歩くような速さで
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夜が更けてきて、今日は母親が家にいるからウチに泊まると言う隆と一緒に私の部屋のベッドに入り横になった
疲れたのか目を直ぐに瞑ってしまった隆の腕に、顔を半分乗せてお腹に手を回しこの温かさを感じながら私も目を瞑る。数分して、ふと暗闇の中耳に入ってきた小さな隆の声で目を開けた
「なぁ、…雪那…ごめんな」
「……何が?」
「マイキーに携帯渡したの俺」
「……あぁ、隆んちに忘れたのかと思った。見当たらないからさ」
「雪那が寝てる時にマナがイタズラしてて取り上げた。ちょっと気になって中見たらさ、日付とか待受のお前と鴨志田さんの顔とか大人で違っててさ。様子もおかしかったし、そん時丁度マイキーから電話きたから話したら持ってきてって言われて……お前に言わずに持ち出して悪かった」
「...うん、でもきっとそれで良かったんだよ」
「今日、すげー内心驚いたけど。何か納得したから安心した」
「……ねぇ、変な事聞いていい?」
「ん?」
「もしさ、今で良いんだけど...。こんな日々が毎日続いててさ」
「ああ」
「私が、急に...稀咲って人に殺されたらどうする?」
「……」
「うちのお母さんから連絡きて、病院に行ったら霊安室に通されてさ。額に穴が空いた私が冷たくなって寝てたらさ……」
スっと腕が私の背中に周り、隆の唇が頬に擦り寄る
「……分かんねーけど多分……稀咲殺すかな。そんな事してもお前は喜ばねぇって分かってるけど、その憎悪に勝てないかもしれねぇ」
「…あくまで…私の憶測だから、違ったら稀咲君には悪いんだけどさ。……私この世界で稀咲君に会いたくないんだよね」
顔見たら、私どうなっちゃうか分かんない。そう付け加えてから私も隆の頬に擦り寄る
「……まぁ、そう、だよな。」
「…違うかもしれないから気にしない様にしてたけど、花垣君には何か確信した物があった。隆も稀咲君には気をつけて」
「……ああ」
「……安心したら眠くなって来ちゃった」
「……今日はもう寝ろ、おやすみな」
手をキツく握ってくれた隆に私は安心して目を閉じた
耳鳴りがした
嫌な予感がして、目を開ける
「聞いてんの?」
「...えっ?と、林…………かな??」
「お前何言ってんだ?その物件審査通ったから母ちゃんに伝えておけよ」
「……物件?」
キョロキョロと辺りを見渡すと、テレビに出てくる様なヤクザの事務所の様な場所で柔らかいソファに腰掛けている
目の前には少し大人びた林の姿。無言で私を見ているのは林田。状況が掴めずにポカンとしていると、林田がお茶を出してくれてお疲れさんと言ってきたのでありがとうと言ってお茶を頂いた
「...林さ変な事聞くけど、今いくつ?」
「……お前、そうとう堪えたんだな」
「……何の事?」
「まぁ、当たり前だよな。俺達も未だにかなりきついからな。なぁ、パーチん」
「……ああ。雪那ちゃんも三ツ谷と別れて結構経つけどよ、ドラケンの事は慕ってたもんな」
「……はっ?別れた?」
「……俺は三ツ谷と別れてねぇよ。別れたのは雪那ちゃんだろ」
「パーチん、多分そうゆう意味じゃねーよ」
「……てか、さっきの言い方…。ドラちゃんに何かあったの?」
「……本当に混乱してるんだな。さっきずっと話してただろ。先月に撃たれて死んだ……もう2週間前だ」
その瞬間に心臓がドクンと鳴って胸が締め付けられる様に痛い。目の前が暗くなるような感覚に思わず両手で口元を覆い、そのショックに呑まれない様に大きく息を吸って吐き出した。ゆっくりと目を瞑るとドラちゃんの笑顔が出てきて、歯を食いしばる。その瞬間に我慢が出来なくなり涙が滝のように溢れてきて、止まらない
目を開けるとハッとした顔をした2人がアタフタしながら書類の紙やティッシュ、ハンカチなどを寄越して来るが顔を両手で覆った手が震えてしまい私はただ泣き崩れてしまった
背中をさすってくれた、林と林田にお礼を言って事務所の様な所を出た。結局落ち着くまで時間がかかってしまい、今も少し信じられなかった。鞄の中から携帯を取り出すと、新しい携帯に変わっていて鞄の奥には25歳の時の黒い携帯も入っていた
新しい黄色の携帯を開くと時刻は16時。近くにあった自販機で珈琲を買ってベンチに座りLINEを確認した。西暦から見て私は17歳。多分高校2年生だ
三ツ谷隆の名前を探せば、最後に連絡をとったのは半年前。隆のLINEの履歴を見ても、何が別れる決定的な原因なのか良く分からなくて
頭を悩ませていたが、今現状が良く分からないし何よりドラちゃんが死んだ事で隆が苦しんでいないかが心配だった。とりあえず隆に直接正直に話して聞いてみようとしか頭には浮かんで来なかったので連絡もせずにそのままの泣きっ面で隆の自宅に向かいトボトボと歩き出した
いつもの道を歩き最近は良く出入りしていたアパートのインターホンを押すと、ドアの隙間から顔を出したのは少し大きくなったルナとマナで私の顔を見た瞬間にぱぁっと花が咲いた様に笑った2人は玄関の扉を力任せに開けて私の足元に抱きついてくる。ドラちゃんの事で胸がまだ痛かったのに、雪那 ちゃん嬉しいと笑う2人を抱きあげて腕に少しだけ力を入れると何だか和らいだ気がした
2人を抱いたまま隆の部屋に入ろうとすると、2人が何か言いたそうな顔をしたのでどうしたの?と聞くとお兄ちゃん今色々大変なのとルナがポツリと呟いた
「少しだけ聞いたよ、大丈夫だから」と言って安心させる様にルナを撫でると、マナが雪那ちゃん泣いたの?と言って頬をヨシヨシと撫でてくれる。2人をその場に下ろすと、ちょっと話してくるねと言って拳を握り部屋のドアにノックをした
ノックをして何分か経っても部屋からは特に何も聞こえて来ず、たまに聞こえるのは線を引く様なペンの音だけだ。この扉を開ければ彼に会えると思う気持ちが返事も無いドアのノブを下ろしゆっくりと開けてしまう
「……ルナ、入ってくるなって言っ……」
「……た、隆。だよね?髪……伸びたね」
「……隆?……お前、もしかして25歳の雪那?」
「……何で分かるの?」
「……雪那は今三ツ谷って呼ぶ……。後雰囲気が全然違う」
髭が生え、体はやせ細り昨日までの隆との違いに私は混乱してしまう。また涙が溢れてきて私はいても経っても居られなくて隆に走りよると頭を抱きしめて彼の髪に顔を埋めた
ぐずぐずと泣く私の腕の中で呆然として、何かを考えているのか生気の無い瞳でただただ下を向く隆の頬に唇を寄せ、お願いだから何か作るから食べてと声を振り絞った
「……雪那 」
「……隆、お願い。」
「雪那会いたかった……」
そう言った隆は急にギュッと骨が折れるんじゃないかってくらいキツく抱き締めてきた。後頭部に置かれた手に力が入り引き寄せられて唇に激しく口付けされる
「お兄ちゃんえっちー」
「マナ静かに!」
扉から聞こえた声に反射的にそちらを向けばルナがマナの口を抑えていた。隆は私を直ぐに離すと、1度席を経ってから2人が覗くドアを優しく閉めた
その姿を見てくくくっと私が小さく笑うと、隆はやっと少しだけ笑ってくれた
「……いつ来たんだ?」
「今。気付いたら林と林田といた」
「はっ?何で??」
「うちのお母さんが住む物件をどうやら探していたみたい。……そこで隆と別れた事もドラちゃんが亡くなった事聞いて。良く分からないから隆に逢いに来た」
「……そうか。ごめんな、お前と続いてなくて」
「いや、何かあったの??てゆうか私なんだよね。あれ?別れた記憶ある…かも…」
「……ま、そんな感じ」
「……これは私が悪いわ。自分の事しか考えて無さすぎる」
「……自分の記憶に第三者視点で突っ込むお前すげーよ。」
「隆ヤキモチ焼きだね、可愛い」
「……何かムカつく気がするんだけど、25のお前に怒れない俺がいるんだよな」
「マイキー達と話した日が私にとっての昨日なんだ」
「……俺からすると約2年ちょっとか」
「…何か…私馬鹿だね、隆がこんなに弱ってるのに傍にいないなんて」
「……俺も凄い怒ったからな。雪那は、雪那なりに17の女子で頑張ってたよ。ただ、俺が嫉妬したり激しかったからさ」
「……私の知ってる隆は嫉妬何てしなかったけどね」
「あの事があって、お前から話聞いた時にお前には俺しかいない。お前は俺の物だってのが出来上がっちまったんだよ。雪那はそれに耐えられなかった」
ボサボサの髪を掻きむしる隆の姿を見ていたくなくて、とりあえずご飯作るからお風呂に入ってから髭を剃ってきてと頼むと彼はアッサリと了承してくれた
冷蔵庫には余り食材が無かったので、ルナとマナと買い物に行ってくると私が言えば隆は少しだけ待っててと言ったので3人であやとりをしながら外で待っていた。15分くらいして出てきた隆はしっかり髭も剃ってあって相変わらずお洒落に服を着こなしていた。ルナとマナがお兄ちゃんとお出かけと言って喜んでる姿を見てホッとしたけれど、未だにドラちゃんが死んだ事が私でさえ相当ショックなのに隆はどれだけ辛いんだろうと悲しくなる
そして、1番はちょっと煩かったとはいえこんな隆を放り出して他の男と遊んでいる17の自分だ。本当に自分に腹が立つ。プンスカと自分の記憶を辿りながら自分に説教していると、小さな可愛い手が私を優しく包む
「 雪那ちゃん来てくれて良かったー。」
「お兄ちゃん捨てられたかと思ったー」
「……おぃ、ゴミみたいに言うなよ」
「お兄ちゃんは必ず 雪那ちゃんが嫁に貰うから安心してね」
「……何か嬉しいけど複雑だな」
「お兄ちゃんが貰われるんだー」
「ふふっ。今日は3人の好きなハンバーグにしようか」
「やった」
と3人の声が合わさったのでハンバーグにする事は決定にした。マナを肩車している隆は随分と痩せたけど優しさは変わらずだった、そんな様子に心から安心して彼の腕に抱き着くと愛しいものを見る様な瞳で見つめられて素直に照れてしまう。
4人でスーパーで買い物をして、支払いの時に財布を開けると入っている金額にビックリして自分の財布なのに口を開けてポカンとしてしまう。そんな私の形相が不思議に思ったのか、隆がチラッと私の財布を覗いてきてギョッとした顔をした。私の頭を優しく叩きお前は出さなくていいからなと言って自分の財布から1万円を取り出した隆はレジに置いた
そのレジに置かれたお金を取ると、自分の財布から抜いた1万円を出してレジに置くと隆の1万円を彼のポケットに突っ込んだ
「いいって言ってんだろ」
「こんなにあるからいいよ」
そんな言い合いを始めた私達を見て、レジのおばさんがクスクスと笑うと頑として引かない私に諦めた様な顔をした隆は「ありがとな」と言ってお金を財布にしまうと、一部始終を見ていたルナとマナは「お兄ちゃんの負けー」と言ったので、それを聞いて吹き出したレジのおばさんを見て私もつられて笑ってしまった
帰り道にあったおもちゃ屋で、ルナとマナが欲しいと言った物全てを買ってあげるとトイレから帰ってきた隆に流石に怒られた。確かに隆からすれば、甘やかしすぎに見えるのかもしれない。だけど、2人が欲しい物はなるべく与えてあげたいから中学から仕事をし始めたと少し遠慮気味に言うと、隆は少しだけ困った様な顔で俺の誕生日にも最高級の裁縫セットやら、布やらをプレゼントしてくれたとポツポツと話してくれた
言われると、そういえばそんな事もあったなといつもの様に思い出す。それと、自分の仕事は地味に成功している様でとても安心して胸を撫で下ろした
「…ルナもマナも…流行りの物持ってると小学校で楽しく会話出来るじゃん」
「本当にお前が優しいから嬉しんだけどさ。俺がかっこ悪ぃだろ」
「隆だって10年後からここに来れば、お金稼ぐのは簡単だよ。だって音楽とか流行りのデザインとか全部知ってるんだよ?」
「まー、そうか」
「私は有名人とかに興味無いから皆が豊かに生活出来る程度稼げれば良いと思ってる。だから、2人に何かを買うのは許して欲しいよ」
「……まぁ、ありがたいけどよ」
「隆だって25で高層マンション1人暮らしだったんだよー。アルマーニのスーツにブランドバッグ」
「……凄ぇ金持ちだな」
「ね、第三者みたいになるでしょ?」
「ああ。自分の事の様に思えねぇわ」
「……過去でも覚えてない事もあるから、そんな風に未だになっちゃうのよ」
「……ま、お前は何も悪くねぇんだし、そんな風でも俺は分かるから気にすんな」
「……ありがと。……ほら、お兄ちゃん怒ってないよって2人に言ってきな」
沢山の荷物を抱えたルナとマナはお兄ちゃんに返品されるんじゃないかとビクビクしながらこちらの様子を伺っていた。そんな様子を見た隆は2人の前まで走り寄り、しゃがみ込むと「兄ちゃんが悪かった」と言ってから2人の頭を交互に優しく撫でる。ルナとマナは何回も返さなくていいかと聞いていて、うんうん言っている隆をホッコリした気持ちで見ていた
帰ってきてから女3人で沢山作ったハンバーグは最近胃にあまり物を入れて無かったのか隆はあまり食べられず、ルナとマナが頑張ってくれても5個も残ってしまった
申し訳無さそうにする隆に明日食べれたら食べなよと言って後ろから優しく抱き締めた。体重が戻るまでご飯作りに来ても大丈夫??聞くと「ありがとな」と優しい声色で言われて。あぁ、ちゃんと戻れそうだなと思った
良かったと思い珈琲でもいれようかとキッチンに戻ろうとすると、ポケットに入れておいた携帯が振動していて、画面を見れば着信堀北と出ていた。その瞬間にハッとして思わず隆を見ると、まだお腹が苦しいのか擦りながら付けっぱなしのテレビを見つめていた
高校の同級生で、隆と別れている時にアプローチされていた男の子で確かご飯を食べたくらいだと思う。留守電にする事も考えたけれど、また掛かって来たり隆に嫌な思いをさせるくらいならきちんと寄りを戻したから掛けてこないで。と言った方がのちのちにも良いと思い、何の思い入れも無い堀北君からの電話を取り「もしもし」と口を開いた
「今何してんの?近くにいるんだけど家行っても大丈夫かな?」
スピーカーにしていないのに音量がMAXだったのか自分の携帯から堀北君の声がやけに響いて、私はあちゃーと内心思いながら隆を見た。珍しく鋭い目線を向けてきた隆の視線から目を逸らすとハッキリとした口調でスマホに向かって口を開く
「堀北君、悪いんだけど。三ツ谷と寄り戻したから電話して来ないで欲しいんだ」
そう言った私に何秒か無言だった堀北君はいつもの優しい口調は無くなり「ふざけんなよ」とかなり高圧的な態度になって私を攻め立てる。このまま面倒だから切っちゃおうと思いスマホを耳から外した瞬間に今まで何も言わずに静観していた隆は私のスマホを取り上げると冷たく低い声で堀北君を威嚇した
「……てめぇ。ふざけんなよはこっちの台詞だボケ」
「……三ツ谷か」
「人の女に手出しやがって……次何かあったらマジで
ぶっ飛ばすからな」
チッと小さく聞こえた舌打ちが最後で電話は切れた
暴走族は引退したけれど相変わらず怒ると怖いなと思いながら隆を見ると、電話を切られた隆は私に携帯を渡し無表情でブロックしとけよと言い珍しく舌打ちした
「……コイツが結構やっかいな奴でさ」
「堀北君?」
「あー、お前には凄い優しいし紳士だけど裏ですげーゲスなんだわ」
「ゲスって??」
「恐喝とか弱いものいじめとか」
「……恐喝?……私見る目無いじゃん」
「お前を狙ったのも、何か裏がありそーでさ。俺に喧嘩ふっかけて、三ツ谷に絡まれてるとか言って嘘ついてたり」
「……それ信じないで一緒にご飯食べる私ヤバい」
「まぁ、相当優等生だからな。親が刑事だから俺に何かしたら分かるだろみたいな」
んもぉ見る目も無いし何なの私。と自分に怒ると隆はゲラゲラと笑って「そういえば、おばさん元気か?」と聞いてきた。それを聞いて、うっすら出てきた記憶は癌が完治した三浦さんと住むから部屋探してと甘えてくるお母さんとの電話したのが少し前だ
「三浦さん、癌が完治したからお母さんと一緒に住むってさ。それで林とぱーちゃんの所で探してたの思い出したわ」
「俺が聞いてた時は治療中だったからな。良かったな」
うんと頷くと、隆は三浦さんから毎月沢山贈り物が届くと言って笑っていた。私が何か言ったらしく大体ルナとマナの好物だそうだ。ルナとマナの中では顔も見た事が無いおじさんから毎月果物やお菓子類、色々な物が届くのでサンタさんと呼ばれているらしい
チラッと2人を見れば、リビングのソファで今日買ったばかりのゲームに夢中になって遊んでいる
「隆、お腹いっぱい?」
「何で??」
「プリン作ったけど、食べない?」
「「食べるー」」
「ルナとマナ、沢山食べる様になったね」
「……俺は腹いっぱい」
「……私、筋肉質でちょっと肉づきが良い人が好きだな」
「……分かった。食う」
ニヤッとした私に隆はお腹を擦りながら観念した様に笑うと、少し甘えた様な顔をしてから私の腰を抱き締めて胸に擦り寄ってくる。そんな彼が可愛くて「よしよし、良い子」と言いながら髪に顔を埋めて優しく抱き返すと、後ろから「2人らぶらぶー」と可愛らしい声がして隆が吹き出してしまっていた
「早くプリン食べたい」と言った2人にはいはいと言ってキッチンに戻りプリンを4人分用意していると、横で珈琲を入れてくれる隆に胸が暖かくなった。スリスリと腕に頬を寄せてお礼を言うと、今日は2人が寝たら半年分食べさせてもらうから宜しくなと笑顔で言われ嬉しいような怖いような気分になり「う、うん」と言って目を逸らすとクシャリと髪を優しく掴まれて唇に触れるだけの口付けをくれた
まるで、体の全部を味わいながら愛撫してくる隆に顔から熱が止まらない。でも、やっぱり痩せ過ぎてしまっていて触れる度に骨ばって感じてしまい少しだけ悲しくなってしまう
「...体力無くなってんな」
「仕方ないよ、ちょっとづつ戻そう」
2回出来れば十分だって。と付け加えた私にまだまだ足りねぇが体がついていかねぇと肩で息をする隆の汗ばんだ額に口付けをしてから背中に手を回した。15歳の時と体が違うからか、凄く気持ち良くて彼が深く入ってくる度に私の体は彼を締め付けるのが良く分かる
「……なぁ、変な事聞いていいか?」
「ん、なら動かないで……」
「離れてる半年の間、誰かとこうゆう事した?」
「……」
本気で思い出してみるが、そうゆう記憶は特に無かった。堀北君に手料理をご馳走している記憶があるがキスをされて、制服に手を入れられたけど何か嫌で鞄を持たせてその時に直ぐに帰してしまった
そこで、これも十分不味いのか?と思いハッとすると隆の動きは止まり私を無表情で見つめていた
「……隆くん?」
「……何で黙ってんの?」
「今、思い出してたんだけど、している記憶は無かったよ」
「……お前、何でカタコトなの?」
「嫌、何かキスされてたみたいなのはあったかな」
「誰?堀北?」
「う、うん。でもスカートに手を入れられて嫌で帰ってもらってるから」
「……へぇ。」
あ、切れたなって顔を見て直ぐに分かった
それからは声が枯れて意識が無くなるまで抱かれて続けた
喉の乾きで目を覚ますともう日は高くて携帯を見れば10時を過ぎていた
隣で寝ている隆は服も着ておらず、まだ深く眠っている。ベッド下から昨日脱ぎ捨てた下着と借りたTシャツ、スェットを着てから洗面所に入り顔を洗っていると「雪那ちゃん起きたー」と笑顔の2人が洗面所の扉からこちらを覗いていた
「2人共ご飯食べた?」
「お母さんと食べた」
「おばさんは?」
「ハンバーグ泣いて食べてた」
「えっ?何で泣いてるの??」
「お兄ちゃんが、もう二度と雪那はこの家に来ないと思うって凄く前に言ってたから。今日は雪那ちゃんの靴があってハンバーグもあってお母さん喜んでた」
「そ、そっか。何か哀しいな」
「何で?」
「うーん。泣かしちゃったからかな」
「……もう別れないでね」
「うん、頑張るよ」
指切りしてと言われて、ルナと指切りをするとマナもするーと小さな小指を出てきて私の心はキリキリと痛む反面、中々顔を合わせられないおばさんがそんなに思ってくれていた事が私は嬉しくて仕方なかった
台所で珈琲をいれ、飲みながら簡単に作れるホットドッグでも作ろうと切り込みの入ったパンを焼きながら欠伸をする。焼いたソーセージに適当にちぎったレタスとトマト、スライス玉ねぎを入れて野菜がなるべく分からない様にケチャップとマスタードで蓋をしてから味見がてら口に入れて咀嚼し珈琲で流し込んだ
全部作り終えてからおばさんの分はラップをして、昨日買って置いた卵とコーンでスープを作っていると余り機嫌が良くない時の顔で登場した寝癖だらけの隆はテーブルに置いてあるホットドッグに手を伸ばす。スープをよそって差し出すと、お礼は言うが私の目は見なかった
「んもぉ。何なのよ」
「その、んもぉやめて。普通に笑う」
てか、悪ぃ。お前声がガラガラじゃんと言われてジトリと隆を睨む。ルナマナに風邪だって心配されたと言うと、あんな奴とキスしたお前が悪いと子供みたいにプイッと不貞腐れた隆に可愛いって気持ちが溢れてきて笑ってしまった
笑っている私に目が笑っていない笑顔を向けてきた隆は、俺本当にはらわた煮えくり返ってるからと言われて私は笑っていた口を静かに閉じた
仕事があるから1回帰ると言って、隆の家を出てからコンビニに寄りジュースを買ってから帰宅し、ポストにある郵便物を取ると鍵を開けて中に入って唖然とした。リビングから部屋からゴミが散乱していたり洗い物までしていない。ふと、そこで蘇ってきた記憶
隆から、別れの様な言葉を言われた私はここで泣き腫らして仕事に没頭して学校をサボり床で眠っていた。
たまに片付けるのは人が来る時だけ。何だか色々どうでも良くなっていてそんな胸が空っぽな生活を繰り返していた気がする
思い出して胸が痛くて、辛かった感情まで感じて少しへこんでしまう
項垂れていても仕方ないしとりあえず片付けようと思い、ゴミを片付けながら今日も結局学校をサボってしまったなぁ何て思ったが
隆としっかり寄りを戻せたし、ご飯も食べて貰うことが出来た。満足かな何て思いながら全部の部屋にひたすらに掃除機をかけた
休憩を挟みながらトイレ、お風呂を掃除して、台所の片付けが終わる頃にはもう15時を指していた
ソファに横になりながら、携帯を開いて注文のチェックをする。1週間以内にピアスが50個。ブレスレットが8個。お金になるのは嬉しいが、疲れてる今見るんじゃなかったな何て思いながら目を瞑るといつの間にか意識がゆらゆらとしてきて私はそのまま眠ってしまった
ふと、肩を揺さぶられる感覚で目を覚ましゆっくり目を開けると、痩せた隆の顔が目の前にあって髪を撫でられてそのまま目を瞑った
「……おぃ寝るな、1回起きろよ」
「まだ眠いよ」
むくれながら上半身を起こし、そのまま体重をかけて隆に寄りかかると聞きなれた声で私の頭は覚醒した
「たかちゃんに触るな」
「……出たな八戒」
「こっちの台詞だ」
「ここはウチだろーがぁぁ」
「……機嫌悪ぃ」
「たかちゃん何でこんな女がいいの?本当に意味わかんねー。何か声ガラガラだし」
「煩いわ童貞」
「口も悪いし頭も悪いし、良いの顔だけじゃん」
「可愛いってよ」
「頭が悪いは取り消しな、八戒よりは良いわ」
「まぁ、確かに頭は良いよな」
「隆までさっきから喧嘩売ってんの?」
「……嫌俺は全部好きだからさ。てか珍しく本当に機嫌わりーな。声もひでぇし」
「くっ、たかちゃんが汚れてる」
「きぃぃぃぃ!やかましぃわ!声は隆のせいだろーがー」
仕事もまだあるのに眠いのにぃーと本音がでた私はそのまま面倒になりソファに倒れ込んだ
疲れたのか目を直ぐに瞑ってしまった隆の腕に、顔を半分乗せてお腹に手を回しこの温かさを感じながら私も目を瞑る。数分して、ふと暗闇の中耳に入ってきた小さな隆の声で目を開けた
「なぁ、…雪那…ごめんな」
「……何が?」
「マイキーに携帯渡したの俺」
「……あぁ、隆んちに忘れたのかと思った。見当たらないからさ」
「雪那が寝てる時にマナがイタズラしてて取り上げた。ちょっと気になって中見たらさ、日付とか待受のお前と鴨志田さんの顔とか大人で違っててさ。様子もおかしかったし、そん時丁度マイキーから電話きたから話したら持ってきてって言われて……お前に言わずに持ち出して悪かった」
「...うん、でもきっとそれで良かったんだよ」
「今日、すげー内心驚いたけど。何か納得したから安心した」
「……ねぇ、変な事聞いていい?」
「ん?」
「もしさ、今で良いんだけど...。こんな日々が毎日続いててさ」
「ああ」
「私が、急に...稀咲って人に殺されたらどうする?」
「……」
「うちのお母さんから連絡きて、病院に行ったら霊安室に通されてさ。額に穴が空いた私が冷たくなって寝てたらさ……」
スっと腕が私の背中に周り、隆の唇が頬に擦り寄る
「……分かんねーけど多分……稀咲殺すかな。そんな事してもお前は喜ばねぇって分かってるけど、その憎悪に勝てないかもしれねぇ」
「…あくまで…私の憶測だから、違ったら稀咲君には悪いんだけどさ。……私この世界で稀咲君に会いたくないんだよね」
顔見たら、私どうなっちゃうか分かんない。そう付け加えてから私も隆の頬に擦り寄る
「……まぁ、そう、だよな。」
「…違うかもしれないから気にしない様にしてたけど、花垣君には何か確信した物があった。隆も稀咲君には気をつけて」
「……ああ」
「……安心したら眠くなって来ちゃった」
「……今日はもう寝ろ、おやすみな」
手をキツく握ってくれた隆に私は安心して目を閉じた
耳鳴りがした
嫌な予感がして、目を開ける
「聞いてんの?」
「...えっ?と、林…………かな??」
「お前何言ってんだ?その物件審査通ったから母ちゃんに伝えておけよ」
「……物件?」
キョロキョロと辺りを見渡すと、テレビに出てくる様なヤクザの事務所の様な場所で柔らかいソファに腰掛けている
目の前には少し大人びた林の姿。無言で私を見ているのは林田。状況が掴めずにポカンとしていると、林田がお茶を出してくれてお疲れさんと言ってきたのでありがとうと言ってお茶を頂いた
「...林さ変な事聞くけど、今いくつ?」
「……お前、そうとう堪えたんだな」
「……何の事?」
「まぁ、当たり前だよな。俺達も未だにかなりきついからな。なぁ、パーチん」
「……ああ。雪那ちゃんも三ツ谷と別れて結構経つけどよ、ドラケンの事は慕ってたもんな」
「……はっ?別れた?」
「……俺は三ツ谷と別れてねぇよ。別れたのは雪那ちゃんだろ」
「パーチん、多分そうゆう意味じゃねーよ」
「……てか、さっきの言い方…。ドラちゃんに何かあったの?」
「……本当に混乱してるんだな。さっきずっと話してただろ。先月に撃たれて死んだ……もう2週間前だ」
その瞬間に心臓がドクンと鳴って胸が締め付けられる様に痛い。目の前が暗くなるような感覚に思わず両手で口元を覆い、そのショックに呑まれない様に大きく息を吸って吐き出した。ゆっくりと目を瞑るとドラちゃんの笑顔が出てきて、歯を食いしばる。その瞬間に我慢が出来なくなり涙が滝のように溢れてきて、止まらない
目を開けるとハッとした顔をした2人がアタフタしながら書類の紙やティッシュ、ハンカチなどを寄越して来るが顔を両手で覆った手が震えてしまい私はただ泣き崩れてしまった
背中をさすってくれた、林と林田にお礼を言って事務所の様な所を出た。結局落ち着くまで時間がかかってしまい、今も少し信じられなかった。鞄の中から携帯を取り出すと、新しい携帯に変わっていて鞄の奥には25歳の時の黒い携帯も入っていた
新しい黄色の携帯を開くと時刻は16時。近くにあった自販機で珈琲を買ってベンチに座りLINEを確認した。西暦から見て私は17歳。多分高校2年生だ
三ツ谷隆の名前を探せば、最後に連絡をとったのは半年前。隆のLINEの履歴を見ても、何が別れる決定的な原因なのか良く分からなくて
頭を悩ませていたが、今現状が良く分からないし何よりドラちゃんが死んだ事で隆が苦しんでいないかが心配だった。とりあえず隆に直接正直に話して聞いてみようとしか頭には浮かんで来なかったので連絡もせずにそのままの泣きっ面で隆の自宅に向かいトボトボと歩き出した
いつもの道を歩き最近は良く出入りしていたアパートのインターホンを押すと、ドアの隙間から顔を出したのは少し大きくなったルナとマナで私の顔を見た瞬間にぱぁっと花が咲いた様に笑った2人は玄関の扉を力任せに開けて私の足元に抱きついてくる。ドラちゃんの事で胸がまだ痛かったのに、雪那 ちゃん嬉しいと笑う2人を抱きあげて腕に少しだけ力を入れると何だか和らいだ気がした
2人を抱いたまま隆の部屋に入ろうとすると、2人が何か言いたそうな顔をしたのでどうしたの?と聞くとお兄ちゃん今色々大変なのとルナがポツリと呟いた
「少しだけ聞いたよ、大丈夫だから」と言って安心させる様にルナを撫でると、マナが雪那ちゃん泣いたの?と言って頬をヨシヨシと撫でてくれる。2人をその場に下ろすと、ちょっと話してくるねと言って拳を握り部屋のドアにノックをした
ノックをして何分か経っても部屋からは特に何も聞こえて来ず、たまに聞こえるのは線を引く様なペンの音だけだ。この扉を開ければ彼に会えると思う気持ちが返事も無いドアのノブを下ろしゆっくりと開けてしまう
「……ルナ、入ってくるなって言っ……」
「……た、隆。だよね?髪……伸びたね」
「……隆?……お前、もしかして25歳の雪那?」
「……何で分かるの?」
「……雪那は今三ツ谷って呼ぶ……。後雰囲気が全然違う」
髭が生え、体はやせ細り昨日までの隆との違いに私は混乱してしまう。また涙が溢れてきて私はいても経っても居られなくて隆に走りよると頭を抱きしめて彼の髪に顔を埋めた
ぐずぐずと泣く私の腕の中で呆然として、何かを考えているのか生気の無い瞳でただただ下を向く隆の頬に唇を寄せ、お願いだから何か作るから食べてと声を振り絞った
「……雪那 」
「……隆、お願い。」
「雪那会いたかった……」
そう言った隆は急にギュッと骨が折れるんじゃないかってくらいキツく抱き締めてきた。後頭部に置かれた手に力が入り引き寄せられて唇に激しく口付けされる
「お兄ちゃんえっちー」
「マナ静かに!」
扉から聞こえた声に反射的にそちらを向けばルナがマナの口を抑えていた。隆は私を直ぐに離すと、1度席を経ってから2人が覗くドアを優しく閉めた
その姿を見てくくくっと私が小さく笑うと、隆はやっと少しだけ笑ってくれた
「……いつ来たんだ?」
「今。気付いたら林と林田といた」
「はっ?何で??」
「うちのお母さんが住む物件をどうやら探していたみたい。……そこで隆と別れた事もドラちゃんが亡くなった事聞いて。良く分からないから隆に逢いに来た」
「……そうか。ごめんな、お前と続いてなくて」
「いや、何かあったの??てゆうか私なんだよね。あれ?別れた記憶ある…かも…」
「……ま、そんな感じ」
「……これは私が悪いわ。自分の事しか考えて無さすぎる」
「……自分の記憶に第三者視点で突っ込むお前すげーよ。」
「隆ヤキモチ焼きだね、可愛い」
「……何かムカつく気がするんだけど、25のお前に怒れない俺がいるんだよな」
「マイキー達と話した日が私にとっての昨日なんだ」
「……俺からすると約2年ちょっとか」
「…何か…私馬鹿だね、隆がこんなに弱ってるのに傍にいないなんて」
「……俺も凄い怒ったからな。雪那は、雪那なりに17の女子で頑張ってたよ。ただ、俺が嫉妬したり激しかったからさ」
「……私の知ってる隆は嫉妬何てしなかったけどね」
「あの事があって、お前から話聞いた時にお前には俺しかいない。お前は俺の物だってのが出来上がっちまったんだよ。雪那はそれに耐えられなかった」
ボサボサの髪を掻きむしる隆の姿を見ていたくなくて、とりあえずご飯作るからお風呂に入ってから髭を剃ってきてと頼むと彼はアッサリと了承してくれた
冷蔵庫には余り食材が無かったので、ルナとマナと買い物に行ってくると私が言えば隆は少しだけ待っててと言ったので3人であやとりをしながら外で待っていた。15分くらいして出てきた隆はしっかり髭も剃ってあって相変わらずお洒落に服を着こなしていた。ルナとマナがお兄ちゃんとお出かけと言って喜んでる姿を見てホッとしたけれど、未だにドラちゃんが死んだ事が私でさえ相当ショックなのに隆はどれだけ辛いんだろうと悲しくなる
そして、1番はちょっと煩かったとはいえこんな隆を放り出して他の男と遊んでいる17の自分だ。本当に自分に腹が立つ。プンスカと自分の記憶を辿りながら自分に説教していると、小さな可愛い手が私を優しく包む
「 雪那ちゃん来てくれて良かったー。」
「お兄ちゃん捨てられたかと思ったー」
「……おぃ、ゴミみたいに言うなよ」
「お兄ちゃんは必ず 雪那ちゃんが嫁に貰うから安心してね」
「……何か嬉しいけど複雑だな」
「お兄ちゃんが貰われるんだー」
「ふふっ。今日は3人の好きなハンバーグにしようか」
「やった」
と3人の声が合わさったのでハンバーグにする事は決定にした。マナを肩車している隆は随分と痩せたけど優しさは変わらずだった、そんな様子に心から安心して彼の腕に抱き着くと愛しいものを見る様な瞳で見つめられて素直に照れてしまう。
4人でスーパーで買い物をして、支払いの時に財布を開けると入っている金額にビックリして自分の財布なのに口を開けてポカンとしてしまう。そんな私の形相が不思議に思ったのか、隆がチラッと私の財布を覗いてきてギョッとした顔をした。私の頭を優しく叩きお前は出さなくていいからなと言って自分の財布から1万円を取り出した隆はレジに置いた
そのレジに置かれたお金を取ると、自分の財布から抜いた1万円を出してレジに置くと隆の1万円を彼のポケットに突っ込んだ
「いいって言ってんだろ」
「こんなにあるからいいよ」
そんな言い合いを始めた私達を見て、レジのおばさんがクスクスと笑うと頑として引かない私に諦めた様な顔をした隆は「ありがとな」と言ってお金を財布にしまうと、一部始終を見ていたルナとマナは「お兄ちゃんの負けー」と言ったので、それを聞いて吹き出したレジのおばさんを見て私もつられて笑ってしまった
帰り道にあったおもちゃ屋で、ルナとマナが欲しいと言った物全てを買ってあげるとトイレから帰ってきた隆に流石に怒られた。確かに隆からすれば、甘やかしすぎに見えるのかもしれない。だけど、2人が欲しい物はなるべく与えてあげたいから中学から仕事をし始めたと少し遠慮気味に言うと、隆は少しだけ困った様な顔で俺の誕生日にも最高級の裁縫セットやら、布やらをプレゼントしてくれたとポツポツと話してくれた
言われると、そういえばそんな事もあったなといつもの様に思い出す。それと、自分の仕事は地味に成功している様でとても安心して胸を撫で下ろした
「…ルナもマナも…流行りの物持ってると小学校で楽しく会話出来るじゃん」
「本当にお前が優しいから嬉しんだけどさ。俺がかっこ悪ぃだろ」
「隆だって10年後からここに来れば、お金稼ぐのは簡単だよ。だって音楽とか流行りのデザインとか全部知ってるんだよ?」
「まー、そうか」
「私は有名人とかに興味無いから皆が豊かに生活出来る程度稼げれば良いと思ってる。だから、2人に何かを買うのは許して欲しいよ」
「……まぁ、ありがたいけどよ」
「隆だって25で高層マンション1人暮らしだったんだよー。アルマーニのスーツにブランドバッグ」
「……凄ぇ金持ちだな」
「ね、第三者みたいになるでしょ?」
「ああ。自分の事の様に思えねぇわ」
「……過去でも覚えてない事もあるから、そんな風に未だになっちゃうのよ」
「……ま、お前は何も悪くねぇんだし、そんな風でも俺は分かるから気にすんな」
「……ありがと。……ほら、お兄ちゃん怒ってないよって2人に言ってきな」
沢山の荷物を抱えたルナとマナはお兄ちゃんに返品されるんじゃないかとビクビクしながらこちらの様子を伺っていた。そんな様子を見た隆は2人の前まで走り寄り、しゃがみ込むと「兄ちゃんが悪かった」と言ってから2人の頭を交互に優しく撫でる。ルナとマナは何回も返さなくていいかと聞いていて、うんうん言っている隆をホッコリした気持ちで見ていた
帰ってきてから女3人で沢山作ったハンバーグは最近胃にあまり物を入れて無かったのか隆はあまり食べられず、ルナとマナが頑張ってくれても5個も残ってしまった
申し訳無さそうにする隆に明日食べれたら食べなよと言って後ろから優しく抱き締めた。体重が戻るまでご飯作りに来ても大丈夫??聞くと「ありがとな」と優しい声色で言われて。あぁ、ちゃんと戻れそうだなと思った
良かったと思い珈琲でもいれようかとキッチンに戻ろうとすると、ポケットに入れておいた携帯が振動していて、画面を見れば着信堀北と出ていた。その瞬間にハッとして思わず隆を見ると、まだお腹が苦しいのか擦りながら付けっぱなしのテレビを見つめていた
高校の同級生で、隆と別れている時にアプローチされていた男の子で確かご飯を食べたくらいだと思う。留守電にする事も考えたけれど、また掛かって来たり隆に嫌な思いをさせるくらいならきちんと寄りを戻したから掛けてこないで。と言った方がのちのちにも良いと思い、何の思い入れも無い堀北君からの電話を取り「もしもし」と口を開いた
「今何してんの?近くにいるんだけど家行っても大丈夫かな?」
スピーカーにしていないのに音量がMAXだったのか自分の携帯から堀北君の声がやけに響いて、私はあちゃーと内心思いながら隆を見た。珍しく鋭い目線を向けてきた隆の視線から目を逸らすとハッキリとした口調でスマホに向かって口を開く
「堀北君、悪いんだけど。三ツ谷と寄り戻したから電話して来ないで欲しいんだ」
そう言った私に何秒か無言だった堀北君はいつもの優しい口調は無くなり「ふざけんなよ」とかなり高圧的な態度になって私を攻め立てる。このまま面倒だから切っちゃおうと思いスマホを耳から外した瞬間に今まで何も言わずに静観していた隆は私のスマホを取り上げると冷たく低い声で堀北君を威嚇した
「……てめぇ。ふざけんなよはこっちの台詞だボケ」
「……三ツ谷か」
「人の女に手出しやがって……次何かあったらマジで
ぶっ飛ばすからな」
チッと小さく聞こえた舌打ちが最後で電話は切れた
暴走族は引退したけれど相変わらず怒ると怖いなと思いながら隆を見ると、電話を切られた隆は私に携帯を渡し無表情でブロックしとけよと言い珍しく舌打ちした
「……コイツが結構やっかいな奴でさ」
「堀北君?」
「あー、お前には凄い優しいし紳士だけど裏ですげーゲスなんだわ」
「ゲスって??」
「恐喝とか弱いものいじめとか」
「……恐喝?……私見る目無いじゃん」
「お前を狙ったのも、何か裏がありそーでさ。俺に喧嘩ふっかけて、三ツ谷に絡まれてるとか言って嘘ついてたり」
「……それ信じないで一緒にご飯食べる私ヤバい」
「まぁ、相当優等生だからな。親が刑事だから俺に何かしたら分かるだろみたいな」
んもぉ見る目も無いし何なの私。と自分に怒ると隆はゲラゲラと笑って「そういえば、おばさん元気か?」と聞いてきた。それを聞いて、うっすら出てきた記憶は癌が完治した三浦さんと住むから部屋探してと甘えてくるお母さんとの電話したのが少し前だ
「三浦さん、癌が完治したからお母さんと一緒に住むってさ。それで林とぱーちゃんの所で探してたの思い出したわ」
「俺が聞いてた時は治療中だったからな。良かったな」
うんと頷くと、隆は三浦さんから毎月沢山贈り物が届くと言って笑っていた。私が何か言ったらしく大体ルナとマナの好物だそうだ。ルナとマナの中では顔も見た事が無いおじさんから毎月果物やお菓子類、色々な物が届くのでサンタさんと呼ばれているらしい
チラッと2人を見れば、リビングのソファで今日買ったばかりのゲームに夢中になって遊んでいる
「隆、お腹いっぱい?」
「何で??」
「プリン作ったけど、食べない?」
「「食べるー」」
「ルナとマナ、沢山食べる様になったね」
「……俺は腹いっぱい」
「……私、筋肉質でちょっと肉づきが良い人が好きだな」
「……分かった。食う」
ニヤッとした私に隆はお腹を擦りながら観念した様に笑うと、少し甘えた様な顔をしてから私の腰を抱き締めて胸に擦り寄ってくる。そんな彼が可愛くて「よしよし、良い子」と言いながら髪に顔を埋めて優しく抱き返すと、後ろから「2人らぶらぶー」と可愛らしい声がして隆が吹き出してしまっていた
「早くプリン食べたい」と言った2人にはいはいと言ってキッチンに戻りプリンを4人分用意していると、横で珈琲を入れてくれる隆に胸が暖かくなった。スリスリと腕に頬を寄せてお礼を言うと、今日は2人が寝たら半年分食べさせてもらうから宜しくなと笑顔で言われ嬉しいような怖いような気分になり「う、うん」と言って目を逸らすとクシャリと髪を優しく掴まれて唇に触れるだけの口付けをくれた
まるで、体の全部を味わいながら愛撫してくる隆に顔から熱が止まらない。でも、やっぱり痩せ過ぎてしまっていて触れる度に骨ばって感じてしまい少しだけ悲しくなってしまう
「...体力無くなってんな」
「仕方ないよ、ちょっとづつ戻そう」
2回出来れば十分だって。と付け加えた私にまだまだ足りねぇが体がついていかねぇと肩で息をする隆の汗ばんだ額に口付けをしてから背中に手を回した。15歳の時と体が違うからか、凄く気持ち良くて彼が深く入ってくる度に私の体は彼を締め付けるのが良く分かる
「……なぁ、変な事聞いていいか?」
「ん、なら動かないで……」
「離れてる半年の間、誰かとこうゆう事した?」
「……」
本気で思い出してみるが、そうゆう記憶は特に無かった。堀北君に手料理をご馳走している記憶があるがキスをされて、制服に手を入れられたけど何か嫌で鞄を持たせてその時に直ぐに帰してしまった
そこで、これも十分不味いのか?と思いハッとすると隆の動きは止まり私を無表情で見つめていた
「……隆くん?」
「……何で黙ってんの?」
「今、思い出してたんだけど、している記憶は無かったよ」
「……お前、何でカタコトなの?」
「嫌、何かキスされてたみたいなのはあったかな」
「誰?堀北?」
「う、うん。でもスカートに手を入れられて嫌で帰ってもらってるから」
「……へぇ。」
あ、切れたなって顔を見て直ぐに分かった
それからは声が枯れて意識が無くなるまで抱かれて続けた
喉の乾きで目を覚ますともう日は高くて携帯を見れば10時を過ぎていた
隣で寝ている隆は服も着ておらず、まだ深く眠っている。ベッド下から昨日脱ぎ捨てた下着と借りたTシャツ、スェットを着てから洗面所に入り顔を洗っていると「雪那ちゃん起きたー」と笑顔の2人が洗面所の扉からこちらを覗いていた
「2人共ご飯食べた?」
「お母さんと食べた」
「おばさんは?」
「ハンバーグ泣いて食べてた」
「えっ?何で泣いてるの??」
「お兄ちゃんが、もう二度と雪那はこの家に来ないと思うって凄く前に言ってたから。今日は雪那ちゃんの靴があってハンバーグもあってお母さん喜んでた」
「そ、そっか。何か哀しいな」
「何で?」
「うーん。泣かしちゃったからかな」
「……もう別れないでね」
「うん、頑張るよ」
指切りしてと言われて、ルナと指切りをするとマナもするーと小さな小指を出てきて私の心はキリキリと痛む反面、中々顔を合わせられないおばさんがそんなに思ってくれていた事が私は嬉しくて仕方なかった
台所で珈琲をいれ、飲みながら簡単に作れるホットドッグでも作ろうと切り込みの入ったパンを焼きながら欠伸をする。焼いたソーセージに適当にちぎったレタスとトマト、スライス玉ねぎを入れて野菜がなるべく分からない様にケチャップとマスタードで蓋をしてから味見がてら口に入れて咀嚼し珈琲で流し込んだ
全部作り終えてからおばさんの分はラップをして、昨日買って置いた卵とコーンでスープを作っていると余り機嫌が良くない時の顔で登場した寝癖だらけの隆はテーブルに置いてあるホットドッグに手を伸ばす。スープをよそって差し出すと、お礼は言うが私の目は見なかった
「んもぉ。何なのよ」
「その、んもぉやめて。普通に笑う」
てか、悪ぃ。お前声がガラガラじゃんと言われてジトリと隆を睨む。ルナマナに風邪だって心配されたと言うと、あんな奴とキスしたお前が悪いと子供みたいにプイッと不貞腐れた隆に可愛いって気持ちが溢れてきて笑ってしまった
笑っている私に目が笑っていない笑顔を向けてきた隆は、俺本当にはらわた煮えくり返ってるからと言われて私は笑っていた口を静かに閉じた
仕事があるから1回帰ると言って、隆の家を出てからコンビニに寄りジュースを買ってから帰宅し、ポストにある郵便物を取ると鍵を開けて中に入って唖然とした。リビングから部屋からゴミが散乱していたり洗い物までしていない。ふと、そこで蘇ってきた記憶
隆から、別れの様な言葉を言われた私はここで泣き腫らして仕事に没頭して学校をサボり床で眠っていた。
たまに片付けるのは人が来る時だけ。何だか色々どうでも良くなっていてそんな胸が空っぽな生活を繰り返していた気がする
思い出して胸が痛くて、辛かった感情まで感じて少しへこんでしまう
項垂れていても仕方ないしとりあえず片付けようと思い、ゴミを片付けながら今日も結局学校をサボってしまったなぁ何て思ったが
隆としっかり寄りを戻せたし、ご飯も食べて貰うことが出来た。満足かな何て思いながら全部の部屋にひたすらに掃除機をかけた
休憩を挟みながらトイレ、お風呂を掃除して、台所の片付けが終わる頃にはもう15時を指していた
ソファに横になりながら、携帯を開いて注文のチェックをする。1週間以内にピアスが50個。ブレスレットが8個。お金になるのは嬉しいが、疲れてる今見るんじゃなかったな何て思いながら目を瞑るといつの間にか意識がゆらゆらとしてきて私はそのまま眠ってしまった
ふと、肩を揺さぶられる感覚で目を覚ましゆっくり目を開けると、痩せた隆の顔が目の前にあって髪を撫でられてそのまま目を瞑った
「……おぃ寝るな、1回起きろよ」
「まだ眠いよ」
むくれながら上半身を起こし、そのまま体重をかけて隆に寄りかかると聞きなれた声で私の頭は覚醒した
「たかちゃんに触るな」
「……出たな八戒」
「こっちの台詞だ」
「ここはウチだろーがぁぁ」
「……機嫌悪ぃ」
「たかちゃん何でこんな女がいいの?本当に意味わかんねー。何か声ガラガラだし」
「煩いわ童貞」
「口も悪いし頭も悪いし、良いの顔だけじゃん」
「可愛いってよ」
「頭が悪いは取り消しな、八戒よりは良いわ」
「まぁ、確かに頭は良いよな」
「隆までさっきから喧嘩売ってんの?」
「……嫌俺は全部好きだからさ。てか珍しく本当に機嫌わりーな。声もひでぇし」
「くっ、たかちゃんが汚れてる」
「きぃぃぃぃ!やかましぃわ!声は隆のせいだろーがー」
仕事もまだあるのに眠いのにぃーと本音がでた私はそのまま面倒になりソファに倒れ込んだ
