短編 シリーズ
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産まれてきて15年間恋をした事は1度も無くて、近所に住むお兄ちゃんに憧れを抱いた事があるくらいで恋愛とは無縁の人生だった。友達の大半には彼氏がいるし、皆色々経験済みなのかガールズトークでは大体そんな話題ばかりで最近ついていけないな何て思う
メイクやお洒落には興味があるし、好きな人が出来たら可愛いとかも言われてみたいと最近は考える様になった。男性を本気で好きっていうのはどんな感じなんだろうかと嬉しそうに彼氏の話をする友達の可愛らしい表情を見ていて毎回口には出さないけれど密かに思っていた
「 雪那も一緒に今日遊びに行こうよ。」
「どこ行くの?」
「合コン。ミカ先輩がおいでって」
「えっ?さっちゃん彼氏いるのに合コン行って大丈夫なの?」
「合コン行っても別に浮気する訳じゃないし。皆高校生だからご飯奢ってもらうだけ」
鏡を見ながらひたすらにマスカラを塗り重ねるさっちゃんに「私はいいや」と言えば「そう?気が向いたら来なよ」とそっけなく返事をされて私は頷いた。帰ってドラマでも見ようと思い鞄を持って教室を出て昇降口に向かうと、手を繋いで校門から出て行く多数のカップルを見ながら靴を履いた。中3になってからやけに増えたなと思いながら昇降口から出た途端、頭に響く様な衝撃が走り思わずよろけて膝をついた
「い、いたたぁ」
コンクリートに勢い良くついた膝と頭の痛みに思わず痛いと口に出てしまい、片目を閉じながら頭を摩っていると自分の目の前にある野球ボールが目に入りこれが当たったのかと直ぐに納得した。ボールを拾い上げると走って来る足音が近付いて来てそちらに顔を上げた
「ゲッ…… 白石。もしかして当たった?」
「……林田かぁ。めっちゃ痛いよ……もう」
顔をあげれば同じクラスの林田が気まずそうに私を見ていて、眉を寄せてジロリと冗談交じりで睨むと林田は悪ぃと言ってしゃがみこみ私の顔を心配そうに覗いてくる
「……何処に当たった?」
「顔じゃなくて耳の上に当たったんだって」
「そ、そっか。悪ぃ」
そんなやりとりをしていると「パー、ボールあった?」と声がしてそちらに振り向くと、今走って来たのかジャージ姿の三ツ谷が息を切らせて私の様子を見てギョっとした顔をした
「……もしかして 白石さんに当たった?」
「……当たったよぉ。もしかして三ツ谷が投げたの?」
「…ああ。マジで悪ぃ。ごめんな白石さん」
林田と同じ様にしゃがみこみ私の顔を覗き込んで来た三ツ谷は「何処に当たった?」と言って私の髪を自然にかきあげて額を見つめている。男の子に触られた事が無かったからか少しだけドキッとしたけれど「耳の上だって」と言った林田の言葉を聞いて三ツ谷は私の顬に触れ「……すげぇタンコブになってる」と小さく呟いた
「タンコブくらいなら家で冷やすからいいよ。大丈夫」
「……それより膝痛くねぇの?」
「実は膝が凄い痛い。とりあえず1回起きるね」
サッと差し出された三ツ谷の手は私が倒れない様に支えてくれて、「ありがと」と言った私に頷いた三ツ谷は私の膝を見て「血が出てる」と言ってからハンカチを取り出しそっとその箇所を押さえた。「本当にごめんな」と目尻を下げて至近距離で謝られると「大丈夫」しか言えなくて、内心綺麗な顔してるなと思いながらブンブンと顔を横に振った。
保健室に行こうと言われたけれど、痛みが取れる訳でも無いしそれなら自宅に帰って自分で手当をすると言うと、なら送っていくと言われて私は目を見開いた
「そんなに驚く事?嫌だった?」
「……う、ううん。でも送らなくて大丈夫だよ」
「パーが自転車で来てるから借りて送ってく。そっちのが痛くねぇと思うし」
林田が三ツ谷の話を聞いてこくこくと頷くと、三ツ谷は私の腕を支えたまま歩き出したのでそのまま何も言わずにとりあえず付いていく事にした。学校は自転車通学禁止だからか学校の近くの行き止まりの路地に何台か置かれている鍵の付いていない自転車の1つに跨った三ツ谷は「乗って白石さん」と言って私を見つめた
そういえば中学2年の時に皆で夏に花火をした時にも三ツ谷が家まで送ってくれたのを思い出した。素直に後ろに座り三ツ谷のジャージを掴むと「家って駄菓子屋の近くだったよね?」と言われてうんと返事をした
中2の夏に乗せて貰った時も2人共特にお喋りもせずに無言だった気がするな何て思い出した。ふと、せっかく男の子と話すいい機会何だし何か話してみようかなと思ったけれど何を話して良いか分からなくてひたすら考えていると、「ぷっ」と小さく吹き出した三ツ谷の声でハッとする
「三ツ谷何で笑ってんの?」
「だって白石さん、さっきからうーん、うーんて唸ってるからさ。どしたの?」
「……唸ってたの分からなかった……。うーん、何かせっかくだから三ツ谷と何か話そうと思ったんだけど……話題が無くて」
そう言った途端にゲラゲラと笑い出した三ツ谷に、そんなに面白い?と聞けばこくこくと頷きながらいまだに笑いが止まらない彼に何だか私も釣られて笑ってしまった
「てかさ、せっかくだからって何?」
「ああ、何か最近皆に言われるんだよね。もっと男子と遊べとか話をしろとか」
「……何でそんな事言われんの?」
「皆色々経験済みだから、雪那も早く色々経験してみなって言われてさ」
「…ふーん。…それでせっかくだから話をしようになったの?」
「うーん。男の子と普通に会話する楽しさをしろうかと思った」
「 白石さんて面白れぇな」
「……どこら辺が面白いのか全然分かんないよ」
はははと明るく笑った三ツ谷にこちらも少しだけ笑うと気付けば駄菓子屋の前を通り過ぎていた。後もう少しで家に着くなと思っていると「足痛くねぇ?」と聞いてきた三ツ谷に本当は痛かったけれど、うんとだけ言っておいた。家の前で下ろしてもらってからお礼を言うと、三ツ谷は私に手を伸ばしてきたので少し首を傾げた
「もう1回タンコブ見せて」
「う、うん」
伸ばした手に素直に頭を出すと、サラりと髪を上げられて指が触れた。熱を持った箇所がつんつんと触れられると痛いけれど平気なフリをして歯を噛み締めていると、「……痛ぇんだろ?」とちょっと笑いを我慢した様な顔の三ツ谷に「意地悪」と言って眉を寄せた
「氷枕とか家にある?」
「湿布貼っとくよ」
「……あのなぁ、髪の毛で隠れてるんだから貼れるわけねぇだろ」
「……そっか」
「 白石さん、携帯貸して。連絡先入れておくから何かあったら言って」
「え?何かって?」
「急に痛くなったとかあったら言って。白石さんちお父さんだけだろ?もし病院行くんなら俺が連れていくから」
「……うん、多分大丈夫だと思うけどありがとう」
不良に見えるのにしっかりしているなと内心思いながら携帯を差し出すと、何回かボタンを押した三ツ谷は私に携帯を返すと「じゃあ」と言って来た道を戻って行った。その背中を見送りながら私は少しだけ微笑んでいた
その日は1日コブが痛かったし膝もお湯に浸かると痛かったけれど、特にこんな傷は大した事は無いので三ツ谷には連絡はしなかった。次の日に三ツ谷から大丈夫?とLINEが来ていて、全然大丈夫と返したくらいで私達の会話は終わってしまった。でも、彼は何だか優しい人だなって思って彼なら友達になりたいなと思ったのも確かだった
それから怪我もすっかり治ったある日学校から帰ってソファでゴロゴロしていると、テレビでラーメン特集をやっていて目が釘付けになった。ぐぅと小さくお腹が鳴ってさっそくカップ麺を食べようかと棚を開ければ1つも残りは無い。この際せっかくだから本格的なラーメンを作ろうかと制服からキャミタイプのワンピースに着替えると財布を持って外に出た。出た途端にむあんと夏の夜特有の風の無い蒸した暑さが頬を撫でて思わず戻ろうか躊躇したけれど、頭に出てきた先程のラーメンを思い出して私は足を進めた
歩いて10分のスーパーに来れば閉店間近な事もあり人は居ないし半額商品ばかりで何だか嬉しくなってはしゃいでしまっていた。ラーメンと卵、葱に見た事が無いラベルのジュースやお菓子なども入れて精算を済ませると時刻は20時を過ぎて居たので足早に帰路についた
帰り道にある公園の前を歩いていると中から聞いた事がある声が聞こえてふと立ち止まった。それは三ツ谷の声で、電話しているのか荒々しく何かを言っているが会話の内容は細かくは聞こえなかった。何となく気になって公園の入口まで歩いてくると中に入って辺りを見渡した。もう声は聞こえて来ないけどベンチに座っている銀髪は多分三ツ谷だろうと思いスーパーの袋を揺らしながらゆっくりと足を進めた
「……三ツ谷だよね?」
「 白石さん?こんな遅くにどしたの?」
黒い特攻服を来て煙草を吸っている三ツ谷に内心少し驚いたけれど、「何やってるの?」と聞けばいつも通りの口調で「ちょっとな」と言った三ツ谷の横に座ると少しだけ驚いた様な顔をした三ツ谷はお尻を少しだけ端に寄せてくれた
「ちょっとお邪魔します」
「…… 白石さん、こんな時間にウロウロしてて大丈夫なのか?お父さん心配しねぇの?」
「今お父さん出張中なの。あ、そういえばこの間送ってくれてありがとうね」
「……ああ。もう平気?」
「うん。全然痛くないよ」
ニコリと笑った私に「そりゃ良かった」と言った三ツ谷は携帯の画面を見ると1度舌打ちしてからイライラした様にはぁと溜息を吐いた
「珍しいね、三ツ谷が怒ってるの」
「……浮気された。……嫌、浮気相手は俺か?」
「ええ?……どうゆう事?それ」
「久しぶりに腹立つわ」
ギリッと歯が音を立ててから食いしばる三ツ谷に何て言っていいか分からずにスーパーの袋から先程買ったジュースを出して手渡した。「……良かったら飲んで」と言って差し出したジュースを見てから「ありがとうな」と言った三ツ谷は缶を開けごくごくと喉を鳴らしながら一気に中身を飲み干していた
「炭酸美味いな」
「喉乾いてたんだね。……ずっと電話してたから?」
「ああ。」
「…………」
「……暇なら話聞いてくれたりする?」
「全然いいよ、私で良かったら」
少し落ち着いたのか先程と違っていつもの表情に戻った三ツ谷はポツポツと話し出す。その話に私は静かに耳を傾けた
他校の女の子から告白されて、とりあえず付き合ってみた事。まだ付き合って1ヶ月も経っていないのに連絡が取れない事が多くなって、今日その他校の友達からその女の子は高校生の彼氏がいるって聞いて電話で喧嘩になり本命はあんたじゃないって怒鳴られたって話だった
「……凄い子だね。……別れて良かったんじゃないかな?」
「……だな。好きになる前で良かったと思えばまだマシだよな」
「うんうん。でも……辛かったね」
何だか聞いてるこっちが腹が立って来てしまって、「私がビンタしてやる」と言って怒り出すと少しだけ微笑んだ三ツ谷は何故か赤い顔をしていた。「……怒ってくれてありがとうな」と言って来た三ツ谷の目尻が下がった顔を見ていると悲しくなって来て思わず彼の頭を優しく撫でると三ツ谷は目を見開いてから固まった様に動かなくなった
「……触ってごめん……。ビックリしたよね」
「いや、…あのさ…変な事言って良い?」
「……ん?」
「……何かすげぇ今変な気分」
「……三ツ谷?……変な気分て何?」
「 ……白石さんさ、せっかくだから」
そこまで言った三ツ谷は少しだけ微笑むと私の後頭部に手を回してその手を直ぐに引いた。重なり合った唇から微かにお酒の匂いがして目を見開くと唇の中に入って来た舌が私の口内を掻き回す。目の前にある瞳を閉じた三ツ谷の顔を見ながら呆然としていると、ちゅっと音を立ててから離れた唇は今度は私の首筋に噛み付くように口付けられて思わず「んん」と小さく声が出てしまう
「…… 白石さん、かわい」
「ねぇ、……三ツ谷お酒飲んだの?」
「……飲んでねぇよ。……ちょっと触るよ」
えっ?って言った時には押し倒されて胸の上に手が置かれていた。不思議と嫌じゃない自分が不思議だったけど、付き合っても無い人とこれ以上して良いのかと頭の中がごちゃごちゃしてくる。キャミタイプのワンピースの肩紐が優しく下ろされて胸に置かれていた手が優しく服の中に入っていくと、首筋をキツく吸われて思わず吐息が漏れた。自分の口を手で覆い反対の手で胸を触る三ツ谷の手を上から押さえると「何で駄目なの?」と甘えた様な声を出した三ツ谷に少しだけキュンとしたけれど、そのまま彼をキツく抱き締めて手が動かせない様に力を込めた
ふと動きが完全に止まった三ツ谷を不思議に思い少しだけ手を緩めて顔を覗き込めば彼はスヤスヤと寝息を立てていた。ハアと溜息混じりで息を吐けば肩から力が抜けて三ツ谷の背中を擦りながら肩に顔を埋めて固まってしまった。ベンチの横には私の渡したジュースの空き缶が転がっていて、良く見ればアルコール7%と表示されていて私は自分の顔が青くなるのを感じた
「……どうしよ」
とりあえず三ツ谷を家まで送ってから帰らなくちゃと思い耳元で「三ツ谷起きて」と言うと目が少しだけ開いたけれど、トロンとした眠そうな目で「暑い。抱き締めて」と訳の分からない事を言いながら抱き着いてくるのでもうキュンを通り越してしっかりしろと言いたくなってきた
「帰るよ三ツ谷。家まで送るからさ」
「……帰らねぇ。眠い……」
「はよ立って。アイスあげるから」
「…… 白石さんと寝る」
「…………駄目だこりゃ。でも面白いから録音しておこう」
悪戯心が芽生えて携帯の録音機能を押した。三ツ谷の体を支える様にゆっくり立たせてからスーパーの袋を持つと以外に歩いてくれるのでホッとしてまずは公園をフラフラしながら出る事にした
「三ツ谷のうちは何処?」
「帰らないって…… 白石さんと寝る……あちぃ」
「……長袖だから暑いに決まってるじゃない」
「脱ぐ」
「脱がない脱がない、ちょっと着くまで待って」
「……水飲みてぇ……」
「……分かった。まずうちに行くから我慢して」
「うん」
呑ませてしまったのは私だし、三ツ谷の家の位置はハッキリと分からないのでとりあえず近いし直ぐに自宅へ向かった。途中で「ここ何処だ?」と言ってる三ツ谷に少しだけ笑ってしまったけど何とか自宅へ着き、直ぐに彼をソファに横にして水を飲ませると「あちぃ」と言いながら特攻服を脱いでパンツ一丁になりそのまま静かになった
慌ててたので余り考え無かったけれど、恋愛経験の無い私がパンイチの同級生の男子と密室にいるんだって事が不思議で仕方ない。「 …… 白石さん、居る?」とクッションでも探す様に手をバタバタさせている三ツ谷の頭の横に座ってポンポンと背中を優しく叩くとこちらを向いた三ツ谷は優しく微笑んだ
「……可愛い顔で笑うんだね。三ツ谷って」
「 白石さんも可愛い」
「さっきまで彼女居た人が何言ってんの」
「……なぁ…… まだ男知りたい?」
「……えっ?あ……あの話か」
「俺が教えてあげるよ……」
目尻の下がった菫色の瞳が私を見つめていた。甘えている様な三ツ谷の声が何だか新鮮で私はその瞳に釘付けになっていて身動きも取れなかった。唇に触れてくる熱い唇からはお酒の匂いがするけれど、何だか優しくて甘くて逃げられなかった。肩紐を下げられて鎖骨を舐められスカートに入って来た手はショーツを下げてそっと秘部に触れていた
「……三ツ谷……恥ずかしいよ……」
「……かわい」
「……そんな所触らないで……」
「……ちゃんと責任取るからさ……」
責任てなんだろうと思っていると、気付いた時には組み敷かれていて瞳が真っ直ぐにぶつかり合った。学校で見る三ツ谷の顔じゃなくて、何だかその顔をずっと見ていたくなってしまい私はそのまま彼の背中に腕を回して覚悟を決めた
何だか肩を揺さぶられている様な感覚に目を開ける
欠伸をしながら目を開けると目の前に居たのは裸の三ツ谷だった。顔色が悪く気まずそうに私を見て固まっている三ツ谷に少しだけ内心笑ってしまったけれど、そのまま起き上がって「……おはよ」と呟いた。掛かっていたプランケットがハラりと落ちて露わになった私の裸を見て三ツ谷は驚愕した顔をしてからまた固まった
「 白石さん……」
「……ん?」
「何で裸?……俺もだけど……」
「……本当に覚えてないの?」
「……少しだけ記憶……あるわ」
「……そんな感じ。……三ツ谷シャワー浴びてきなよ。朝ご飯いる?何か飲みたい物ある?」
「……あ、ああ。サンキュ……」
フラフラと立ち上がった三ツ谷に「パンツ履きなよ」と言えばギョっとした顔をしてソファの横に落ちていたパンツを拾い上げた。パンツの上にあった避妊具の空袋がポロりと落ちてそれを見てまた驚愕した顔をした三ツ谷に笑いを堪えるのが精一杯で直ぐに俯から唇をキュッと結んだ
「……泣いてんの?……俺傷つけた?」
「ううん。……泣いてないよ」
笑いを堪えてます何て言えなくて俯いたまま首を横に振った。笑いが収まって来てチラっと彼を見れば、何だか絶望を感じている様な顔をした三ツ谷に初めてを渡したのにそんな顔すんなと言いたくなったけれど、まだ状況が分からないだろうし仕方ないかなと思う意地悪な自分はパンツを履いている三ツ谷を見ながら内心クスクスと笑っていた
シャワーを浴びに行った三ツ谷を見送ってからキッチンで簡単なサンドイッチを作って消化に良い卵スープを作っていると特攻服をハンガーに掛けていたのを忘れていて、直ぐに部屋から大きめのシャツとスウェットを持ち脱衣場に置いた
「三ツ谷、スウェット置いとくね」
ガラス戸から声を掛けると「ああ」と声が聞こえたのでキッチンに戻り配膳をしていると割と直ぐにシャワーから出てきた三ツ谷はゆっくりと椅子に座った
「……良かったら食べてね」
「ありがとな。頂きます……。白石さん悪ぃんだけど水貰える?」
「麦茶でも平気?」
「ああ、サンキュ」
まだ少し暗い三ツ谷に麦茶が入ったグラスを渡してから私も食事に手を付けた。テレビから聞こえてくるニュースの音だけが部屋に響いていて何だか気まずいなと感じていると、視線を感じそちらを見れば三ツ谷のお皿とカップは空になっていたので少しだけ微笑んだ
「全部食べてくれてありがとね、味に自信無かったんだけど……口に合ったかな?」
「……ああ。美味かった。ありがとうな」
「三ツ谷顔色悪いけど二日酔い?平気?」
「……二日酔い?俺酒飲んでねぇよ」
「そこは覚えてないの?」
はっ?と言った三ツ谷に私が渡したジュースがお酒だったのと言って謝ると何だか納得した様に頷いた。「記憶が曖昧だからびっくりした」と言って苦笑いする三ツ谷にフフっと少しだけ微笑むと、三ツ谷は直ぐに表情を変えた
「… 白石さんさ、俺何か傷付ける様な事本当にしてない?」
「……傷つけられてないよ。大丈夫」
「俺……何て言ってた?」
「俺が男を教えてやるって言われたから……教えて貰った」
「…… 白石さん馬鹿なの?」
「何で?」
「断らなきゃ駄目だろ。」
「三ツ谷に言われたくないよ」
「……それもそうか……」
「初めてだったけど……優しくしてくれたよ」
「……おいおいマジかよ……」
「そんなビックリした三ツ谷の顔初めてみた……」
「いや、……本当に何て言っていいのか分かんねぇ。……本当に……ゴメンな」
何か謝られて嫌だなって思った。正直謝るくらいなら笑って欲しかったし、そんなに後悔する顔はして欲しく無かった。
「……謝らないで欲しいんだけど」
「……ああ。……悪ぃ」
何だか空気が一瞬で悪くなった気がした。絶対に泣かないって決めていたから歯を食いしばってでも泣かずに「……そんなに後悔してるなら忘れて」と言って席を立って自分の食器と三ツ谷の食器をトレーに乗せてキッチンに来ると手早く洗い物を済ませてから「シャワー浴びてくるから、帰るなら鍵開けといて平気だから」と三ツ谷の背中に声をかけた。だけど、思っていた通り返事は無かった
脱衣場で服を脱いで鏡を見れば首筋と胸にかなり濃いキスマークが付いていてその痣を指で撫でていると玄関が開いてから閉まる音がした。熱めのシャワーを浴びてから風呂を出れば特攻服は無くなっていて、掛けてあった所の床にはタバコの箱が転がっていた。貸したスウェットは綺麗に畳まれてソファに置いてあって何だか胸が空っぽになった気がした
キッチンで珈琲を入れてから庭に出て吸ってみたタバコは以外に美味しくて、煙がこんなに美味しい何てと驚愕しながら肺に煙を入れた。昨日の三ツ谷は全身で自分を愛してくれてる、求めてくれてるって何となく感じて嬉しくなったのを思い出す。熱い瞳が私を見つめ、囁く言葉は全て嬉しいものだった
吐いた煙を見つめながら「……しなきゃ良かったのかな」何て言葉が出て来て涙がすっと瞳から流れ落ちた
次の日に学校に行き3限目が終わり昼休みになると鞄からお弁当を取り出している私の前の席に座り顔を覗き込んで来たのは林田だった。「頭平気か?」唐突にそう聞かれて「頭悪いみたいに言うなし」と少しだけ彼に笑いかけると、ニシシと歯を見せて笑った林田は直ぐに眉を寄せた
「 白石、誰かと喧嘩したの?」
「……えっ??」
「首の痣って殴られたのか?……痛くねぇ?」
「……ああ。全然痛くないから大丈夫だよ」
「誰にやられたか言えよ。……女殴るやつは許せねぇ」
額がピクピクしている林田に優しいなとちょっと感動したけど、殴られても無いし付けたの三ツ谷だよとは言えずに「殴られて無いよ」と言って少しだけ微笑んだ。「言いにくいのか?」とそれでも探るのを止めない林田にどうしようかと悩んでいると、「パーチん」と名前を呼んでこちらに向かってくる林と少し気まずそうな三ツ谷がその後ろから歩いて来るのが見えて私はちょっとだけ硬直してしまう
「おう、ぺーやん、三ツ谷」
「パーちん何やってんの? 白石と飯食ってんの?」
「 白石にボール当てちまったから大丈夫か聞きに来たら今度は首に痣作っててさ」
「 白石、喧嘩したのか?」
「何であんたらは直ぐに喧嘩になるのさ」
ほらと言って林田が指を指してきた箇所を林が覗き込んで来たのでサッと手で隠すと、「本当に殴られてねぇの?平気」と聞いてきた林に頷いた。一度も三ツ谷の方を見れない私は何だか怒りがふつふつと湧いてきてしまい「……ただのキスマークだから大丈夫」とだけ言ってお弁当を持って立ち上がると三ツ谷の顔を見ずに横を通り過ぎて屋上に向かった
屋上に着くと入口の反対の小影に腰を下ろして水筒のお茶を飲むと何だか笑えて来てしまって、そのまま後ろに倒れ込んで少しだけ声を出して笑った。本当はちょっとだけあの台詞を言った後に三ツ谷の顔を見たかったけれど、出来なかったって事はその勇気は今の私には無かったんだと思う
内巻きにして来た髪型で首は隠せると思っていたけど意味無かったなとちょっと思いつつ、今日元気が出る様にっておまじないをしながら作った唐揚げ弁当の蓋を開けた。それを見ていたら何だか悲しくなって来て少しだけ出てきた涙を拭いながら卵焼きを口に入れる。俯きながら食べているとふと目の端に写った上履きにハッとして顔を上げた
「……三ツ谷」
「……鼻、赤くなってる」
ポケットから差し出されたハンカチを何だか受け取りたく無くて首を横に振ると、少しだけ困った様に微笑んだ三ツ谷は私の隣にゆっくりと腰を下ろした
「……体……平気?」
「……平気」
「……この弁当、白石さんが作ったの?」
「う、うん。元気が出る様におまじないして作ったの……って。三ツ谷に言ったら嫌味になっちゃう、ごめん」
「……俺に傷付けられたって思ってるからその言葉が出るんだよね?」
「……後悔してそうだったから……傷ついた。のかな」
「 ……俺が…… 白石さんに対して軽率な事しちゃったから後悔した。」
「軽率な事はしてないよ。慰めてって言われていいよって言ったの私だし、酔っ払った三ツ谷に色々……言われて真に受けたのも私だから」
「……俺、他に何て言ってたの?」
「……責任取るからさとか一緒に寝たいとか。……帰らないとかかな」
「…………」
何も言わない三ツ谷をチラっと見れば放心した様な顔でげんなりしていて、笑っちゃいけないのに何故か笑えて来てしまって吹き出してまう。「…… 白石さん笑えんの?」と少し呆れた様な顔をした三ツ谷に「酔っ払ってたから仕方ないよ」と言って彼の背をポンポンと少しだけ叩いた
「……体、もし痛くなったら言えよ」
「大丈夫だよ、この間も言ったけど後悔してるなら忘れてね」
「……忘れらんねぇよ」
「…………」
「……ちょっといい?」と言って私の返事を聞く前に髪を上げて首を見てきた三ツ谷は「……結構くっきり付いてんな」と一言言ってから私の頭を優しく撫でる。「ごめんはもう言わないで」と言った私と瞳を合わせると「ああ」と言って黙ってしまった。何分か沈黙が続いて、箸に唐揚げを刺してから三ツ谷の口元に持って行くと唐揚げを見てから無言で口を開けた三ツ谷の口の中に放り込んだ
「……どぉ?」
「……すげぇ美味しい。てか腹減ったわ」
「沢山作ったからこれ良かったら食べてよ。作り過ぎて夕飯も唐揚げ何だよね」
「……まじで?俺も夕飯唐揚げ食いたいな」
「えっ?今食べて夕飯も唐揚げ食べるの?」
「…… 白石さんが嫌じゃ無かったら、俺も食べていい?」
「……いいよ」
私の小さな返事を聞いて三ツ谷は少しだけ安心した様に微笑んでからお弁当を食べ始めた。水筒にお茶を入れて差し出せば「サンキュ」と言いながら受け取ってくれて、何だか少しだけ私達の間にあった空気が和んだ様な気がした
「……三ツ谷今日は部活?」
「ああ。でも今日は割と直ぐ終わるかな」
「唐揚げの他に何か食べたいのある?」
「……うーん。米??」
「米は炊く予定だよ。唐揚げ定食ってキャベツの千切りとかと一緒に出てくるよね?キャベツが良いかな?」
「……てかこの卵焼きすげぇ美味い」
「ふふ。良かった」
キャベツの話はどうでも良いのかそれに返事は無いけれど口いっぱいに頬張って嬉しそうに食べる三ツ谷が何だか可愛くて少しだけ彼に触れたくなった。「ご馳走様」と言って空になったお弁当を渡され、それを巾着にしまうとお茶を啜っていない左手が私の直ぐ横にある
嫌がられるかなとかも考えずにその手の上に優しく手を置くと、少しだけピクリとした左手は動かなくなったので三ツ谷を見ればお茶を飲む手は止まっていて不思議な物を見る様に私を見ていた
「……ごめん、嫌だった?」
「…………いや、嫌じゃねぇけど」
その言葉を聞いて安心してしまう。沈黙の中暫くして触れている手でそのまま彼の指先を握るとお茶を置いた三ツ谷の右手が優しく私の首の痣を撫でた。「……林田が誰に殴られたのかって凄い聞いてくるの」と小さく笑った私に「三ツ谷にやられたって言っていいよ」と言って微笑んだ三ツ谷は私の唇に触れるだけの口付けを落とした
メイクやお洒落には興味があるし、好きな人が出来たら可愛いとかも言われてみたいと最近は考える様になった。男性を本気で好きっていうのはどんな感じなんだろうかと嬉しそうに彼氏の話をする友達の可愛らしい表情を見ていて毎回口には出さないけれど密かに思っていた
「 雪那も一緒に今日遊びに行こうよ。」
「どこ行くの?」
「合コン。ミカ先輩がおいでって」
「えっ?さっちゃん彼氏いるのに合コン行って大丈夫なの?」
「合コン行っても別に浮気する訳じゃないし。皆高校生だからご飯奢ってもらうだけ」
鏡を見ながらひたすらにマスカラを塗り重ねるさっちゃんに「私はいいや」と言えば「そう?気が向いたら来なよ」とそっけなく返事をされて私は頷いた。帰ってドラマでも見ようと思い鞄を持って教室を出て昇降口に向かうと、手を繋いで校門から出て行く多数のカップルを見ながら靴を履いた。中3になってからやけに増えたなと思いながら昇降口から出た途端、頭に響く様な衝撃が走り思わずよろけて膝をついた
「い、いたたぁ」
コンクリートに勢い良くついた膝と頭の痛みに思わず痛いと口に出てしまい、片目を閉じながら頭を摩っていると自分の目の前にある野球ボールが目に入りこれが当たったのかと直ぐに納得した。ボールを拾い上げると走って来る足音が近付いて来てそちらに顔を上げた
「ゲッ…… 白石。もしかして当たった?」
「……林田かぁ。めっちゃ痛いよ……もう」
顔をあげれば同じクラスの林田が気まずそうに私を見ていて、眉を寄せてジロリと冗談交じりで睨むと林田は悪ぃと言ってしゃがみこみ私の顔を心配そうに覗いてくる
「……何処に当たった?」
「顔じゃなくて耳の上に当たったんだって」
「そ、そっか。悪ぃ」
そんなやりとりをしていると「パー、ボールあった?」と声がしてそちらに振り向くと、今走って来たのかジャージ姿の三ツ谷が息を切らせて私の様子を見てギョっとした顔をした
「……もしかして 白石さんに当たった?」
「……当たったよぉ。もしかして三ツ谷が投げたの?」
「…ああ。マジで悪ぃ。ごめんな白石さん」
林田と同じ様にしゃがみこみ私の顔を覗き込んで来た三ツ谷は「何処に当たった?」と言って私の髪を自然にかきあげて額を見つめている。男の子に触られた事が無かったからか少しだけドキッとしたけれど「耳の上だって」と言った林田の言葉を聞いて三ツ谷は私の顬に触れ「……すげぇタンコブになってる」と小さく呟いた
「タンコブくらいなら家で冷やすからいいよ。大丈夫」
「……それより膝痛くねぇの?」
「実は膝が凄い痛い。とりあえず1回起きるね」
サッと差し出された三ツ谷の手は私が倒れない様に支えてくれて、「ありがと」と言った私に頷いた三ツ谷は私の膝を見て「血が出てる」と言ってからハンカチを取り出しそっとその箇所を押さえた。「本当にごめんな」と目尻を下げて至近距離で謝られると「大丈夫」しか言えなくて、内心綺麗な顔してるなと思いながらブンブンと顔を横に振った。
保健室に行こうと言われたけれど、痛みが取れる訳でも無いしそれなら自宅に帰って自分で手当をすると言うと、なら送っていくと言われて私は目を見開いた
「そんなに驚く事?嫌だった?」
「……う、ううん。でも送らなくて大丈夫だよ」
「パーが自転車で来てるから借りて送ってく。そっちのが痛くねぇと思うし」
林田が三ツ谷の話を聞いてこくこくと頷くと、三ツ谷は私の腕を支えたまま歩き出したのでそのまま何も言わずにとりあえず付いていく事にした。学校は自転車通学禁止だからか学校の近くの行き止まりの路地に何台か置かれている鍵の付いていない自転車の1つに跨った三ツ谷は「乗って白石さん」と言って私を見つめた
そういえば中学2年の時に皆で夏に花火をした時にも三ツ谷が家まで送ってくれたのを思い出した。素直に後ろに座り三ツ谷のジャージを掴むと「家って駄菓子屋の近くだったよね?」と言われてうんと返事をした
中2の夏に乗せて貰った時も2人共特にお喋りもせずに無言だった気がするな何て思い出した。ふと、せっかく男の子と話すいい機会何だし何か話してみようかなと思ったけれど何を話して良いか分からなくてひたすら考えていると、「ぷっ」と小さく吹き出した三ツ谷の声でハッとする
「三ツ谷何で笑ってんの?」
「だって白石さん、さっきからうーん、うーんて唸ってるからさ。どしたの?」
「……唸ってたの分からなかった……。うーん、何かせっかくだから三ツ谷と何か話そうと思ったんだけど……話題が無くて」
そう言った途端にゲラゲラと笑い出した三ツ谷に、そんなに面白い?と聞けばこくこくと頷きながらいまだに笑いが止まらない彼に何だか私も釣られて笑ってしまった
「てかさ、せっかくだからって何?」
「ああ、何か最近皆に言われるんだよね。もっと男子と遊べとか話をしろとか」
「……何でそんな事言われんの?」
「皆色々経験済みだから、雪那も早く色々経験してみなって言われてさ」
「…ふーん。…それでせっかくだから話をしようになったの?」
「うーん。男の子と普通に会話する楽しさをしろうかと思った」
「 白石さんて面白れぇな」
「……どこら辺が面白いのか全然分かんないよ」
はははと明るく笑った三ツ谷にこちらも少しだけ笑うと気付けば駄菓子屋の前を通り過ぎていた。後もう少しで家に着くなと思っていると「足痛くねぇ?」と聞いてきた三ツ谷に本当は痛かったけれど、うんとだけ言っておいた。家の前で下ろしてもらってからお礼を言うと、三ツ谷は私に手を伸ばしてきたので少し首を傾げた
「もう1回タンコブ見せて」
「う、うん」
伸ばした手に素直に頭を出すと、サラりと髪を上げられて指が触れた。熱を持った箇所がつんつんと触れられると痛いけれど平気なフリをして歯を噛み締めていると、「……痛ぇんだろ?」とちょっと笑いを我慢した様な顔の三ツ谷に「意地悪」と言って眉を寄せた
「氷枕とか家にある?」
「湿布貼っとくよ」
「……あのなぁ、髪の毛で隠れてるんだから貼れるわけねぇだろ」
「……そっか」
「 白石さん、携帯貸して。連絡先入れておくから何かあったら言って」
「え?何かって?」
「急に痛くなったとかあったら言って。白石さんちお父さんだけだろ?もし病院行くんなら俺が連れていくから」
「……うん、多分大丈夫だと思うけどありがとう」
不良に見えるのにしっかりしているなと内心思いながら携帯を差し出すと、何回かボタンを押した三ツ谷は私に携帯を返すと「じゃあ」と言って来た道を戻って行った。その背中を見送りながら私は少しだけ微笑んでいた
その日は1日コブが痛かったし膝もお湯に浸かると痛かったけれど、特にこんな傷は大した事は無いので三ツ谷には連絡はしなかった。次の日に三ツ谷から大丈夫?とLINEが来ていて、全然大丈夫と返したくらいで私達の会話は終わってしまった。でも、彼は何だか優しい人だなって思って彼なら友達になりたいなと思ったのも確かだった
それから怪我もすっかり治ったある日学校から帰ってソファでゴロゴロしていると、テレビでラーメン特集をやっていて目が釘付けになった。ぐぅと小さくお腹が鳴ってさっそくカップ麺を食べようかと棚を開ければ1つも残りは無い。この際せっかくだから本格的なラーメンを作ろうかと制服からキャミタイプのワンピースに着替えると財布を持って外に出た。出た途端にむあんと夏の夜特有の風の無い蒸した暑さが頬を撫でて思わず戻ろうか躊躇したけれど、頭に出てきた先程のラーメンを思い出して私は足を進めた
歩いて10分のスーパーに来れば閉店間近な事もあり人は居ないし半額商品ばかりで何だか嬉しくなってはしゃいでしまっていた。ラーメンと卵、葱に見た事が無いラベルのジュースやお菓子なども入れて精算を済ませると時刻は20時を過ぎて居たので足早に帰路についた
帰り道にある公園の前を歩いていると中から聞いた事がある声が聞こえてふと立ち止まった。それは三ツ谷の声で、電話しているのか荒々しく何かを言っているが会話の内容は細かくは聞こえなかった。何となく気になって公園の入口まで歩いてくると中に入って辺りを見渡した。もう声は聞こえて来ないけどベンチに座っている銀髪は多分三ツ谷だろうと思いスーパーの袋を揺らしながらゆっくりと足を進めた
「……三ツ谷だよね?」
「 白石さん?こんな遅くにどしたの?」
黒い特攻服を来て煙草を吸っている三ツ谷に内心少し驚いたけれど、「何やってるの?」と聞けばいつも通りの口調で「ちょっとな」と言った三ツ谷の横に座ると少しだけ驚いた様な顔をした三ツ谷はお尻を少しだけ端に寄せてくれた
「ちょっとお邪魔します」
「…… 白石さん、こんな時間にウロウロしてて大丈夫なのか?お父さん心配しねぇの?」
「今お父さん出張中なの。あ、そういえばこの間送ってくれてありがとうね」
「……ああ。もう平気?」
「うん。全然痛くないよ」
ニコリと笑った私に「そりゃ良かった」と言った三ツ谷は携帯の画面を見ると1度舌打ちしてからイライラした様にはぁと溜息を吐いた
「珍しいね、三ツ谷が怒ってるの」
「……浮気された。……嫌、浮気相手は俺か?」
「ええ?……どうゆう事?それ」
「久しぶりに腹立つわ」
ギリッと歯が音を立ててから食いしばる三ツ谷に何て言っていいか分からずにスーパーの袋から先程買ったジュースを出して手渡した。「……良かったら飲んで」と言って差し出したジュースを見てから「ありがとうな」と言った三ツ谷は缶を開けごくごくと喉を鳴らしながら一気に中身を飲み干していた
「炭酸美味いな」
「喉乾いてたんだね。……ずっと電話してたから?」
「ああ。」
「…………」
「……暇なら話聞いてくれたりする?」
「全然いいよ、私で良かったら」
少し落ち着いたのか先程と違っていつもの表情に戻った三ツ谷はポツポツと話し出す。その話に私は静かに耳を傾けた
他校の女の子から告白されて、とりあえず付き合ってみた事。まだ付き合って1ヶ月も経っていないのに連絡が取れない事が多くなって、今日その他校の友達からその女の子は高校生の彼氏がいるって聞いて電話で喧嘩になり本命はあんたじゃないって怒鳴られたって話だった
「……凄い子だね。……別れて良かったんじゃないかな?」
「……だな。好きになる前で良かったと思えばまだマシだよな」
「うんうん。でも……辛かったね」
何だか聞いてるこっちが腹が立って来てしまって、「私がビンタしてやる」と言って怒り出すと少しだけ微笑んだ三ツ谷は何故か赤い顔をしていた。「……怒ってくれてありがとうな」と言って来た三ツ谷の目尻が下がった顔を見ていると悲しくなって来て思わず彼の頭を優しく撫でると三ツ谷は目を見開いてから固まった様に動かなくなった
「……触ってごめん……。ビックリしたよね」
「いや、…あのさ…変な事言って良い?」
「……ん?」
「……何かすげぇ今変な気分」
「……三ツ谷?……変な気分て何?」
「 ……白石さんさ、せっかくだから」
そこまで言った三ツ谷は少しだけ微笑むと私の後頭部に手を回してその手を直ぐに引いた。重なり合った唇から微かにお酒の匂いがして目を見開くと唇の中に入って来た舌が私の口内を掻き回す。目の前にある瞳を閉じた三ツ谷の顔を見ながら呆然としていると、ちゅっと音を立ててから離れた唇は今度は私の首筋に噛み付くように口付けられて思わず「んん」と小さく声が出てしまう
「…… 白石さん、かわい」
「ねぇ、……三ツ谷お酒飲んだの?」
「……飲んでねぇよ。……ちょっと触るよ」
えっ?って言った時には押し倒されて胸の上に手が置かれていた。不思議と嫌じゃない自分が不思議だったけど、付き合っても無い人とこれ以上して良いのかと頭の中がごちゃごちゃしてくる。キャミタイプのワンピースの肩紐が優しく下ろされて胸に置かれていた手が優しく服の中に入っていくと、首筋をキツく吸われて思わず吐息が漏れた。自分の口を手で覆い反対の手で胸を触る三ツ谷の手を上から押さえると「何で駄目なの?」と甘えた様な声を出した三ツ谷に少しだけキュンとしたけれど、そのまま彼をキツく抱き締めて手が動かせない様に力を込めた
ふと動きが完全に止まった三ツ谷を不思議に思い少しだけ手を緩めて顔を覗き込めば彼はスヤスヤと寝息を立てていた。ハアと溜息混じりで息を吐けば肩から力が抜けて三ツ谷の背中を擦りながら肩に顔を埋めて固まってしまった。ベンチの横には私の渡したジュースの空き缶が転がっていて、良く見ればアルコール7%と表示されていて私は自分の顔が青くなるのを感じた
「……どうしよ」
とりあえず三ツ谷を家まで送ってから帰らなくちゃと思い耳元で「三ツ谷起きて」と言うと目が少しだけ開いたけれど、トロンとした眠そうな目で「暑い。抱き締めて」と訳の分からない事を言いながら抱き着いてくるのでもうキュンを通り越してしっかりしろと言いたくなってきた
「帰るよ三ツ谷。家まで送るからさ」
「……帰らねぇ。眠い……」
「はよ立って。アイスあげるから」
「…… 白石さんと寝る」
「…………駄目だこりゃ。でも面白いから録音しておこう」
悪戯心が芽生えて携帯の録音機能を押した。三ツ谷の体を支える様にゆっくり立たせてからスーパーの袋を持つと以外に歩いてくれるのでホッとしてまずは公園をフラフラしながら出る事にした
「三ツ谷のうちは何処?」
「帰らないって…… 白石さんと寝る……あちぃ」
「……長袖だから暑いに決まってるじゃない」
「脱ぐ」
「脱がない脱がない、ちょっと着くまで待って」
「……水飲みてぇ……」
「……分かった。まずうちに行くから我慢して」
「うん」
呑ませてしまったのは私だし、三ツ谷の家の位置はハッキリと分からないのでとりあえず近いし直ぐに自宅へ向かった。途中で「ここ何処だ?」と言ってる三ツ谷に少しだけ笑ってしまったけど何とか自宅へ着き、直ぐに彼をソファに横にして水を飲ませると「あちぃ」と言いながら特攻服を脱いでパンツ一丁になりそのまま静かになった
慌ててたので余り考え無かったけれど、恋愛経験の無い私がパンイチの同級生の男子と密室にいるんだって事が不思議で仕方ない。「 …… 白石さん、居る?」とクッションでも探す様に手をバタバタさせている三ツ谷の頭の横に座ってポンポンと背中を優しく叩くとこちらを向いた三ツ谷は優しく微笑んだ
「……可愛い顔で笑うんだね。三ツ谷って」
「 白石さんも可愛い」
「さっきまで彼女居た人が何言ってんの」
「……なぁ…… まだ男知りたい?」
「……えっ?あ……あの話か」
「俺が教えてあげるよ……」
目尻の下がった菫色の瞳が私を見つめていた。甘えている様な三ツ谷の声が何だか新鮮で私はその瞳に釘付けになっていて身動きも取れなかった。唇に触れてくる熱い唇からはお酒の匂いがするけれど、何だか優しくて甘くて逃げられなかった。肩紐を下げられて鎖骨を舐められスカートに入って来た手はショーツを下げてそっと秘部に触れていた
「……三ツ谷……恥ずかしいよ……」
「……かわい」
「……そんな所触らないで……」
「……ちゃんと責任取るからさ……」
責任てなんだろうと思っていると、気付いた時には組み敷かれていて瞳が真っ直ぐにぶつかり合った。学校で見る三ツ谷の顔じゃなくて、何だかその顔をずっと見ていたくなってしまい私はそのまま彼の背中に腕を回して覚悟を決めた
何だか肩を揺さぶられている様な感覚に目を開ける
欠伸をしながら目を開けると目の前に居たのは裸の三ツ谷だった。顔色が悪く気まずそうに私を見て固まっている三ツ谷に少しだけ内心笑ってしまったけれど、そのまま起き上がって「……おはよ」と呟いた。掛かっていたプランケットがハラりと落ちて露わになった私の裸を見て三ツ谷は驚愕した顔をしてからまた固まった
「 白石さん……」
「……ん?」
「何で裸?……俺もだけど……」
「……本当に覚えてないの?」
「……少しだけ記憶……あるわ」
「……そんな感じ。……三ツ谷シャワー浴びてきなよ。朝ご飯いる?何か飲みたい物ある?」
「……あ、ああ。サンキュ……」
フラフラと立ち上がった三ツ谷に「パンツ履きなよ」と言えばギョっとした顔をしてソファの横に落ちていたパンツを拾い上げた。パンツの上にあった避妊具の空袋がポロりと落ちてそれを見てまた驚愕した顔をした三ツ谷に笑いを堪えるのが精一杯で直ぐに俯から唇をキュッと結んだ
「……泣いてんの?……俺傷つけた?」
「ううん。……泣いてないよ」
笑いを堪えてます何て言えなくて俯いたまま首を横に振った。笑いが収まって来てチラっと彼を見れば、何だか絶望を感じている様な顔をした三ツ谷に初めてを渡したのにそんな顔すんなと言いたくなったけれど、まだ状況が分からないだろうし仕方ないかなと思う意地悪な自分はパンツを履いている三ツ谷を見ながら内心クスクスと笑っていた
シャワーを浴びに行った三ツ谷を見送ってからキッチンで簡単なサンドイッチを作って消化に良い卵スープを作っていると特攻服をハンガーに掛けていたのを忘れていて、直ぐに部屋から大きめのシャツとスウェットを持ち脱衣場に置いた
「三ツ谷、スウェット置いとくね」
ガラス戸から声を掛けると「ああ」と声が聞こえたのでキッチンに戻り配膳をしていると割と直ぐにシャワーから出てきた三ツ谷はゆっくりと椅子に座った
「……良かったら食べてね」
「ありがとな。頂きます……。白石さん悪ぃんだけど水貰える?」
「麦茶でも平気?」
「ああ、サンキュ」
まだ少し暗い三ツ谷に麦茶が入ったグラスを渡してから私も食事に手を付けた。テレビから聞こえてくるニュースの音だけが部屋に響いていて何だか気まずいなと感じていると、視線を感じそちらを見れば三ツ谷のお皿とカップは空になっていたので少しだけ微笑んだ
「全部食べてくれてありがとね、味に自信無かったんだけど……口に合ったかな?」
「……ああ。美味かった。ありがとうな」
「三ツ谷顔色悪いけど二日酔い?平気?」
「……二日酔い?俺酒飲んでねぇよ」
「そこは覚えてないの?」
はっ?と言った三ツ谷に私が渡したジュースがお酒だったのと言って謝ると何だか納得した様に頷いた。「記憶が曖昧だからびっくりした」と言って苦笑いする三ツ谷にフフっと少しだけ微笑むと、三ツ谷は直ぐに表情を変えた
「… 白石さんさ、俺何か傷付ける様な事本当にしてない?」
「……傷つけられてないよ。大丈夫」
「俺……何て言ってた?」
「俺が男を教えてやるって言われたから……教えて貰った」
「…… 白石さん馬鹿なの?」
「何で?」
「断らなきゃ駄目だろ。」
「三ツ谷に言われたくないよ」
「……それもそうか……」
「初めてだったけど……優しくしてくれたよ」
「……おいおいマジかよ……」
「そんなビックリした三ツ谷の顔初めてみた……」
「いや、……本当に何て言っていいのか分かんねぇ。……本当に……ゴメンな」
何か謝られて嫌だなって思った。正直謝るくらいなら笑って欲しかったし、そんなに後悔する顔はして欲しく無かった。
「……謝らないで欲しいんだけど」
「……ああ。……悪ぃ」
何だか空気が一瞬で悪くなった気がした。絶対に泣かないって決めていたから歯を食いしばってでも泣かずに「……そんなに後悔してるなら忘れて」と言って席を立って自分の食器と三ツ谷の食器をトレーに乗せてキッチンに来ると手早く洗い物を済ませてから「シャワー浴びてくるから、帰るなら鍵開けといて平気だから」と三ツ谷の背中に声をかけた。だけど、思っていた通り返事は無かった
脱衣場で服を脱いで鏡を見れば首筋と胸にかなり濃いキスマークが付いていてその痣を指で撫でていると玄関が開いてから閉まる音がした。熱めのシャワーを浴びてから風呂を出れば特攻服は無くなっていて、掛けてあった所の床にはタバコの箱が転がっていた。貸したスウェットは綺麗に畳まれてソファに置いてあって何だか胸が空っぽになった気がした
キッチンで珈琲を入れてから庭に出て吸ってみたタバコは以外に美味しくて、煙がこんなに美味しい何てと驚愕しながら肺に煙を入れた。昨日の三ツ谷は全身で自分を愛してくれてる、求めてくれてるって何となく感じて嬉しくなったのを思い出す。熱い瞳が私を見つめ、囁く言葉は全て嬉しいものだった
吐いた煙を見つめながら「……しなきゃ良かったのかな」何て言葉が出て来て涙がすっと瞳から流れ落ちた
次の日に学校に行き3限目が終わり昼休みになると鞄からお弁当を取り出している私の前の席に座り顔を覗き込んで来たのは林田だった。「頭平気か?」唐突にそう聞かれて「頭悪いみたいに言うなし」と少しだけ彼に笑いかけると、ニシシと歯を見せて笑った林田は直ぐに眉を寄せた
「 白石、誰かと喧嘩したの?」
「……えっ??」
「首の痣って殴られたのか?……痛くねぇ?」
「……ああ。全然痛くないから大丈夫だよ」
「誰にやられたか言えよ。……女殴るやつは許せねぇ」
額がピクピクしている林田に優しいなとちょっと感動したけど、殴られても無いし付けたの三ツ谷だよとは言えずに「殴られて無いよ」と言って少しだけ微笑んだ。「言いにくいのか?」とそれでも探るのを止めない林田にどうしようかと悩んでいると、「パーチん」と名前を呼んでこちらに向かってくる林と少し気まずそうな三ツ谷がその後ろから歩いて来るのが見えて私はちょっとだけ硬直してしまう
「おう、ぺーやん、三ツ谷」
「パーちん何やってんの? 白石と飯食ってんの?」
「 白石にボール当てちまったから大丈夫か聞きに来たら今度は首に痣作っててさ」
「 白石、喧嘩したのか?」
「何であんたらは直ぐに喧嘩になるのさ」
ほらと言って林田が指を指してきた箇所を林が覗き込んで来たのでサッと手で隠すと、「本当に殴られてねぇの?平気」と聞いてきた林に頷いた。一度も三ツ谷の方を見れない私は何だか怒りがふつふつと湧いてきてしまい「……ただのキスマークだから大丈夫」とだけ言ってお弁当を持って立ち上がると三ツ谷の顔を見ずに横を通り過ぎて屋上に向かった
屋上に着くと入口の反対の小影に腰を下ろして水筒のお茶を飲むと何だか笑えて来てしまって、そのまま後ろに倒れ込んで少しだけ声を出して笑った。本当はちょっとだけあの台詞を言った後に三ツ谷の顔を見たかったけれど、出来なかったって事はその勇気は今の私には無かったんだと思う
内巻きにして来た髪型で首は隠せると思っていたけど意味無かったなとちょっと思いつつ、今日元気が出る様にっておまじないをしながら作った唐揚げ弁当の蓋を開けた。それを見ていたら何だか悲しくなって来て少しだけ出てきた涙を拭いながら卵焼きを口に入れる。俯きながら食べているとふと目の端に写った上履きにハッとして顔を上げた
「……三ツ谷」
「……鼻、赤くなってる」
ポケットから差し出されたハンカチを何だか受け取りたく無くて首を横に振ると、少しだけ困った様に微笑んだ三ツ谷は私の隣にゆっくりと腰を下ろした
「……体……平気?」
「……平気」
「……この弁当、白石さんが作ったの?」
「う、うん。元気が出る様におまじないして作ったの……って。三ツ谷に言ったら嫌味になっちゃう、ごめん」
「……俺に傷付けられたって思ってるからその言葉が出るんだよね?」
「……後悔してそうだったから……傷ついた。のかな」
「 ……俺が…… 白石さんに対して軽率な事しちゃったから後悔した。」
「軽率な事はしてないよ。慰めてって言われていいよって言ったの私だし、酔っ払った三ツ谷に色々……言われて真に受けたのも私だから」
「……俺、他に何て言ってたの?」
「……責任取るからさとか一緒に寝たいとか。……帰らないとかかな」
「…………」
何も言わない三ツ谷をチラっと見れば放心した様な顔でげんなりしていて、笑っちゃいけないのに何故か笑えて来てしまって吹き出してまう。「…… 白石さん笑えんの?」と少し呆れた様な顔をした三ツ谷に「酔っ払ってたから仕方ないよ」と言って彼の背をポンポンと少しだけ叩いた
「……体、もし痛くなったら言えよ」
「大丈夫だよ、この間も言ったけど後悔してるなら忘れてね」
「……忘れらんねぇよ」
「…………」
「……ちょっといい?」と言って私の返事を聞く前に髪を上げて首を見てきた三ツ谷は「……結構くっきり付いてんな」と一言言ってから私の頭を優しく撫でる。「ごめんはもう言わないで」と言った私と瞳を合わせると「ああ」と言って黙ってしまった。何分か沈黙が続いて、箸に唐揚げを刺してから三ツ谷の口元に持って行くと唐揚げを見てから無言で口を開けた三ツ谷の口の中に放り込んだ
「……どぉ?」
「……すげぇ美味しい。てか腹減ったわ」
「沢山作ったからこれ良かったら食べてよ。作り過ぎて夕飯も唐揚げ何だよね」
「……まじで?俺も夕飯唐揚げ食いたいな」
「えっ?今食べて夕飯も唐揚げ食べるの?」
「…… 白石さんが嫌じゃ無かったら、俺も食べていい?」
「……いいよ」
私の小さな返事を聞いて三ツ谷は少しだけ安心した様に微笑んでからお弁当を食べ始めた。水筒にお茶を入れて差し出せば「サンキュ」と言いながら受け取ってくれて、何だか少しだけ私達の間にあった空気が和んだ様な気がした
「……三ツ谷今日は部活?」
「ああ。でも今日は割と直ぐ終わるかな」
「唐揚げの他に何か食べたいのある?」
「……うーん。米??」
「米は炊く予定だよ。唐揚げ定食ってキャベツの千切りとかと一緒に出てくるよね?キャベツが良いかな?」
「……てかこの卵焼きすげぇ美味い」
「ふふ。良かった」
キャベツの話はどうでも良いのかそれに返事は無いけれど口いっぱいに頬張って嬉しそうに食べる三ツ谷が何だか可愛くて少しだけ彼に触れたくなった。「ご馳走様」と言って空になったお弁当を渡され、それを巾着にしまうとお茶を啜っていない左手が私の直ぐ横にある
嫌がられるかなとかも考えずにその手の上に優しく手を置くと、少しだけピクリとした左手は動かなくなったので三ツ谷を見ればお茶を飲む手は止まっていて不思議な物を見る様に私を見ていた
「……ごめん、嫌だった?」
「…………いや、嫌じゃねぇけど」
その言葉を聞いて安心してしまう。沈黙の中暫くして触れている手でそのまま彼の指先を握るとお茶を置いた三ツ谷の右手が優しく私の首の痣を撫でた。「……林田が誰に殴られたのかって凄い聞いてくるの」と小さく笑った私に「三ツ谷にやられたって言っていいよ」と言って微笑んだ三ツ谷は私の唇に触れるだけの口付けを落とした
