短編 シリーズ
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三ツ谷に告白した回数は今までで32回
7回目くらいから、ハイハイと流される様になり15回目くらいからまともな返事すらして貰えなくなった
「 雪那、そのアイシャドウキラキラで可愛いね。三ツ谷に見てもらいたくて買ったの?」
「うふふ、勿論。ラメ入りの新作」
しゃきーんと言いながら掲げると、おぉとのってくれた友人の愛理は楽しそうに笑った。私も新しいコスメ買ってデート頑張ろうと可愛らしい顔になる愛理にいいなぁ。デート……。と頬を膨らませた
三ツ谷に中学1年の時からアタックし続ける私は中学3年になって三ツ谷と同じクラスになり、渋い顔をされながらもこの間初めてデートの約束をしてもらえた
ただ、2人は無理とか悲しい事を言われて三ツ谷が友達を沢山連れて来たのでこちらも友達を呼んで皆でカラオケに行ってご飯を食べたのだけど。まぁ、もうその時点でデートでも無くただ皆でカラオケしただけである
皆で盛り上がって凄く楽しかったけど、三ツ谷とは余り話せなかったし、愛理は三ツ谷の友達の千冬君と気が合ったみたいでその日の内に付き合う事になった
彼氏が出来てルンルンの愛理と、付き合ってはまだいないみたいだけどあれから場地君と仲良くなってデートを良くしている瑠美が内心ちょっと羨ましかった
中学1年の夏に三ツ谷と隣の席になって、良く話をする様になってから直ぐに私の恋心は生まれた
三ツ谷は横顔が綺麗でスタイルも良く、忘れ物が多くておっちょこちょいな私にも優しくしてくれてる様な思いやりがある人だった。
話していると凄く楽しくて学校が毎日楽しくなっていった
初めて告白した中学1年の冬。放課後にたまたま2人きりになった時に好きですと言えば、無理。タイプじゃない、ごめんとハッキリ言われた
その時に胸が凄く痛かった事も、困った顔をした三ツ谷の顔も未だにしっかり覚えている。でも諦められなくてそれからずっとアタックし続けてもう1年半が過ぎた。高校に入って別々になったら私も他に好きな人が出来るのかなと思っている時に限って三ツ谷から下らない事を話しかけられたりして、二人で笑っていると何だかやっぱり好きなんだよなと思ってしまう
「なぁ、雪那 。白浜さんて今日休み?」
「ん?瑠美?そういえば見てないかも。昨日LINE来て場地君とデートするって言ってたけど」
「……ふーん。何もねーといいけど」
「……その含みのある言い方されると心配だから、ちょっと連絡してみる」
三ツ谷の返事を待たずに瑠美に何で学校休んでるの?とLINEすると、何分かして返ってきた返信にはまだ場地君と一緒に居て昨日おとまりしたのとハートマーク付きで入っていた。それを見て全身から力が抜けて机に倒れ込むと珍しく私に触れてきた三ツ谷は背中を優しく叩いてくる
「……どうしたー、大丈夫か?」
「はぁぁぁ、瑠美は昨日から場地君とお泊まりでまだラブラブしてるから学校来れないって」
「……あ、そう」
「……羨ましいのだぁぁぁ」
「……ふーん、羨ましいんだ」
「私も三ツ谷家で後ろから抱き締められてお皿洗いとかしたい」
「……白浜さんと場地ってそんな事してんの?」
「……知らん。私の妄想」
「……何だ。お前本当に阿呆だな。皿洗いしてる時に後ろから抱き締められても邪魔だろ」
「……じゃ、じゃあ前からでも良い」
「……皿が洗えねぇじゃん」
「じゃ、じゃあ、皿洗い中じゃなくていいよ。ソファでにゃんにゃんしたい」
「にゃんにゃんて何だよ」
「……フッ、お子様の三ツ谷には内緒」
「…雪那お前…いつか覚えてろよ」
「ふーんだ意地悪。……ま、場地君は何だかんだ優しい人っぽいから安心した。大事にしてもらいなって返しとく」
「……場地も千冬も彼女は大事にするタイプだから安心しろ」
「……三ツ谷は?」
「俺は……するよ。すげー大事にする」
そう言ってフッと薄く笑った三ツ谷に、彼女になる子いいなぁと呟いてからトボトボと一人でトイレに向かった。トイレに入ったら何だか涙が出てきて、メイクが落ちない様にそっと目元をハンカチで拭う
何だか瑠美の事もあったし、さっきの会話で悲しくなってきて段々と好きでいるのって辛いんだなと思う様になってきた
それから三ツ谷の恋心を消すために、男子にデートに誘われたら断らなくなった。頑張ってデートした時は手を繋いでみたりもした。最初は三ツ谷以外の男子と話しててもつまらなかったけど、ちゃんと話をして話題に興味を持つと皆良い奴だし楽しいなって段々と思えてきた
三ツ谷とはたまに話すけれど、前みたいにアタックもしなくなったし特に気にしないようにしていたら段々と熱も落ち着いていった気がした
「……最近 雪那おかしいよね。何かあった?」
「うーん、ちょっとね」
「……三ツ谷の事?」
「…うん。色々考えたんだけど、諦めようかなって思ったさ」
「 ……そっか。でも、雪那がそう決めたならそれがいいのかもね」
そう言って悲しそうに笑った愛理に色々まだ気持ちが追いつかないけれども一応頑張ってみると言って微笑んだ
授業が終わり皆が部活に向かったり帰り支度をしている中で席を立たずに進路の事を考えながらボーッとしていると、白石さんと声を掛けられて振り返る
そこに立っていたのは、最近良く話すようになった鈴村君だった
「鈴村君、どしたの?」
「この間話してたゲームやった?」
「あぁ、インストールしてからちょっとしかやって無い。まだ面白味も分かんなくてさ」
「チュートリアル終わると面白くなるから、チュートリアルやってあげるよ」
本当に?ラッキーと言って微笑むと、白石さんて笑った顔可愛いねと言われ頭をぽんぽんと優しく触られて固まってしまった。中学1年の時に三ツ谷に言われたその言葉と彼の笑みを思い出して私は顔が熱くなった
真っ赤になった私を見て、鈴村君は少しビックリした様子で大丈夫?と声を掛けてくる。視界に入った視線を感じてそちらを向けば無表情の三ツ谷が私を見ていて目が合ったのでゆっくり逸らした
「……鈴村君ごめん、そう言えば進路相談を先生にしようと思ってたの忘れてた。ゲームまた月曜日で良い?」
「あ、ああ。全然いいよ」
ありがとうと言って顔が赤いのをマフラーで巻いて隠し、コートを着てからサッとバッグを持って足早に廊下に出た。スタスタと歩いて下駄箱で靴を履き変えようとした瞬間にドンと大きな音が鳴りビクリと振り返ると目の前にあった三ツ谷の顔にビックリして後ろに後ずさった
「…ビックリしたな…何で怒ってんの?」
「……怒ってねーよ」
顔怖いよ。と言いながら靴を取ればハラハラと何か紙みたいな物が落ちて、拾い上げて見ると手紙だったので中身を見れば白石さんへと丁寧な字が並んでいた
「……わぁ、ラブレター何て初めて貰った」
「……どうすんの?……返事?」
「三ツ谷には関係無い。てか、下駄箱叩くな馬鹿」
「……お前、そんな事言うキャラだっけ?」
目を見開いてビックリしている三ツ谷に、あんたなんかもう知らん。と言ってからプイっとそっぽを向いて靴を履いて歩き出した
何だか本人に関係無いと言ってしまったら気持ちが良くてスッキリした気分になってきてラブレターを読みながら家に帰った。読みながらといっても昔からずっと好きでしたしか書かれていなくてシンプルなラブレターだなと思ったけれど、ずっとって書かれてある文字に共感を覚えて嬉しくなり頬を染めながらそっとその手紙を胸に抱いた
家に帰って誰が書いたかも分からない差出人不明の手紙を机に飾り勉強を始めた。私がずっと三ツ谷を好きでもこの手紙をくれた男の子は私をずっと見ていてくれたんだと思うと何だか嬉しくて幸せな気分になった
どんな人かは分からないけれど、一途な所に惹かれたのでもしその人が誰か分かったら付き合ってみたいなと思った。だが、それから何ヶ月経っても手紙もアプローチも無くて結局三ツ谷とも話さなくなってあっとゆう間に卒業式の日はやってきた
愛理と瑠美と同じ高校を受けるので特別寂しくは無かったけれど、何だか中学最後に思い出として心に残る事がしたくなって持っていたピンクの便箋に、昔からずっと貴方が好きでしたと丁寧に書いた手紙を差出人は書かずに三ツ谷の鞄にそっと入れてから帰宅した
さよなら私の恋。始まりもしなかったけれど三ツ谷の笑顔があったから学校が楽しかったんだなって思えたら涙が出てきた
高校に入り半年が過ぎようとしていた
高校生活は思ったよりも凄く楽しくて、3人でお揃いで派手に髪を染めたりピアスを沢山あけたり今まで着た事が無いような服を着て遊んだりと弾けたライフを送っていた
お洒落は意外とお金がかかる事もこの時によく分かりお母さんの紹介でバイトを始めた。仕事とは呼べないかもしれないけれど、お母さんのメモに従って毎日買い出しをして、おかずを作りご飯を炊いて20個のお弁当を母親に渡すアルバイトは1日7000円貰えて私は中々気に入っていた。母が経営する職場の人達から娘ちゃんのお弁当大好きですと手紙をたまに貰える事が私の喜びの1つになっていった
その日は土曜日で学校は休日。昼から瑠美と愛理と3人でカラオケに行って騒いでいるとトイレから帰ってきた瑠美がちょっといい?と言ったので予約していた歌を止めると圭介が来たいらしいんだけど良いかな?と言われて、久しぶりに場地君に会いたいと言って笑う私を見てちょっと渋い顔をした
「どしたの?瑠美」
「実は、圭介と林田と、千冬君に……三ツ谷も居るんだけど大丈夫?」
「……あぁ、平気だよ。愛理は千冬君来るの知ってたの?」
「うん、さっき連絡きた。雪那が大丈夫なら良いんじゃないかな?」
「ふっ、私の恋は昔に終わってるし今は楽しい高校ライフを満喫してるから別に良いのだー」
そう言ってマラカスを振りだした私を見て大笑いする二人。それから直ぐに顔を出した4人は何だか少し大人っぽくなっていた
カラオケルームに入ってきた三ツ谷は私を見るとちょっとビックリした顔をしながら、何か派手じゃね?と言って来たのでお互いさまじゃね?と首を傾げるとフッと薄く笑った顔にときめいたけど知らないフリをして、場地君と千冬君に久しぶりと挨拶した
相変わらず可愛らしい笑顔で飲み物や食べ物を注文してくれたり気の利く千冬君と愛理は仲が良いし、場地君もワイルドに見えるけど瑠美を優しい目で見ながら話をしていて何だかずっと見ていて、段々と羨ましくなって来てしまう
ズズズとジュースを飲み干して頬を膨らませている私に、隣から羨ましがんなよと言って頬っぺたを手で潰してくる髪が伸びてカッコよくなった三ツ谷がすこぶる憎たらしい
「……バレたか」
「……お前いつも羨ましい時その顔じゃん」
「そう言われるとそうかも。……てかさ、パーちゃん歌上手くない?」
「パーは美声だし音程取るのうめぇからな」
「……三ツ谷歌わないの?」
「あー、俺はいいや。雪那歌えば?」
「あの4人は2人の世界に入ってるし、歌でも歌ってストレス発散するか」
「…あーじゃあさ…歌うならこれ歌ってくんね?」
三ツ谷がそう言って画面を何回かタップしてからリモコンを渡してきた。その歌は中学2年の時に流行った懐かしい歌だった。歌詞はサビしか覚えていないけれど昔は良く口付さんでいたのでサビ以外は画面を見て適当に歌っていれば思い出すだろうと思い、いいよと頷く
「三ツ谷って……こんな切ない歌好きなんだ」
「まぁな。……懐かしいしな」
「おぉ、俺もこの歌好き」
私達の会話を聞いていたパーちゃんが次よろしくと言ってニカっと笑ったので、リモコンから番号を入れて歌い出すと何故か今まで皆ザワザワしていたのに静かになった
何で?と思ったけれど、皆画面を見ているので中断する事も出来ずにそのまま歌い始めたけれど歌詞をしっかりと見たのは初めてで何だか胸が締め付けられてしまう
貴方は一人背を向け部屋を出ていきました
そして心に同じ傷を作りました
そんな2人でした
さよならさえ上手に伝えられなかったのは
また会えるような気がしたからそれとも
歌っていて、何だか苦しくなる様な感覚に私は声色が変わらない様に必死に最後まで歌った。歌い終わるとシーンと部屋が静まり返る中、パーちゃんだけがぱちぱちと言いながら元気に拍手をしてくれてど、どうもと照れながらジュースを啜る
「み、三ツ谷がリクエストしたのにパーちゃんの方が拍手してくれて嬉しそうだったー。私が歌ったからテンション下がった感じ?」
あははと軽口で、から笑いしながらそう言えば
そんな事ねーよ。すげー胸が痛くなったと言って部屋から出て行ってしまった三ツ谷の背中を見送ってからポカンと口を開けたまま振り返り皆を見た
何だか困った様な顔をした場地くんと千冬君。切なそうに涙を溜めた目で私を見る愛理と瑠美
「……ちょ、そんな目で見ないで。どしたの?皆何かおかしいよ」
「あー悪ぃ。そうだよな。おい、次は瑠美歌えよ」
「う、うん。」
ごめんごめんと言いながら瑠美が入れたアイドルグループの歌で盛り上がっていると、何食わぬ顔で戻って来た三ツ谷は私の隣に座った
「何か、三ツ谷変じゃない?大丈夫?」
「トイレ行ってただけ。別にへーき」
「ふーん。じゃあ次は私のリクエスト歌ってね」
「仕方ねーなー」
そんな会話を三ツ谷としながら、良かった普通だ。と胸を撫で下ろす。テレビ画面の前で踊るパーちゃんを見ながら何だか疲れたなと内心溜息をついた
4時間のフリータイムは終わって、解散て流れになったのでバッグを持って皆に手を振ると早々と自宅に帰る道を歩き出した。スマホを出して時刻を見れば18時。LINEチェックをしながら歩いているとポツポツと顔に雨が当たって、チカチカと赤に変わりそうな横断歩道を渡ろうとすれば左手首を掴まれてビックリして振り返る
「三ツ谷……」
「濡れるし、危ねーから送る」
そう言った三ツ谷はグイッと手首を引き私を傘に入れると手首を掴んでいた手を1度離してから、私の左手を優しく握りしめて歩き出した。繋がれた手を見つめてまだ少し混乱する頭で歩き出す
手が熱いし、汗かいてないかなと心配で少し恥ずかしい
三ツ谷の斜め後ろを歩いていると何も言わない三ツ谷に何だか色々と良く分からないなと少し腹が立ってきた。背中を見つめながら歩いていると、腹減らねぇ?と言われたので腹ペコと返すとフッと笑った三ツ谷はすげー美味いもん奢ってやるよと言って進路を変えた
どうせ牛丼屋だろうと思っていた私の目の前に現れたのは普通のアパートだった。こっち来てと言われて手を引かれるままに階段を上がれば三ツ谷はポケットから取り出した鍵で扉を開けた
「……ここ、何屋??」
「何屋に見える?」
「三ツ谷の家に見える」
「当たり。雪那って和食と洋食、中華、イタリアンどれが好き?」
「……今の気分はパスタが食べたいかな」
「んじゃ、パスタな」
あ、うん。と頷いた私をリビングのソファに座らせてからエプロンを巻いてキッチンに立った三ツ谷を口を開けて見つめていると、その顔で見んなと少し笑われて私も少しだけ笑った
何だかまだ状況についていけなかったけど、腹ペコだしいい匂いがするしテレビを付けさせて貰ってせっかくなのでのんびり寛ぐ事にした。少し経つと、珈琲今入れっからと言われたのでお手洗いを借りると伝えてトイレに入ろうとするとミシンが置いてある部屋のドアが開けっ放しになっていて、テレビでたまに見る暴走族の特攻服がハンガーに綺麗に掛けてあった
三ツ谷の部屋か、そう思って少しミシンを見せて貰おうと思い部屋に入る。何歩か部屋に入った所でミシンの横にあった机に置かれていたのは、ずっと貴方が好きでしたと書いてあるピンク色の便箋
私が書いた物だった。懐かしくて便箋を手に取ると、所々に水が落ちた様な跡があった
出来たぞーと大きな声がして、ビクリとして便箋は机に落ちてしまった。そのまま急いでトイレを済ませてからリビングに向かうとテーブルの上に並んでいるパスタとスープ、サラダに感動してしまう。
「凄い美味しそうだし見た目も本当に綺麗……私より上手」
「まぁ、食ってみてよ」
そう言って薄く笑った三ツ谷に頂きますと言って早々と席についてからパスタを口に入れて咀嚼する
明太子とクリームが絡み合って優しい味わいに頬っぺが落ちそうだ。美味しいし幸せと呟くと、うちの妹みたいに大袈裟だとケラケラ笑う三ツ谷は何だかさっきのカラオケの時とは別人に見えた
ご飯を食べ終わり、食器は私が洗いますと言って手を上げると宜しくと素直に言ってくれたので三ツ谷の分の食器も持ってキッチンの流し場でお皿を洗っていると、ふと三ツ谷が私の後ろに立ったのが分かり、振り返ろうと首を向けようとした瞬間に後ろから回ってきた手が私のお腹の前で優しく組まれた
「えっ?」
間抜けな声が口から出てしまい、水が流れる音で我に返り皿を洗う手を再開すると首に埋まった三ツ谷の顔に手がまた止まってしまう。水がもったいないので流しを止めて呆然としていると、洗わねぇの?と耳元で言われて洗うけど……と呟いてからお皿を洗った
洗っている最中も洗い終わってからも私を後ろから抱き締めて離れない三ツ谷に段々と恥ずかしい気持ちが落ち着いてきたので、何してるの?と口を開いた
「……いや、お前が前に場地達が家でイチャイチャしてて羨ましいって言ってたからさ」
「……いや、まぁ。羨ましいけどさ。何か違くない?」
じゃあ、これは?と言って向きを変えられると、ぎゅっと抱かれ三ツ谷の胸に顔が埋もれた
「……そうゆう事じゃなくて」
何がしたいのと口を開こうとすると口は塞がれていて見開いた目の前には長い睫毛が揺れている。優しく唇を舐めていた舌唇の中に入って来て絡み合う様に深く口付けされ、頭をガッチリと抑えた手と太腿の間に滑り込んで来た足が逃がさないと言わんばかりに感じた
何分そうしていたのか分からない。長くも短くも感じて三ツ谷の唇が離れると痛いくらいに抱き締められて何だか段々と可愛くなってきてしまって、ぽんぽんと背中を軽く叩いた
首筋に埋めてきた唇が優しくちゅっと音をたてる
「……お前の下駄箱に手紙入れたの俺」
「……私も三ツ谷の鞄に手紙入れた」
でも、三ツ谷が入れたのは知らなかったと私が呟けば中2からずっと好きだったよと言った声はいつもの三ツ谷の声じゃないみたいだった。中1からチームに入って、彼女は作らないと決めていたと言った三ツ谷の表情は見えない
「……中2頃からお前が諦めずに真っ直ぐにいつも俺だけを見て好きでいてくれてて段々と俺の気持ちも変わってきた。でもよ、中2の中頃になった辺りからチーム同士の抗争もあって彼女が狙われたりする事もあったから。解散するまではお前に気持ちを伝えるのは辞めようと思ってた」
「……そんな危ない事してたの知らなかったよ。たまに怪我酷い時あったもんね」
「……場地や千冬にはお前が守ってやれば良いじゃんて言われたけど、一緒に居れねー時だってあるし。女の子が暴行何て、もしされたら守れなかったじゃ済まねえと思ってさ」
「うん、確かにそう……かも」
「……諦めてくれた方がお互い辛くないのに、諦めて欲しくなくてずっと俺だけを見てて欲しくてお前に沢山話しかけて意地悪な事も言った。……俺はお前に触れられないのに触れてる男が許せなかった」
「……三ツ谷」
「……俺のチームの事何てお前に関係無いのにずっと苦しめてきた。……ごめんな」
そう言って私の瞳を見つめた三ツ谷は少しだけ目が潤んでるように見えた。三ツ谷の部屋にあった私の手紙に落ちていた水の跡はきっと涙だったのかなと思うと、三ツ谷が一人で私の手紙を読んで泣いている姿を想像しちゃって何だか涙が出てきた
「……そっか、辛かったんだね。一緒だね」
ぎゅっと三ツ谷の背を抱き締めると、ありがとうなと言ってキツく抱き締めてくれる
「……あのさ、今更なんだけど雪那って俺の事まだ好き?」
「……好きじゃないよ」
そう言った途端に固まった三ツ谷を見て私はケラケラと笑う。まじかよと本気でショックを受けている三ツ谷に今までの意地悪のお返しと言ってニシシと笑った
三ツ谷が、何かを言おうとしたその瞬間に優しく唇にちゅっと触れるだけの口付けをすると、三ツ谷は目を見開いてから今まで見た中で1番嬉しそうに笑った
「……後何だっけ?にゃんにゃんだっけ?ソファって言ってたけどベットで良い?」
「……良く覚えてるね。今言われると恥ずかしいわ」
「あの時に俺が言った台詞覚えてる?」
「……いつか覚えてろよとか言ってた」
「今日は帰さねぇからな」
「……望む所だ」
言ったなと笑った三ツ谷は私をお姫様抱っこすると寝室に向かって歩き出す。ずっとこの時を待ってたと言って口付けしてきた三ツ谷に私もと言いながら彼の伸びた髪を優しく撫でた
7回目くらいから、ハイハイと流される様になり15回目くらいからまともな返事すらして貰えなくなった
「 雪那、そのアイシャドウキラキラで可愛いね。三ツ谷に見てもらいたくて買ったの?」
「うふふ、勿論。ラメ入りの新作」
しゃきーんと言いながら掲げると、おぉとのってくれた友人の愛理は楽しそうに笑った。私も新しいコスメ買ってデート頑張ろうと可愛らしい顔になる愛理にいいなぁ。デート……。と頬を膨らませた
三ツ谷に中学1年の時からアタックし続ける私は中学3年になって三ツ谷と同じクラスになり、渋い顔をされながらもこの間初めてデートの約束をしてもらえた
ただ、2人は無理とか悲しい事を言われて三ツ谷が友達を沢山連れて来たのでこちらも友達を呼んで皆でカラオケに行ってご飯を食べたのだけど。まぁ、もうその時点でデートでも無くただ皆でカラオケしただけである
皆で盛り上がって凄く楽しかったけど、三ツ谷とは余り話せなかったし、愛理は三ツ谷の友達の千冬君と気が合ったみたいでその日の内に付き合う事になった
彼氏が出来てルンルンの愛理と、付き合ってはまだいないみたいだけどあれから場地君と仲良くなってデートを良くしている瑠美が内心ちょっと羨ましかった
中学1年の夏に三ツ谷と隣の席になって、良く話をする様になってから直ぐに私の恋心は生まれた
三ツ谷は横顔が綺麗でスタイルも良く、忘れ物が多くておっちょこちょいな私にも優しくしてくれてる様な思いやりがある人だった。
話していると凄く楽しくて学校が毎日楽しくなっていった
初めて告白した中学1年の冬。放課後にたまたま2人きりになった時に好きですと言えば、無理。タイプじゃない、ごめんとハッキリ言われた
その時に胸が凄く痛かった事も、困った顔をした三ツ谷の顔も未だにしっかり覚えている。でも諦められなくてそれからずっとアタックし続けてもう1年半が過ぎた。高校に入って別々になったら私も他に好きな人が出来るのかなと思っている時に限って三ツ谷から下らない事を話しかけられたりして、二人で笑っていると何だかやっぱり好きなんだよなと思ってしまう
「なぁ、雪那 。白浜さんて今日休み?」
「ん?瑠美?そういえば見てないかも。昨日LINE来て場地君とデートするって言ってたけど」
「……ふーん。何もねーといいけど」
「……その含みのある言い方されると心配だから、ちょっと連絡してみる」
三ツ谷の返事を待たずに瑠美に何で学校休んでるの?とLINEすると、何分かして返ってきた返信にはまだ場地君と一緒に居て昨日おとまりしたのとハートマーク付きで入っていた。それを見て全身から力が抜けて机に倒れ込むと珍しく私に触れてきた三ツ谷は背中を優しく叩いてくる
「……どうしたー、大丈夫か?」
「はぁぁぁ、瑠美は昨日から場地君とお泊まりでまだラブラブしてるから学校来れないって」
「……あ、そう」
「……羨ましいのだぁぁぁ」
「……ふーん、羨ましいんだ」
「私も三ツ谷家で後ろから抱き締められてお皿洗いとかしたい」
「……白浜さんと場地ってそんな事してんの?」
「……知らん。私の妄想」
「……何だ。お前本当に阿呆だな。皿洗いしてる時に後ろから抱き締められても邪魔だろ」
「……じゃ、じゃあ前からでも良い」
「……皿が洗えねぇじゃん」
「じゃ、じゃあ、皿洗い中じゃなくていいよ。ソファでにゃんにゃんしたい」
「にゃんにゃんて何だよ」
「……フッ、お子様の三ツ谷には内緒」
「…雪那お前…いつか覚えてろよ」
「ふーんだ意地悪。……ま、場地君は何だかんだ優しい人っぽいから安心した。大事にしてもらいなって返しとく」
「……場地も千冬も彼女は大事にするタイプだから安心しろ」
「……三ツ谷は?」
「俺は……するよ。すげー大事にする」
そう言ってフッと薄く笑った三ツ谷に、彼女になる子いいなぁと呟いてからトボトボと一人でトイレに向かった。トイレに入ったら何だか涙が出てきて、メイクが落ちない様にそっと目元をハンカチで拭う
何だか瑠美の事もあったし、さっきの会話で悲しくなってきて段々と好きでいるのって辛いんだなと思う様になってきた
それから三ツ谷の恋心を消すために、男子にデートに誘われたら断らなくなった。頑張ってデートした時は手を繋いでみたりもした。最初は三ツ谷以外の男子と話しててもつまらなかったけど、ちゃんと話をして話題に興味を持つと皆良い奴だし楽しいなって段々と思えてきた
三ツ谷とはたまに話すけれど、前みたいにアタックもしなくなったし特に気にしないようにしていたら段々と熱も落ち着いていった気がした
「……最近 雪那おかしいよね。何かあった?」
「うーん、ちょっとね」
「……三ツ谷の事?」
「…うん。色々考えたんだけど、諦めようかなって思ったさ」
「 ……そっか。でも、雪那がそう決めたならそれがいいのかもね」
そう言って悲しそうに笑った愛理に色々まだ気持ちが追いつかないけれども一応頑張ってみると言って微笑んだ
授業が終わり皆が部活に向かったり帰り支度をしている中で席を立たずに進路の事を考えながらボーッとしていると、白石さんと声を掛けられて振り返る
そこに立っていたのは、最近良く話すようになった鈴村君だった
「鈴村君、どしたの?」
「この間話してたゲームやった?」
「あぁ、インストールしてからちょっとしかやって無い。まだ面白味も分かんなくてさ」
「チュートリアル終わると面白くなるから、チュートリアルやってあげるよ」
本当に?ラッキーと言って微笑むと、白石さんて笑った顔可愛いねと言われ頭をぽんぽんと優しく触られて固まってしまった。中学1年の時に三ツ谷に言われたその言葉と彼の笑みを思い出して私は顔が熱くなった
真っ赤になった私を見て、鈴村君は少しビックリした様子で大丈夫?と声を掛けてくる。視界に入った視線を感じてそちらを向けば無表情の三ツ谷が私を見ていて目が合ったのでゆっくり逸らした
「……鈴村君ごめん、そう言えば進路相談を先生にしようと思ってたの忘れてた。ゲームまた月曜日で良い?」
「あ、ああ。全然いいよ」
ありがとうと言って顔が赤いのをマフラーで巻いて隠し、コートを着てからサッとバッグを持って足早に廊下に出た。スタスタと歩いて下駄箱で靴を履き変えようとした瞬間にドンと大きな音が鳴りビクリと振り返ると目の前にあった三ツ谷の顔にビックリして後ろに後ずさった
「…ビックリしたな…何で怒ってんの?」
「……怒ってねーよ」
顔怖いよ。と言いながら靴を取ればハラハラと何か紙みたいな物が落ちて、拾い上げて見ると手紙だったので中身を見れば白石さんへと丁寧な字が並んでいた
「……わぁ、ラブレター何て初めて貰った」
「……どうすんの?……返事?」
「三ツ谷には関係無い。てか、下駄箱叩くな馬鹿」
「……お前、そんな事言うキャラだっけ?」
目を見開いてビックリしている三ツ谷に、あんたなんかもう知らん。と言ってからプイっとそっぽを向いて靴を履いて歩き出した
何だか本人に関係無いと言ってしまったら気持ちが良くてスッキリした気分になってきてラブレターを読みながら家に帰った。読みながらといっても昔からずっと好きでしたしか書かれていなくてシンプルなラブレターだなと思ったけれど、ずっとって書かれてある文字に共感を覚えて嬉しくなり頬を染めながらそっとその手紙を胸に抱いた
家に帰って誰が書いたかも分からない差出人不明の手紙を机に飾り勉強を始めた。私がずっと三ツ谷を好きでもこの手紙をくれた男の子は私をずっと見ていてくれたんだと思うと何だか嬉しくて幸せな気分になった
どんな人かは分からないけれど、一途な所に惹かれたのでもしその人が誰か分かったら付き合ってみたいなと思った。だが、それから何ヶ月経っても手紙もアプローチも無くて結局三ツ谷とも話さなくなってあっとゆう間に卒業式の日はやってきた
愛理と瑠美と同じ高校を受けるので特別寂しくは無かったけれど、何だか中学最後に思い出として心に残る事がしたくなって持っていたピンクの便箋に、昔からずっと貴方が好きでしたと丁寧に書いた手紙を差出人は書かずに三ツ谷の鞄にそっと入れてから帰宅した
さよなら私の恋。始まりもしなかったけれど三ツ谷の笑顔があったから学校が楽しかったんだなって思えたら涙が出てきた
高校に入り半年が過ぎようとしていた
高校生活は思ったよりも凄く楽しくて、3人でお揃いで派手に髪を染めたりピアスを沢山あけたり今まで着た事が無いような服を着て遊んだりと弾けたライフを送っていた
お洒落は意外とお金がかかる事もこの時によく分かりお母さんの紹介でバイトを始めた。仕事とは呼べないかもしれないけれど、お母さんのメモに従って毎日買い出しをして、おかずを作りご飯を炊いて20個のお弁当を母親に渡すアルバイトは1日7000円貰えて私は中々気に入っていた。母が経営する職場の人達から娘ちゃんのお弁当大好きですと手紙をたまに貰える事が私の喜びの1つになっていった
その日は土曜日で学校は休日。昼から瑠美と愛理と3人でカラオケに行って騒いでいるとトイレから帰ってきた瑠美がちょっといい?と言ったので予約していた歌を止めると圭介が来たいらしいんだけど良いかな?と言われて、久しぶりに場地君に会いたいと言って笑う私を見てちょっと渋い顔をした
「どしたの?瑠美」
「実は、圭介と林田と、千冬君に……三ツ谷も居るんだけど大丈夫?」
「……あぁ、平気だよ。愛理は千冬君来るの知ってたの?」
「うん、さっき連絡きた。雪那が大丈夫なら良いんじゃないかな?」
「ふっ、私の恋は昔に終わってるし今は楽しい高校ライフを満喫してるから別に良いのだー」
そう言ってマラカスを振りだした私を見て大笑いする二人。それから直ぐに顔を出した4人は何だか少し大人っぽくなっていた
カラオケルームに入ってきた三ツ谷は私を見るとちょっとビックリした顔をしながら、何か派手じゃね?と言って来たのでお互いさまじゃね?と首を傾げるとフッと薄く笑った顔にときめいたけど知らないフリをして、場地君と千冬君に久しぶりと挨拶した
相変わらず可愛らしい笑顔で飲み物や食べ物を注文してくれたり気の利く千冬君と愛理は仲が良いし、場地君もワイルドに見えるけど瑠美を優しい目で見ながら話をしていて何だかずっと見ていて、段々と羨ましくなって来てしまう
ズズズとジュースを飲み干して頬を膨らませている私に、隣から羨ましがんなよと言って頬っぺたを手で潰してくる髪が伸びてカッコよくなった三ツ谷がすこぶる憎たらしい
「……バレたか」
「……お前いつも羨ましい時その顔じゃん」
「そう言われるとそうかも。……てかさ、パーちゃん歌上手くない?」
「パーは美声だし音程取るのうめぇからな」
「……三ツ谷歌わないの?」
「あー、俺はいいや。雪那歌えば?」
「あの4人は2人の世界に入ってるし、歌でも歌ってストレス発散するか」
「…あーじゃあさ…歌うならこれ歌ってくんね?」
三ツ谷がそう言って画面を何回かタップしてからリモコンを渡してきた。その歌は中学2年の時に流行った懐かしい歌だった。歌詞はサビしか覚えていないけれど昔は良く口付さんでいたのでサビ以外は画面を見て適当に歌っていれば思い出すだろうと思い、いいよと頷く
「三ツ谷って……こんな切ない歌好きなんだ」
「まぁな。……懐かしいしな」
「おぉ、俺もこの歌好き」
私達の会話を聞いていたパーちゃんが次よろしくと言ってニカっと笑ったので、リモコンから番号を入れて歌い出すと何故か今まで皆ザワザワしていたのに静かになった
何で?と思ったけれど、皆画面を見ているので中断する事も出来ずにそのまま歌い始めたけれど歌詞をしっかりと見たのは初めてで何だか胸が締め付けられてしまう
貴方は一人背を向け部屋を出ていきました
そして心に同じ傷を作りました
そんな2人でした
さよならさえ上手に伝えられなかったのは
また会えるような気がしたからそれとも
歌っていて、何だか苦しくなる様な感覚に私は声色が変わらない様に必死に最後まで歌った。歌い終わるとシーンと部屋が静まり返る中、パーちゃんだけがぱちぱちと言いながら元気に拍手をしてくれてど、どうもと照れながらジュースを啜る
「み、三ツ谷がリクエストしたのにパーちゃんの方が拍手してくれて嬉しそうだったー。私が歌ったからテンション下がった感じ?」
あははと軽口で、から笑いしながらそう言えば
そんな事ねーよ。すげー胸が痛くなったと言って部屋から出て行ってしまった三ツ谷の背中を見送ってからポカンと口を開けたまま振り返り皆を見た
何だか困った様な顔をした場地くんと千冬君。切なそうに涙を溜めた目で私を見る愛理と瑠美
「……ちょ、そんな目で見ないで。どしたの?皆何かおかしいよ」
「あー悪ぃ。そうだよな。おい、次は瑠美歌えよ」
「う、うん。」
ごめんごめんと言いながら瑠美が入れたアイドルグループの歌で盛り上がっていると、何食わぬ顔で戻って来た三ツ谷は私の隣に座った
「何か、三ツ谷変じゃない?大丈夫?」
「トイレ行ってただけ。別にへーき」
「ふーん。じゃあ次は私のリクエスト歌ってね」
「仕方ねーなー」
そんな会話を三ツ谷としながら、良かった普通だ。と胸を撫で下ろす。テレビ画面の前で踊るパーちゃんを見ながら何だか疲れたなと内心溜息をついた
4時間のフリータイムは終わって、解散て流れになったのでバッグを持って皆に手を振ると早々と自宅に帰る道を歩き出した。スマホを出して時刻を見れば18時。LINEチェックをしながら歩いているとポツポツと顔に雨が当たって、チカチカと赤に変わりそうな横断歩道を渡ろうとすれば左手首を掴まれてビックリして振り返る
「三ツ谷……」
「濡れるし、危ねーから送る」
そう言った三ツ谷はグイッと手首を引き私を傘に入れると手首を掴んでいた手を1度離してから、私の左手を優しく握りしめて歩き出した。繋がれた手を見つめてまだ少し混乱する頭で歩き出す
手が熱いし、汗かいてないかなと心配で少し恥ずかしい
三ツ谷の斜め後ろを歩いていると何も言わない三ツ谷に何だか色々と良く分からないなと少し腹が立ってきた。背中を見つめながら歩いていると、腹減らねぇ?と言われたので腹ペコと返すとフッと笑った三ツ谷はすげー美味いもん奢ってやるよと言って進路を変えた
どうせ牛丼屋だろうと思っていた私の目の前に現れたのは普通のアパートだった。こっち来てと言われて手を引かれるままに階段を上がれば三ツ谷はポケットから取り出した鍵で扉を開けた
「……ここ、何屋??」
「何屋に見える?」
「三ツ谷の家に見える」
「当たり。雪那って和食と洋食、中華、イタリアンどれが好き?」
「……今の気分はパスタが食べたいかな」
「んじゃ、パスタな」
あ、うん。と頷いた私をリビングのソファに座らせてからエプロンを巻いてキッチンに立った三ツ谷を口を開けて見つめていると、その顔で見んなと少し笑われて私も少しだけ笑った
何だかまだ状況についていけなかったけど、腹ペコだしいい匂いがするしテレビを付けさせて貰ってせっかくなのでのんびり寛ぐ事にした。少し経つと、珈琲今入れっからと言われたのでお手洗いを借りると伝えてトイレに入ろうとするとミシンが置いてある部屋のドアが開けっ放しになっていて、テレビでたまに見る暴走族の特攻服がハンガーに綺麗に掛けてあった
三ツ谷の部屋か、そう思って少しミシンを見せて貰おうと思い部屋に入る。何歩か部屋に入った所でミシンの横にあった机に置かれていたのは、ずっと貴方が好きでしたと書いてあるピンク色の便箋
私が書いた物だった。懐かしくて便箋を手に取ると、所々に水が落ちた様な跡があった
出来たぞーと大きな声がして、ビクリとして便箋は机に落ちてしまった。そのまま急いでトイレを済ませてからリビングに向かうとテーブルの上に並んでいるパスタとスープ、サラダに感動してしまう。
「凄い美味しそうだし見た目も本当に綺麗……私より上手」
「まぁ、食ってみてよ」
そう言って薄く笑った三ツ谷に頂きますと言って早々と席についてからパスタを口に入れて咀嚼する
明太子とクリームが絡み合って優しい味わいに頬っぺが落ちそうだ。美味しいし幸せと呟くと、うちの妹みたいに大袈裟だとケラケラ笑う三ツ谷は何だかさっきのカラオケの時とは別人に見えた
ご飯を食べ終わり、食器は私が洗いますと言って手を上げると宜しくと素直に言ってくれたので三ツ谷の分の食器も持ってキッチンの流し場でお皿を洗っていると、ふと三ツ谷が私の後ろに立ったのが分かり、振り返ろうと首を向けようとした瞬間に後ろから回ってきた手が私のお腹の前で優しく組まれた
「えっ?」
間抜けな声が口から出てしまい、水が流れる音で我に返り皿を洗う手を再開すると首に埋まった三ツ谷の顔に手がまた止まってしまう。水がもったいないので流しを止めて呆然としていると、洗わねぇの?と耳元で言われて洗うけど……と呟いてからお皿を洗った
洗っている最中も洗い終わってからも私を後ろから抱き締めて離れない三ツ谷に段々と恥ずかしい気持ちが落ち着いてきたので、何してるの?と口を開いた
「……いや、お前が前に場地達が家でイチャイチャしてて羨ましいって言ってたからさ」
「……いや、まぁ。羨ましいけどさ。何か違くない?」
じゃあ、これは?と言って向きを変えられると、ぎゅっと抱かれ三ツ谷の胸に顔が埋もれた
「……そうゆう事じゃなくて」
何がしたいのと口を開こうとすると口は塞がれていて見開いた目の前には長い睫毛が揺れている。優しく唇を舐めていた舌唇の中に入って来て絡み合う様に深く口付けされ、頭をガッチリと抑えた手と太腿の間に滑り込んで来た足が逃がさないと言わんばかりに感じた
何分そうしていたのか分からない。長くも短くも感じて三ツ谷の唇が離れると痛いくらいに抱き締められて何だか段々と可愛くなってきてしまって、ぽんぽんと背中を軽く叩いた
首筋に埋めてきた唇が優しくちゅっと音をたてる
「……お前の下駄箱に手紙入れたの俺」
「……私も三ツ谷の鞄に手紙入れた」
でも、三ツ谷が入れたのは知らなかったと私が呟けば中2からずっと好きだったよと言った声はいつもの三ツ谷の声じゃないみたいだった。中1からチームに入って、彼女は作らないと決めていたと言った三ツ谷の表情は見えない
「……中2頃からお前が諦めずに真っ直ぐにいつも俺だけを見て好きでいてくれてて段々と俺の気持ちも変わってきた。でもよ、中2の中頃になった辺りからチーム同士の抗争もあって彼女が狙われたりする事もあったから。解散するまではお前に気持ちを伝えるのは辞めようと思ってた」
「……そんな危ない事してたの知らなかったよ。たまに怪我酷い時あったもんね」
「……場地や千冬にはお前が守ってやれば良いじゃんて言われたけど、一緒に居れねー時だってあるし。女の子が暴行何て、もしされたら守れなかったじゃ済まねえと思ってさ」
「うん、確かにそう……かも」
「……諦めてくれた方がお互い辛くないのに、諦めて欲しくなくてずっと俺だけを見てて欲しくてお前に沢山話しかけて意地悪な事も言った。……俺はお前に触れられないのに触れてる男が許せなかった」
「……三ツ谷」
「……俺のチームの事何てお前に関係無いのにずっと苦しめてきた。……ごめんな」
そう言って私の瞳を見つめた三ツ谷は少しだけ目が潤んでるように見えた。三ツ谷の部屋にあった私の手紙に落ちていた水の跡はきっと涙だったのかなと思うと、三ツ谷が一人で私の手紙を読んで泣いている姿を想像しちゃって何だか涙が出てきた
「……そっか、辛かったんだね。一緒だね」
ぎゅっと三ツ谷の背を抱き締めると、ありがとうなと言ってキツく抱き締めてくれる
「……あのさ、今更なんだけど雪那って俺の事まだ好き?」
「……好きじゃないよ」
そう言った途端に固まった三ツ谷を見て私はケラケラと笑う。まじかよと本気でショックを受けている三ツ谷に今までの意地悪のお返しと言ってニシシと笑った
三ツ谷が、何かを言おうとしたその瞬間に優しく唇にちゅっと触れるだけの口付けをすると、三ツ谷は目を見開いてから今まで見た中で1番嬉しそうに笑った
「……後何だっけ?にゃんにゃんだっけ?ソファって言ってたけどベットで良い?」
「……良く覚えてるね。今言われると恥ずかしいわ」
「あの時に俺が言った台詞覚えてる?」
「……いつか覚えてろよとか言ってた」
「今日は帰さねぇからな」
「……望む所だ」
言ったなと笑った三ツ谷は私をお姫様抱っこすると寝室に向かって歩き出す。ずっとこの時を待ってたと言って口付けしてきた三ツ谷に私もと言いながら彼の伸びた髪を優しく撫でた
