短編 シリーズ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
柔らかなベッドの上で隆の温かな胸板に頬を擦り寄せて目を瞑った。背中に回っている手の平の温かさを感じながら頭の中では花垣君の事ばかり考えていた。かなり久しぶりに集会出て色んな事を感じて自分の内側で考えていた事を凄いタイミングでドンピシャに当てられた気がした
花垣君のボロボロと溢れ落ちる涙を見ているだけで、こちらまで深い悲しみに落ちそうになってしまい途中私まで泣きそうになってしまった。花垣君とちーが目を腫らし、頭を下げて去ってゆく背中を見送っていると「たけみっちと仲良いの?」と聞いてきた隆に首を横に振った。いつも下がっている目尻がもっと垂れて少しだけ困った様な顔をしていたが、そういえば隆はそれ以上は聞いて来なかった
ゆっくりと目を開け胸板にあった首を起こして隆を見ると、寝ていたと思っていた彼は私を見つめていた。少しだけ驚いたが、その何とも言えない様な隆の表情が読めなくてわざとらしく困った顔をして瞳を見つめ返す
「……ねぇ、何考えてるの?」
「………別に。何でもねぇよ」
そう言って子供をあやす様に頬を指で撫でてきた隆は少しだけフッと薄く微笑んだ
「…あ…分かった……またしたいんだね」
「……したいっちゃしたいけど……。じゃなくて、お前が何か話たいんじゃねぇの?」
「うん。……ちょっと気になる事があるんだけど」
「ん?……言ってみ」
病院に行って帰って来たら花垣君とちーが家に居た事。2人の会話を聞いてしまった事を細かく話すと隆は静かに相槌だけをうっていて口を挟まなかった。集会に行ってもう居場所が無いような気がした事や、やっぱり体は女だし私だけ引退した方がいいだろうか。そんな事を考えながら隆と階段に居たら花垣君に泣かれ、あの台詞を言われた事が不思議で仕方ないと話すとしばらく無言だった隆は私の頭を優しく撫でる
「……病院から帰ってきてからそんな事があったのか。確かにその会話を聞いてからアレを言われたら不思議で仕方ないよな」
「……うん。……後隆が殺されて、マンジロを私が殺してから自殺したって話が1番謎」
「……話し方がまるで未来の話をしてるみたいだな」
「そこなんだよね。そんな事有り得ないのに、話を聞いていると花垣君の話は未来の話に聞こえた」
「未来で、お前が妊娠してる時に俺が殺されるって事か?」
「……そもそも誰に殺されるのかも分からないし、マンジロを何で私が殺すのさ」
「……俺がマイキーに殺されたとか?」
「「無いな」」
そこで揃った声に二人で笑い合っていると、笑い終えた隆は私の瞳を見つめて来たので少しだけ首を傾げた
「なぁ……これからもずっと、東卍に居ろよ。階段でお前に言ってくれたたけみっちの台詞。あの言葉をお前は受け取るべきだ」
「……うん。でもあれは……本当に理想だった。私もああ居れたら良いと思うよ。……何だかんだ、誰も文句つけて来ないのに女にこだわってるのは私だしね」
「…それもゆっくりお前の中で紐解いたらいいよ。何があっでも俺だけはお前の味方だから」
「……私ったら幸せ者」
「ははっ、良かったな」
目を無くして笑った隆の頬に擦り寄ると胸がいっぱいになった気がした。こんな彼と居て、何だかんだ優しい皆と居て何故花垣君が泣くような未来があるのかが不思議に感じた。そもそも未来の話なのか、何の事なのかさえも分からないのだから考え様は無いのだけれど、彼が私に悪意を持って混乱させようとかそんな事でも無いような気がするので隆の言う通り言葉だけは受け取っておく事にした
「……でもさ、全部が全部信じている訳じゃないんだけどね。……あんなに女は嫌だとか昔言ってた自分も妊娠するんだなぁとか実は聞いた時感動した」
「……妊娠してるって事は結婚してたのかもな」
「……何か私達の事なのに他人の話みたいだね」
「…俺の子を妊娠か……。何だか想像つくようなつかない様な不思議な気分だな」
「……私達の子供は男なら隆に似て不良になるかな……」
「お前どの口が言ってんの……」
「わ、私は不良じゃないもん。家庭が複雑で少しグレてた格闘王なだけだよ」
「…阿呆か。何か地味にネーミングセンスがねぇし」
呆れた様な顔で私の唇に触れるだけの口付けをしてくれた隆はそのまま私を抱き締め猫の様に丸まってそっと目を閉じた。「隆だーいすき」と小さな声で呟いた私に小さく笑った隆はいつもの様に「俺も」と言ってくれた
その日はそのまま寝てしまい、朝起きると久しぶりに脇腹に痛みを感じず嬉しくて隣で眠る隆に抱き着くと「うーん」と口を動かした隆は腹減ったと言って寝てしまったのでシャワーを浴びて軽く朝支度を済ませてしまう。この間隆が食べたいと言っていた卵サンドを作り料理をしている間に回しておいた洗濯物を干して休日の朝時間を楽しむ事にした
10時を過ぎると起きてきた寝癖だらけの隆はシャワーを浴びてから1度家に帰り着替えを済ませてこちらに戻ってきた。二人で過ごす休日はかなり久しぶりなのでゆっくりとご飯を食べてから珈琲をいれて、映画を見たり二人で抱き締めあって昼寝したりと一日中ダラダラと過ごしていた
「……痛くないって幸せ」
「油断すんなよ、当分喧嘩禁止な」
「はーい」
「随分素直だな」
「当分痛いのはご遠慮。平和にいく」
「……守れよマジで」
「私は皆のが心配だよ」
「昔の俺とドラケンの気持ちが分かるだろ 」
「は、ははは」
苦笑いをしながらソファに寝そべってテレビを見ている彼の膝に寝っ転がって携帯ゲームをしていると、画面に表示された圭介からの着信に直ぐに通話を押した
「はい?」
「俺。ちょっと話あんだけど今誰がいる?」
「隆と二人」
「なら行くわ」
相変わらずだなと思い通話終了のボタンを押した
話し方から分かったのか「場地?」と聞いてきた隆に首を縦に振ると「何かあった?」と聞かれたので分かんないと返すと「そ」と言って隆もテレビに視線を戻した。それから少しして圭介の単車の音が家の前で止まる音がして、リビングに顔を出した圭介はポケットから自販のジュースと携帯をテーブルに出して腰掛けた
「何かあったの?」
「マイキーに接触してる稀咲って奴分かる?」
「……聞いた事無いけど」
「知らね。どこの奴?」
「多分芭流覇羅。会話ちょっと聞いたけど、何か胡散臭せぇんだよ」
「胡散臭いって?」
「東卍をデカくしようとかマイキーに言ってた。その癖にエマの事襲ったのも芭流覇羅だ」
チッと舌打ちをした圭介は髪をかきあげながら「気に食わねぇ」と呟いた
「その話にマンジロは何て言ってたの?」
「……マイキーも気に入らねぇ。俺らに相談も無しに乗り気な返事してやがった」
「……マイキーはその話受ける気なのか」
「そもそも稀咲君て子は芭流覇羅みたいな大人数を動かせるの?総長って事?」
「半間しか名前聞いた事無いよな」
「でも何を言っても最終的に決めるのはマイキーだろ?」
「三ツ谷、俺達にだって決める権利はあんだろよ」
「……うーん。私達にも意見はあるのは分かるけど決めるのはマンジロになっちゃうから、話し合いが出来るといいけど」
「まぁな」
「この間集会行って思ったけどさ、女に手を挙げるような阿呆がチームに居る事がまず問題だよね。知らなかったとしても手を出すべきじゃない」
「……ああ」
「これから人数が増えたらいくら幹部がしっかりしていても中堅があんなのばっかりだと、先が見えるでしょ。女に手を出す阿呆なんだから男の後輩にも気に入らないとかで手をだしたり、恐喝やカンパ回したりするかもしれないし。チーム内で割れて喧嘩になるかもね」
「……お前、俺と三ツ谷に言ってんの?」
「そだよ、隊長なんだから教育しっかりしなくちゃ。マンジロだってドラちゃんだって不良でも心は持てって言ってたし。力は守るためにって隆も教えてあげて欲しい」
「……人数が増えると教育も大変て事か」
「皆で協力すれば良い、私達だって小学校から皆で協力してきたじゃない。少し人数が変わっただけだよ」
「……やっぱりお前が集会に来ると口煩いな」
「私は女だからね、煩いのよ」
ケラケラと笑った私に「女って柄かよ」と言って苦笑いした圭介と、その肩を優しく叩き「ま、頑張ろうぜ」と観念した様な隆にうんうんと頷いた。その話はそこで1度終わり、他愛も無い話をしているとピンポンとチャイムの音が鳴り玄関に向かうと手紙の様な物が圭介の靴の上に落ちていた
拾いあげて差出人を確認するが名前は無く、雪那さんへと達筆で綺麗な字に眉を寄せた。何だか気持ちが悪くて鍵を掛けてチェーンをするとその手紙を開いて便箋を手に取り開いた
雪那さんへ
我々は貴女を歓迎します
直ぐに東卍の在籍を辞めてください
辞めない場合は佐野万次郎を地獄へ招待します
赤い文字で書かれている手紙は不幸の手紙よりも腹立たしくなった。下らないと思いつつその手紙を持ってリビングに戻ると二人は私の顔を見てギョっとする
「……怖ぇ顔」
「 雪那、何かあったのか?」
無言でテーブルにその手紙を置き「悪趣味」と言った私に二人は手紙を覗き込んだ。手紙を見終わって直ぐに怪訝な顔をした二人は1度目を合わせると私を見て外に誰か居たか?と聞いてきたので直ぐに鍵掛けたと言えば二人は立ち上がり早足で玄関に向かっていった
二人なら大丈夫だろうと彼等の後は追わずにキッチンに向かい珈琲を入れていると、丁度3人分いれ終わった時に二人は苛立った様な顔でリビングに戻ってくる。その顔から何も収穫は無いのが分かったので2人に暖かい珈琲を握らせてから私もマグカップの珈琲に口を付けた
「誰も居ねぇ」
「……私が玄関に着いた時にはもう人の気配はしなかったよ」
「……舐めてんな」
「誰だか全く検討がつかないね。今日の幹部会に一応手紙持ってってみる?」
「……お前来んの?」
「うん。手紙も見せたいし、ちょっと気になる事もあるからさ」
「行くなら俺の後ろ乗れよ。まだ本調子じゃねーんだから」
「うん、今回はそうする」
そんな話をしながら夕方前には3人で家を出て早めにファミレスに移動をし、圭介が一虎と千冬に早めにファミレスに来るように電話をして5人で食事をとってのんびりとしていると少しづつ人数が集まって来た
「珍しいな、雪那 」
「なほちゃん、そうちゃん元気そうだね」
この間集会で会ったけれど話も出来なかったので久しぶりに二人と他愛も無い話をしていると、「げぇ」とゲテモノでも見た様な声が聞こえて振り返れば瞼をピクピクさせた春千夜が私を見て後ずさっていた
「その瞼の癖まだ治んないんだ」
「……何しに来たんだよ」
春千夜の肩を優しく抱いてから「居ちゃ悪いか?」と耳元で囁くとブンブンと顔を横に振った。小さな頃からヤンチャだった春千夜はグレて居た時の私からすれば生意気で喧嘩になる事が良くあった。あの頃は人の痛みにも鈍感だったから覚えたての技でフルボッコにしてやるとそれから毎回私に会う度にストレスからか瞼がピクピクと動く様になった
回した腕を嫌そうに見つめる春千夜に内心大きくなったなぁと背伸びしている自分が不思議になる。昔は凄く細くて私より小さい体で立ち向かってくる姿を未だに鮮明に覚えている。嫌そうな顔で私を見てくる春千夜の頬をつんつんとつついていると、「……その辺にしてやってくれ」と言って私の腕を春千夜から降ろしたのはムーチョだった
「久しぶりだからつい」
「お前は可愛がり方が怖いんだよ」
「……そっくりそのまま返すわ」
何だかんだ春千夜に甘いムーチョに少しだけ微笑むと「怪我は平気か?」と聞かれて少しだけ驚いたが素直に頷いた。三ツ谷に余り心配かけるなよと言ってポンと肩に置かれた手。ムーチョは昔から私には話しかけても来なかったし、必要以上の事も言わなかった。そんな彼から言われた言葉がむず痒い様な不思議な感じがして少しだけ戸惑ってしまった
「ムーチョに可愛がり方が怖いって言われた」
「三途?」
「うん」
「あれ可愛がってんの?」
席に戻り、隆と会話をしていると横で聞いていた圭介と一虎がゲラゲラと笑い出す。それから一虎の下らない話で盛り上がっていると、入り口から入って来たドラちゃんとマンジロが席に着いて早々に口を開いた
「東卍は芭流覇羅と組むことにした」
そんなマンジロの台詞に一瞬ザワりとしてから、やっぱり圭介と一虎は噛み付くような言い方で反対だと声を荒げた。ちーが「良いウワサ聞かないですよマイキー君」と口を開くと「黙ってろよ、餓鬼」と知らない声が聞こえてそちらを見れば半間ともう一人、背の低い眼鏡の男がニヤけながらちーを見ていた
頭に来て立ち上がるのが分かって居たので、先に圭介と一虎の前に手を伸ばして制すると二人は舌打ちをしてから2人を睨みつけた
「……芭流覇羅の半間と稀咲だ。これから仲間になるから揉め事は起こさないように」
ドラちゃんが半分溜息混じりでそう言うと、半数は直ぐに返事をしたけれど圭介を初めとした1番隊メンバーに一虎、隆に八戒、私は返事をしなかった。そんな事は分かっていたとゆう様な顔で少しだけ笑ったマンジロは「とりあえずメシ食うか」と言っていつも通りお子様ランチを頼み出した
ドラちゃんが直ぐに圭介の横に座り、隆と一虎、八戒や千冬を交えて真剣な話をしていたので私はそそくさと移動してオムライス待ちをしている機嫌の良さそうなマンジロの横に座った
「ねぇ、食べる前にちょっと見てくれない?」
「ん?」
ポケットから出した便箋を渡すと「なんだこれ」と言って文字に目を通したマンジロは怪訝な顔で私を見つめる「さっき家に届いた」そう言って読み終わったマンジロから便箋を取り綺麗に畳んでからポケットにしまう
「……差出人に心当たりは?」
「まるで無いよ、そっちは?」
「今の所無いな」
そう。と言って溜息を吐くと、運ばれてきたお子様ランチには旗が立っていなかった。それを見て一瞬で顔を変えたマンジロを見て呆れながら胸ポケットから取り出した旗をオムライスに立ててやると彼は昔と変わらぬ笑みで満足そうに笑う
「流石雪那。」
「……昔の癖は皆治らないんだねぇ」
「ん?何か言った?」
「早く食べちゃいな、冷めるよ」
そんなやりとりをしながら少し微笑んでいる私に、マンジロの隣から視線を感じてそちらを見れば目が合った稀咲は私を感情が無い顔で見つめていた。首を傾げた私に、ニコっと人懐っこい笑みを浮かべた稀咲は「 雪那さんですよね?」と優しい口調で話しかけて来た
「……うん」
「今日からよろしく、仲良くして下さい」
そう言って手を差し出されたので少しだけ戸惑っていると、半間に「握手くらいしてあげれば?」といわれて渋々握手を交わした。嘘くさい笑みでファンなんですよ、貴女の。と言って来た稀咲にマンジロは大笑いしていたが、何となく嫌味とゆうか悪意が少しだけ感じ取れた。話し方と顔は感じが良いけれど何となく敵対心を感じて私はどうも。とだけ言って直ぐに席を立った
親の事、虐めの事があったそのくらいの歳から敵意には敏感だったので、何となく察したがまだ彼等が何をしたいのかは良く分からないのでとりあえず何も言わず下手に刺激はしないと決めた。隆の横に移動すると耳元で「大丈夫か?」と聞かれて一連の流れを見ていたんだろうなと思い軽く頷いた
機嫌がすこぶる悪い圭介と一虎、千冬は幹部会が終わるとさっさと帰宅してしまい、それを見てドラちゃんは深く溜息を吐いていた。隆がドラちゃんに「今は仕方ねーよ」と言うと「ああ」とだけ返した彼は多分1番苦労してるんだよなとしみじみ思ってしまった。マンジロが走りに行こーぜと言ってきたけれど、手紙が来たばかりで今はあんまり家を長く空けたくない。ドラちゃんには言って無かったので手紙の事情を説明してから帰ると言えば「三ツ谷借りるわ」と言われたので分かったと頷いた
「借りるのは良いんだけど、私隆の後ろ乗って来たんだった」
「てか、お前一人で家いんの?その手紙の事があんなら危ねぇか」
ドラちゃんがそう言えば、横から「姉ちゃんは絶対1人でも大丈夫」と声がして振り返れば八戒と春千夜が頷きながら私を見つめていた。私がじっと2人を睨みつけると隆の後ろに隠れた八戒と「何かマジマジと見ると小さくなったな」と言って私を不敵な笑みで見下ろしてきた春千夜のお腹につかさず手加減したボディーブローをかますと「ガフっ」と言って腹を押さえて蹲り瞼をピクピクさせる
「あ、丁度いいや。春千夜送ってって」
「……えっ?」
「三途、悪いけど俺が戻るまで雪那見ててくんね?」
「……はっ?」
こいつよろしくな。と最後にマンジロに言われた春千夜は腹を押さえたまま渋々こくりと頷いた。この世の終わりみたいな顔をしながら私を見る春千夜にニッコリと微笑むと肩を落としてトボトボと単車を取りに行く彼に笑いが止まらなかった
「昔から女扱いするとキレるのに、こんな時は過保護にされてて意味分かんね」
「やかましいわ」
後ろからペシりと春千夜の頭を叩くとサラサラと綺麗な髪が風に靡いてバシバシと目に当たりうざったくて、右手につけていたゴムでポニーテールにしてやった。私が乗っているからか、余り飛ばさずにゆっくり走る春千夜は以外に可愛い所もあるのかもしれない
「そういえばさ、何で怪我した?」
真っ直ぐと前を向いたまま聞いてきた彼に、深い内容は知らないんだなと思った。パーの事も言えないので「まぁ、刺された」と返すとこちらを凄い勢いで振り返り「……誰に?」と聞かれたので内緒とニッコリすると眉を寄せた春千夜は視線を正面に戻してスピードを上げた
ムーチョは怪我の事を知っている感じだったけど、他は詳しくは聞かされていないのか?パーに刺されたとは流石に言えないのでとりあえず黙っておく事にした
家まで送って貰うと、凄い速さで帰ろうとする春千夜の襟を掴んで無理やり家の中に入れる。観念したのか隆やマンジロに頼まれているからか、仕方ないみたいな顔をして靴を脱いで家に上がるとリビングのソファに腰掛けた
「何飲む?紅茶でいいの?」
「……紅茶で良い」
「はいはい」
小学校の頃は家にマンジロや圭介と良く遊びに来て紅茶しか飲まなかった春千夜に温かい紅茶を出すと、昔と同じ様に背筋を伸ばしてカップに口を付ける美しい仕草は変わって無かった。自分の分の紅茶をカップに注いでから彼の隣に腰掛けてテレビを付けると、見たかったドラマがやっていたのでそのままリモコンを傍らにおいた
「……なぁ」
「ん?」
「稀咲と半間どう思った?」
その質問に私が少し目を見開くと「なんだよ」と小さく呟いた春千夜に首を横に振る
「いやぁ、まさかあんたが私に聞いてくると思わなくてさ」
「何だそうゆう事かよ」
「……春千夜はどう思う?あの2人」
「……俺はマイキーが決めた事なら良い」
「まぁ、そう言うと思ったけど。……騙されている場合や、裏がある場合もあるんだから。大将がそれなら良いじゃ、後々大将が困った事になる事もある。それは本当の忠義では無いからね」
「……」
「春、聞いてんの?」
私をうるせぇなみたいな顔で見た春千夜にニッコリとして笑みだけ返せば「変わったな 雪那は」と目を自然に逸らされた。
自分が鑑別から出てきて誓った事。女性として恥じない生き方をしたい、少しでも大人の女性になれる様に
でもそれを頑張ったのは最初だけで、結局ぱーの事だって皆に心配をかけたし久しぶりに集会に出れば一人で殻に閉じこもる様な考え方をして花垣君に釘を刺されてしまった
「……あんたからはそう見えるだけで、私は全然変われて無いよ」
「俺が変わったと思えば変わったんだよ」
「相変わらずだねぇ」
「 雪那もな」
「……アイツらの事だけど……私は2人が何か企んでる様にしか見えないね。私にもドラちゃんにも敵対心がある」
「……ふーん。そんな風に見えるのか」
「今はまだ分からないから少し様子見るけどね」
そんな話をしていると、玄関でした物音に春千夜がスっと立ち上がった。声を掛けようとする前にはもう玄関に向かって歩いている彼の後ろを付いて行くどドアの郵便受けに挟まっている紙は先程無かった物で私は自然に眉を寄せた
「ラブレター来てるぜ」
「……やかましいわ」
ひったくる様にしてその紙を取った春千夜はその紙を開くと目を落とした。直ぐに彼のスっと細められた瞳からは大体想像がついて、またイタズラかとよと溜息を吐きながら覗き込んだ
雪那さんへ
返事は決まりましたか?
佐野万次郎を地獄へ招待するカウントダウンが始まりました。最初の犠牲者は貴女の大事な人でもあります
と赤い文字で書かれていた。赤いインクの色も特徴的な文字も家を出る前に入れられていた手紙と一緒だ
「……ろくでも無い奴に好かれてんな」と呟き冷ややかな目線で私を見ている春千夜の手から紙をひったくると、ポケットに入っていた携帯を取り出して直ぐに隆とドラちゃんに注意する様に連絡を入れた
2人共直ぐに既読にはならないから多分まだ単車で走っているんだろう。少し心配だったけれどマンジロも一緒だし大丈夫かなと思いながら一応圭介と一虎、パーにもLINEだけは入れておく事にした
春千夜と話が弾まないので二人で格闘ゲームをして暇をつぶしていると1時間程してから帰って来たのは隆だけでは無くマンジロとドラちゃんも一緒だった
ゲームをしている私と春千夜を見て少しだけホッとした様に息を吐いた3人に「おかえり」と言えば「おー」と軽く返事をした隆は冷蔵庫からお茶を取り出しグラスに注ぐとドラちゃんとマンジロに渡し私の横に腰掛ける。隆に続いて2人も「疲れた」と言いながらラグの上に寝転がった
私が黙ったままポケットから取り出した手紙を隆に渡すと、受け取った隆はさっと目を通してからマンジロに手紙を渡した。私のコントローラーに手を伸ばしたドラちゃんが体を起こして「三途、勝負な」とニヤリとした顔をすると首を1度縦に振った春千夜は私が弱かったからか少しだけ嬉しそうな顔で画面を見つめた
「また俺への地獄の招待状かよ」
「マンジロがモテモテでお姉ちゃん嬉しいわ」
「お前んちに来るんだからお前がモテてるんじゃね?三ツ谷が妬くぞ」
「……流石にこれは妬かねぇわ」
「 雪那に東卍辞めて欲しいって事だろ?お前をターゲットにする理由は?」
「女だからかな?」
「……うちに来て欲しいって事は勧誘みたいなもんか?でも女関係あんのか?」
「ただ邪魔なだけかなぁ。こんな悪趣味な人の思考回路は分かんないよ」
「……腹減ったし、眠い」
「……マイキー頼むよ」
欠伸をし出したマンジロはそのままゴロリとまた横になりクッションを抱え込んだ。「はあ」と私と隆の溜息が重なるといつも通りに「 雪那ご飯作って」と言ってくるのが予想がついていたのでへーへーと言いながら立ち上がる
「ちなみに他に食べる人」
全員が即座に手を上げたので「へーへー」と言ってからキッチンに向かい歩き出した
花垣君のボロボロと溢れ落ちる涙を見ているだけで、こちらまで深い悲しみに落ちそうになってしまい途中私まで泣きそうになってしまった。花垣君とちーが目を腫らし、頭を下げて去ってゆく背中を見送っていると「たけみっちと仲良いの?」と聞いてきた隆に首を横に振った。いつも下がっている目尻がもっと垂れて少しだけ困った様な顔をしていたが、そういえば隆はそれ以上は聞いて来なかった
ゆっくりと目を開け胸板にあった首を起こして隆を見ると、寝ていたと思っていた彼は私を見つめていた。少しだけ驚いたが、その何とも言えない様な隆の表情が読めなくてわざとらしく困った顔をして瞳を見つめ返す
「……ねぇ、何考えてるの?」
「………別に。何でもねぇよ」
そう言って子供をあやす様に頬を指で撫でてきた隆は少しだけフッと薄く微笑んだ
「…あ…分かった……またしたいんだね」
「……したいっちゃしたいけど……。じゃなくて、お前が何か話たいんじゃねぇの?」
「うん。……ちょっと気になる事があるんだけど」
「ん?……言ってみ」
病院に行って帰って来たら花垣君とちーが家に居た事。2人の会話を聞いてしまった事を細かく話すと隆は静かに相槌だけをうっていて口を挟まなかった。集会に行ってもう居場所が無いような気がした事や、やっぱり体は女だし私だけ引退した方がいいだろうか。そんな事を考えながら隆と階段に居たら花垣君に泣かれ、あの台詞を言われた事が不思議で仕方ないと話すとしばらく無言だった隆は私の頭を優しく撫でる
「……病院から帰ってきてからそんな事があったのか。確かにその会話を聞いてからアレを言われたら不思議で仕方ないよな」
「……うん。……後隆が殺されて、マンジロを私が殺してから自殺したって話が1番謎」
「……話し方がまるで未来の話をしてるみたいだな」
「そこなんだよね。そんな事有り得ないのに、話を聞いていると花垣君の話は未来の話に聞こえた」
「未来で、お前が妊娠してる時に俺が殺されるって事か?」
「……そもそも誰に殺されるのかも分からないし、マンジロを何で私が殺すのさ」
「……俺がマイキーに殺されたとか?」
「「無いな」」
そこで揃った声に二人で笑い合っていると、笑い終えた隆は私の瞳を見つめて来たので少しだけ首を傾げた
「なぁ……これからもずっと、東卍に居ろよ。階段でお前に言ってくれたたけみっちの台詞。あの言葉をお前は受け取るべきだ」
「……うん。でもあれは……本当に理想だった。私もああ居れたら良いと思うよ。……何だかんだ、誰も文句つけて来ないのに女にこだわってるのは私だしね」
「…それもゆっくりお前の中で紐解いたらいいよ。何があっでも俺だけはお前の味方だから」
「……私ったら幸せ者」
「ははっ、良かったな」
目を無くして笑った隆の頬に擦り寄ると胸がいっぱいになった気がした。こんな彼と居て、何だかんだ優しい皆と居て何故花垣君が泣くような未来があるのかが不思議に感じた。そもそも未来の話なのか、何の事なのかさえも分からないのだから考え様は無いのだけれど、彼が私に悪意を持って混乱させようとかそんな事でも無いような気がするので隆の言う通り言葉だけは受け取っておく事にした
「……でもさ、全部が全部信じている訳じゃないんだけどね。……あんなに女は嫌だとか昔言ってた自分も妊娠するんだなぁとか実は聞いた時感動した」
「……妊娠してるって事は結婚してたのかもな」
「……何か私達の事なのに他人の話みたいだね」
「…俺の子を妊娠か……。何だか想像つくようなつかない様な不思議な気分だな」
「……私達の子供は男なら隆に似て不良になるかな……」
「お前どの口が言ってんの……」
「わ、私は不良じゃないもん。家庭が複雑で少しグレてた格闘王なだけだよ」
「…阿呆か。何か地味にネーミングセンスがねぇし」
呆れた様な顔で私の唇に触れるだけの口付けをしてくれた隆はそのまま私を抱き締め猫の様に丸まってそっと目を閉じた。「隆だーいすき」と小さな声で呟いた私に小さく笑った隆はいつもの様に「俺も」と言ってくれた
その日はそのまま寝てしまい、朝起きると久しぶりに脇腹に痛みを感じず嬉しくて隣で眠る隆に抱き着くと「うーん」と口を動かした隆は腹減ったと言って寝てしまったのでシャワーを浴びて軽く朝支度を済ませてしまう。この間隆が食べたいと言っていた卵サンドを作り料理をしている間に回しておいた洗濯物を干して休日の朝時間を楽しむ事にした
10時を過ぎると起きてきた寝癖だらけの隆はシャワーを浴びてから1度家に帰り着替えを済ませてこちらに戻ってきた。二人で過ごす休日はかなり久しぶりなのでゆっくりとご飯を食べてから珈琲をいれて、映画を見たり二人で抱き締めあって昼寝したりと一日中ダラダラと過ごしていた
「……痛くないって幸せ」
「油断すんなよ、当分喧嘩禁止な」
「はーい」
「随分素直だな」
「当分痛いのはご遠慮。平和にいく」
「……守れよマジで」
「私は皆のが心配だよ」
「昔の俺とドラケンの気持ちが分かるだろ 」
「は、ははは」
苦笑いをしながらソファに寝そべってテレビを見ている彼の膝に寝っ転がって携帯ゲームをしていると、画面に表示された圭介からの着信に直ぐに通話を押した
「はい?」
「俺。ちょっと話あんだけど今誰がいる?」
「隆と二人」
「なら行くわ」
相変わらずだなと思い通話終了のボタンを押した
話し方から分かったのか「場地?」と聞いてきた隆に首を縦に振ると「何かあった?」と聞かれたので分かんないと返すと「そ」と言って隆もテレビに視線を戻した。それから少しして圭介の単車の音が家の前で止まる音がして、リビングに顔を出した圭介はポケットから自販のジュースと携帯をテーブルに出して腰掛けた
「何かあったの?」
「マイキーに接触してる稀咲って奴分かる?」
「……聞いた事無いけど」
「知らね。どこの奴?」
「多分芭流覇羅。会話ちょっと聞いたけど、何か胡散臭せぇんだよ」
「胡散臭いって?」
「東卍をデカくしようとかマイキーに言ってた。その癖にエマの事襲ったのも芭流覇羅だ」
チッと舌打ちをした圭介は髪をかきあげながら「気に食わねぇ」と呟いた
「その話にマンジロは何て言ってたの?」
「……マイキーも気に入らねぇ。俺らに相談も無しに乗り気な返事してやがった」
「……マイキーはその話受ける気なのか」
「そもそも稀咲君て子は芭流覇羅みたいな大人数を動かせるの?総長って事?」
「半間しか名前聞いた事無いよな」
「でも何を言っても最終的に決めるのはマイキーだろ?」
「三ツ谷、俺達にだって決める権利はあんだろよ」
「……うーん。私達にも意見はあるのは分かるけど決めるのはマンジロになっちゃうから、話し合いが出来るといいけど」
「まぁな」
「この間集会行って思ったけどさ、女に手を挙げるような阿呆がチームに居る事がまず問題だよね。知らなかったとしても手を出すべきじゃない」
「……ああ」
「これから人数が増えたらいくら幹部がしっかりしていても中堅があんなのばっかりだと、先が見えるでしょ。女に手を出す阿呆なんだから男の後輩にも気に入らないとかで手をだしたり、恐喝やカンパ回したりするかもしれないし。チーム内で割れて喧嘩になるかもね」
「……お前、俺と三ツ谷に言ってんの?」
「そだよ、隊長なんだから教育しっかりしなくちゃ。マンジロだってドラちゃんだって不良でも心は持てって言ってたし。力は守るためにって隆も教えてあげて欲しい」
「……人数が増えると教育も大変て事か」
「皆で協力すれば良い、私達だって小学校から皆で協力してきたじゃない。少し人数が変わっただけだよ」
「……やっぱりお前が集会に来ると口煩いな」
「私は女だからね、煩いのよ」
ケラケラと笑った私に「女って柄かよ」と言って苦笑いした圭介と、その肩を優しく叩き「ま、頑張ろうぜ」と観念した様な隆にうんうんと頷いた。その話はそこで1度終わり、他愛も無い話をしているとピンポンとチャイムの音が鳴り玄関に向かうと手紙の様な物が圭介の靴の上に落ちていた
拾いあげて差出人を確認するが名前は無く、雪那さんへと達筆で綺麗な字に眉を寄せた。何だか気持ちが悪くて鍵を掛けてチェーンをするとその手紙を開いて便箋を手に取り開いた
雪那さんへ
我々は貴女を歓迎します
直ぐに東卍の在籍を辞めてください
辞めない場合は佐野万次郎を地獄へ招待します
赤い文字で書かれている手紙は不幸の手紙よりも腹立たしくなった。下らないと思いつつその手紙を持ってリビングに戻ると二人は私の顔を見てギョっとする
「……怖ぇ顔」
「 雪那、何かあったのか?」
無言でテーブルにその手紙を置き「悪趣味」と言った私に二人は手紙を覗き込んだ。手紙を見終わって直ぐに怪訝な顔をした二人は1度目を合わせると私を見て外に誰か居たか?と聞いてきたので直ぐに鍵掛けたと言えば二人は立ち上がり早足で玄関に向かっていった
二人なら大丈夫だろうと彼等の後は追わずにキッチンに向かい珈琲を入れていると、丁度3人分いれ終わった時に二人は苛立った様な顔でリビングに戻ってくる。その顔から何も収穫は無いのが分かったので2人に暖かい珈琲を握らせてから私もマグカップの珈琲に口を付けた
「誰も居ねぇ」
「……私が玄関に着いた時にはもう人の気配はしなかったよ」
「……舐めてんな」
「誰だか全く検討がつかないね。今日の幹部会に一応手紙持ってってみる?」
「……お前来んの?」
「うん。手紙も見せたいし、ちょっと気になる事もあるからさ」
「行くなら俺の後ろ乗れよ。まだ本調子じゃねーんだから」
「うん、今回はそうする」
そんな話をしながら夕方前には3人で家を出て早めにファミレスに移動をし、圭介が一虎と千冬に早めにファミレスに来るように電話をして5人で食事をとってのんびりとしていると少しづつ人数が集まって来た
「珍しいな、雪那 」
「なほちゃん、そうちゃん元気そうだね」
この間集会で会ったけれど話も出来なかったので久しぶりに二人と他愛も無い話をしていると、「げぇ」とゲテモノでも見た様な声が聞こえて振り返れば瞼をピクピクさせた春千夜が私を見て後ずさっていた
「その瞼の癖まだ治んないんだ」
「……何しに来たんだよ」
春千夜の肩を優しく抱いてから「居ちゃ悪いか?」と耳元で囁くとブンブンと顔を横に振った。小さな頃からヤンチャだった春千夜はグレて居た時の私からすれば生意気で喧嘩になる事が良くあった。あの頃は人の痛みにも鈍感だったから覚えたての技でフルボッコにしてやるとそれから毎回私に会う度にストレスからか瞼がピクピクと動く様になった
回した腕を嫌そうに見つめる春千夜に内心大きくなったなぁと背伸びしている自分が不思議になる。昔は凄く細くて私より小さい体で立ち向かってくる姿を未だに鮮明に覚えている。嫌そうな顔で私を見てくる春千夜の頬をつんつんとつついていると、「……その辺にしてやってくれ」と言って私の腕を春千夜から降ろしたのはムーチョだった
「久しぶりだからつい」
「お前は可愛がり方が怖いんだよ」
「……そっくりそのまま返すわ」
何だかんだ春千夜に甘いムーチョに少しだけ微笑むと「怪我は平気か?」と聞かれて少しだけ驚いたが素直に頷いた。三ツ谷に余り心配かけるなよと言ってポンと肩に置かれた手。ムーチョは昔から私には話しかけても来なかったし、必要以上の事も言わなかった。そんな彼から言われた言葉がむず痒い様な不思議な感じがして少しだけ戸惑ってしまった
「ムーチョに可愛がり方が怖いって言われた」
「三途?」
「うん」
「あれ可愛がってんの?」
席に戻り、隆と会話をしていると横で聞いていた圭介と一虎がゲラゲラと笑い出す。それから一虎の下らない話で盛り上がっていると、入り口から入って来たドラちゃんとマンジロが席に着いて早々に口を開いた
「東卍は芭流覇羅と組むことにした」
そんなマンジロの台詞に一瞬ザワりとしてから、やっぱり圭介と一虎は噛み付くような言い方で反対だと声を荒げた。ちーが「良いウワサ聞かないですよマイキー君」と口を開くと「黙ってろよ、餓鬼」と知らない声が聞こえてそちらを見れば半間ともう一人、背の低い眼鏡の男がニヤけながらちーを見ていた
頭に来て立ち上がるのが分かって居たので、先に圭介と一虎の前に手を伸ばして制すると二人は舌打ちをしてから2人を睨みつけた
「……芭流覇羅の半間と稀咲だ。これから仲間になるから揉め事は起こさないように」
ドラちゃんが半分溜息混じりでそう言うと、半数は直ぐに返事をしたけれど圭介を初めとした1番隊メンバーに一虎、隆に八戒、私は返事をしなかった。そんな事は分かっていたとゆう様な顔で少しだけ笑ったマンジロは「とりあえずメシ食うか」と言っていつも通りお子様ランチを頼み出した
ドラちゃんが直ぐに圭介の横に座り、隆と一虎、八戒や千冬を交えて真剣な話をしていたので私はそそくさと移動してオムライス待ちをしている機嫌の良さそうなマンジロの横に座った
「ねぇ、食べる前にちょっと見てくれない?」
「ん?」
ポケットから出した便箋を渡すと「なんだこれ」と言って文字に目を通したマンジロは怪訝な顔で私を見つめる「さっき家に届いた」そう言って読み終わったマンジロから便箋を取り綺麗に畳んでからポケットにしまう
「……差出人に心当たりは?」
「まるで無いよ、そっちは?」
「今の所無いな」
そう。と言って溜息を吐くと、運ばれてきたお子様ランチには旗が立っていなかった。それを見て一瞬で顔を変えたマンジロを見て呆れながら胸ポケットから取り出した旗をオムライスに立ててやると彼は昔と変わらぬ笑みで満足そうに笑う
「流石雪那。」
「……昔の癖は皆治らないんだねぇ」
「ん?何か言った?」
「早く食べちゃいな、冷めるよ」
そんなやりとりをしながら少し微笑んでいる私に、マンジロの隣から視線を感じてそちらを見れば目が合った稀咲は私を感情が無い顔で見つめていた。首を傾げた私に、ニコっと人懐っこい笑みを浮かべた稀咲は「 雪那さんですよね?」と優しい口調で話しかけて来た
「……うん」
「今日からよろしく、仲良くして下さい」
そう言って手を差し出されたので少しだけ戸惑っていると、半間に「握手くらいしてあげれば?」といわれて渋々握手を交わした。嘘くさい笑みでファンなんですよ、貴女の。と言って来た稀咲にマンジロは大笑いしていたが、何となく嫌味とゆうか悪意が少しだけ感じ取れた。話し方と顔は感じが良いけれど何となく敵対心を感じて私はどうも。とだけ言って直ぐに席を立った
親の事、虐めの事があったそのくらいの歳から敵意には敏感だったので、何となく察したがまだ彼等が何をしたいのかは良く分からないのでとりあえず何も言わず下手に刺激はしないと決めた。隆の横に移動すると耳元で「大丈夫か?」と聞かれて一連の流れを見ていたんだろうなと思い軽く頷いた
機嫌がすこぶる悪い圭介と一虎、千冬は幹部会が終わるとさっさと帰宅してしまい、それを見てドラちゃんは深く溜息を吐いていた。隆がドラちゃんに「今は仕方ねーよ」と言うと「ああ」とだけ返した彼は多分1番苦労してるんだよなとしみじみ思ってしまった。マンジロが走りに行こーぜと言ってきたけれど、手紙が来たばかりで今はあんまり家を長く空けたくない。ドラちゃんには言って無かったので手紙の事情を説明してから帰ると言えば「三ツ谷借りるわ」と言われたので分かったと頷いた
「借りるのは良いんだけど、私隆の後ろ乗って来たんだった」
「てか、お前一人で家いんの?その手紙の事があんなら危ねぇか」
ドラちゃんがそう言えば、横から「姉ちゃんは絶対1人でも大丈夫」と声がして振り返れば八戒と春千夜が頷きながら私を見つめていた。私がじっと2人を睨みつけると隆の後ろに隠れた八戒と「何かマジマジと見ると小さくなったな」と言って私を不敵な笑みで見下ろしてきた春千夜のお腹につかさず手加減したボディーブローをかますと「ガフっ」と言って腹を押さえて蹲り瞼をピクピクさせる
「あ、丁度いいや。春千夜送ってって」
「……えっ?」
「三途、悪いけど俺が戻るまで雪那見ててくんね?」
「……はっ?」
こいつよろしくな。と最後にマンジロに言われた春千夜は腹を押さえたまま渋々こくりと頷いた。この世の終わりみたいな顔をしながら私を見る春千夜にニッコリと微笑むと肩を落としてトボトボと単車を取りに行く彼に笑いが止まらなかった
「昔から女扱いするとキレるのに、こんな時は過保護にされてて意味分かんね」
「やかましいわ」
後ろからペシりと春千夜の頭を叩くとサラサラと綺麗な髪が風に靡いてバシバシと目に当たりうざったくて、右手につけていたゴムでポニーテールにしてやった。私が乗っているからか、余り飛ばさずにゆっくり走る春千夜は以外に可愛い所もあるのかもしれない
「そういえばさ、何で怪我した?」
真っ直ぐと前を向いたまま聞いてきた彼に、深い内容は知らないんだなと思った。パーの事も言えないので「まぁ、刺された」と返すとこちらを凄い勢いで振り返り「……誰に?」と聞かれたので内緒とニッコリすると眉を寄せた春千夜は視線を正面に戻してスピードを上げた
ムーチョは怪我の事を知っている感じだったけど、他は詳しくは聞かされていないのか?パーに刺されたとは流石に言えないのでとりあえず黙っておく事にした
家まで送って貰うと、凄い速さで帰ろうとする春千夜の襟を掴んで無理やり家の中に入れる。観念したのか隆やマンジロに頼まれているからか、仕方ないみたいな顔をして靴を脱いで家に上がるとリビングのソファに腰掛けた
「何飲む?紅茶でいいの?」
「……紅茶で良い」
「はいはい」
小学校の頃は家にマンジロや圭介と良く遊びに来て紅茶しか飲まなかった春千夜に温かい紅茶を出すと、昔と同じ様に背筋を伸ばしてカップに口を付ける美しい仕草は変わって無かった。自分の分の紅茶をカップに注いでから彼の隣に腰掛けてテレビを付けると、見たかったドラマがやっていたのでそのままリモコンを傍らにおいた
「……なぁ」
「ん?」
「稀咲と半間どう思った?」
その質問に私が少し目を見開くと「なんだよ」と小さく呟いた春千夜に首を横に振る
「いやぁ、まさかあんたが私に聞いてくると思わなくてさ」
「何だそうゆう事かよ」
「……春千夜はどう思う?あの2人」
「……俺はマイキーが決めた事なら良い」
「まぁ、そう言うと思ったけど。……騙されている場合や、裏がある場合もあるんだから。大将がそれなら良いじゃ、後々大将が困った事になる事もある。それは本当の忠義では無いからね」
「……」
「春、聞いてんの?」
私をうるせぇなみたいな顔で見た春千夜にニッコリとして笑みだけ返せば「変わったな 雪那は」と目を自然に逸らされた。
自分が鑑別から出てきて誓った事。女性として恥じない生き方をしたい、少しでも大人の女性になれる様に
でもそれを頑張ったのは最初だけで、結局ぱーの事だって皆に心配をかけたし久しぶりに集会に出れば一人で殻に閉じこもる様な考え方をして花垣君に釘を刺されてしまった
「……あんたからはそう見えるだけで、私は全然変われて無いよ」
「俺が変わったと思えば変わったんだよ」
「相変わらずだねぇ」
「 雪那もな」
「……アイツらの事だけど……私は2人が何か企んでる様にしか見えないね。私にもドラちゃんにも敵対心がある」
「……ふーん。そんな風に見えるのか」
「今はまだ分からないから少し様子見るけどね」
そんな話をしていると、玄関でした物音に春千夜がスっと立ち上がった。声を掛けようとする前にはもう玄関に向かって歩いている彼の後ろを付いて行くどドアの郵便受けに挟まっている紙は先程無かった物で私は自然に眉を寄せた
「ラブレター来てるぜ」
「……やかましいわ」
ひったくる様にしてその紙を取った春千夜はその紙を開くと目を落とした。直ぐに彼のスっと細められた瞳からは大体想像がついて、またイタズラかとよと溜息を吐きながら覗き込んだ
雪那さんへ
返事は決まりましたか?
佐野万次郎を地獄へ招待するカウントダウンが始まりました。最初の犠牲者は貴女の大事な人でもあります
と赤い文字で書かれていた。赤いインクの色も特徴的な文字も家を出る前に入れられていた手紙と一緒だ
「……ろくでも無い奴に好かれてんな」と呟き冷ややかな目線で私を見ている春千夜の手から紙をひったくると、ポケットに入っていた携帯を取り出して直ぐに隆とドラちゃんに注意する様に連絡を入れた
2人共直ぐに既読にはならないから多分まだ単車で走っているんだろう。少し心配だったけれどマンジロも一緒だし大丈夫かなと思いながら一応圭介と一虎、パーにもLINEだけは入れておく事にした
春千夜と話が弾まないので二人で格闘ゲームをして暇をつぶしていると1時間程してから帰って来たのは隆だけでは無くマンジロとドラちゃんも一緒だった
ゲームをしている私と春千夜を見て少しだけホッとした様に息を吐いた3人に「おかえり」と言えば「おー」と軽く返事をした隆は冷蔵庫からお茶を取り出しグラスに注ぐとドラちゃんとマンジロに渡し私の横に腰掛ける。隆に続いて2人も「疲れた」と言いながらラグの上に寝転がった
私が黙ったままポケットから取り出した手紙を隆に渡すと、受け取った隆はさっと目を通してからマンジロに手紙を渡した。私のコントローラーに手を伸ばしたドラちゃんが体を起こして「三途、勝負な」とニヤリとした顔をすると首を1度縦に振った春千夜は私が弱かったからか少しだけ嬉しそうな顔で画面を見つめた
「また俺への地獄の招待状かよ」
「マンジロがモテモテでお姉ちゃん嬉しいわ」
「お前んちに来るんだからお前がモテてるんじゃね?三ツ谷が妬くぞ」
「……流石にこれは妬かねぇわ」
「 雪那に東卍辞めて欲しいって事だろ?お前をターゲットにする理由は?」
「女だからかな?」
「……うちに来て欲しいって事は勧誘みたいなもんか?でも女関係あんのか?」
「ただ邪魔なだけかなぁ。こんな悪趣味な人の思考回路は分かんないよ」
「……腹減ったし、眠い」
「……マイキー頼むよ」
欠伸をし出したマンジロはそのままゴロリとまた横になりクッションを抱え込んだ。「はあ」と私と隆の溜息が重なるといつも通りに「 雪那ご飯作って」と言ってくるのが予想がついていたのでへーへーと言いながら立ち上がる
「ちなみに他に食べる人」
全員が即座に手を上げたので「へーへー」と言ってからキッチンに向かい歩き出した
