が部屋から出て行くのを確認してから私の肩を抱いた隆に少し驚いたけれど、何だか嬉しくて彼の肩に頭をちょこんと置いた
「……どしたの?隆が肩抱いたりするなんて……珍しい」
「…… 雪那が家に居なくてすげぇ心配した。電話も出ねぇし、何かあったのかと思った」
「ごめん。蘭さんの怪我がかなり酷くて焦っちゃってさ。隆に電話するべきだった」
「いや、良いんだ。ただ、無事で良かった」
下を向いた隆の瞳は何だか少しだけ揺れている気がした。マイキーさんが誰だかは分からないけれど、竜胆君が「マイキーに兄貴が撃たれた」と言った時の隆の顔はかなり驚愕していた。色々と聞きたいけれど、話してくれるまで待つべきだと思い隆の手を握った
「……ねぇ、隆」
「……ん?」
「……あのさ、もし隆が嫌じゃ無かったら……」
「……何だよ、ハッキリ言えよ」
「私の事、抱いて欲しいの」
「………………」
「……嫌?」
「……嫌な訳ねぇだろ」
フッと薄く笑った隆に心底安心してドキドキしていた胸を撫で下ろした。「嬉しい。……ずっとこうしたかった」そう心から思っていた気持ちを口にしてから彼の胸に飛び込んで背中に手を回す。トクトク聞こえる心音を聴きながら目を瞑ると「えっ?抱くってそっち?」と隆が何か言っているのが聞こえたけれど、私は今この瞬間が幸せ過ぎて返事はせずに彼の胸に頬を寄せていた
「……三ツ谷は奥手なんだな」
「兄貴本気でやめろ、 聞いてたのバレんだろ」
「……お前ら2階行けよ。……空気読めや」
そんな会話も聞こえて来たけれど、背中に回された隆の手が温かくてその余韻に浸る様に目を瞑っていた。その後直ぐにタケミチ君とヒナちゃん、千冬君が家に来て皆でわいわいと夕飯を食べた。灰谷さん達も一緒に食べていたけれど、やはり疲れがあるのが1時間もしないうちに休むと言って部屋に戻って行ってしまった
皆が帰ってからお風呂に入り、出た後に片付けをしたり軽く掃除機をかけていると時刻は23時を過ぎていた。今日は灰谷さん達の事もあったし、少し疲れたなと思いながらソファに腰を下ろせば窓の外は雪がちらついている。湯冷めする前に布団に入ろうと立ち上がると急に手を引かれて体が包まれた
「……ビックリした」
「雪降ってきたな。冷えるからもう寝ようぜ」
「……隆……」
優しい笑みを浮かべながら私の頬に口付けを落とす隆も何だか少しだけ疲れている様な表情をしていた。抱き締められた体を少し離し彼の手を取って寝室に向かうと大人しく後ろから付いてきてくれる。ベットに辿り着くと欠伸をしながら横になった隆の隣に私も横になった
隆から手を出される迄ゆっくり待とうと思っていたけれど、先程彼に抱き締めてもらってしっかりと分かった。彼に愛されてるって確信が欲しくて、「好きだ」って言葉も欲しくて自分を求めて欲しい。そんな事を考えながら彼の横顔を見つめていると、胸が高鳴り自然と隆に触りたくなって柔らかな黒髪に手を伸ばした
「……ん?どした? 」
「……触っていい?」
「……ああ?いいけどよ……」
何だよと少しだけ笑った隆を見つめながらリモコンで電気を消した。まだ目が慣れておらず、暗闇の中で上半身を起こすと隆の頬に手探りで手を添えた。「ん?」と聞こえた声を塞ぐ様に彼の唇に口付けを落とすと、何秒かしてから私の後頭部に手が添えられてゆっくりと唇の中に侵入してきた舌が舌を絡めとる
拒絶はされない事は勿論分かっていたけれど、私に応える様に引き寄せてくれた隆の手が嬉しかった
反対の手が服の中に入って来て、温かい手が胸の膨らみを触り指先が突起に触れると「ふっ」と自分の唇から声が漏れた。その瞬間に上体を起こして上に被さって来た隆は私の耳たぶを優しく噛むと「……していい?」と囁いてくる。コクと首を縦に振ると、ゴツゴツとした手が服と下着を剥ぎ取っていく。露になった胸の突起を優しく舐められ、太ももを撫でられると少しづつ気持ちが良くなってきて恥ずかしさも忘れ喘いでしまっていた
「……んん、はぁ、……気持ちいい」
「……ん」
「……隆のも触っていい?」
「……いいよ」
彼の下着に手を入れると大きくなった熱い物を優しく撫でて包む様に触る。暗くて表情は余り見えないけれど「ん」と少しだけ漏れた声に何だか嬉しくなって下着を下ろして口に入れ、優しく舌を這わせた
「……やべぇ。すげぇきもちぃ」
「……んん」
余裕が無い様な隆の声を聞いた事が無かったからか、思っていた以上に嬉しくて弱い所を見つけながら舌を這わせている自分がいた。目が暗闇に少し慣れてきて、彼の歯を食いしばる表情を見ているともっとしてあげたくなってしまう。いつの間にかぴちゃぴちゃと水音が響き、割れ目をなぞっていた指が滑るように中に入って来ると久しぶりだったから快感が強くて少し動かされただけで直ぐに果ててしまった。「んあ、あぁ」と隆の物を口に入れながら達してしまうと「……わりぃ、もう限界」と呟いた隆は私の手を引いて寝かせるとそのまま遠慮なく中に入ってくる
「んん、あ、あぁぁぁ」
「…… 」
果てたばかりの中がビクビクと彼を締めつけるのが良く分かった。寒いのに何だか体が熱くて、うっすらと汗ばんだ私の額やこめかにキスを落としながら奥を突く彼の背中に手を回すと隆の背中も汗ばんでいた。「はぁ」と彼の気持ち良さそうな吐息が漏れる度に私も気持ちが良くて頭が真っ白になりそうだった。「……はぁ、き、きもちぃ。……またイっちゃう」涙声でそう言った私に少しだけ嬉しそうに笑い「俺も」と言った隆の背を優しく撫でると「好きだよ、雪那」と言った彼は深い口付けをくれた
終わってからも裸のまま、後ろから私を抱き締めて離さない彼が愛おしい。私のお腹を優しく撫でる隆の手を撫でると、1度ちゅっと音を立てて頭に口付けた隆は耳元で囁く様に口を開いた
「……なぁ、雪那 。俺ずっとお前を抱いて良いのか迷ってた」
「……何で?夫婦なのに」
「きっかけがあんな感じでさ。付き合ってもねぇのに急に同棲して……。それにお前が好きだったのは小学校の時の俺だっただろ?」
「小学校の時に好きだったのは確かだけど、…今の隆が好きだよ」
「……雪那。」
「……私は隆に好かれてるか……不安だった。けっこう無理矢理ついていったからさ」
「……無理矢理何かじゃねぇよ」
「…今日、…抱いてくれて本当に嬉しかった」
「俺も……嬉しかったよ」
体の関係だけが全てでは無いけれど、深い繋がりを持てた気がして嬉しかった。と言ってくれた隆の言葉は私にもピッタリな気がした。今迄遠慮していた気持ちを解放する様に隆に向き直り、沢山の口付けをすれば彼は嬉しそうに笑ってくれて私を力強く抱き締めて息が出来ない程の口付けをくれた。そのまま二人で裸で抱き合って眠ると、この街に来て何だか1番幸せな気持ちで眠れた様な気がした
それから、灰谷兄弟と4人での生活が始まって何かと私に構う蘭さんに隆は良い顔はしなかったけれど
良く観察していると、私に構いたいんじゃなくて妬いてる隆をおちょくる事が蘭さんは楽しいみたいだった。「兄貴はタチが悪ぃ」と呆れている竜胆君と、言い合いをしてじゃれている2人を見ながらお茶をすする事が毎日の日課になってきていた。
3週間が過ぎて、ドラケン君、エマちゃん、パーさんとぺーやん君、パーさんの奥さんがこの街に到着した。隆の交友関係は知らないけれど、隆の嬉しそうな顔で彼等がどれだけ隆にとって大切なのかが直ぐに分かった気がした。隆が手続きしておいた3つの小さな家に灰谷さん兄弟、ドラケン君とエマちゃん、パーさんと奥さん、ぺーやん君が住める事になってまた仲間が増えて賑やかになった。最初は少し複雑な表情をする事が多かったドラケン君とエマちゃんはここで生活するにつれて、少しづつだけど笑顔が増えていった気がする
そんな2人を見守っていた隆の横で彼をずっと支えて生きたいと私はもう1度固く誓った。千冬君に言われた言葉を思い出し、隆に愛してもらえる様に日々努力を惜しまずに頑張ろうと思った
それから春が来て雪も少しづつ溶け始めた頃、体の不調に気付き病院に行けば妊娠している事が分かった。
「パパでちゅよー早く産まれてきてね」
「……離れろ蘭、本当に殴んぞ」
「……ははははは」
ソファで寛ぐ私の大きくなったお腹に耳を当て、にんまりとしながら隆を見つめる蘭さん。本気で殴ろうとしている隆を止めるのはいつも竜胆君の役目になっていて、それを微笑ましく眺めれる様になった私は随分と肝が座ったと思う
「あ、雪那。エマちゃん来たぞ」
「本当だ、蘭さん、竜胆君ちょっと散歩行って来るね」
「気をつけて行ってこいよ~」
お腹を支えながら立ち上がると優しく腰に手を添えてくれた隆に微笑んだ。カーテンの隙間から手を振るエマちゃんに手を1度振ると、フワリと暖かいコートが背中に掛けられて手をギュっと握り締めてくれる
「パパは優しいですね~」
「当たり前だろ。2人の事愛してるからな」
サラッと口から出てくる隆の言葉に頬が熱くなる。玄関の扉を開ければ私と同じでお腹が少し大きくなったエマちゃんと、そんなエマちゃんを優しい瞳で見つめるドラケン君が立っていた
「一緒に連れて行って」と言って二人で飛行機に飛び乗った日。私はこんな幸せな未来を想像していなかったし、過酷な未来が待っているかもしれないと覚悟をしていた。でも、過酷な未来だったとしても私はきっと隆の傍にいれた事を後悔しなかったと思う。
「ん?……三ツ谷、ポストに手紙入ってんぞ」
「ああ、本当だ」
「うちに手紙何て送ってくる人いるの?」
「…………ルナとマナと……お袋だ。」
「えっ??」
「雪那と……子供に会いたいから見に来るって」
「……良かったな、三ツ谷。お前会いたがってたもんな」
「ああ」
ドラケン君から渡された手紙を開きながら、隆は少しだけ瞳を潤ませていた。隆にとって妹とお母さんがどれだけ大事な存在かはここに来てから聞いていたし、ずっと安否を心配していたからこれ程嬉しい事は無いと思った。「本当に良かったよ、三ツ谷」と言って泣き出したエマちゃんを見て、私とドラケン君はそんな彼女を見てつい微笑んでしまう
「ありがとうな、会えるのが楽しみだ。子供にも、家族にも……」
そう言って私に穏やかな微笑みを向ける隆の体を優しく抱き締めた
