短編 シリーズ
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少しづつだけどお洒落が楽しくなってきて、エマと洋服を買いに行ったりメイクを教えてもらったりと女の子らしい事も慣れて来た。考えてみたら後1年も経たずに高校生になる。小学校から勉強はそんなに得意でも無かったし、鑑別所に入っていた分くらいは取り戻さないとなと思い少しだけ勉強にも励もうかと思ったけれど実際洋服作りの作業だけでいっぱいいっぱいだったので勉強の件は保留にして今は作業に熱中する事にした
「…隆…もう無理。疲れた」
「……明日までに3着とか無理じゃね?」
「人数が居ないからな、やっぱりバイト雇うしか無いかなぁ。とりあえず明日渡すって言ってた子にはメールして来週まで待って貰う」
「……バイト雇うってそんな金あんの?」
「まずはタダ働きして貰う。千冬と八戒に」
「…もうそれバイトじゃねぇじゃん。…でもよ、この作業アイツらに出来ると思うか?…まだルナのが出来そうな気がする」
「最初は絶対出来ないよ、教え込むしか無い。カンパ回さない分しっかりチームの為に働いてもらう」
「……力仕事か裁縫か選ぶ感じだな」
「まぁ、才能ある子もいるかもしれないし。隆悪いけど、明日うちに千冬と八戒呼んどいて」
「……八戒かー。あいつ泣くだろうな……」
次の日の昼にチャイムの音で玄関を開けると、細かい作業何て出来ないと蚊の鳴くような声でブツブツ言いながら私にオドオドする八戒と、何でもやりますと言ってガッツポーズをした千冬が立っていた。へんてこなコンビだなと思いつつ、まずは他に器用そうな子や裁縫やミシン経験者をチームの中から集めてきてとお願いした
出来ないなら出来るようになれば良いが私のモットーだけどそれには時間がかかる事も良く分かっていた
隆は優しいし人に教えるのが上手いので、集まってくれた子の教育係に丁度良いし私もこの何年かでかなり腕を上げたので少しなら教えられる自信もあった。
週に2回、忙しい時は3回。主に千冬が集めてくれたメンバー9人で作業する様になってからは、最初はミスばかりでかなり損害はあったけれど少しづつ皆上手くなっていった。高い布を駄目にした後輩に、隆が珍しく額に青筋を立てながら仕方ないけどよと怒らない様に頑張っていた時は流石に笑ってしまった
「おぃ、お前……反省してんのかよ」
「……はい、すいませんでした」
「…何が悪いのかちゃんと分かって言ってんのか?」
隆に怒られてちょっと涙目な後輩に、大丈夫だよと言って背中を優しく叩くと甘やかすなと怒られてしまったのでそれ以上は何も言わなかった。注意してから、本当に自分のミスを分かっているのか確認を取ると次からはやる前に聞けよと言って丁寧に教えている隆を見てしっかり怒るのも大事なんだなとこの時に学んだ
「千冬、こっち来て」
「はい。姉さん来ました」
「何か分からない事はあるかな?」
「……三ツ谷君に教えて貰ったので今の所無いです」
「…………」
「……あ、ああ。じゃあ採寸した事が無いのでやり方を教えて下さい。場地さんのジャンパーは俺が作りたいので」
「うんうん、分かった」
ニッコリと笑った私によろしくお願いしますと言って来た千冬が可愛くて、ピーナッツをあげると好きじゃないですと言われたので無理矢理口に押しこむと口をモゴモゴさせている所が昔飼っていたハムスターと重なって見えた。そんな様子をドアの隙間から見ている八戒を手招きすると怖いものでも見るような顔で後ろに後ずさる
「……八戒、こっち来な」
返事をせずにブンブンと首を横に振る八戒に、来ないと抱き着くよと言えば人生が終わった様な顔で大人しくこちらに来た。2人に採寸を教えていると、2人共器用だし飲み込みが早くて少しビックリする。自分よりも上手になりそうだなと内心期待してしまった
八戒は中学1年の時に隆に紹介されて初めて会った。私はあの頃少し尖っていたのと八戒が女の子苦手なのを知らなかったので、こちらが挨拶したのにして来ない八戒に舐められてると勘違いして隙だらけの八戒の鳩尾に蹴りを入れた。跪いて咳をする八戒にあちゃーと言って溜息を吐いた隆の顔を今でも覚えている
あれから八戒は女の子苦手な上に、私が恐ろしいのか用事がある時以外は半径5メートルには近付いて来なくなった。何回か柚葉も交えてボーリングやカラオケに行ったけどジュースを渡した手が触れただけで泡を吹いて倒れそうなくらい未だに私を恐れている
「八戒できたの?」
「……出来ました。姉ちゃん近いんでもうちょっと離れて下さい」
「……近くないと教えれないもん」
首を肩に乗せて微笑めば、ひぃぃぃと泣きそうな八戒に千冬がフッと鼻で笑い八戒は弱虫だなと笑う。昔姉ちゃんに蹴り入れられて肋骨折れたんだと悲しそうに言いだした八戒に千冬は私を1度チラリと見た
「……よく分からないけど八戒が悪い」
「たかちゃぁぁん」
「どうした?」
「……姉ちゃんが怖い。千冬が虐める」
「… 雪那は…今は優しいだろ。可愛いし」
「……」
「何で黙ってんの?八戒。抱き着くよ」
「お、良かったな。八戒」
「タカちゃん良く無いって、俺死ぬよ多分」
そんな下らないやりとりをしながら1ヶ月で注文分以上の服を作れた私達は達成感に溢れて自信を持てた気がした。後輩達も皆疲れた顔をしていたけど、自分で1から作った作品を眺めている時の顔はとても良い顔をしてた。昔はこの自信が喧嘩した数や、勝利回数だったなと思うと少しだけ変わったんだなとしみじみ今思う
ドラちゃんとマンジロを呼んで試着して貰っていると全部気に入ったから全部欲しいと言い始めたマンジロと、これは雪那達が作ったんだから金を出して買えと言ったドラちゃんが喧嘩になった。その言い合いに隆が呆れ顔で引っ越し屋やって来いよマイキーと言うと、俺は総長だと言い放つマンジロは中学3年にもなっても小学校の時と変わらないなと思った
「じゃあ、マンジロがこれ着て集会出て皆にメンバーにおすすめしてくれたらモデル代であげるよ」
「……いいのか? 」
「仕方ないよ、総長特権て事で」
「やりぃ。今日からやってくるぜ」
「頼んだよ、この間着て貰ったのも反響良かったし、今は9人いるから沢山注文入っても安心」
これで皆がいつバイクが壊れてもスグに修理も出来るし、もし何かあった時にはお金の事なら多少は対応出来る。もっともっと沢山貯めて将来は会社でもやってみんなが和やかに苦労しない様な生活が送れたらいいな何ていつの間にか考える様になっていた
それからまた作業と学校の日々に追われているといつの間にか春は過ぎていた。少しづつ日が強くなっていてそろそろ衣替えの時期だなと思いながら学校から帰宅していると、マンジロとドラちゃんの後ろ姿が見えて走り寄る
「どこ行くの?」
「 雪那か。学校帰りか?」
「うん。銭湯行くなら私も行く」
「銭湯じゃねーよ。3番隊の奴が喧嘩賭博何てしてやがるからやめさせに行くんだよ」
「ふーん。喧嘩賭博ねぇ」
舌打ちをしてご立腹なドラちゃんを見ていると、キヨマサってどんな奴だっけ?と言ってるマンジロに老けてる子じゃ無かったっけ?と言えば思い出せねぇと言いながらかったるそうに歩くマンジロの手から紙袋を取り、中のたい焼きに頬張った。止められなかったのでそのままブラブラとついて行くと河原に集まっている男の子達の集団が見えてきた
2人はスタスタと行ってしまったので、少し離れた所から様子を伺っているとキヨマサは案の定蹴りを入れられて伸びてしまっていたけど金髪の男の子とマンジロは何やら話をしている様だった。見かけない子だなと思いながらたい焼きのしっぽを口に入れて咀嚼していると、ポケットの携帯が震えていた
「……はい、誰?ドラちゃんか」
「 雪那帰ったのか?」
「近くから見てる」
「腹減ったからファミレス行こうぜ」
電話を切るとつまらなそうな顔でこちらに歩いてきた2人と合流してから、3人でいつものファミレスに来ると圭介と一虎が先に来ていた。2人の顔は機嫌が悪い時の顔をしていたので知らないフリをして一虎の隣に座りメニューを開いた。遅かったなと私達に言った圭介は携帯を開いて何やら写真を見せてくる
「……この野郎が最近ここいらで悪さしてる長内って奴だ。すげぇクズ野郎だったぜ」
「……弱いもの虐め大好きなタイプだったよな」
2人がそう言いながら舌打ちをすると、マンジロとドラちゃんはマジマジとその写真を見つめていた。長内って聞いた事あるんだよなぁ。誰だっけと考えていると、女にも手だすから本当に気をつけろよと圭介は私を見つめていた
「……うん」
「 雪那、もし何かされたら急所狙えよ」
「元々そのつもりだし。もしイヤらしい事して来たら二度と使い物にならないくらいやるわ」
「「怖っ」」
「おい、お前はマジやりすぎんなよ。三ツ谷の事も考えろよ」
「……レイプ何てされるくらいならやり過ぎた方がマシだもん」
その言葉を発すると、マンジロは許す。でも捕まらない様に程々にと言ってお子様ランチを頼み出した
いつの間にか来ていた店員さんに私はイチゴパフェを注文すると隣でブツブツと言っている一虎の独り言に耳を傾ける
女に暴力振るう奴何て死ねばいいのにと言う一虎の顔には影がある気がして、何だか少し気になった
長内のチームを潰そうと言い出した一虎と圭介にドラちゃんとマンジロはうちにはまだ被害出てねぇから保留で。とキッパリと言い放つ
ここでもし、放っておいたら被害者出るかもしれねぇと珍しく引かない一虎を見ていると何だか一人でも行きそうだなと心配になり、個人的ならいいの?とマンジロに首を傾げて見せるとマンジロは私を見て溜息を吐いた
「……まぁ、個人的な喧嘩には口出さねぇよ。なぁケンちん」
「雪那 。何考えてんだよ」
「一虎、私も協力するよ」
「……相手高校生だし人数多いんだよ。雪那をその中には連れていけねぇ」
「チームじゃなくて個人的に長内だけ二人で負かせばいいんじゃない?勝って、女にはもう二度と酷い事しないって約束してもらうとか。長内だけなら一虎だけでも大丈夫だと思うけど」
「……汚ぇ奴だから約束何て守らねぇんじゃねーか?」
そう言ってきた圭介に皆が無言で首を縦に降る
「……何かさ、女としてレイプしたりする男は放っておけないんだよねぇ。この気持ちは皆は男だから分からないかもしれないけど……もし、私がそんな事されたら一生苦しいかもしれないし、周りの皆も凄く嫌だと思う。」
そう言った私に4人は少しだけ辛そうな顔をした。想像させて悪かったけれど、幼なじみが暴行されたと想像しただけでもけっこう辛い気持ちになる。これが恋人や家族だったら胸糞悪いじゃ済まないし。と続けて言った私に4人は黙っていた
結局、皆やらないなら私が独りでやるからと言ってイチゴパフェを食べてから帰宅した。帰宅する際にドラちゃんに行く時は絶対連絡しろよといわれて、へーへーと返事をしておいた
家に帰り風呂に入ってからご飯の支度をしていると玄関が荒々しく開いて息を切らせた隆が私を見てホッとした顔をする
「……まだ行かないから大丈夫だよ」
「ビックリさせんなよ。ドラケンから連絡来て何かと思ったら、 見張ってろって言われて事情聞いた。」
「何かごめんね」
「俺も一緒に行ってやるから、1人では行くなよ」
「うーん、それなんだけどさ。出来れば一虎と行きたいんだよね。」
「……何で?」
「何か色々気になる事があって」
話してみろと言われて、独り言をブツブツ言っていた一虎の目は狂気を感じた事。それは昔の自分に良く似ていた事などを話すと隆は私の頭をぽんぽんと軽く叩いて背中を片手で抱いた
「……一虎は親父さんがお袋に暴力を振るうのを見て育ったらしいからな。色々嫌な思い出と重なるのかもしれねぇな」
「……そう、なんだ。」
一虎には自分と似た様な影を感じた事があった。隆からは感じなかったものだ。
「隆は愛を知ってて羨ましいなってずっと思ってたんだ、私。……一虎からは同じ空気を感じてた。何か自分何て要らないとかどうなっても良いやとかがある気がしたんだ」
上手く言えないんだけどと、私が言うと隆は分かるよと言って私の額に触れるだけの口付けした。心配と言った私にこくりと頷いた隆は、顔を私の肩に乗せてから「俺は2人共心配」と言って困った様に笑いながら溜息を吐いた
「いつもごめんね、昔から隆とドラちゃんが居てくれるから皆多少ストッパーがある気がする。……いつか私ももう少し大人になったらそっち側に行くからさ」
「……雪那は、一虎が心配なだけだろ?」
「まぁ、うん。女の子を暴行して性的にも痛めつけるのも許せないしね。……本当なら、隆が私にしてくれた様に一虎を抱き締めてあげたい」
「…… 」
「マンジロや圭介、一虎やドラちゃん、パーの事は兄弟だって思ってる。実のお兄ちゃんよりも。お母さんよりも、隆のお母さんと河合さんのがお母さんだと思ってるし、エマとルナマナは妹だと思う」
「……そっか。……俺は?」
「…ふふふ…旦那さまかな」
冗談でそう言って笑うと、隆は嬉しそうに微笑んだ
可愛い嫁ちゃん腹減ったと言って口付けしてくる隆に私も笑いながら微笑んだ
それからご飯を食べてお風呂に入ってから疲れた体をベッドに沈ませると最近忙しかったからか直ぐにやってきた眠気にそのまま身を任せて寝てしまった
ふと、目が覚めるとまだ窓の外は薄暗くまだ夜中の様だ。眠る時にはリビングに居た筈の隆は隣で深く眠っていた。何だか目が冴えてしまって携帯を見れば一虎からLINEが入っていた
絶対に一人で行くなよ。お前に何かあったら皆悲しむからなと入っていて私はそれを見て少しだけ微笑んだ
お前こそ一人で行くなよ、お前に何かあったら皆悲しむからなと一虎に返信を入れてぐっすりと眠る隆の顔を優しく抱き締めて眠りについた
朝起きると何やら家の中が騒がしい。隣で寝ていた隆も居なくてそのまま欠伸をしつつ洗面所で顔を洗って歯を磨いていると、ガチャリとドアが開いて少し暗い顔をした一虎が顔を出した
「……こんな朝早くからからどしたの?」
「ちょっとまずい事になった。パーのダチが長内にやられた」
「……昨日二人で行ってれば良かったね」
「……だな。」
二人でリビングに行けば全員揃っていて、パーの顔は般若みたいだった。冷蔵庫から麦茶とジュースを取り出して人数分のコップを出してからテーブルに置くと隆が注いでくれたので後は任せてキッチンで珈琲をいれる事にした
悔しそうなパーの声。痛痛しい話がこちらにも聞こえてきて、女の子にも被害が出たのかと本当に昨日行かなかった事を後悔した。一虎が、昨日1人でも行けば良かったと歯を噛み締めている横に座り、私もそう思ったと言って珈琲を啜った
「……仕方ねぇよ。今日こんな事になるなんて知らなかったんだしな」
「……まぁね。で、どうすんの??」
「……あいつマジで殺す」
そう言ったパーを見た時に、隆が神社裏で頭を踏まれていた時の感情を感じで私は少し俯いた。本当にあの感情に呑まれてしまうと後先考えれなくなるしパーも私みたいになるかもしれない。パーがあの檻の中で泣いている姿を勝手に想像して悲しくなっていると「やっぱり俺らだけでやっちゃおうか?」と一虎に耳打ちされてハッと我に返る
別に良いけどと小さな声で呟くと、それを聞いていたのか反対隣に居た隆が珍しく一虎を威嚇する様に声を荒げた
「ふざけんなよ一虎。雪那は次捕まったら年少なんたぞ?少し考えろよ」
「……あ、そうか。悪ぃ」
「大丈夫じゃない?長内のが悪い事してるし、被害届出せないでしょ」
「やるなら俺がやる」
そう言い出したパーに皆パーがそう言ってくるのが分かっていたので特に反応も無く仕方ないなと頷いた。マンジロが、パーの肩を抱き俺がついていると言って笑った顔を一虎は不思議そうに眺めていて私はその一虎の顔から目が離せなかった。ドラちゃんが渋々頷いた事で結局長内のチームを潰すって事で話はまとまった
解散して皆が帰って行ったけど、珍しくソファから離れない一虎に冷蔵庫にあったコーラを渡せば嬉しそうに笑う
「雪那、サンキュ」
「ポテチあるから食べよう」
一虎が頷いたのを確認してからテーブルに置いておいたポテチの袋を開けて渡した。何となくボーッとしてる様な一虎の頭を何回か撫でると少し嫌な顔はするけど振り払われない
「……一虎、何かあったの?」
「嫌、何なんだろうな。マイキーは……自分勝手だけど優しくてさ。最近皆と居て心地良いんだけどさ」
そこまで言って黙った一虎に首を傾げると、たまに暴れて全部壊したくなるんだと呟いた一虎の瞳は何だか暗闇に感じて私はゆっくり彼の背を摩った。分かるよと呟けばお前には分かんねーよと言われて少し悲しくなる。その場から立ち上がり自室の引き出しから手紙の束を取り一虎に渡した
「……何これ」
「……見て」
私の母親からの手紙だとは知らずに少し怪訝な顔をしながら中を見て読み進めて行く一虎の顔はどんどん変わっていった。途中で、最悪だな。と呟いた一虎に頷いてから久しぶりに自分も読んでみようかと思ったがその手は手紙に触れる事は無く彼に掴まれた
「…雪那は…もうこんな物見るな」
「……うん」
「こっちこい」
右手で手紙の束を握り潰した一虎は、反対の手で半場無理やり私を立たせると窓を開けて庭に出た。私の手を離してからライターの火を手紙に当てるとその火が直ぐに手紙の束を包む。一虎がその束からゆっくりと手を離すと半分もう灰の手紙は芝生に落ちてサラサラと風に流されていった
何だかスッキリした様な気持ちがして一虎を見ると珍しく瞳が揺らいでいた。急に肩を抱かれ私の頭に潤んだ瞳を押し付けて「お前には分かんねー何て言ってごめんな」と柔らかい口調で言ってくれた彼の背を摩っる
「……何か悔しいよね。違う人から産まれてみたかったな、私」
「……分かる」
「……私には今は仲間がいる。大事にしたいと思ってる。……でも、何だかその衝動も分かるんだ、多分大人になっていくと薄れて行くんだと思う」
「…………そうなのかな」
「でも、私はまだ子供だから……あの感覚に呑まれるのがちょっと怖い。大事な人が傷つけられたらまたああなるのが目に見える」
「……俺が止めてやるから安心しろ」
「……一虎も、そうなったらなるべく私が止めるから」
そう言った私に一虎は柔らかく微笑むと首を縦に1度だけ降った。その顔が可愛くて、メッシュの入った硬めの髪をわしゃわしゃと撫でると「やめろ馬鹿」と私の手を振りほどく彼の瞳は澄んでいる様に見えて何だかとても安心した
一虎が帰ってから自室で作業をしていると、開けっ放しの窓から足音が聞こえて手を止めた。直ぐに開いた玄関から入って来たのは隆で、何だかいつもと様子が違う様に見える。「……隆?何かあった?」ドアの前で立ち尽くし何も言わない彼に痺れを切らせた私が口を開くと
大きく溜息を吐いた隆は私の目の前まで来ると座っている私の頭を抱きしめてからあやす様に頭を撫でる
「……頭気持ちいい。疲れてたから嬉しい」
「…………」
「隆?」
「……見てた。庭で一虎と手紙燃やす所」
「……あぁ。うん、スッキリした」
「…変な事言うけど、……何か凄ぇイライラした。……一虎はお前の事思ってしてくれたのに」
「……イライラするの?」
「……何でもねぇ。忘れて。」
そう言って頭を抱いた手を離して見下ろしてくる隆の表情は暗かった様に見えたけど、私が心配そうな表情をした瞬間にいつもの様に歯を見せて二カッっと笑った隆に私も表情だけ笑っておく事にした
薄暗い部屋の隆の髪はシルバーじゃない色に見える。いつもよりも荒い吐息が私の首筋にかかり、お腹の奥が圧迫される様な感覚にうぅと色気の無い声が出てしまう
「……痛いか?」
「……ううん痛くないけど激しくて苦しい……」
「……悪ぃ。」
「……何か……ううん。平気」
汗ばんだ隆の頬を撫でてから髪に手を入れて撫でると
胸に置かれていた手が私の頬を優しく包み深く口付けられる。舌と舌が絡み合いながら今度は程よく腰を打ち付けられて深い所が少し気持ちが良い様な感じがした。前まで痛かったのに変わるもんだな何て関心していると菫色の瞳が私を優しく見つめていた
「……まだ奥痛ぇ?」
「……ううん。……何か凄く気持ち良い気がした」
そう言って少し微笑んだ私に嬉しそうに笑った隆は顔をぎゅっと抱き締めてくる。私が気持ちいいだけでこんなに嬉しいんだなとちょっと彼が可愛くてクスクスと声に出して笑ってしまう
「……何だよ」
「ううん、気持ちいいって言ったら嬉しそうだから可愛くて」
「ハァ?嬉しいに決まってんだろ。」
「……そうなんだ。……何か良かった」
「……ちょっと動くぞ」
真剣な表情に戻った隆が私の顔を見つめながらぐりぐりと探るように奥を突いてくる。気持ちが良いと思った部分を突かれると自然に出てしまう甲高い声が部屋に響いた
「あ、んァァァ」
「……ここが良いの?……凄ぇ可愛い顔してる」
「……恥ずかしい事、……言わないでよ」
「雪那 、絶対に……俺以外にその顔見せんなよ」
「……?どんな顔してるか分かんないよ」
「違ぇよ。この先他の男とこうゆう事絶対すんなよって言いてぇだけ」
「……?何で私が他の人とするの?」
「…………嫌、しないならいいけどよ」
「……変な隆……でも……」
「……でも?」
「……隆が居なくなっちゃったら、どうかな」
そう呟いた私に隆は表情を無くした。何秒か沈黙が続いてからゆっくりと触れるだけの口付けをした隆は私の髪に顔を埋めてキツく抱き締めてくる
「約束したろ、ずっと一緒だ」
「……うん。ずっと一緒」
これからもずっと傍居て、愛してるって言って沢山お前を甘やかすからと言った隆が愛しくて嬉しくて気付けば少しだけ涙が流れていた。一虎の手紙の事もあって、何だか今日は凄く幸せな1日だなと思いながら隆の首に腕を回した
「…… 雪那さん」
「……久しぶりだね」
学校が終わってスマホをいじりながら帰宅しているとLINEに珍しく今日空いてますか?と乾から連絡が来ていて不思議に思う。遊んだりする仲でも無いし、友達でも無いし普通に知り合い程度。何て返そうかなと思いながら歩いていると「無視ですか」と声が近くから聞こえて思わず振り返った
「……何やってんの?」
「待ち伏せです」
色素の薄い髪が揺れて表情が無い私服の乾は私を見下ろしていた
「……待ち伏せって……。何か私敵みたいじゃん」
「 雪那さんを敵とは思って無いですよ。ちょっと聞きたい事があって」
「何?」
「ゆっくり話したいんですけど」
「……まぁ、良いけど。ウチはダメだから他の所で良い?」
「……別に良いですけど、何で雪那さんちはダメなんですか?もしかしてこの間行ったの三ツ谷にバレました?」
「バレるとかじゃなくて普通にやましくないから話したよ。肉じゃが食べたいって家に来たからさ」
「あぁ。あれ……美味かったです」
「ふふ、良かった」
天然なのか、少しマイペースなのか。話がずれている事もお構い無しにまた食べたいと言う乾に、家に上げて上げれないんだってと突っ込みたくなった。九井が居たら突っ込んでくれるだろうな何て考えているとポツポツと雨が降り出してきて私達は顔を見合わせる
「……凄いタイミング悪いね」
「……家はダメみたいなので、ちょっと来て下さい」
話は分かってくれたみたいなので、少しだけ安心して乾の後ろをついて行くと手に持っていた傘を広げた彼は私の手を掴んで自分に寄せる。顔にかかっていた雨が傘のお陰でかからなくはなったけど距離が近くて少し戸惑っていると、「雪那さんもそうゆう顔するんですね」と少しだけ微笑んだ乾が可愛く見えた
ファミレスにでも行くのかなと思っていた私の前に現れたのは古く寂れた大きな建物だった。窓ガラスは割れて壁には落書きがしてあり周りに人も見当たらない
「……私と喧嘩でもしたいの?」
「……いえ、喧嘩じゃなくて少しだけ格闘技を教えて貰えませんか?」
傘を持ちながら私の顔を覗く乾のあどけない表情に、ああ。そうゆう事かとちょっと納得した。確か昔に柚葉の家で会った時もそんな様な話をされた記憶があったからだ。いいよと言って頷いた私に少しだけ微笑んだ乾はスタスタと建物の中に歩き出した。中は思っていたよりも小綺麗で、少し破れたソファにテーブルなどもあり不思議に思い聞けばBDの連中の溜まり場らしい。
マットにバッド、パンチングマシンやスロットの機械など良く分からない物も沢山置いてあって何だか秘密基地みたいでちょっと面白い
「 雪那さん、良いですか?」
「ああ、ちょっと荷物置くね」
鞄と携帯をソファの上に置いてから乾に駆け寄ると、腕まくりをした乾の顔は先程と少し違って真面目な顔をしていた。「よし、かかってこい」そう言ってにっと笑った私によろしくと言った乾は拳を握りしめた
「……ちょっと休憩しない?」
「……良いですよ」
涼しい顔をしているが、私に蹴飛ばされて何度もマットに叩きつけられた乾は埃だらけで擦り傷だらけだった。平然とした顔で何度も立ち向かってくるから体力あるなと思っていたら私がソファに倒れ込むと彼も息を切らせて隣に倒れ込む。お互い気を張っていただけでけっこう限界だったみたいだ
シトシトと雨の音を聞きながら疲れた体をソファに埋めて目を瞑る。窓からの風が汗をヒンヤリと冷たくしてくれて体温が冷めていく様な感覚に深呼吸して息を整えていると、ギシッとソファが沈む様な感覚と音がした。目を開けようか迷ったけれど、今は疲れていて面倒くさい。少し眠くなってきてしまって、このままここで10分だけ寝ちゃおうかな何て考えていると少し意識が遠くなるのを感じた
その瞬間に唇に温かい感覚がして、一瞬思考がストップした。唇がまるで食べられる様に優しく包まれて気付いた時には頭を持たれる様に手が添えられていた
唇から入ってきた舌が舌に絡みついてビクリとした私の体。ハッと我に返って右手で乾の体を押そうとしたが先に手を掴まれてそのままソファに組み敷かれる
「……何で?」
「……」
目を開けた私と乾の距離は10cmも無かった。唇を離した乾に何で?と問いかけても返事は無くて、上に乗っかっている彼は思っていたよりも重くて体がビクとも動かない。
「……何も言わないの?」
「…………」
目は合ったまま、何も言わない乾は左手で私の両手を掴むと右手で優しく頬を撫でた。その手つきと優しい撫で方は隆の様に優しくて私の頭は混乱してくる。
髪に入れられた手が優しく頭を撫でてから顎を持たれて深く口付けられる。熱が籠った様な愛しい目で見られて混乱する私の舌を舐める乾は静かに瞳を閉じると長いまつ毛が一瞬私の頬を撫でた
何分そうしていたか分からない。ちゅっと音を立てて離れた唇は最後に私の額に口付けしてからゆっくりと離れた。手を離してからゆっくりと立ち上がる乾は、まだ口を開けてポカンとしている私の横に何も言わずに座り直した
「…… 雪那さん、俺ずっとあなたが好きでした」
小さな声で振り絞るように口を開いた乾の顔は少しだけ赤い様な気がした。私は乾のその顔を見て、やっと状況が飲み込めたと同時にまた新たに混乱してしまった
「…隆…もう無理。疲れた」
「……明日までに3着とか無理じゃね?」
「人数が居ないからな、やっぱりバイト雇うしか無いかなぁ。とりあえず明日渡すって言ってた子にはメールして来週まで待って貰う」
「……バイト雇うってそんな金あんの?」
「まずはタダ働きして貰う。千冬と八戒に」
「…もうそれバイトじゃねぇじゃん。…でもよ、この作業アイツらに出来ると思うか?…まだルナのが出来そうな気がする」
「最初は絶対出来ないよ、教え込むしか無い。カンパ回さない分しっかりチームの為に働いてもらう」
「……力仕事か裁縫か選ぶ感じだな」
「まぁ、才能ある子もいるかもしれないし。隆悪いけど、明日うちに千冬と八戒呼んどいて」
「……八戒かー。あいつ泣くだろうな……」
次の日の昼にチャイムの音で玄関を開けると、細かい作業何て出来ないと蚊の鳴くような声でブツブツ言いながら私にオドオドする八戒と、何でもやりますと言ってガッツポーズをした千冬が立っていた。へんてこなコンビだなと思いつつ、まずは他に器用そうな子や裁縫やミシン経験者をチームの中から集めてきてとお願いした
出来ないなら出来るようになれば良いが私のモットーだけどそれには時間がかかる事も良く分かっていた
隆は優しいし人に教えるのが上手いので、集まってくれた子の教育係に丁度良いし私もこの何年かでかなり腕を上げたので少しなら教えられる自信もあった。
週に2回、忙しい時は3回。主に千冬が集めてくれたメンバー9人で作業する様になってからは、最初はミスばかりでかなり損害はあったけれど少しづつ皆上手くなっていった。高い布を駄目にした後輩に、隆が珍しく額に青筋を立てながら仕方ないけどよと怒らない様に頑張っていた時は流石に笑ってしまった
「おぃ、お前……反省してんのかよ」
「……はい、すいませんでした」
「…何が悪いのかちゃんと分かって言ってんのか?」
隆に怒られてちょっと涙目な後輩に、大丈夫だよと言って背中を優しく叩くと甘やかすなと怒られてしまったのでそれ以上は何も言わなかった。注意してから、本当に自分のミスを分かっているのか確認を取ると次からはやる前に聞けよと言って丁寧に教えている隆を見てしっかり怒るのも大事なんだなとこの時に学んだ
「千冬、こっち来て」
「はい。姉さん来ました」
「何か分からない事はあるかな?」
「……三ツ谷君に教えて貰ったので今の所無いです」
「…………」
「……あ、ああ。じゃあ採寸した事が無いのでやり方を教えて下さい。場地さんのジャンパーは俺が作りたいので」
「うんうん、分かった」
ニッコリと笑った私によろしくお願いしますと言って来た千冬が可愛くて、ピーナッツをあげると好きじゃないですと言われたので無理矢理口に押しこむと口をモゴモゴさせている所が昔飼っていたハムスターと重なって見えた。そんな様子をドアの隙間から見ている八戒を手招きすると怖いものでも見るような顔で後ろに後ずさる
「……八戒、こっち来な」
返事をせずにブンブンと首を横に振る八戒に、来ないと抱き着くよと言えば人生が終わった様な顔で大人しくこちらに来た。2人に採寸を教えていると、2人共器用だし飲み込みが早くて少しビックリする。自分よりも上手になりそうだなと内心期待してしまった
八戒は中学1年の時に隆に紹介されて初めて会った。私はあの頃少し尖っていたのと八戒が女の子苦手なのを知らなかったので、こちらが挨拶したのにして来ない八戒に舐められてると勘違いして隙だらけの八戒の鳩尾に蹴りを入れた。跪いて咳をする八戒にあちゃーと言って溜息を吐いた隆の顔を今でも覚えている
あれから八戒は女の子苦手な上に、私が恐ろしいのか用事がある時以外は半径5メートルには近付いて来なくなった。何回か柚葉も交えてボーリングやカラオケに行ったけどジュースを渡した手が触れただけで泡を吹いて倒れそうなくらい未だに私を恐れている
「八戒できたの?」
「……出来ました。姉ちゃん近いんでもうちょっと離れて下さい」
「……近くないと教えれないもん」
首を肩に乗せて微笑めば、ひぃぃぃと泣きそうな八戒に千冬がフッと鼻で笑い八戒は弱虫だなと笑う。昔姉ちゃんに蹴り入れられて肋骨折れたんだと悲しそうに言いだした八戒に千冬は私を1度チラリと見た
「……よく分からないけど八戒が悪い」
「たかちゃぁぁん」
「どうした?」
「……姉ちゃんが怖い。千冬が虐める」
「… 雪那は…今は優しいだろ。可愛いし」
「……」
「何で黙ってんの?八戒。抱き着くよ」
「お、良かったな。八戒」
「タカちゃん良く無いって、俺死ぬよ多分」
そんな下らないやりとりをしながら1ヶ月で注文分以上の服を作れた私達は達成感に溢れて自信を持てた気がした。後輩達も皆疲れた顔をしていたけど、自分で1から作った作品を眺めている時の顔はとても良い顔をしてた。昔はこの自信が喧嘩した数や、勝利回数だったなと思うと少しだけ変わったんだなとしみじみ今思う
ドラちゃんとマンジロを呼んで試着して貰っていると全部気に入ったから全部欲しいと言い始めたマンジロと、これは雪那達が作ったんだから金を出して買えと言ったドラちゃんが喧嘩になった。その言い合いに隆が呆れ顔で引っ越し屋やって来いよマイキーと言うと、俺は総長だと言い放つマンジロは中学3年にもなっても小学校の時と変わらないなと思った
「じゃあ、マンジロがこれ着て集会出て皆にメンバーにおすすめしてくれたらモデル代であげるよ」
「……いいのか? 」
「仕方ないよ、総長特権て事で」
「やりぃ。今日からやってくるぜ」
「頼んだよ、この間着て貰ったのも反響良かったし、今は9人いるから沢山注文入っても安心」
これで皆がいつバイクが壊れてもスグに修理も出来るし、もし何かあった時にはお金の事なら多少は対応出来る。もっともっと沢山貯めて将来は会社でもやってみんなが和やかに苦労しない様な生活が送れたらいいな何ていつの間にか考える様になっていた
それからまた作業と学校の日々に追われているといつの間にか春は過ぎていた。少しづつ日が強くなっていてそろそろ衣替えの時期だなと思いながら学校から帰宅していると、マンジロとドラちゃんの後ろ姿が見えて走り寄る
「どこ行くの?」
「 雪那か。学校帰りか?」
「うん。銭湯行くなら私も行く」
「銭湯じゃねーよ。3番隊の奴が喧嘩賭博何てしてやがるからやめさせに行くんだよ」
「ふーん。喧嘩賭博ねぇ」
舌打ちをしてご立腹なドラちゃんを見ていると、キヨマサってどんな奴だっけ?と言ってるマンジロに老けてる子じゃ無かったっけ?と言えば思い出せねぇと言いながらかったるそうに歩くマンジロの手から紙袋を取り、中のたい焼きに頬張った。止められなかったのでそのままブラブラとついて行くと河原に集まっている男の子達の集団が見えてきた
2人はスタスタと行ってしまったので、少し離れた所から様子を伺っているとキヨマサは案の定蹴りを入れられて伸びてしまっていたけど金髪の男の子とマンジロは何やら話をしている様だった。見かけない子だなと思いながらたい焼きのしっぽを口に入れて咀嚼していると、ポケットの携帯が震えていた
「……はい、誰?ドラちゃんか」
「 雪那帰ったのか?」
「近くから見てる」
「腹減ったからファミレス行こうぜ」
電話を切るとつまらなそうな顔でこちらに歩いてきた2人と合流してから、3人でいつものファミレスに来ると圭介と一虎が先に来ていた。2人の顔は機嫌が悪い時の顔をしていたので知らないフリをして一虎の隣に座りメニューを開いた。遅かったなと私達に言った圭介は携帯を開いて何やら写真を見せてくる
「……この野郎が最近ここいらで悪さしてる長内って奴だ。すげぇクズ野郎だったぜ」
「……弱いもの虐め大好きなタイプだったよな」
2人がそう言いながら舌打ちをすると、マンジロとドラちゃんはマジマジとその写真を見つめていた。長内って聞いた事あるんだよなぁ。誰だっけと考えていると、女にも手だすから本当に気をつけろよと圭介は私を見つめていた
「……うん」
「 雪那、もし何かされたら急所狙えよ」
「元々そのつもりだし。もしイヤらしい事して来たら二度と使い物にならないくらいやるわ」
「「怖っ」」
「おい、お前はマジやりすぎんなよ。三ツ谷の事も考えろよ」
「……レイプ何てされるくらいならやり過ぎた方がマシだもん」
その言葉を発すると、マンジロは許す。でも捕まらない様に程々にと言ってお子様ランチを頼み出した
いつの間にか来ていた店員さんに私はイチゴパフェを注文すると隣でブツブツと言っている一虎の独り言に耳を傾ける
女に暴力振るう奴何て死ねばいいのにと言う一虎の顔には影がある気がして、何だか少し気になった
長内のチームを潰そうと言い出した一虎と圭介にドラちゃんとマンジロはうちにはまだ被害出てねぇから保留で。とキッパリと言い放つ
ここでもし、放っておいたら被害者出るかもしれねぇと珍しく引かない一虎を見ていると何だか一人でも行きそうだなと心配になり、個人的ならいいの?とマンジロに首を傾げて見せるとマンジロは私を見て溜息を吐いた
「……まぁ、個人的な喧嘩には口出さねぇよ。なぁケンちん」
「雪那 。何考えてんだよ」
「一虎、私も協力するよ」
「……相手高校生だし人数多いんだよ。雪那をその中には連れていけねぇ」
「チームじゃなくて個人的に長内だけ二人で負かせばいいんじゃない?勝って、女にはもう二度と酷い事しないって約束してもらうとか。長内だけなら一虎だけでも大丈夫だと思うけど」
「……汚ぇ奴だから約束何て守らねぇんじゃねーか?」
そう言ってきた圭介に皆が無言で首を縦に降る
「……何かさ、女としてレイプしたりする男は放っておけないんだよねぇ。この気持ちは皆は男だから分からないかもしれないけど……もし、私がそんな事されたら一生苦しいかもしれないし、周りの皆も凄く嫌だと思う。」
そう言った私に4人は少しだけ辛そうな顔をした。想像させて悪かったけれど、幼なじみが暴行されたと想像しただけでもけっこう辛い気持ちになる。これが恋人や家族だったら胸糞悪いじゃ済まないし。と続けて言った私に4人は黙っていた
結局、皆やらないなら私が独りでやるからと言ってイチゴパフェを食べてから帰宅した。帰宅する際にドラちゃんに行く時は絶対連絡しろよといわれて、へーへーと返事をしておいた
家に帰り風呂に入ってからご飯の支度をしていると玄関が荒々しく開いて息を切らせた隆が私を見てホッとした顔をする
「……まだ行かないから大丈夫だよ」
「ビックリさせんなよ。ドラケンから連絡来て何かと思ったら、 見張ってろって言われて事情聞いた。」
「何かごめんね」
「俺も一緒に行ってやるから、1人では行くなよ」
「うーん、それなんだけどさ。出来れば一虎と行きたいんだよね。」
「……何で?」
「何か色々気になる事があって」
話してみろと言われて、独り言をブツブツ言っていた一虎の目は狂気を感じた事。それは昔の自分に良く似ていた事などを話すと隆は私の頭をぽんぽんと軽く叩いて背中を片手で抱いた
「……一虎は親父さんがお袋に暴力を振るうのを見て育ったらしいからな。色々嫌な思い出と重なるのかもしれねぇな」
「……そう、なんだ。」
一虎には自分と似た様な影を感じた事があった。隆からは感じなかったものだ。
「隆は愛を知ってて羨ましいなってずっと思ってたんだ、私。……一虎からは同じ空気を感じてた。何か自分何て要らないとかどうなっても良いやとかがある気がしたんだ」
上手く言えないんだけどと、私が言うと隆は分かるよと言って私の額に触れるだけの口付けした。心配と言った私にこくりと頷いた隆は、顔を私の肩に乗せてから「俺は2人共心配」と言って困った様に笑いながら溜息を吐いた
「いつもごめんね、昔から隆とドラちゃんが居てくれるから皆多少ストッパーがある気がする。……いつか私ももう少し大人になったらそっち側に行くからさ」
「……雪那は、一虎が心配なだけだろ?」
「まぁ、うん。女の子を暴行して性的にも痛めつけるのも許せないしね。……本当なら、隆が私にしてくれた様に一虎を抱き締めてあげたい」
「…… 」
「マンジロや圭介、一虎やドラちゃん、パーの事は兄弟だって思ってる。実のお兄ちゃんよりも。お母さんよりも、隆のお母さんと河合さんのがお母さんだと思ってるし、エマとルナマナは妹だと思う」
「……そっか。……俺は?」
「…ふふふ…旦那さまかな」
冗談でそう言って笑うと、隆は嬉しそうに微笑んだ
可愛い嫁ちゃん腹減ったと言って口付けしてくる隆に私も笑いながら微笑んだ
それからご飯を食べてお風呂に入ってから疲れた体をベッドに沈ませると最近忙しかったからか直ぐにやってきた眠気にそのまま身を任せて寝てしまった
ふと、目が覚めるとまだ窓の外は薄暗くまだ夜中の様だ。眠る時にはリビングに居た筈の隆は隣で深く眠っていた。何だか目が冴えてしまって携帯を見れば一虎からLINEが入っていた
絶対に一人で行くなよ。お前に何かあったら皆悲しむからなと入っていて私はそれを見て少しだけ微笑んだ
お前こそ一人で行くなよ、お前に何かあったら皆悲しむからなと一虎に返信を入れてぐっすりと眠る隆の顔を優しく抱き締めて眠りについた
朝起きると何やら家の中が騒がしい。隣で寝ていた隆も居なくてそのまま欠伸をしつつ洗面所で顔を洗って歯を磨いていると、ガチャリとドアが開いて少し暗い顔をした一虎が顔を出した
「……こんな朝早くからからどしたの?」
「ちょっとまずい事になった。パーのダチが長内にやられた」
「……昨日二人で行ってれば良かったね」
「……だな。」
二人でリビングに行けば全員揃っていて、パーの顔は般若みたいだった。冷蔵庫から麦茶とジュースを取り出して人数分のコップを出してからテーブルに置くと隆が注いでくれたので後は任せてキッチンで珈琲をいれる事にした
悔しそうなパーの声。痛痛しい話がこちらにも聞こえてきて、女の子にも被害が出たのかと本当に昨日行かなかった事を後悔した。一虎が、昨日1人でも行けば良かったと歯を噛み締めている横に座り、私もそう思ったと言って珈琲を啜った
「……仕方ねぇよ。今日こんな事になるなんて知らなかったんだしな」
「……まぁね。で、どうすんの??」
「……あいつマジで殺す」
そう言ったパーを見た時に、隆が神社裏で頭を踏まれていた時の感情を感じで私は少し俯いた。本当にあの感情に呑まれてしまうと後先考えれなくなるしパーも私みたいになるかもしれない。パーがあの檻の中で泣いている姿を勝手に想像して悲しくなっていると「やっぱり俺らだけでやっちゃおうか?」と一虎に耳打ちされてハッと我に返る
別に良いけどと小さな声で呟くと、それを聞いていたのか反対隣に居た隆が珍しく一虎を威嚇する様に声を荒げた
「ふざけんなよ一虎。雪那は次捕まったら年少なんたぞ?少し考えろよ」
「……あ、そうか。悪ぃ」
「大丈夫じゃない?長内のが悪い事してるし、被害届出せないでしょ」
「やるなら俺がやる」
そう言い出したパーに皆パーがそう言ってくるのが分かっていたので特に反応も無く仕方ないなと頷いた。マンジロが、パーの肩を抱き俺がついていると言って笑った顔を一虎は不思議そうに眺めていて私はその一虎の顔から目が離せなかった。ドラちゃんが渋々頷いた事で結局長内のチームを潰すって事で話はまとまった
解散して皆が帰って行ったけど、珍しくソファから離れない一虎に冷蔵庫にあったコーラを渡せば嬉しそうに笑う
「雪那、サンキュ」
「ポテチあるから食べよう」
一虎が頷いたのを確認してからテーブルに置いておいたポテチの袋を開けて渡した。何となくボーッとしてる様な一虎の頭を何回か撫でると少し嫌な顔はするけど振り払われない
「……一虎、何かあったの?」
「嫌、何なんだろうな。マイキーは……自分勝手だけど優しくてさ。最近皆と居て心地良いんだけどさ」
そこまで言って黙った一虎に首を傾げると、たまに暴れて全部壊したくなるんだと呟いた一虎の瞳は何だか暗闇に感じて私はゆっくり彼の背を摩った。分かるよと呟けばお前には分かんねーよと言われて少し悲しくなる。その場から立ち上がり自室の引き出しから手紙の束を取り一虎に渡した
「……何これ」
「……見て」
私の母親からの手紙だとは知らずに少し怪訝な顔をしながら中を見て読み進めて行く一虎の顔はどんどん変わっていった。途中で、最悪だな。と呟いた一虎に頷いてから久しぶりに自分も読んでみようかと思ったがその手は手紙に触れる事は無く彼に掴まれた
「…雪那は…もうこんな物見るな」
「……うん」
「こっちこい」
右手で手紙の束を握り潰した一虎は、反対の手で半場無理やり私を立たせると窓を開けて庭に出た。私の手を離してからライターの火を手紙に当てるとその火が直ぐに手紙の束を包む。一虎がその束からゆっくりと手を離すと半分もう灰の手紙は芝生に落ちてサラサラと風に流されていった
何だかスッキリした様な気持ちがして一虎を見ると珍しく瞳が揺らいでいた。急に肩を抱かれ私の頭に潤んだ瞳を押し付けて「お前には分かんねー何て言ってごめんな」と柔らかい口調で言ってくれた彼の背を摩っる
「……何か悔しいよね。違う人から産まれてみたかったな、私」
「……分かる」
「……私には今は仲間がいる。大事にしたいと思ってる。……でも、何だかその衝動も分かるんだ、多分大人になっていくと薄れて行くんだと思う」
「…………そうなのかな」
「でも、私はまだ子供だから……あの感覚に呑まれるのがちょっと怖い。大事な人が傷つけられたらまたああなるのが目に見える」
「……俺が止めてやるから安心しろ」
「……一虎も、そうなったらなるべく私が止めるから」
そう言った私に一虎は柔らかく微笑むと首を縦に1度だけ降った。その顔が可愛くて、メッシュの入った硬めの髪をわしゃわしゃと撫でると「やめろ馬鹿」と私の手を振りほどく彼の瞳は澄んでいる様に見えて何だかとても安心した
一虎が帰ってから自室で作業をしていると、開けっ放しの窓から足音が聞こえて手を止めた。直ぐに開いた玄関から入って来たのは隆で、何だかいつもと様子が違う様に見える。「……隆?何かあった?」ドアの前で立ち尽くし何も言わない彼に痺れを切らせた私が口を開くと
大きく溜息を吐いた隆は私の目の前まで来ると座っている私の頭を抱きしめてからあやす様に頭を撫でる
「……頭気持ちいい。疲れてたから嬉しい」
「…………」
「隆?」
「……見てた。庭で一虎と手紙燃やす所」
「……あぁ。うん、スッキリした」
「…変な事言うけど、……何か凄ぇイライラした。……一虎はお前の事思ってしてくれたのに」
「……イライラするの?」
「……何でもねぇ。忘れて。」
そう言って頭を抱いた手を離して見下ろしてくる隆の表情は暗かった様に見えたけど、私が心配そうな表情をした瞬間にいつもの様に歯を見せて二カッっと笑った隆に私も表情だけ笑っておく事にした
薄暗い部屋の隆の髪はシルバーじゃない色に見える。いつもよりも荒い吐息が私の首筋にかかり、お腹の奥が圧迫される様な感覚にうぅと色気の無い声が出てしまう
「……痛いか?」
「……ううん痛くないけど激しくて苦しい……」
「……悪ぃ。」
「……何か……ううん。平気」
汗ばんだ隆の頬を撫でてから髪に手を入れて撫でると
胸に置かれていた手が私の頬を優しく包み深く口付けられる。舌と舌が絡み合いながら今度は程よく腰を打ち付けられて深い所が少し気持ちが良い様な感じがした。前まで痛かったのに変わるもんだな何て関心していると菫色の瞳が私を優しく見つめていた
「……まだ奥痛ぇ?」
「……ううん。……何か凄く気持ち良い気がした」
そう言って少し微笑んだ私に嬉しそうに笑った隆は顔をぎゅっと抱き締めてくる。私が気持ちいいだけでこんなに嬉しいんだなとちょっと彼が可愛くてクスクスと声に出して笑ってしまう
「……何だよ」
「ううん、気持ちいいって言ったら嬉しそうだから可愛くて」
「ハァ?嬉しいに決まってんだろ。」
「……そうなんだ。……何か良かった」
「……ちょっと動くぞ」
真剣な表情に戻った隆が私の顔を見つめながらぐりぐりと探るように奥を突いてくる。気持ちが良いと思った部分を突かれると自然に出てしまう甲高い声が部屋に響いた
「あ、んァァァ」
「……ここが良いの?……凄ぇ可愛い顔してる」
「……恥ずかしい事、……言わないでよ」
「雪那 、絶対に……俺以外にその顔見せんなよ」
「……?どんな顔してるか分かんないよ」
「違ぇよ。この先他の男とこうゆう事絶対すんなよって言いてぇだけ」
「……?何で私が他の人とするの?」
「…………嫌、しないならいいけどよ」
「……変な隆……でも……」
「……でも?」
「……隆が居なくなっちゃったら、どうかな」
そう呟いた私に隆は表情を無くした。何秒か沈黙が続いてからゆっくりと触れるだけの口付けをした隆は私の髪に顔を埋めてキツく抱き締めてくる
「約束したろ、ずっと一緒だ」
「……うん。ずっと一緒」
これからもずっと傍居て、愛してるって言って沢山お前を甘やかすからと言った隆が愛しくて嬉しくて気付けば少しだけ涙が流れていた。一虎の手紙の事もあって、何だか今日は凄く幸せな1日だなと思いながら隆の首に腕を回した
「…… 雪那さん」
「……久しぶりだね」
学校が終わってスマホをいじりながら帰宅しているとLINEに珍しく今日空いてますか?と乾から連絡が来ていて不思議に思う。遊んだりする仲でも無いし、友達でも無いし普通に知り合い程度。何て返そうかなと思いながら歩いていると「無視ですか」と声が近くから聞こえて思わず振り返った
「……何やってんの?」
「待ち伏せです」
色素の薄い髪が揺れて表情が無い私服の乾は私を見下ろしていた
「……待ち伏せって……。何か私敵みたいじゃん」
「 雪那さんを敵とは思って無いですよ。ちょっと聞きたい事があって」
「何?」
「ゆっくり話したいんですけど」
「……まぁ、良いけど。ウチはダメだから他の所で良い?」
「……別に良いですけど、何で雪那さんちはダメなんですか?もしかしてこの間行ったの三ツ谷にバレました?」
「バレるとかじゃなくて普通にやましくないから話したよ。肉じゃが食べたいって家に来たからさ」
「あぁ。あれ……美味かったです」
「ふふ、良かった」
天然なのか、少しマイペースなのか。話がずれている事もお構い無しにまた食べたいと言う乾に、家に上げて上げれないんだってと突っ込みたくなった。九井が居たら突っ込んでくれるだろうな何て考えているとポツポツと雨が降り出してきて私達は顔を見合わせる
「……凄いタイミング悪いね」
「……家はダメみたいなので、ちょっと来て下さい」
話は分かってくれたみたいなので、少しだけ安心して乾の後ろをついて行くと手に持っていた傘を広げた彼は私の手を掴んで自分に寄せる。顔にかかっていた雨が傘のお陰でかからなくはなったけど距離が近くて少し戸惑っていると、「雪那さんもそうゆう顔するんですね」と少しだけ微笑んだ乾が可愛く見えた
ファミレスにでも行くのかなと思っていた私の前に現れたのは古く寂れた大きな建物だった。窓ガラスは割れて壁には落書きがしてあり周りに人も見当たらない
「……私と喧嘩でもしたいの?」
「……いえ、喧嘩じゃなくて少しだけ格闘技を教えて貰えませんか?」
傘を持ちながら私の顔を覗く乾のあどけない表情に、ああ。そうゆう事かとちょっと納得した。確か昔に柚葉の家で会った時もそんな様な話をされた記憶があったからだ。いいよと言って頷いた私に少しだけ微笑んだ乾はスタスタと建物の中に歩き出した。中は思っていたよりも小綺麗で、少し破れたソファにテーブルなどもあり不思議に思い聞けばBDの連中の溜まり場らしい。
マットにバッド、パンチングマシンやスロットの機械など良く分からない物も沢山置いてあって何だか秘密基地みたいでちょっと面白い
「 雪那さん、良いですか?」
「ああ、ちょっと荷物置くね」
鞄と携帯をソファの上に置いてから乾に駆け寄ると、腕まくりをした乾の顔は先程と少し違って真面目な顔をしていた。「よし、かかってこい」そう言ってにっと笑った私によろしくと言った乾は拳を握りしめた
「……ちょっと休憩しない?」
「……良いですよ」
涼しい顔をしているが、私に蹴飛ばされて何度もマットに叩きつけられた乾は埃だらけで擦り傷だらけだった。平然とした顔で何度も立ち向かってくるから体力あるなと思っていたら私がソファに倒れ込むと彼も息を切らせて隣に倒れ込む。お互い気を張っていただけでけっこう限界だったみたいだ
シトシトと雨の音を聞きながら疲れた体をソファに埋めて目を瞑る。窓からの風が汗をヒンヤリと冷たくしてくれて体温が冷めていく様な感覚に深呼吸して息を整えていると、ギシッとソファが沈む様な感覚と音がした。目を開けようか迷ったけれど、今は疲れていて面倒くさい。少し眠くなってきてしまって、このままここで10分だけ寝ちゃおうかな何て考えていると少し意識が遠くなるのを感じた
その瞬間に唇に温かい感覚がして、一瞬思考がストップした。唇がまるで食べられる様に優しく包まれて気付いた時には頭を持たれる様に手が添えられていた
唇から入ってきた舌が舌に絡みついてビクリとした私の体。ハッと我に返って右手で乾の体を押そうとしたが先に手を掴まれてそのままソファに組み敷かれる
「……何で?」
「……」
目を開けた私と乾の距離は10cmも無かった。唇を離した乾に何で?と問いかけても返事は無くて、上に乗っかっている彼は思っていたよりも重くて体がビクとも動かない。
「……何も言わないの?」
「…………」
目は合ったまま、何も言わない乾は左手で私の両手を掴むと右手で優しく頬を撫でた。その手つきと優しい撫で方は隆の様に優しくて私の頭は混乱してくる。
髪に入れられた手が優しく頭を撫でてから顎を持たれて深く口付けられる。熱が籠った様な愛しい目で見られて混乱する私の舌を舐める乾は静かに瞳を閉じると長いまつ毛が一瞬私の頬を撫でた
何分そうしていたか分からない。ちゅっと音を立てて離れた唇は最後に私の額に口付けしてからゆっくりと離れた。手を離してからゆっくりと立ち上がる乾は、まだ口を開けてポカンとしている私の横に何も言わずに座り直した
「…… 雪那さん、俺ずっとあなたが好きでした」
小さな声で振り絞るように口を開いた乾の顔は少しだけ赤い様な気がした。私は乾のその顔を見て、やっと状況が飲み込めたと同時にまた新たに混乱してしまった
