短編 シリーズ
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涙がボトボトと音をたてて手紙の上に落ち、濡れた染みを作った。小さな自分の手は沢山涙を拭いたからびちょ濡れになっていて背中を摩ってくれるシッターの河合さんはその私の姿を見て、目に溜めていた涙を溢れさせた。久しぶりのお母さんからの手紙に書かれていたのはあなたはいらない子だし、お父さんに似て人を誑かす様な容姿をしているから一切これから連絡はしてこないで欲しいと書いてあった
手紙を破り捨てて部屋に戻り鍵を掛けた。お母さんに会えた時に渡そうと思って描いた沢山の似顔絵を片っ端から破り捨てていると、何だか暗闇の中にいる様な気持ちになった
小学校に行っても、学童にいても寂しい気持ちは消えなかった。ピアノや絵、習字に学習塾に通ってお母さんに褒めてもらおうとしていた気持ちも何も無くなった
良くいえば肩の荷が降りた。悪く言えば目標は無くなったしどうでも良くなった
近所の道場で子供達が集まって空手を教えている所があると河合さんから聞いて、今度は女の子らしい習い事はやめてお母さんが野蛮だと言っていたボクシングや空手をやってみようと思った。
自分で内心反抗期ってやつかなと少し分かっていたけれど、自分を捨てた母親。同じ兄弟なのに何故か凄く愛されているお兄ちゃん
海外で暮らして浮気ばかりしている俳優のお父さん。皆昔から私に冷たかったし、会いにも来てくれないから何をしても全部私の勝手でしょ。がこの頃から基本になっていったんだと思う
道場の稽古は思っていたよりも楽しかった
稽古が楽しいとゆうより、心身共に強くなっていく自分を目標に出来た事が良かったのかもしれない
自分を可愛がってくれなかった穴を埋めるようにそこの道場の先生の孫の真一郎兄ちゃんに懐いて良く遊んで貰っていた。ある日真一郎兄ちゃんに肩車をして貰っていると、たまには変われよと言って足を引っ張って来た万次郎君の力が思ってたより強すぎて体勢を崩して頭から地面に叩き付けられた
目が覚めると涙を流しているエマちゃんと気まずそうな万次郎君に困った顔をした圭介くん。良く道場にいる春ちゃんと千寿ちゃん兄弟。そして涙目の真一郎兄ちゃんが私を囲んでいた
「大丈夫か? 雪那。どこが痛てぇ??」
「……頭。けど……大丈夫」
「万次郎、雪那に言う事あるだろ」
「……悪かったな」
「ちゃんとごめんなさいって言え」
「……」
「……謝らなくていいよ。家族に捨てられて今ちょっと寂しくて。万次郎君の気持ち考えてなかったの私だもん」
シーンと静まり返る部屋。わざとらしく捨てられたと強調したのに同情されたくはない。どうせ言っても皆その事に触れないのは分かっていたので起き上がってから皆に介抱ありがとうと言って頭を1度下げて自宅に向かおうと立ち上がると、フラっとした体は小さな体に優しく支えられた
「あぶねぇよ、急に起きんな」
「……ありがとう圭介君」
そんな私を見て悲しそうに眉を下げた万次郎君は、ごめんな。と小さな声で謝罪をくれたので私は少し微笑んでから頭をブンブンと横に振った。それを優しい目で見ていた真一郎兄ちゃんは私と万次郎君の頭を撫でてから送っていくと言ってくれた
家までおんぶで送ってくれた真兄ちゃんは家のインターフォンを押して出てきた河合さんに怪我をさせてしまったと言って頭を下げてくれていた
それから、次の週に道場に行くとエマちゃんは私の所に来て遊んでと可愛い顔で笑い、万次郎君と圭介君は組手をしてくれたり駄菓子屋に行こうと誘ってくれた
そんな光景を優しい笑みで見ている真兄ちゃんと先生の温かい眼差しが何よりも好きで私の求めている物はこれなのかな何て思った
それから2年が経って小学校5年生になった
昔から圭介に、虐められたら直ぐに俺に言えよ言われていたので、学校で嫌がらせされていると言えば虐められない方法を教えてくれた
圭介に言われた通りに、家庭環境で意地悪を言ってくる男の子や俳優の娘だからって綺麗で調子乗ってると言って教科書を破いて来たりする女の子は片っ端から暴力で片付けて何も言わせない様にした
昔から習っていたチカン対策の護身術で急所狙いか、顎狙いの軽い脳震盪で気絶させていたらいつの間にか自分は悪く無くても友達は出来なくなって学校では一人ぼっちだった
暴力で解決しても味方してくれる人は居ないと分かっていたのに、それでも自分はやめなかった
怒られようが罰を与えられても自分は悪くないしで全て勝手に片付けてこれで良いと思った。傷付けてきた癖にこちらが反撃すると全員大人に助けを求める奴等が許せなかったのかもしれない
格闘技をやっていると自分にはパワーが足りないんじゃないかって組手をしていて良く思う事があったから、パルクールも習ってみて速さと重力の力を借りてどれだけ強くなれるのか毎日毎日そればかり考えていた。胸が膨らんで来て生理が来て自分の体が嫌で嫌で仕方無くて男に産まれてたら良かったのにって小学校3年のあの日くらい泣いた
そんな私をいつもいつでも優しく暖かく家で迎えてくれて、温かい出来たてのご飯を作ってくれたのは河合さんだった。いつか好きな人がお嬢様に出来たらお料理教えますねと言われて、好きな人は要らないから
生理をとめて、おっぱいを無くす方法は無いのかと本気で聞いたら凄く困った顔をされたので言うのをやめる事にした
何故か河合さんには泣いて欲しく無いなって感じたから
ある日、マンジローが友達紹介するから来いよと言って手を引かれて半ば無理やりズルズルと引きづられて行くといつも遊んでる神社に到着した
背が高いのがドラケンで、銀髪が三ツ谷、デカイのがパー、んでこれが俺のダチになった一虎と言って圭介に紹介されて余り気が進まないが仕方なく頭を下げた
「私は雪那。マンジロと圭介と同じ道場なんだ。よろしくね」
簡単に自己紹介すると、特に皆は私を女扱いはせずに普通に接してくれた。内心良かったと安心していると皆で遊びに行こうぜと言って無邪気に笑った圭介に皆頷いた
7人でアイスを食べながら歩いていると、いつも通りに圭介が悪そうな子に絡んでケンカになった。相手も仲間を呼んできて15人くらいになったので何だか嬉しくなって日頃の鬱憤と毎日の稽古の成果を見たいが為。その子達に微塵も腹が立っていないのに気絶するまで磨いた技で血が流れるまでボコボコにしていると、右手を掴まれてハッとする
もう止めとけ。とドラケンに言われて私は首を縦に振る。圭介にもマンジローにも今まで誰にも止められた事が無かったから少し不思議だった
雪那は強えなぁ。と肩を組んできた一虎君に沢山修行したんだと笑うとドラゴンボールかよと笑われて皆で修行しようと言えば俺にもさっきの技教えてとパーに言われたので痩せないと多分難しいかもと私が眉を下げると皆は大笑いしていた
この自分でいてもこんなに受け入れてくれる所はここだけなんだなってこの時に強く思った。日が暮れてきてお腹が減ったと言い出した皆が解散したので帰宅しようとすると、肩を叩かれて振り返る
「 なぁ、 雪那って呼んでいい?」
「三ツ谷、全然いいよ。どしたの?」
「手出して。血がでてる」
素直に右手を出すと、相手を殴った時に歯が当たったのか血が出ていた事に言われて気付いた。ハンカチを巻いてくれた三ツ谷を見て、ハンカチ何て持ち歩いてるんだなと関心して三ツ谷を見つめた
「フッ、……何だよ」
「ハンカチ持ち歩いた事無いから、三ツ谷が持っててびっくりした」
「あー、小さい妹いっから。持ってねーと、アイツらが手洗った時とか不便なんだ」
「へぇ、何か優しいお兄ちゃん何だね。……羨ましい」
「何だよ、大袈裟だな」
「……三ツ谷も帰り道こっちなの?」
「ん?あぁ。」
「じゃあ帰ろ」
初めて遊んだ人でまだ何も知らなかったし、多分あのメンバーとは長い付き合いになりそうだなって思ったから興味もあって、三ツ谷には色々質問したり逆に答えたりしてのんびりと二人で歩いて帰った
家まで送ってくれた三ツ谷に、また遊ぼうねと手を振ると怪我に気をつけろよと言われて素直に頷いた
誰かと居ましたか?と玄関で待ち構えていた河合さんに新しい友達と言って笑うと、河合さんは嬉しそうな顔をしたが、右手を見て怪我したんですか?と言われて怪我したけど今送ってくれた友達が巻いてくれたと言うとまた河合さんは嬉しそうに笑った
それからあのメンバーとは良く遊ぶ様になった。喧嘩ばっかりだったけどそれはマンジロや圭介と三人だった頃と余り変わらないし、戦力が増えたから皆で悪巧みをして沢山喧嘩を売って勝利して自分達は強いんだって段々と自信に溢れて行った
「一虎の頭がパンチになってる」
「もう中学生だしな。似合う?」
「うーん。顔が可愛いから似合わないかも」
ぐぬぬと顔を顰めた一虎に圭介が笑う。雪那は昔から正直だからごめんなと圭介は一虎の肩をぽんぽんと優しく叩いた。私も、そうなんだよ一虎ごめんなと謝ると全然悪いと思ってねーだろと言われて、てへへと舌を出した
「 雪那は正直と言うか幼さがまだあるよな」
「俺も三ツ谷と同じ事考えてた」
「三ツ谷とドラちゃんは幼さ無いもんね」
「大人の男を目指してるからな」
「ふーん。……それよりアイス食べたいなぁ」
「……何だその返事」
俺達は大人の男だよな、マイキーと言ってマンジロの肩を掴んだドラちゃんにマンジロはケンちんアイス食べたいと空を見上げてニッコリと笑う。溜息を吐きながら、仕方ねーなと言っていつもお金はしっかり集めてアイスを人数分買って来てくれるのはいつも三ツ谷とドラちゃんだった
7人でアイスを頬張りながら次はどこの中学生と喧嘩しようかなんて話をしていると、圭介が一虎の事もあるからチームを作ろうと目を輝かせた。チームがあれば喧嘩がしやすいし潰していけばどんどん強い奴と戦えるかもしれないと内心ワクワクしながら私は頭をブンブンと縦に振る
三ツ谷とドラちゃんはそんな私も見て少しだけ困った様な顔をしているのが分かったけど、何故だかは分からなくて首を傾げると少しだけ困った顔で微笑んだドラちゃんは私の頭をそっと撫でた
真一郎兄ちゃんの所で皆でバイクを直していると腹が減ったと言い出したマンジロにみんなが賛成してジャンケンで買い出し係を決めた。見事に負けた私とパーで近くのコンビニまで歩いていると急に後から蹴りを入れられたパーは地面のコンクリートに勢い良く頭から倒れて鼻血を出した
手を貸す前に舌打ちをしながら起き上がって、雪那、何人倒せるか掛けよーぜ。多い方が勝ちなと笑って言ったパーに快く頷いた
「はい。賭けはパーの負けね」
「……おい、それよりまた来たぞ」
「まだまだいける。どんどん来いや」
「7人も来た……ちょっと流石にマイキーに連絡する」
「えぇー。これくらいの人数なら大丈夫だって。……じゃあ私が行くからパーは連絡しといて」
怖がりだな何て内心パーを笑って、バッドを振りかざした男の腕を狙い武器を叩き落とす。バッドを拾い上げてから向かって走ってくる男共にバッドを振りかざして応戦していると数を数えるのも面倒になった時にマンジロや皆の走って来る姿が見えた
「 雪那、怪我無いか?」
「……今気が抜けたら体が痛くなった」
「……雪那こっちこい。傷だらけじゃねーか」
湧き上がる様な力と勇気が敵とみなすと溢れんばかりに出ていたのに何だか皆の顔を見たら急にプツンとアドレナリンが切れたのか、痛む体が疲れを取り戻したみたいだった。手当てすると言って腕を掴んで来た三ツ谷に体を預けてそのまま倒れ込んだ
目を開けて周りを見渡せば自宅の近くの公園だった
右手がズキズキとして、体も何となく全身が痛い。心配そうに顔を覗き込んできた三ツ谷とパーを見てごめんねと一言声を掛けると2人はホッとした顔で少し微笑む
「……何かイライラしちゃって、また突っ込んで行っちゃったよね」
「…… 雪那は悪くねーよ。悪ぃのは汚ねえ手を使ってくるアイツらだ。後ろから急に蹴りやがって」
「……パーは鼻大丈夫?」
こくりと頷いたパーに、今度は油断すんなよとニシシと笑ってやる。そんなやりとりを見ていた三ツ谷は
送って行くから今日はちょっと休めと言って私の背中に手を回して担ぐ様に立たせると返事も聞かずに歩き出した
私の自宅の目の前まで来ると携帯を見たパーが、三ツ谷に相槌をうってから走り出したのを見て少し心配になった
「パーは?何処にいったの?」
「……マイキー達の所」
「……平気かな?」
「怪我人が気にする事じゃねーよ」
「私なら……怪我しても大丈夫だし、まだ動けるよ。三ツ谷戻ろうよ」
「お前本当にふざけんなよ」
本当に怒った三ツ谷の顔を初めて見た
腹が立つ様な悲しいようなそんな顔をしている三ツ谷に皆だっていつも怪我だらけだよと言えばお前は女だろと1番嫌な事を言われた
「……じゃあ、おっぱい取ったらいいの?生理止めたらいいの?男の子なら怒らないの?」
「 雪那、そうゆう問題じゃねぇよ」
「……私だって皆の仲間だもん」
「そんなの当たり前だろ。俺が言いたいのは……只お前が怪我する所見たくないだけだ。雪那も、俺やマイキーが怪我してたら嫌だろ?」
「……うん。まぁ」
「…それに…女の体は男とは違う。もう少し自覚しろ」
女か、と思った瞬間にお腹に蠢いた腹立たしい衝動を感じて、嫌な気分のまま三ツ谷の支えてくれていた手を振り払う。目が座ったような冷静な瞳で見てくる三ツ谷。黙ったまま見つめ合っていると、近くにカブを停めたおじさんに郵便ですと手紙を差し出されて引ったくる様に手に取った
差し出し人を見ればお母さんで、会いたくなってくれたのかなと仄かに期待すれば少しだけ嬉しくなって三ツ谷の事も忘れてその場で手紙を開けた。
内容は新しい子供が出来たから河合さんをこちらに呼び戻すから一人でやってってくれって事と、お父さんがまた新しい奥さんがが出来て子供が産まれたって事
。最後に新しい子供の顔は男を誑かしてる様なお前にそっくりだったと書かれていた
読み終わって、手紙を道路に投げ捨てて膝から崩れ落ちて呆然としていると、怪訝な顔をした三ツ谷は手紙を拾った。彼が読んだら何て思うんだろう、可哀想な子かなとボンヤリ考えていると背中を抱かれる様な感覚がして何も言わずにその温かさを感じて膝を抱えた
「……道路だからちょっと家の中入るぞ」
そう小さく私の耳元で呟いた三ツ谷は私を抱き上げてから家に入った。玄関に入ると私を抱いたまま三ツ谷は座り込んで私の頭を抱き締めてくる。髪の毛や頬にぽたぽたと落ちてくる雫に私は胸がチクリとした
「……何で……あんたが泣くのよ」
「……お前が辛いのが俺は悲しい」
そう言って私を見た三ツ谷は優しい手つきで頬を撫でてからまたキツく抱き締めてくれる
彼の泣き顔を見ていると何だかぐちゃぐちゃだったお腹の衝動が治まった様な感じがしてくる。すると、ゆっくり胸が痛くなって鼻がツンとして涙が出て来た
涙を流していると、少しづつだけど悲しみが癒えるような気がした。三ツ谷もそうなのかなと思うと何だか悲しくて切なくて自分の事を思い泣いてる彼が愛しくて三ツ谷の目から頬を伝う涙にそっと唇を這わせると彼は少し目を見開いてから悲しい笑みを浮かべる
「……泣いてくれてありがとう」
そう言った私の額に優しく口付けした三ツ谷は
俺が家族になってやるから泣くなと言って私を抱き締め続けた
それから河合さんは私の元を離れて行ったけれど、週に2回はお母さんに内緒で私に会いに来てくれた。三ツ谷も前は家には入って来なかったのにあれからは家にも上がるようになった
特に何もせずにお互い携帯をいじったり、ふたりで料理したりテレビを見たりするだけだけど河合さん以外の人と家で過ごす時間が無かった私にとっては毎日がとても幸せに感じた
チームを結成してからは楽しみが1つ増えた
三ツ谷にミシンを教えて貰って覚えながら特攻服を作ったり襷を作ったり。習う事や積み重ねる事は昔から好きだから毎日毎日練習して少しづつ上達していく過程を楽しんでいた
皆に特攻服を渡し終わって少し経った頃。いつもと変わらずに皆で神社にバイクを停めて集まっていると神社の裏手から煙が出ているのが見えて皆で目を合わせた
「……火事じゃね?」
「場地、お前何か燃やした?」
「俺じゃねーよ。てかあんな所行かねーし」
「……消した方がよくね?」
そんな話をしながら皆で早足で森の中を突っ切り煙の元に向かっていると、後からガゴっと鈍い音と共に三ツ谷の声が聞こえて振り返ると落ち葉の上に転がってピクリとも動かない三ツ谷の頭を踏みつけている男は白い特攻服を着て手にはレンチを握りニヤニヤと笑っていた
今迄、生きてきてこんなに怒りを感じた事は無いくらいの渦巻く様な感情に触れると殺してやるとしか思わなくなり、気付いた時にはドラちゃんに羽交い締めにされていて私は血だらけだった
目の前に映る光景は、恐ろしいものを見るような目で私を見つめている白い特攻服の男の子達と、血だらけでうつ伏せに倒れている三ツ谷を踏んだ男だった
圭介と一虎がお前らも殺っちまうぞと叫ぶと男の子達は血だらけの男を担いでその場を去っていった
「……三ツ谷は?」
「……まだ気を失ってる。大丈夫か?」
「うん」
痛む手を見ると少し爪が剥がれていて、噛まれたのか分からないけれど手には歯の後があって流血していた
額が切れていて、そこから流れる血が目に入ってそれを見たマンジロが優しく拭き取ってくれる。口の中に違和感を感じて口からぷッと吐き出すと転がっていったのは自分の歯だった
それを見て私が薄く笑うと、珍しくマンジロも圭介も一虎もパーもドラちゃんも誰も笑わなかった
それから私が殴った男は、頭蓋骨と肋骨にヒビが入っていて重症で入院したみたいだった。その後直ぐにその男の親に訴えられて私は鑑別所に送られた。親が居ないも同然な私には会いに来てくれる家族は誰もいないし河合さんがたまに面会に来てくれて、お嬢様のお友達が心配していたと言われて少し嬉しくなった。皆に会いたいなって気持ちが毎日毎日膨らんでいく中で前に三ツ谷に怒られた時の顔を思い出した
私が悲しくて寂しくて辛いのは三ツ谷も辛いと言ってくれた言葉が頭に過ぎる。皆も私がここに居て悲しいのかもと思ったら何だか涙が出てきてあの殺してやるって衝動に突き動かされては駄目なんだって強く思いこれからは絶対に我慢すると誓った
道場に入った時に心身共に強くなろうと決めた目標はどこにいっていたのか。確かに技や技術は身に付いたし守れる力もあるにはある、だけど私は本当に強くなっているんだろうか。そもそも強さって何だろうと疑問に思った
半年が過ぎて少し寒くなって来た頃、迎えに来てくれた河合さんと一緒に家に帰った。ゆっくりとお風呂に入ってボサボサに伸びた髪や眉何かを手入れして久しぶりに触る携帯を開いた
全員から帰って来たら連絡くれと入っていて私は目に溜まった涙を零しながら皆に心配かけてごめんねと返信した。返信して20分も経たないうちに鍵をかけていなかった玄関の扉が開いて髪が少しだけ伸びた三ツ谷が息を切らせて立っていた
「……三ツ谷」
「 雪那 」
力強く抱かれて、もう心配かけない様にすると言って抱き返すと三ツ谷は何も言わなかった。ぎゅうぎゅうと強くなる腕の力に目を閉じると唇に優しく触れた柔らかい感覚に目を開けた
「…… 雪那 、会いたかった」
「私も三ツ谷に……凄く会いたかったよ」
「……俺が油断してたせいでお前にあんな事させた。本当に悪ぃ。」
「……私、三ツ谷が倒れてたらまた怒りで分からなくなっちゃって。……気付いたらアイツが倒れてた。……心配かけてごめん」
「………雪那。俺がこれからは恋人としてずっと傍にいるから。安心しろ」
「……恋人って何するの?」
「……特に何も変わらねぇよ。……強いて言うならお互いが1番好き同士みたいな感じかな」
「……1番か……。いいね」
「……今はそれで良い。お前が悲しい思いしない様に俺がそばに居るから」
私も三ツ谷の傍にいると笑うと三ツ谷は少しだけ微笑んだ
それから1時間経たない内に、皆が家に顔を見に来てくれて久しぶりに全員でうちで河合さんが作ってくれたすき焼きを食べてながら、私が居ない間にチームでこんな事があったとか冬のジャンパーのデザインが出来てるとか。雪那にバイク組んでやったとか凄く嬉しい話題を聞かされて私は久しぶりに心から嬉しくてずっと笑顔だった
夜も更けてきて皆が帰宅すると言うので一人一人にお礼を言ってからマンジロを呼び止めた
「どうした?」
「……あのね、少しだけこれから気をつける」
「……フッ、何だよそれ」
「……心配かけてごめんね。中で色々考えたんだけど、喧嘩の時に感情的になり過ぎたり鬱憤を晴らすのはやめる。……皆を心配させるのは嫌かも」
「お前がそう考えてそうするなら俺は何も言わねぇよ。……只、お前がいつも怒るのは仲間がやられた時だけだった。それは俺も皆も同じだ」
そう言って笑ったマンジロに、ありがとうと言って片手で抱き締める。彼を最後に抱き締めたのは小学生の時でまだ私より小さかったのに彼の腕におさまってしまった自分が何だか切なかった
男の子になりたかった自分はその時に消えていってしまった様な気がした
それから少しづつ私は変わっていった
冷静になりたくて、頭が良くなりたくて。幼さが出ない様に振る舞い、女で居る事を悲しまない様に女性である事を誇れる様に日々過ごすと決めた
「……これも良いかも。どお??」
「うーん。さっきのデザインのがシンプルで良いけどこっちのがまぁカッケーよな」
卍が入ったロングのコート。腕にシンプルに卍マークを入れるか胸からお腹にかけて大きく入れるかで二人で朝から作業まで進まずにずっと紙を目の前にして唸っていた
「……腹減ったわ。雪那、俺何か作る」
「あ、昼ごはん作っておいたよ。炒飯だけど」
「……お前が作ったの?」
「うん。作り方教えて貰ったんだ。今温め直してくるね」
おーと言った隆に微笑んでからキッチンで炒飯を温め直す。マグカップにインスタントスープを入れてお湯を注いでいると様子を見に来たのか心配そうに覗き込まれる
「大丈夫だよ。これはインスタントだし失敗しないよ」
「……てかさ、……嫌やっぱ何でもねぇ」
「……何?炒飯嫌だった?」
「ちげーよ。…スカート初めて見たし、メイクもいつもと違って凄ぇかわい」
「あ、ああ。ミニスカート初めて履いてみたけど。スースーするね。メイクは何か河合さんのやり方」
「……お前制服ロンスカだもんな」
「ミニスカートも履いてみたら可愛いかったから、今制服のスカートもタンスにあった奴丈直してるんだ」
「すげぇ可愛いけど複雑だな。ミニスカで学校行くのか」
「……皆ミニスカートじゃん。ルーズソックスって奴も買って見た」
「……河合さん大喜びだろ」
「……良く分かるね。フリフリの下着からメイク道具にキラキラのラメのバッグとか買ってくるの」
「……心配になってきた」
「喧嘩しないよ?」
「……今の流れで何で喧嘩の話になるんだよ。」
「何で心配なのか分かんないけど、とりあえず炒飯冷めるから食べよ」
「ああ」
初めて作った炒飯を隆は美味い美味いと言っておかわりまでしてくれて沢山食べてくれた。何故かその1時間後にお腹を下して30分くらいトイレから出てこなくて出て来たらゲッソリした顔をしながらベッドに倒れ込んだ
「……大丈夫??」
「……」
返事が無いのでシンプルな方のデザイン画から作ってみようかとミシンを動かした。昔は動きがたどたどしくてかなり時間が掛かってしまったけれど今は昔と比べたら半分の時間で縫い目も綺麗に出来る様になった
少し形になって来た所で外から夕陽が射し込んでいる事に気付いて隆を覗き込む。スヤスヤと寝息を立てていて起きる気配は無い
恋人が出来たと河合さんに話すと、避妊はして下さいねと言われたけど全く良く分からなくて差し出してきた箱を貰ったけれど机に入れて中身も見なかった
いつ使うの?と聞いたけど二人で寝る時ですと恥ずかしそうに言われて首を傾げた私に河合さんは心の準備が出来たら話しますと言われて
準備するのそっちなんだ。って思った
二人で眠るのに道具何て要らない筈だけどなと思い痛くなった腰を伸ばしたくてベッドに寝転んだ。
温かいし作業して固まっていた体が気持ちよくなってきて欠伸をすると腰に回って来た手が背中を撫でた
「……嫌だった?」
「……何で嫌なの?」
「嫌じゃねーならいい」
「ふーん。私も眠くなって来ちゃった」
「お前、本当に嫌がんないよな…いや、もういいや」
「あ、そうだ。河合さんが一緒に寝る時に使ってねって渡して来たんだけどどうやって使うの、これ」
手を伸ばして机から箱を取り出して隆に渡すと、1度箱から目を逸らして窓の外を見た隆は何秒かして私を見つめてきた
「……河合さんに渡されたのか?」
「うん。恋人が出来たって話たら寝る時は絶対に使って下さいって言われた」
「……他に何て言われた?」
「詳しい話は心の準備が出来てから話すって」
「河合さんが準備出来てねーのかよ」
「んで?これどうすればいいの?」
うーんと言って少し考えた隆は、子供が出来る事だし 体に負担かけるかもしれねー事だからなと言って何やら悩んでいるみたいだった
「隆がしたくないなら今じゃ無くていいよ」
「……したくねーとか言ってねぇよ」
「じゃあ良く分かんないから1回してみて」
「あのな、お試しでするもんじゃねぇから」
「……そうなんだ。たまにするのも負担かかるの?どちらにしろ私の体は頑丈だから大丈夫だよ」
「……何か説明したくなくなるよなお前って」
「良く言われる」
はァと溜息を吐いた隆は私の頭を優しく撫でてからそのままゆっくりと倒して唇に深く口付けをした。初めてする舌が絡まる様な感覚に何だかドキドキして目をぱちぱちしてしまう。服の中に入って来た手が胸を優しく撫でると何だか顔が熱くなってきて、ちょっと恥ずかしいと言って上目で隆を見つめた
「……そんな可愛い顔で見やがって。やめてやらねーって今決めたからな」
「……恥ずかしいって言っただけなのに何でそんな顔するの?」
「……色々あんだよ」
「そうなんだ。……何か温かいし気持ちいい」
「……はァ」
溜息を吐いた隆は私の服を脱がせると自分も脱ぎ出した。肌と肌が触れ合う感覚に温かくて気持ちが良くてフワフワとしてくる。だけどショーツを撫でられて、私の思考回路はストップした
「……そこも触るの?」
「あ、ああ。」
「そこは流石に汚いから嫌だよ」
「……汚くねーって」
「触るんならお風呂入ってからじゃなきゃ嫌」
「……分かった」
すんなりと頷いた隆にホッとして下着姿のまま立ち上がると、浴室に行きお湯を溜める。髪の毛をクリップで上げてから脱衣場でメイクも落としちゃおうかなと鏡の前に立つといつの間にか入って来た隆が後から私を抱き締めた
「ん?何?」
「こっち向いて」
向いた瞬間に口付けをされてブラジャーを外される。
胸が露になって少し恥ずかしくて下を向こうとすると背中を撫でられながら胸に口付けされてチュッと音を立てながら突起を舐められて体がビクリとした
「……気持ちいい?」
「……ん、んん。うーん?多分」
何分かその状態で、甘噛みされるとひゃっと小さく声が出てしまう。お風呂が気になってしまって、お湯が溢れちゃうと言うと何も言わずにお湯を止めた隆はシャワーを出して手招きをする
「……何?」
「一緒に入ろうぜ」
「……うん、まぁ恋人ならいいのかな」
「何だそれ」
お互いが裸になって一緒にシャワーを浴びて頭を洗っいっこしていると顔が泡だらけになった隆を見て私は大笑いした。二人で笑いながらキャッキャしているとガラガラっと音を立てて開いた扉
二人で泡だらけでそちらを見れば河合さんが口を開けて立っていた
「…………」
「河合さん、寒いから閉めて」
「す、すみません」
ピシャリと閉まった扉。脱衣場からの風にすっかり体が冷えてしまって、隆に流してお湯に浸かろうと言うと何も反応が無い
「……どしたの?」
「………すげぇ恥ずかしい」
「たまに火曜日木曜日以外も来る時あるんだ」
「……そうゆうのは早く言おうぜ」
「今度から気をつけるよ」
何だかショックを受けている隆の頭からシャワーをかけて泡を流し、自分も綺麗に泡を流し終わると綺麗に体も洗ってからお風呂に浸かった。隆も体を洗ってからお風呂に浸かったけれど何だかソワソワしているし様子も変なので早々とお風呂から上がって髪を乾かしていると、河合さんが脱衣場を開けてきた
「話があります」
「……河合さん、俺が服着てからで良いですか?」
「……すみませんでした」
そんなやり取りをしながら服を着て2人共髪を乾かしてからリビングに行くと少しだけ緊張した河合さんに私は笑ってしまった
「出たよ、待たせてごめんね」
「大丈夫ですよ」
河合さんは隆の顔を見るとまず深々と頭を下げた
お嬢様が女の子になったのも、優しい気持ちを持って産まれたのに悲しみで見えなくなった時にそこから救い出してくれたのも全部三ツ谷さんとお友達のおかげですと言って涙目でお礼を言った。そんな河合さんに深々と頭を下げて、雪那が今まで温かい気持ちを忘れなかったのは河合さんが居たからだと思いますとハッキリと言った隆。2人を見ていて、私は凄く愛されてるんだなって思った
ふふふと小さく笑った私に、河合さんは嬉しそうな顔をしてからお嬢様良かったですねと笑った
その後に性的な話もされたけれど、話が遠回し過ぎて良く分からないしずっと首を傾げていると
避妊もしっかりとするし、彼女を傷付ける様な事は絶対にしない。これからは鑑別所みたいな所に送られる様な事もさせないので見守って下さいと頭を下げた隆に私と河合さんは感動して目を潤ませてしまった
「 雪那、お前もちゃんと言え」
「……河合さん、心配かけてごめんね。これからは上手に喧嘩するし皆を悲しませないように頑張ります」
「……」
「…お嬢様、私には喧嘩をしたくなる気持ちや暴走族などのチームが良いと思う思考が分かりませんが、お嬢様の人生に口を出さないと昔に決めていますので何も言いません。でもお嬢様が怪我をしたり辛い目に合うと私は悲しいです。それだけでも覚えておいて下さい」
「……皆同じ事言うのね。私も考えてみたらそうかもしれない」
そこら辺は皆一緒だな。と隆が少し微笑んで頷いたので私も満足して頷いた
その日は河合さんと隆に料理を習ったのだけど、沢山作り過ぎてしまったのでルナちゃんとマナちゃんを呼んで皆でご飯を食べた
子供は嫌いだったのに、隆と同じ瞳で私の足を抱いて美人好きーと言ってくる小さな2人が可愛くて抱き上げて頭を撫でると守ってあげなきゃなと自然に思った自分が何だか不思議だった
中学3年になるとあまり喧嘩には参加しなくなった。
相変わらず皆はうちに居るけれど、バイクが壊れて真兄ちゃんの店から買い足したり新しいメンバーの特攻服や刺繍糸だってお金はかかるのにカンパ何て回せないし悪い事もして欲しくない
お金の問題は、圭介も一虎もマンジロもパーも全く役に立たないのが分かっていたので、頭を悩ませていた私はドラちゃに相談する事にした
「引越し屋はどうだ??」
「……引越し屋?荷物運ぶの?」
「店のねーちゃん達とか、色々声掛けるから使って貰って俺らは力仕事するわ」
「じゃあ売り上げの7割は金庫に入れてチームの費用にするよ。後は上手く配って」
「新人にもやらせるか」
「……同時に依頼がきた時は隊長を必ず1人入れてね、後隆とドラちゃんは皆が仕事中に喧嘩しない様に最初皆が慣れるまではしっかり見ててよ」
「……何か考えたら面倒くさくなってきた。パーとかマイキーとか仕事途中で放り出して俺が後始末全部やる未来が見える」
「まぁ、有り得るけど。……資金増やさないと新しい子の単車だって揃わないし」
「……だな。この辺はマイキーには出来ないからな」
「マンジロは出来ないんじゃ無くてやらないだけよ」
違いねぇと笑ったドラちゃんは私をまじまじと見つめると穏やかに笑い私の頭を撫でた。何?と首を傾げると、もう大丈夫そうだなと言われてありがとうと言って首を縦に振った
ドラちゃんが考えた引越し屋は大当たりだった
一般業者に頼むより安いとドラちゃんが住むお店の風俗のお姉さん達や、近くのキャバクラやBARの水商売関連のお兄さんからお姉さんまで幅広く使ってくれた。最初はしっかりと私とドラちゃんで出発前に喧嘩しない、売らない、揉めない事。お客様には愛想良くを叩き込んでから送り出すのが少し大変だったけれど段々と皆も慣れてきたのか2ヶ月が過ぎる頃には何も言わなくてもクレームも来なくなったし仕事もしっかりとこなしていると聞いて安心が出来た
途中で服作りが忙しくなると、一虎と圭介が代わってくれたので隆1人に任せていた服作りに専念する事が出来た。2人に任せるのは最初は少し心配だったけれど今の状態なら大丈夫かなと後を任せる事にした
「……出来た、新作のスウェットセットアップ。東京卍會のローマ字の派手目ロゴがかっこいい」
「長かったな。これデザインからここまでで3ヶ月掛かったぞ」
長かった分愛着が湧くものだし、今まで作った中でも二人で協力して頑張った大作で何だか輝いて見えた
「これ着てマイキーに集会出てもらおう。何もしてない総長何だからモデルくらいやって貰わないと」
「……だな。マイキーが着てたらカッケーって皆なりそうだしな」
「……とりあえず注文が10くらい来るかもしれないし、今から作れるだけ作っておこうよ」
「……まず俺の分を白で作る。お前の分はサイズ変えないとな」
「白何て排気ガスと喧嘩で直ぐ赤黒くなっちゃうよ。黒かグレーで文字白なら良いけど」
「……白着てぇ」
「……分かったよ。隆だけ白ね」
「やりぃ」
凄く嬉しそうに笑った隆に私も微笑む
隆はあれから私にキス以上の事は求めて来なかった
高校生まで待とうと言ってくれた彼の優しさが、少し知識を持った今の私には分かるような気がした
「じゃあお願いね」
「あぁ。行ってくるわ」
連絡すると言って唇に口付けをして来た隆はインパルスのメットインに出来たばかりのセットアップを入れると暗闇の中に消えて行った
ポストからはみ出た手紙を取りに行こうと何歩か玄関から外に歩いた所で右手を掴まれた感覚に体が反応して股間を蹴り上げてから傾いた体の首を狙って肘打ちしようとすると後ろから羽交い締めにされて振り返る
「……大丈夫か。ココ」
「……いぬぴーヤバい、痛くて動けねぇ」
「……離さないとお前にもやるよ」
「…ちょっと話聞いてもらえませんかね?雪那さん」
「……誰?会った事あったっけ?」
「ブラックドラゴンの乾です」
「……あぁ、確か八戒のお兄ちゃんのチームの。前に八戒ん家で会った事あるね」
「はい、……ココ立てるか?」
股間を抑えて蹲る姿を見て何だか申し訳なくなってきて、ごめんねと言うとフゥと乾の息を吐いた音が聞こえて直ぐに腕が自由になったのでしゃがみ込んで九井の腰を摩った
話がしたいだけと言ってきた乾に九井を運んで貰って家に入れ、ソファに座って貰った。珈琲を入れていると匂いがしたのか2人に珈琲飲めませんと真顔で言われたのでオレンジジュースを出してから自分も腰掛けた
「……まだ痛い?平気?」
「…まぁ…大分マシになった」
「小さい頃から痴漢に合う事多くて、勘違いしてごめんね」
「……普通にチャイム鳴らそうとしたら三ツ谷が出て来たんで。彼奴が行くまで待ってたら雪那さんがこっち歩いてきたから掴んだ俺も悪いけど。まさか股間を狙うとは思わなかった」
「…… 雪那さんて確か小学校の頃に格闘技で有名でしたよね?最近は鑑別から出てきたばっかりだし」
「詳しいね」
「……俺も出て来たばっかりなんで」
「そうなんだね。お互いお疲れ様いぬぴー」
「…………」
「んで?話って何??」
話を始めたのは九井の方で、簡単に言うと金が必要だからチームを抜きにして金になる事をしないかとの話だった。急にどしたの?と聞くと私達が始めた引越し屋の事を聞いたからと言っていた
「……うーん。お金何でそんなに必要なの?」
「……それは今はまだ言えない」
「……まぁ、それは良いけどさ。こっち何てそっちよりカツカツで資金不足だから。そんな良い話があったらとっくにやってるし」
「それも分かってます。もし、何かいい案があったらと思っただけです」
「あ、ねぇねぇ話変わるんだけどさ。ちょっと見て貰えないかな?」
急にキラキラの目になった私に2人は少し警戒した様な目をした。そんな事お構い無しに先程作った隆の白のパーカーを持って来ると乾を無理やり立たせて腕を通して貰う
「どう?今作ったばっかりの東京卍會パーカー。下はまだ出来てないけど」
「……普通にいぬぴー似合う」
「乾は白が似合うね、九井なら黒が似合いそう」
「これ、どうするんですか?雪那さんが着るにはデカくないですか?」
「私のじゃないよ。色んなデザイン作ってチームの子に気に入ったの買ってもらうの、バイクの部品とかの資金にしてる」
「……へぇ、器用だな。ブラックドラゴンのも作って下さいよ」
「デザインから考えるから生地代とかも合わせるとお金かかるよ。てか、二人で作れば??」
「……俺達がミシン出来ると思いますか?」
「……ぶふっ」
吹き出した私に2人は呆れた様に笑った。その後も色々話をしたけれど特に3人で考えてもいい案は出なくてお開きになった。何か食って帰ろうと話している2人に、肉じゃが作ったから食べていきなよと言うと、いつもの無表情から少し顔が柔らかくなった乾とやりーと言って笑った九井が可愛く見えた
2人が帰って少しすると、玄関の鍵が開く音がして隆が顔を出した。作業していた手を止めると腹が減ったから昼に作ってた肉じゃが食べさせてと笑う
「あー、さっき全部無くなった」
「あの量全部食ったのかよ」
「ううん、ブラックドラゴンの子が来てたから食べさせただけ」
「……は?」
「……ん?」
「……何でそうなんの?誰?家にあげたのかよ」
「個人的な話をしてただけだよ、チーム関係無いし」
「……男を家に上げるのは危ねぇだろ」
「……ちょっと知ってる人だったから。話の内容もチームの事じゃないし話したいって言われただけ」
「……頼むからそういう時は俺に電話しろ、何かあってからじゃ遅いから」
「……うーん。例えばさ学校の男の子が家に来て話があるって言っても上げてお茶出しちゃダメなの?」
「……」
「暴走族だから駄目って事??」
「……まぁ、ブラックドラゴンはあんまり良い噂も聞かねーし。他には女に酷い事する奴もいるからな」
「……そっか。分かった、隆がそう言うならそれに従う。乾と九井と話す時は個人的な話でもファミレスとかに行くよ」
「……出来るなら話もすんな。と言いたいけどそこまで言いはしない。後はお前の判断に任せる。もし、何かされたら身は守れよ」
「……そういえば、最初近付いてきた時に九井と乾って分からなくて痴漢かと勘違いして股間に思いっきり蹴り入れたら倒れちゃってさ」
えへへと笑った私に苦笑いをした隆は何も言わずにキッチンに消えて行った
それからまた作業を開始していると開けっ放しのドアから良い香りが漂ってくる。トマトとニンニクの香りに釣られる様にキッチンに向かうとフライパンを持った隆は私を見て丁度出来たぞと微笑んだ
フライパンを覗くと、トマトとキノコに挽肉が入ったパスタが出来上がっていた。お皿に盛り付けてくれている間に洗い物を済ませて二人でパスタを食べてソファで食休みをしていると、私の膝に頭を乗せて来た隆は腕を伸ばして私の頬に触れた
「……なぁ、雪那 」
「ん?何?」
「……いや、何でもねぇ」
「何かあったら言って。気になるし」
「……前にさ、河合さんと話した時の事覚えてる?」
「勿論」
「一緒に風呂入ってさ……俺達そこから進んでねーじゃん。」
「……そうだね。結局しなかったもんね」
「あの時がどうのって話じゃなくて、俺は高校生まで待とうかなって思ってたんだけどさ。……やっぱり後1年は待つのってけっこうキツイなって」
そう言って私を見つめながら右手を握って来た隆は優しくその手に口付けしてくれる。待てねぇ何て可愛いなぁと私が笑うと、ルナとマナとあった日くらいから可愛いって良く言うようになったなって言われて何だかハッとした
「……確かに。恋とかは全く無いんだけど今日も乾と九井が美味しいって肉じゃが食べてた時に可愛いって思った」
「…………あっそ」
「……何か千冬とか八戒に対する感情に似てたかな。動物がご飯食べてると可愛いじゃん」
「……お前の中で2人どうなってんだよ」
「隆はまた何か違うんだよね」
「……?」
「うーん。たまに、抱き締めても何かが足りなくて食べちゃいたくなる」
「……俺と一緒。すげーかわい」
後嬉しいと言って体を起こした隆は私の頭を優しく掴んで深く口付けする。絡み合う舌が音を立ててまだ少しこのキスには慣れない、隆の右手が服の中に入って来て背中を撫でられ胸を優しく揉まれて口から吐息が溢れた
「……何か最近色っぽくなったよな」
「それ圭介と一虎にも言われた」
「にゃろう。アイツら変な目で見やがって」
「……そんな目で見ないでエッチって冗談で言ったら1番見てんの三ツ谷だろって言われた」
「…………まぁ、そうだけどよ」
ふふふと笑った私に、マジで最近心配と言って胸の谷間に口付けをしてくる隆の頭を優しく抱き締めると
ちょっと早いけど、体も俺のものにしていい?と言って来た隆に私の頬は赤く染まって何だか愛しくて切なくなった
こくりと頷いた私に嬉しそうに笑った隆は1度ギュッとキツく私を抱き締めて愛しそうに口付けしてくれた
優しい手つきで全身を撫でられて身体中に口付けされる事は産まれて初めてだった
やっぱり下半身は恥ずかしくて抵抗があったけど、真面目な顔で安心して身を預けてと言われて観念して頷いた。舌が這うような感覚と口から出る自分じゃない様な声が照れ臭くて何だか集中出来ない
気持ちが良いような変な感じな様なと思っていると、隆が上に被さって来て鈍い痛みを感じた
「……い、痛い」
「……ごめんな、少し慣れるまで痛ぇかも」
「……隆がしたいなら我慢出来るから大丈夫」
「…強がんなくていいから。嫌だったら言えよ」
「……隆が幸せなら私は幸せだよ?気持ち分かるでしょ?」
「……まぁ、な」
はぁと吐息を漏らした隆は私の耳元に顔を埋めると頭を抱いてゆっくりと動き出した。鈍い痛みとお腹が圧迫される様な感覚に力を抜いてと言われてもついつい力が入ってしまう
息をなるべく吐いて体に力を入れない様にしていると少しだけ痛くなくなって来た感覚がして隆を見つめた
電気が消えているのでハッキリとは見えないけれど、何だかいつもと表情が違うのがハッキリと分かった
「……何でそんな顔してんの?」
「……すげぇ気持ちいい。癖になりそ」
「かわい」
「……笑わせんなよ、雪那も気持ち良くなる様にしてくからちょっと我慢な」
「……隆が気持ち良いならそれで十分だよ」
そう言うと、お前が痛いと俺が満足出来ねぇと言った隆に微笑んで頷いた。それから二人でお風呂に入ってまた泡だらけになって笑って抱き締め合いながら眠りについた
少しだけ、いつか気持ち良く本当になるのかな?と考えたけど特に彼が気持ちが良いならちょっと痛いけど別にいいや。くらいで深く考えずにすやすやと眠ってしまった隆の額に口付けてから眠りについた
翌日、学校から帰って来てパンツを縫っていると玄関が開いてバタバタと足音がした。部屋の前を通り過ぎてリビングに向かった足音に河合さんの足音じゃないなと部屋に置いてある護身用のゴルフクラブ片手にリビングに向かうと、パーと圭介と一虎が3人でテレビの前に座って何かを見ていた
「…………何やってんの?」
「 雪那、何でゴルフクラブ持ってんの?」
首を傾げたパーと一虎に護身用と言うと、圭介に何故かお前はあっち行ってろと言われて、一虎が見ているビデオのパッケージを覗けば裸の女の人が写っていた。自分ちで見ろよと言いながらパーの頭にグリグリとゲンコツを押し付けると痛い痛いと言っていたパーはビデオが始まった途端に画面に釘付けになってリアクションもとってくれなくなった
中学生の男の子はそうゆうのに興味があると河合さんが買って来てくれた雑誌に書いてあったので、まぁいいかと思ったが以外に声が煩いので音量下げてよと言えば一虎にシーと言われ
直ぐに部屋に戻り、隆とドラちゃん、それにマンジロに家のリビングで3人がイヤらしいビデオ見てる(涙)
と送ってから作業に戻った
15分しないうちに玄関が開いて、リビングにバタバタと歩いて行く複数の足音がして内心笑いながらリビングを覗くとドラちゃんに怒鳴られて正座している3人が居た
「あ、雪那。お前チクリやがったな」
「場地、おめぇが悪いのに阿呆な事言ってんじゃねーぞ」
そう言った隆の後ろから顔を出して、そうだぞと笑うと全く懲りて無い様子の一虎が皆で見ようぜと言って静まり返る。呆れた顔をしたドラちゃんが自宅で見ろやと怒ってくれた
「皆でマンジロんちで見て来なよ」
「……何で俺ん家。嫌だよ興味ねーし」
「とりあえずビデオ止めろ。丁度いいや、引っ越し屋の事で話あっから」
「私作業に戻るからね」
「 雪那、飯作ってよ。俺腹減った」
作業に戻ろうと部屋に向かい歩き出すと服を掴まれて前に進めなくなる。ニコッと笑ったマンジロがオムライスが食いたいと私を見つめて来て溜息を吐いた。
1人がそう言い出せば皆食べるって事になって資金について話合いながらご飯を食べれば、あっとゆう間に夜になってしまった。
帰るの面倒臭いと言ってリビングのラグの上で雑魚寝してしまった皆にプランケットを掛けていると、お腹を出して寝ているパーに自分のパーカーを掛けている圭介に変わらないなと感じた。見つめている私に気付いたのか圭介は、珍しく私に来い来いと手でジェスチャーすると、ん?と言って近寄った私の頭を撫でた
小さな声で、三ツ谷に大事にして貰えよ。泣かされたら俺に言えよと言って来た圭介に微笑んだ
手紙を破り捨てて部屋に戻り鍵を掛けた。お母さんに会えた時に渡そうと思って描いた沢山の似顔絵を片っ端から破り捨てていると、何だか暗闇の中にいる様な気持ちになった
小学校に行っても、学童にいても寂しい気持ちは消えなかった。ピアノや絵、習字に学習塾に通ってお母さんに褒めてもらおうとしていた気持ちも何も無くなった
良くいえば肩の荷が降りた。悪く言えば目標は無くなったしどうでも良くなった
近所の道場で子供達が集まって空手を教えている所があると河合さんから聞いて、今度は女の子らしい習い事はやめてお母さんが野蛮だと言っていたボクシングや空手をやってみようと思った。
自分で内心反抗期ってやつかなと少し分かっていたけれど、自分を捨てた母親。同じ兄弟なのに何故か凄く愛されているお兄ちゃん
海外で暮らして浮気ばかりしている俳優のお父さん。皆昔から私に冷たかったし、会いにも来てくれないから何をしても全部私の勝手でしょ。がこの頃から基本になっていったんだと思う
道場の稽古は思っていたよりも楽しかった
稽古が楽しいとゆうより、心身共に強くなっていく自分を目標に出来た事が良かったのかもしれない
自分を可愛がってくれなかった穴を埋めるようにそこの道場の先生の孫の真一郎兄ちゃんに懐いて良く遊んで貰っていた。ある日真一郎兄ちゃんに肩車をして貰っていると、たまには変われよと言って足を引っ張って来た万次郎君の力が思ってたより強すぎて体勢を崩して頭から地面に叩き付けられた
目が覚めると涙を流しているエマちゃんと気まずそうな万次郎君に困った顔をした圭介くん。良く道場にいる春ちゃんと千寿ちゃん兄弟。そして涙目の真一郎兄ちゃんが私を囲んでいた
「大丈夫か? 雪那。どこが痛てぇ??」
「……頭。けど……大丈夫」
「万次郎、雪那に言う事あるだろ」
「……悪かったな」
「ちゃんとごめんなさいって言え」
「……」
「……謝らなくていいよ。家族に捨てられて今ちょっと寂しくて。万次郎君の気持ち考えてなかったの私だもん」
シーンと静まり返る部屋。わざとらしく捨てられたと強調したのに同情されたくはない。どうせ言っても皆その事に触れないのは分かっていたので起き上がってから皆に介抱ありがとうと言って頭を1度下げて自宅に向かおうと立ち上がると、フラっとした体は小さな体に優しく支えられた
「あぶねぇよ、急に起きんな」
「……ありがとう圭介君」
そんな私を見て悲しそうに眉を下げた万次郎君は、ごめんな。と小さな声で謝罪をくれたので私は少し微笑んでから頭をブンブンと横に振った。それを優しい目で見ていた真一郎兄ちゃんは私と万次郎君の頭を撫でてから送っていくと言ってくれた
家までおんぶで送ってくれた真兄ちゃんは家のインターフォンを押して出てきた河合さんに怪我をさせてしまったと言って頭を下げてくれていた
それから、次の週に道場に行くとエマちゃんは私の所に来て遊んでと可愛い顔で笑い、万次郎君と圭介君は組手をしてくれたり駄菓子屋に行こうと誘ってくれた
そんな光景を優しい笑みで見ている真兄ちゃんと先生の温かい眼差しが何よりも好きで私の求めている物はこれなのかな何て思った
それから2年が経って小学校5年生になった
昔から圭介に、虐められたら直ぐに俺に言えよ言われていたので、学校で嫌がらせされていると言えば虐められない方法を教えてくれた
圭介に言われた通りに、家庭環境で意地悪を言ってくる男の子や俳優の娘だからって綺麗で調子乗ってると言って教科書を破いて来たりする女の子は片っ端から暴力で片付けて何も言わせない様にした
昔から習っていたチカン対策の護身術で急所狙いか、顎狙いの軽い脳震盪で気絶させていたらいつの間にか自分は悪く無くても友達は出来なくなって学校では一人ぼっちだった
暴力で解決しても味方してくれる人は居ないと分かっていたのに、それでも自分はやめなかった
怒られようが罰を与えられても自分は悪くないしで全て勝手に片付けてこれで良いと思った。傷付けてきた癖にこちらが反撃すると全員大人に助けを求める奴等が許せなかったのかもしれない
格闘技をやっていると自分にはパワーが足りないんじゃないかって組手をしていて良く思う事があったから、パルクールも習ってみて速さと重力の力を借りてどれだけ強くなれるのか毎日毎日そればかり考えていた。胸が膨らんで来て生理が来て自分の体が嫌で嫌で仕方無くて男に産まれてたら良かったのにって小学校3年のあの日くらい泣いた
そんな私をいつもいつでも優しく暖かく家で迎えてくれて、温かい出来たてのご飯を作ってくれたのは河合さんだった。いつか好きな人がお嬢様に出来たらお料理教えますねと言われて、好きな人は要らないから
生理をとめて、おっぱいを無くす方法は無いのかと本気で聞いたら凄く困った顔をされたので言うのをやめる事にした
何故か河合さんには泣いて欲しく無いなって感じたから
ある日、マンジローが友達紹介するから来いよと言って手を引かれて半ば無理やりズルズルと引きづられて行くといつも遊んでる神社に到着した
背が高いのがドラケンで、銀髪が三ツ谷、デカイのがパー、んでこれが俺のダチになった一虎と言って圭介に紹介されて余り気が進まないが仕方なく頭を下げた
「私は雪那。マンジロと圭介と同じ道場なんだ。よろしくね」
簡単に自己紹介すると、特に皆は私を女扱いはせずに普通に接してくれた。内心良かったと安心していると皆で遊びに行こうぜと言って無邪気に笑った圭介に皆頷いた
7人でアイスを食べながら歩いていると、いつも通りに圭介が悪そうな子に絡んでケンカになった。相手も仲間を呼んできて15人くらいになったので何だか嬉しくなって日頃の鬱憤と毎日の稽古の成果を見たいが為。その子達に微塵も腹が立っていないのに気絶するまで磨いた技で血が流れるまでボコボコにしていると、右手を掴まれてハッとする
もう止めとけ。とドラケンに言われて私は首を縦に振る。圭介にもマンジローにも今まで誰にも止められた事が無かったから少し不思議だった
雪那は強えなぁ。と肩を組んできた一虎君に沢山修行したんだと笑うとドラゴンボールかよと笑われて皆で修行しようと言えば俺にもさっきの技教えてとパーに言われたので痩せないと多分難しいかもと私が眉を下げると皆は大笑いしていた
この自分でいてもこんなに受け入れてくれる所はここだけなんだなってこの時に強く思った。日が暮れてきてお腹が減ったと言い出した皆が解散したので帰宅しようとすると、肩を叩かれて振り返る
「 なぁ、 雪那って呼んでいい?」
「三ツ谷、全然いいよ。どしたの?」
「手出して。血がでてる」
素直に右手を出すと、相手を殴った時に歯が当たったのか血が出ていた事に言われて気付いた。ハンカチを巻いてくれた三ツ谷を見て、ハンカチ何て持ち歩いてるんだなと関心して三ツ谷を見つめた
「フッ、……何だよ」
「ハンカチ持ち歩いた事無いから、三ツ谷が持っててびっくりした」
「あー、小さい妹いっから。持ってねーと、アイツらが手洗った時とか不便なんだ」
「へぇ、何か優しいお兄ちゃん何だね。……羨ましい」
「何だよ、大袈裟だな」
「……三ツ谷も帰り道こっちなの?」
「ん?あぁ。」
「じゃあ帰ろ」
初めて遊んだ人でまだ何も知らなかったし、多分あのメンバーとは長い付き合いになりそうだなって思ったから興味もあって、三ツ谷には色々質問したり逆に答えたりしてのんびりと二人で歩いて帰った
家まで送ってくれた三ツ谷に、また遊ぼうねと手を振ると怪我に気をつけろよと言われて素直に頷いた
誰かと居ましたか?と玄関で待ち構えていた河合さんに新しい友達と言って笑うと、河合さんは嬉しそうな顔をしたが、右手を見て怪我したんですか?と言われて怪我したけど今送ってくれた友達が巻いてくれたと言うとまた河合さんは嬉しそうに笑った
それからあのメンバーとは良く遊ぶ様になった。喧嘩ばっかりだったけどそれはマンジロや圭介と三人だった頃と余り変わらないし、戦力が増えたから皆で悪巧みをして沢山喧嘩を売って勝利して自分達は強いんだって段々と自信に溢れて行った
「一虎の頭がパンチになってる」
「もう中学生だしな。似合う?」
「うーん。顔が可愛いから似合わないかも」
ぐぬぬと顔を顰めた一虎に圭介が笑う。雪那は昔から正直だからごめんなと圭介は一虎の肩をぽんぽんと優しく叩いた。私も、そうなんだよ一虎ごめんなと謝ると全然悪いと思ってねーだろと言われて、てへへと舌を出した
「 雪那は正直と言うか幼さがまだあるよな」
「俺も三ツ谷と同じ事考えてた」
「三ツ谷とドラちゃんは幼さ無いもんね」
「大人の男を目指してるからな」
「ふーん。……それよりアイス食べたいなぁ」
「……何だその返事」
俺達は大人の男だよな、マイキーと言ってマンジロの肩を掴んだドラちゃんにマンジロはケンちんアイス食べたいと空を見上げてニッコリと笑う。溜息を吐きながら、仕方ねーなと言っていつもお金はしっかり集めてアイスを人数分買って来てくれるのはいつも三ツ谷とドラちゃんだった
7人でアイスを頬張りながら次はどこの中学生と喧嘩しようかなんて話をしていると、圭介が一虎の事もあるからチームを作ろうと目を輝かせた。チームがあれば喧嘩がしやすいし潰していけばどんどん強い奴と戦えるかもしれないと内心ワクワクしながら私は頭をブンブンと縦に振る
三ツ谷とドラちゃんはそんな私も見て少しだけ困った様な顔をしているのが分かったけど、何故だかは分からなくて首を傾げると少しだけ困った顔で微笑んだドラちゃんは私の頭をそっと撫でた
真一郎兄ちゃんの所で皆でバイクを直していると腹が減ったと言い出したマンジロにみんなが賛成してジャンケンで買い出し係を決めた。見事に負けた私とパーで近くのコンビニまで歩いていると急に後から蹴りを入れられたパーは地面のコンクリートに勢い良く頭から倒れて鼻血を出した
手を貸す前に舌打ちをしながら起き上がって、雪那、何人倒せるか掛けよーぜ。多い方が勝ちなと笑って言ったパーに快く頷いた
「はい。賭けはパーの負けね」
「……おい、それよりまた来たぞ」
「まだまだいける。どんどん来いや」
「7人も来た……ちょっと流石にマイキーに連絡する」
「えぇー。これくらいの人数なら大丈夫だって。……じゃあ私が行くからパーは連絡しといて」
怖がりだな何て内心パーを笑って、バッドを振りかざした男の腕を狙い武器を叩き落とす。バッドを拾い上げてから向かって走ってくる男共にバッドを振りかざして応戦していると数を数えるのも面倒になった時にマンジロや皆の走って来る姿が見えた
「 雪那、怪我無いか?」
「……今気が抜けたら体が痛くなった」
「……雪那こっちこい。傷だらけじゃねーか」
湧き上がる様な力と勇気が敵とみなすと溢れんばかりに出ていたのに何だか皆の顔を見たら急にプツンとアドレナリンが切れたのか、痛む体が疲れを取り戻したみたいだった。手当てすると言って腕を掴んで来た三ツ谷に体を預けてそのまま倒れ込んだ
目を開けて周りを見渡せば自宅の近くの公園だった
右手がズキズキとして、体も何となく全身が痛い。心配そうに顔を覗き込んできた三ツ谷とパーを見てごめんねと一言声を掛けると2人はホッとした顔で少し微笑む
「……何かイライラしちゃって、また突っ込んで行っちゃったよね」
「…… 雪那は悪くねーよ。悪ぃのは汚ねえ手を使ってくるアイツらだ。後ろから急に蹴りやがって」
「……パーは鼻大丈夫?」
こくりと頷いたパーに、今度は油断すんなよとニシシと笑ってやる。そんなやりとりを見ていた三ツ谷は
送って行くから今日はちょっと休めと言って私の背中に手を回して担ぐ様に立たせると返事も聞かずに歩き出した
私の自宅の目の前まで来ると携帯を見たパーが、三ツ谷に相槌をうってから走り出したのを見て少し心配になった
「パーは?何処にいったの?」
「……マイキー達の所」
「……平気かな?」
「怪我人が気にする事じゃねーよ」
「私なら……怪我しても大丈夫だし、まだ動けるよ。三ツ谷戻ろうよ」
「お前本当にふざけんなよ」
本当に怒った三ツ谷の顔を初めて見た
腹が立つ様な悲しいようなそんな顔をしている三ツ谷に皆だっていつも怪我だらけだよと言えばお前は女だろと1番嫌な事を言われた
「……じゃあ、おっぱい取ったらいいの?生理止めたらいいの?男の子なら怒らないの?」
「 雪那、そうゆう問題じゃねぇよ」
「……私だって皆の仲間だもん」
「そんなの当たり前だろ。俺が言いたいのは……只お前が怪我する所見たくないだけだ。雪那も、俺やマイキーが怪我してたら嫌だろ?」
「……うん。まぁ」
「…それに…女の体は男とは違う。もう少し自覚しろ」
女か、と思った瞬間にお腹に蠢いた腹立たしい衝動を感じて、嫌な気分のまま三ツ谷の支えてくれていた手を振り払う。目が座ったような冷静な瞳で見てくる三ツ谷。黙ったまま見つめ合っていると、近くにカブを停めたおじさんに郵便ですと手紙を差し出されて引ったくる様に手に取った
差し出し人を見ればお母さんで、会いたくなってくれたのかなと仄かに期待すれば少しだけ嬉しくなって三ツ谷の事も忘れてその場で手紙を開けた。
内容は新しい子供が出来たから河合さんをこちらに呼び戻すから一人でやってってくれって事と、お父さんがまた新しい奥さんがが出来て子供が産まれたって事
。最後に新しい子供の顔は男を誑かしてる様なお前にそっくりだったと書かれていた
読み終わって、手紙を道路に投げ捨てて膝から崩れ落ちて呆然としていると、怪訝な顔をした三ツ谷は手紙を拾った。彼が読んだら何て思うんだろう、可哀想な子かなとボンヤリ考えていると背中を抱かれる様な感覚がして何も言わずにその温かさを感じて膝を抱えた
「……道路だからちょっと家の中入るぞ」
そう小さく私の耳元で呟いた三ツ谷は私を抱き上げてから家に入った。玄関に入ると私を抱いたまま三ツ谷は座り込んで私の頭を抱き締めてくる。髪の毛や頬にぽたぽたと落ちてくる雫に私は胸がチクリとした
「……何で……あんたが泣くのよ」
「……お前が辛いのが俺は悲しい」
そう言って私を見た三ツ谷は優しい手つきで頬を撫でてからまたキツく抱き締めてくれる
彼の泣き顔を見ていると何だかぐちゃぐちゃだったお腹の衝動が治まった様な感じがしてくる。すると、ゆっくり胸が痛くなって鼻がツンとして涙が出て来た
涙を流していると、少しづつだけど悲しみが癒えるような気がした。三ツ谷もそうなのかなと思うと何だか悲しくて切なくて自分の事を思い泣いてる彼が愛しくて三ツ谷の目から頬を伝う涙にそっと唇を這わせると彼は少し目を見開いてから悲しい笑みを浮かべる
「……泣いてくれてありがとう」
そう言った私の額に優しく口付けした三ツ谷は
俺が家族になってやるから泣くなと言って私を抱き締め続けた
それから河合さんは私の元を離れて行ったけれど、週に2回はお母さんに内緒で私に会いに来てくれた。三ツ谷も前は家には入って来なかったのにあれからは家にも上がるようになった
特に何もせずにお互い携帯をいじったり、ふたりで料理したりテレビを見たりするだけだけど河合さん以外の人と家で過ごす時間が無かった私にとっては毎日がとても幸せに感じた
チームを結成してからは楽しみが1つ増えた
三ツ谷にミシンを教えて貰って覚えながら特攻服を作ったり襷を作ったり。習う事や積み重ねる事は昔から好きだから毎日毎日練習して少しづつ上達していく過程を楽しんでいた
皆に特攻服を渡し終わって少し経った頃。いつもと変わらずに皆で神社にバイクを停めて集まっていると神社の裏手から煙が出ているのが見えて皆で目を合わせた
「……火事じゃね?」
「場地、お前何か燃やした?」
「俺じゃねーよ。てかあんな所行かねーし」
「……消した方がよくね?」
そんな話をしながら皆で早足で森の中を突っ切り煙の元に向かっていると、後からガゴっと鈍い音と共に三ツ谷の声が聞こえて振り返ると落ち葉の上に転がってピクリとも動かない三ツ谷の頭を踏みつけている男は白い特攻服を着て手にはレンチを握りニヤニヤと笑っていた
今迄、生きてきてこんなに怒りを感じた事は無いくらいの渦巻く様な感情に触れると殺してやるとしか思わなくなり、気付いた時にはドラちゃんに羽交い締めにされていて私は血だらけだった
目の前に映る光景は、恐ろしいものを見るような目で私を見つめている白い特攻服の男の子達と、血だらけでうつ伏せに倒れている三ツ谷を踏んだ男だった
圭介と一虎がお前らも殺っちまうぞと叫ぶと男の子達は血だらけの男を担いでその場を去っていった
「……三ツ谷は?」
「……まだ気を失ってる。大丈夫か?」
「うん」
痛む手を見ると少し爪が剥がれていて、噛まれたのか分からないけれど手には歯の後があって流血していた
額が切れていて、そこから流れる血が目に入ってそれを見たマンジロが優しく拭き取ってくれる。口の中に違和感を感じて口からぷッと吐き出すと転がっていったのは自分の歯だった
それを見て私が薄く笑うと、珍しくマンジロも圭介も一虎もパーもドラちゃんも誰も笑わなかった
それから私が殴った男は、頭蓋骨と肋骨にヒビが入っていて重症で入院したみたいだった。その後直ぐにその男の親に訴えられて私は鑑別所に送られた。親が居ないも同然な私には会いに来てくれる家族は誰もいないし河合さんがたまに面会に来てくれて、お嬢様のお友達が心配していたと言われて少し嬉しくなった。皆に会いたいなって気持ちが毎日毎日膨らんでいく中で前に三ツ谷に怒られた時の顔を思い出した
私が悲しくて寂しくて辛いのは三ツ谷も辛いと言ってくれた言葉が頭に過ぎる。皆も私がここに居て悲しいのかもと思ったら何だか涙が出てきてあの殺してやるって衝動に突き動かされては駄目なんだって強く思いこれからは絶対に我慢すると誓った
道場に入った時に心身共に強くなろうと決めた目標はどこにいっていたのか。確かに技や技術は身に付いたし守れる力もあるにはある、だけど私は本当に強くなっているんだろうか。そもそも強さって何だろうと疑問に思った
半年が過ぎて少し寒くなって来た頃、迎えに来てくれた河合さんと一緒に家に帰った。ゆっくりとお風呂に入ってボサボサに伸びた髪や眉何かを手入れして久しぶりに触る携帯を開いた
全員から帰って来たら連絡くれと入っていて私は目に溜まった涙を零しながら皆に心配かけてごめんねと返信した。返信して20分も経たないうちに鍵をかけていなかった玄関の扉が開いて髪が少しだけ伸びた三ツ谷が息を切らせて立っていた
「……三ツ谷」
「 雪那 」
力強く抱かれて、もう心配かけない様にすると言って抱き返すと三ツ谷は何も言わなかった。ぎゅうぎゅうと強くなる腕の力に目を閉じると唇に優しく触れた柔らかい感覚に目を開けた
「…… 雪那 、会いたかった」
「私も三ツ谷に……凄く会いたかったよ」
「……俺が油断してたせいでお前にあんな事させた。本当に悪ぃ。」
「……私、三ツ谷が倒れてたらまた怒りで分からなくなっちゃって。……気付いたらアイツが倒れてた。……心配かけてごめん」
「………雪那。俺がこれからは恋人としてずっと傍にいるから。安心しろ」
「……恋人って何するの?」
「……特に何も変わらねぇよ。……強いて言うならお互いが1番好き同士みたいな感じかな」
「……1番か……。いいね」
「……今はそれで良い。お前が悲しい思いしない様に俺がそばに居るから」
私も三ツ谷の傍にいると笑うと三ツ谷は少しだけ微笑んだ
それから1時間経たない内に、皆が家に顔を見に来てくれて久しぶりに全員でうちで河合さんが作ってくれたすき焼きを食べてながら、私が居ない間にチームでこんな事があったとか冬のジャンパーのデザインが出来てるとか。雪那にバイク組んでやったとか凄く嬉しい話題を聞かされて私は久しぶりに心から嬉しくてずっと笑顔だった
夜も更けてきて皆が帰宅すると言うので一人一人にお礼を言ってからマンジロを呼び止めた
「どうした?」
「……あのね、少しだけこれから気をつける」
「……フッ、何だよそれ」
「……心配かけてごめんね。中で色々考えたんだけど、喧嘩の時に感情的になり過ぎたり鬱憤を晴らすのはやめる。……皆を心配させるのは嫌かも」
「お前がそう考えてそうするなら俺は何も言わねぇよ。……只、お前がいつも怒るのは仲間がやられた時だけだった。それは俺も皆も同じだ」
そう言って笑ったマンジロに、ありがとうと言って片手で抱き締める。彼を最後に抱き締めたのは小学生の時でまだ私より小さかったのに彼の腕におさまってしまった自分が何だか切なかった
男の子になりたかった自分はその時に消えていってしまった様な気がした
それから少しづつ私は変わっていった
冷静になりたくて、頭が良くなりたくて。幼さが出ない様に振る舞い、女で居る事を悲しまない様に女性である事を誇れる様に日々過ごすと決めた
「……これも良いかも。どお??」
「うーん。さっきのデザインのがシンプルで良いけどこっちのがまぁカッケーよな」
卍が入ったロングのコート。腕にシンプルに卍マークを入れるか胸からお腹にかけて大きく入れるかで二人で朝から作業まで進まずにずっと紙を目の前にして唸っていた
「……腹減ったわ。雪那、俺何か作る」
「あ、昼ごはん作っておいたよ。炒飯だけど」
「……お前が作ったの?」
「うん。作り方教えて貰ったんだ。今温め直してくるね」
おーと言った隆に微笑んでからキッチンで炒飯を温め直す。マグカップにインスタントスープを入れてお湯を注いでいると様子を見に来たのか心配そうに覗き込まれる
「大丈夫だよ。これはインスタントだし失敗しないよ」
「……てかさ、……嫌やっぱ何でもねぇ」
「……何?炒飯嫌だった?」
「ちげーよ。…スカート初めて見たし、メイクもいつもと違って凄ぇかわい」
「あ、ああ。ミニスカート初めて履いてみたけど。スースーするね。メイクは何か河合さんのやり方」
「……お前制服ロンスカだもんな」
「ミニスカートも履いてみたら可愛いかったから、今制服のスカートもタンスにあった奴丈直してるんだ」
「すげぇ可愛いけど複雑だな。ミニスカで学校行くのか」
「……皆ミニスカートじゃん。ルーズソックスって奴も買って見た」
「……河合さん大喜びだろ」
「……良く分かるね。フリフリの下着からメイク道具にキラキラのラメのバッグとか買ってくるの」
「……心配になってきた」
「喧嘩しないよ?」
「……今の流れで何で喧嘩の話になるんだよ。」
「何で心配なのか分かんないけど、とりあえず炒飯冷めるから食べよ」
「ああ」
初めて作った炒飯を隆は美味い美味いと言っておかわりまでしてくれて沢山食べてくれた。何故かその1時間後にお腹を下して30分くらいトイレから出てこなくて出て来たらゲッソリした顔をしながらベッドに倒れ込んだ
「……大丈夫??」
「……」
返事が無いのでシンプルな方のデザイン画から作ってみようかとミシンを動かした。昔は動きがたどたどしくてかなり時間が掛かってしまったけれど今は昔と比べたら半分の時間で縫い目も綺麗に出来る様になった
少し形になって来た所で外から夕陽が射し込んでいる事に気付いて隆を覗き込む。スヤスヤと寝息を立てていて起きる気配は無い
恋人が出来たと河合さんに話すと、避妊はして下さいねと言われたけど全く良く分からなくて差し出してきた箱を貰ったけれど机に入れて中身も見なかった
いつ使うの?と聞いたけど二人で寝る時ですと恥ずかしそうに言われて首を傾げた私に河合さんは心の準備が出来たら話しますと言われて
準備するのそっちなんだ。って思った
二人で眠るのに道具何て要らない筈だけどなと思い痛くなった腰を伸ばしたくてベッドに寝転んだ。
温かいし作業して固まっていた体が気持ちよくなってきて欠伸をすると腰に回って来た手が背中を撫でた
「……嫌だった?」
「……何で嫌なの?」
「嫌じゃねーならいい」
「ふーん。私も眠くなって来ちゃった」
「お前、本当に嫌がんないよな…いや、もういいや」
「あ、そうだ。河合さんが一緒に寝る時に使ってねって渡して来たんだけどどうやって使うの、これ」
手を伸ばして机から箱を取り出して隆に渡すと、1度箱から目を逸らして窓の外を見た隆は何秒かして私を見つめてきた
「……河合さんに渡されたのか?」
「うん。恋人が出来たって話たら寝る時は絶対に使って下さいって言われた」
「……他に何て言われた?」
「詳しい話は心の準備が出来てから話すって」
「河合さんが準備出来てねーのかよ」
「んで?これどうすればいいの?」
うーんと言って少し考えた隆は、子供が出来る事だし 体に負担かけるかもしれねー事だからなと言って何やら悩んでいるみたいだった
「隆がしたくないなら今じゃ無くていいよ」
「……したくねーとか言ってねぇよ」
「じゃあ良く分かんないから1回してみて」
「あのな、お試しでするもんじゃねぇから」
「……そうなんだ。たまにするのも負担かかるの?どちらにしろ私の体は頑丈だから大丈夫だよ」
「……何か説明したくなくなるよなお前って」
「良く言われる」
はァと溜息を吐いた隆は私の頭を優しく撫でてからそのままゆっくりと倒して唇に深く口付けをした。初めてする舌が絡まる様な感覚に何だかドキドキして目をぱちぱちしてしまう。服の中に入って来た手が胸を優しく撫でると何だか顔が熱くなってきて、ちょっと恥ずかしいと言って上目で隆を見つめた
「……そんな可愛い顔で見やがって。やめてやらねーって今決めたからな」
「……恥ずかしいって言っただけなのに何でそんな顔するの?」
「……色々あんだよ」
「そうなんだ。……何か温かいし気持ちいい」
「……はァ」
溜息を吐いた隆は私の服を脱がせると自分も脱ぎ出した。肌と肌が触れ合う感覚に温かくて気持ちが良くてフワフワとしてくる。だけどショーツを撫でられて、私の思考回路はストップした
「……そこも触るの?」
「あ、ああ。」
「そこは流石に汚いから嫌だよ」
「……汚くねーって」
「触るんならお風呂入ってからじゃなきゃ嫌」
「……分かった」
すんなりと頷いた隆にホッとして下着姿のまま立ち上がると、浴室に行きお湯を溜める。髪の毛をクリップで上げてから脱衣場でメイクも落としちゃおうかなと鏡の前に立つといつの間にか入って来た隆が後から私を抱き締めた
「ん?何?」
「こっち向いて」
向いた瞬間に口付けをされてブラジャーを外される。
胸が露になって少し恥ずかしくて下を向こうとすると背中を撫でられながら胸に口付けされてチュッと音を立てながら突起を舐められて体がビクリとした
「……気持ちいい?」
「……ん、んん。うーん?多分」
何分かその状態で、甘噛みされるとひゃっと小さく声が出てしまう。お風呂が気になってしまって、お湯が溢れちゃうと言うと何も言わずにお湯を止めた隆はシャワーを出して手招きをする
「……何?」
「一緒に入ろうぜ」
「……うん、まぁ恋人ならいいのかな」
「何だそれ」
お互いが裸になって一緒にシャワーを浴びて頭を洗っいっこしていると顔が泡だらけになった隆を見て私は大笑いした。二人で笑いながらキャッキャしているとガラガラっと音を立てて開いた扉
二人で泡だらけでそちらを見れば河合さんが口を開けて立っていた
「…………」
「河合さん、寒いから閉めて」
「す、すみません」
ピシャリと閉まった扉。脱衣場からの風にすっかり体が冷えてしまって、隆に流してお湯に浸かろうと言うと何も反応が無い
「……どしたの?」
「………すげぇ恥ずかしい」
「たまに火曜日木曜日以外も来る時あるんだ」
「……そうゆうのは早く言おうぜ」
「今度から気をつけるよ」
何だかショックを受けている隆の頭からシャワーをかけて泡を流し、自分も綺麗に泡を流し終わると綺麗に体も洗ってからお風呂に浸かった。隆も体を洗ってからお風呂に浸かったけれど何だかソワソワしているし様子も変なので早々とお風呂から上がって髪を乾かしていると、河合さんが脱衣場を開けてきた
「話があります」
「……河合さん、俺が服着てからで良いですか?」
「……すみませんでした」
そんなやり取りをしながら服を着て2人共髪を乾かしてからリビングに行くと少しだけ緊張した河合さんに私は笑ってしまった
「出たよ、待たせてごめんね」
「大丈夫ですよ」
河合さんは隆の顔を見るとまず深々と頭を下げた
お嬢様が女の子になったのも、優しい気持ちを持って産まれたのに悲しみで見えなくなった時にそこから救い出してくれたのも全部三ツ谷さんとお友達のおかげですと言って涙目でお礼を言った。そんな河合さんに深々と頭を下げて、雪那が今まで温かい気持ちを忘れなかったのは河合さんが居たからだと思いますとハッキリと言った隆。2人を見ていて、私は凄く愛されてるんだなって思った
ふふふと小さく笑った私に、河合さんは嬉しそうな顔をしてからお嬢様良かったですねと笑った
その後に性的な話もされたけれど、話が遠回し過ぎて良く分からないしずっと首を傾げていると
避妊もしっかりとするし、彼女を傷付ける様な事は絶対にしない。これからは鑑別所みたいな所に送られる様な事もさせないので見守って下さいと頭を下げた隆に私と河合さんは感動して目を潤ませてしまった
「 雪那、お前もちゃんと言え」
「……河合さん、心配かけてごめんね。これからは上手に喧嘩するし皆を悲しませないように頑張ります」
「……」
「…お嬢様、私には喧嘩をしたくなる気持ちや暴走族などのチームが良いと思う思考が分かりませんが、お嬢様の人生に口を出さないと昔に決めていますので何も言いません。でもお嬢様が怪我をしたり辛い目に合うと私は悲しいです。それだけでも覚えておいて下さい」
「……皆同じ事言うのね。私も考えてみたらそうかもしれない」
そこら辺は皆一緒だな。と隆が少し微笑んで頷いたので私も満足して頷いた
その日は河合さんと隆に料理を習ったのだけど、沢山作り過ぎてしまったのでルナちゃんとマナちゃんを呼んで皆でご飯を食べた
子供は嫌いだったのに、隆と同じ瞳で私の足を抱いて美人好きーと言ってくる小さな2人が可愛くて抱き上げて頭を撫でると守ってあげなきゃなと自然に思った自分が何だか不思議だった
中学3年になるとあまり喧嘩には参加しなくなった。
相変わらず皆はうちに居るけれど、バイクが壊れて真兄ちゃんの店から買い足したり新しいメンバーの特攻服や刺繍糸だってお金はかかるのにカンパ何て回せないし悪い事もして欲しくない
お金の問題は、圭介も一虎もマンジロもパーも全く役に立たないのが分かっていたので、頭を悩ませていた私はドラちゃに相談する事にした
「引越し屋はどうだ??」
「……引越し屋?荷物運ぶの?」
「店のねーちゃん達とか、色々声掛けるから使って貰って俺らは力仕事するわ」
「じゃあ売り上げの7割は金庫に入れてチームの費用にするよ。後は上手く配って」
「新人にもやらせるか」
「……同時に依頼がきた時は隊長を必ず1人入れてね、後隆とドラちゃんは皆が仕事中に喧嘩しない様に最初皆が慣れるまではしっかり見ててよ」
「……何か考えたら面倒くさくなってきた。パーとかマイキーとか仕事途中で放り出して俺が後始末全部やる未来が見える」
「まぁ、有り得るけど。……資金増やさないと新しい子の単車だって揃わないし」
「……だな。この辺はマイキーには出来ないからな」
「マンジロは出来ないんじゃ無くてやらないだけよ」
違いねぇと笑ったドラちゃんは私をまじまじと見つめると穏やかに笑い私の頭を撫でた。何?と首を傾げると、もう大丈夫そうだなと言われてありがとうと言って首を縦に振った
ドラちゃんが考えた引越し屋は大当たりだった
一般業者に頼むより安いとドラちゃんが住むお店の風俗のお姉さん達や、近くのキャバクラやBARの水商売関連のお兄さんからお姉さんまで幅広く使ってくれた。最初はしっかりと私とドラちゃんで出発前に喧嘩しない、売らない、揉めない事。お客様には愛想良くを叩き込んでから送り出すのが少し大変だったけれど段々と皆も慣れてきたのか2ヶ月が過ぎる頃には何も言わなくてもクレームも来なくなったし仕事もしっかりとこなしていると聞いて安心が出来た
途中で服作りが忙しくなると、一虎と圭介が代わってくれたので隆1人に任せていた服作りに専念する事が出来た。2人に任せるのは最初は少し心配だったけれど今の状態なら大丈夫かなと後を任せる事にした
「……出来た、新作のスウェットセットアップ。東京卍會のローマ字の派手目ロゴがかっこいい」
「長かったな。これデザインからここまでで3ヶ月掛かったぞ」
長かった分愛着が湧くものだし、今まで作った中でも二人で協力して頑張った大作で何だか輝いて見えた
「これ着てマイキーに集会出てもらおう。何もしてない総長何だからモデルくらいやって貰わないと」
「……だな。マイキーが着てたらカッケーって皆なりそうだしな」
「……とりあえず注文が10くらい来るかもしれないし、今から作れるだけ作っておこうよ」
「……まず俺の分を白で作る。お前の分はサイズ変えないとな」
「白何て排気ガスと喧嘩で直ぐ赤黒くなっちゃうよ。黒かグレーで文字白なら良いけど」
「……白着てぇ」
「……分かったよ。隆だけ白ね」
「やりぃ」
凄く嬉しそうに笑った隆に私も微笑む
隆はあれから私にキス以上の事は求めて来なかった
高校生まで待とうと言ってくれた彼の優しさが、少し知識を持った今の私には分かるような気がした
「じゃあお願いね」
「あぁ。行ってくるわ」
連絡すると言って唇に口付けをして来た隆はインパルスのメットインに出来たばかりのセットアップを入れると暗闇の中に消えて行った
ポストからはみ出た手紙を取りに行こうと何歩か玄関から外に歩いた所で右手を掴まれた感覚に体が反応して股間を蹴り上げてから傾いた体の首を狙って肘打ちしようとすると後ろから羽交い締めにされて振り返る
「……大丈夫か。ココ」
「……いぬぴーヤバい、痛くて動けねぇ」
「……離さないとお前にもやるよ」
「…ちょっと話聞いてもらえませんかね?雪那さん」
「……誰?会った事あったっけ?」
「ブラックドラゴンの乾です」
「……あぁ、確か八戒のお兄ちゃんのチームの。前に八戒ん家で会った事あるね」
「はい、……ココ立てるか?」
股間を抑えて蹲る姿を見て何だか申し訳なくなってきて、ごめんねと言うとフゥと乾の息を吐いた音が聞こえて直ぐに腕が自由になったのでしゃがみ込んで九井の腰を摩った
話がしたいだけと言ってきた乾に九井を運んで貰って家に入れ、ソファに座って貰った。珈琲を入れていると匂いがしたのか2人に珈琲飲めませんと真顔で言われたのでオレンジジュースを出してから自分も腰掛けた
「……まだ痛い?平気?」
「…まぁ…大分マシになった」
「小さい頃から痴漢に合う事多くて、勘違いしてごめんね」
「……普通にチャイム鳴らそうとしたら三ツ谷が出て来たんで。彼奴が行くまで待ってたら雪那さんがこっち歩いてきたから掴んだ俺も悪いけど。まさか股間を狙うとは思わなかった」
「…… 雪那さんて確か小学校の頃に格闘技で有名でしたよね?最近は鑑別から出てきたばっかりだし」
「詳しいね」
「……俺も出て来たばっかりなんで」
「そうなんだね。お互いお疲れ様いぬぴー」
「…………」
「んで?話って何??」
話を始めたのは九井の方で、簡単に言うと金が必要だからチームを抜きにして金になる事をしないかとの話だった。急にどしたの?と聞くと私達が始めた引越し屋の事を聞いたからと言っていた
「……うーん。お金何でそんなに必要なの?」
「……それは今はまだ言えない」
「……まぁ、それは良いけどさ。こっち何てそっちよりカツカツで資金不足だから。そんな良い話があったらとっくにやってるし」
「それも分かってます。もし、何かいい案があったらと思っただけです」
「あ、ねぇねぇ話変わるんだけどさ。ちょっと見て貰えないかな?」
急にキラキラの目になった私に2人は少し警戒した様な目をした。そんな事お構い無しに先程作った隆の白のパーカーを持って来ると乾を無理やり立たせて腕を通して貰う
「どう?今作ったばっかりの東京卍會パーカー。下はまだ出来てないけど」
「……普通にいぬぴー似合う」
「乾は白が似合うね、九井なら黒が似合いそう」
「これ、どうするんですか?雪那さんが着るにはデカくないですか?」
「私のじゃないよ。色んなデザイン作ってチームの子に気に入ったの買ってもらうの、バイクの部品とかの資金にしてる」
「……へぇ、器用だな。ブラックドラゴンのも作って下さいよ」
「デザインから考えるから生地代とかも合わせるとお金かかるよ。てか、二人で作れば??」
「……俺達がミシン出来ると思いますか?」
「……ぶふっ」
吹き出した私に2人は呆れた様に笑った。その後も色々話をしたけれど特に3人で考えてもいい案は出なくてお開きになった。何か食って帰ろうと話している2人に、肉じゃが作ったから食べていきなよと言うと、いつもの無表情から少し顔が柔らかくなった乾とやりーと言って笑った九井が可愛く見えた
2人が帰って少しすると、玄関の鍵が開く音がして隆が顔を出した。作業していた手を止めると腹が減ったから昼に作ってた肉じゃが食べさせてと笑う
「あー、さっき全部無くなった」
「あの量全部食ったのかよ」
「ううん、ブラックドラゴンの子が来てたから食べさせただけ」
「……は?」
「……ん?」
「……何でそうなんの?誰?家にあげたのかよ」
「個人的な話をしてただけだよ、チーム関係無いし」
「……男を家に上げるのは危ねぇだろ」
「……ちょっと知ってる人だったから。話の内容もチームの事じゃないし話したいって言われただけ」
「……頼むからそういう時は俺に電話しろ、何かあってからじゃ遅いから」
「……うーん。例えばさ学校の男の子が家に来て話があるって言っても上げてお茶出しちゃダメなの?」
「……」
「暴走族だから駄目って事??」
「……まぁ、ブラックドラゴンはあんまり良い噂も聞かねーし。他には女に酷い事する奴もいるからな」
「……そっか。分かった、隆がそう言うならそれに従う。乾と九井と話す時は個人的な話でもファミレスとかに行くよ」
「……出来るなら話もすんな。と言いたいけどそこまで言いはしない。後はお前の判断に任せる。もし、何かされたら身は守れよ」
「……そういえば、最初近付いてきた時に九井と乾って分からなくて痴漢かと勘違いして股間に思いっきり蹴り入れたら倒れちゃってさ」
えへへと笑った私に苦笑いをした隆は何も言わずにキッチンに消えて行った
それからまた作業を開始していると開けっ放しのドアから良い香りが漂ってくる。トマトとニンニクの香りに釣られる様にキッチンに向かうとフライパンを持った隆は私を見て丁度出来たぞと微笑んだ
フライパンを覗くと、トマトとキノコに挽肉が入ったパスタが出来上がっていた。お皿に盛り付けてくれている間に洗い物を済ませて二人でパスタを食べてソファで食休みをしていると、私の膝に頭を乗せて来た隆は腕を伸ばして私の頬に触れた
「……なぁ、雪那 」
「ん?何?」
「……いや、何でもねぇ」
「何かあったら言って。気になるし」
「……前にさ、河合さんと話した時の事覚えてる?」
「勿論」
「一緒に風呂入ってさ……俺達そこから進んでねーじゃん。」
「……そうだね。結局しなかったもんね」
「あの時がどうのって話じゃなくて、俺は高校生まで待とうかなって思ってたんだけどさ。……やっぱり後1年は待つのってけっこうキツイなって」
そう言って私を見つめながら右手を握って来た隆は優しくその手に口付けしてくれる。待てねぇ何て可愛いなぁと私が笑うと、ルナとマナとあった日くらいから可愛いって良く言うようになったなって言われて何だかハッとした
「……確かに。恋とかは全く無いんだけど今日も乾と九井が美味しいって肉じゃが食べてた時に可愛いって思った」
「…………あっそ」
「……何か千冬とか八戒に対する感情に似てたかな。動物がご飯食べてると可愛いじゃん」
「……お前の中で2人どうなってんだよ」
「隆はまた何か違うんだよね」
「……?」
「うーん。たまに、抱き締めても何かが足りなくて食べちゃいたくなる」
「……俺と一緒。すげーかわい」
後嬉しいと言って体を起こした隆は私の頭を優しく掴んで深く口付けする。絡み合う舌が音を立ててまだ少しこのキスには慣れない、隆の右手が服の中に入って来て背中を撫でられ胸を優しく揉まれて口から吐息が溢れた
「……何か最近色っぽくなったよな」
「それ圭介と一虎にも言われた」
「にゃろう。アイツら変な目で見やがって」
「……そんな目で見ないでエッチって冗談で言ったら1番見てんの三ツ谷だろって言われた」
「…………まぁ、そうだけどよ」
ふふふと笑った私に、マジで最近心配と言って胸の谷間に口付けをしてくる隆の頭を優しく抱き締めると
ちょっと早いけど、体も俺のものにしていい?と言って来た隆に私の頬は赤く染まって何だか愛しくて切なくなった
こくりと頷いた私に嬉しそうに笑った隆は1度ギュッとキツく私を抱き締めて愛しそうに口付けしてくれた
優しい手つきで全身を撫でられて身体中に口付けされる事は産まれて初めてだった
やっぱり下半身は恥ずかしくて抵抗があったけど、真面目な顔で安心して身を預けてと言われて観念して頷いた。舌が這うような感覚と口から出る自分じゃない様な声が照れ臭くて何だか集中出来ない
気持ちが良いような変な感じな様なと思っていると、隆が上に被さって来て鈍い痛みを感じた
「……い、痛い」
「……ごめんな、少し慣れるまで痛ぇかも」
「……隆がしたいなら我慢出来るから大丈夫」
「…強がんなくていいから。嫌だったら言えよ」
「……隆が幸せなら私は幸せだよ?気持ち分かるでしょ?」
「……まぁ、な」
はぁと吐息を漏らした隆は私の耳元に顔を埋めると頭を抱いてゆっくりと動き出した。鈍い痛みとお腹が圧迫される様な感覚に力を抜いてと言われてもついつい力が入ってしまう
息をなるべく吐いて体に力を入れない様にしていると少しだけ痛くなくなって来た感覚がして隆を見つめた
電気が消えているのでハッキリとは見えないけれど、何だかいつもと表情が違うのがハッキリと分かった
「……何でそんな顔してんの?」
「……すげぇ気持ちいい。癖になりそ」
「かわい」
「……笑わせんなよ、雪那も気持ち良くなる様にしてくからちょっと我慢な」
「……隆が気持ち良いならそれで十分だよ」
そう言うと、お前が痛いと俺が満足出来ねぇと言った隆に微笑んで頷いた。それから二人でお風呂に入ってまた泡だらけになって笑って抱き締め合いながら眠りについた
少しだけ、いつか気持ち良く本当になるのかな?と考えたけど特に彼が気持ちが良いならちょっと痛いけど別にいいや。くらいで深く考えずにすやすやと眠ってしまった隆の額に口付けてから眠りについた
翌日、学校から帰って来てパンツを縫っていると玄関が開いてバタバタと足音がした。部屋の前を通り過ぎてリビングに向かった足音に河合さんの足音じゃないなと部屋に置いてある護身用のゴルフクラブ片手にリビングに向かうと、パーと圭介と一虎が3人でテレビの前に座って何かを見ていた
「…………何やってんの?」
「 雪那、何でゴルフクラブ持ってんの?」
首を傾げたパーと一虎に護身用と言うと、圭介に何故かお前はあっち行ってろと言われて、一虎が見ているビデオのパッケージを覗けば裸の女の人が写っていた。自分ちで見ろよと言いながらパーの頭にグリグリとゲンコツを押し付けると痛い痛いと言っていたパーはビデオが始まった途端に画面に釘付けになってリアクションもとってくれなくなった
中学生の男の子はそうゆうのに興味があると河合さんが買って来てくれた雑誌に書いてあったので、まぁいいかと思ったが以外に声が煩いので音量下げてよと言えば一虎にシーと言われ
直ぐに部屋に戻り、隆とドラちゃん、それにマンジロに家のリビングで3人がイヤらしいビデオ見てる(涙)
と送ってから作業に戻った
15分しないうちに玄関が開いて、リビングにバタバタと歩いて行く複数の足音がして内心笑いながらリビングを覗くとドラちゃんに怒鳴られて正座している3人が居た
「あ、雪那。お前チクリやがったな」
「場地、おめぇが悪いのに阿呆な事言ってんじゃねーぞ」
そう言った隆の後ろから顔を出して、そうだぞと笑うと全く懲りて無い様子の一虎が皆で見ようぜと言って静まり返る。呆れた顔をしたドラちゃんが自宅で見ろやと怒ってくれた
「皆でマンジロんちで見て来なよ」
「……何で俺ん家。嫌だよ興味ねーし」
「とりあえずビデオ止めろ。丁度いいや、引っ越し屋の事で話あっから」
「私作業に戻るからね」
「 雪那、飯作ってよ。俺腹減った」
作業に戻ろうと部屋に向かい歩き出すと服を掴まれて前に進めなくなる。ニコッと笑ったマンジロがオムライスが食いたいと私を見つめて来て溜息を吐いた。
1人がそう言い出せば皆食べるって事になって資金について話合いながらご飯を食べれば、あっとゆう間に夜になってしまった。
帰るの面倒臭いと言ってリビングのラグの上で雑魚寝してしまった皆にプランケットを掛けていると、お腹を出して寝ているパーに自分のパーカーを掛けている圭介に変わらないなと感じた。見つめている私に気付いたのか圭介は、珍しく私に来い来いと手でジェスチャーすると、ん?と言って近寄った私の頭を撫でた
小さな声で、三ツ谷に大事にして貰えよ。泣かされたら俺に言えよと言って来た圭介に微笑んだ
