歩くような速さで
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耳鳴りがして…それから突然の事だった
顎を掴まれて耳元で、ハウリングがかかった様な音と聞いてんのかよ……と懐かしい愛しい声がする
その声にビクリとして反射的に目を開けると、そこには髪が短くて若返った隆が怖い形相をしながら私を睨みつけていた
「お前、さっきから何で黙ってんの?あのヤローがお前ん家に泊まったって言ってた事否定しねーのかよ」
何を言われてるのか内容が良く分からない。そんな形相をしているのに、掴まれている顎は痛くは無くて、怒鳴っているのは何度見ても中学生の頃の隆。まだ状況が良くわからないけれどこれは夢か……
でもそんな事は今はどうでも良くて、怒鳴る彼を見ていたら生きてるって嬉しくて気づいたら私は隆の胸に飛び込んで声を出して泣いていた
離せやコラ、浮気したか聞いてんだろと巻舌だった隆も私の尋常じゃない泣き方に最後の方はアタフタとしだして、ヨシヨシと私を撫でながらあやし出し俺が悪かったまで言って来た
涙がおさまっても、何も言いたくなくて今は話もしたくなくてダンマリな私の手を引いてくれて神社の階段下から上に上がりベンチに座らされた。そして、ただひたすらに隆の腕にしがみついて放心していた。少しづつ落ち着いてきて辺りを見渡せば確かここは隆達が集会に使っていた神社だった。何かあったのか特攻服を着ている人達は皆バタバタとせわしなく感じる
そういえば、私はこの光景を見た事は無かった筈だ。何故なら神社の階段下で顎を掴まれて怒鳴られた時に、頭にきて隆の頬を思いきり殴った。それを見ていたマイキーのゲラゲラと楽しそうな笑い声を背中で聞きながら帰宅した覚えがある。そして、後日謝ってきた隆に私は信用されてないのが良く分かった。今は寄りは戻せないと言った
「落ち着いたか??」
頭上から降ってきた声に顔を上げると、懐かしい顔に思わずドラちゃん……と口が開いてしまった
「……その可愛い呼び方やめろや雪那 」
「……ドラケン、アイツはなんつってた?」
「ん?あぁ。浮気はやっぱり嘘だってよ。前に単車の金の件で三ツ谷に殴られた事を根に持ってたらしいぜ。…あれは彼奴が悪ぃのにな」
「…やっぱり腹立つ…殺してくるわ」
「三ツ谷やめろよ、もういいだろ」
「…… 雪那を、女を襲おうとした事だけは許さねえ」
「て、三ツ谷なら言うと思ったから、マイキーが代わりに今シメてる。女襲おうとしたからな、相当ご立腹だし破門だ。雪那も今居るしお前から離れねーしもういいだろ」
「……」
2人の会話をまるで第三者の様に聞いていた私は、ドラちゃんが頭を優しくポンポンと叩いてくる感覚に我に返る。やはり夢じゃない……匂いも空気も感覚もしっかり感じる
それより何だろう、今ここにいて今感じるこの込み上げてくる怒りは
「ねぇ、隆」
「ん?」
「私、言ったよね?泊めてないしそんな奴知らないし、ホウキで追い返したって。確かに1回言ったよね」
「……あ、ああ」
「……何で私さっき怒鳴られたの?」
「あれは、……信じてねーとかじゃなくて。あいつがお前ん家に本当に泊まってたらと思ったらすげー腹立ってきて……」
「信じてくれてないじゃん」
ギロっと睨むと明らかに何も言えなくなった隆は私から目を逸らし口を噤んだ
「まぁ雪那。気持ちは分かるけどな、三ツ谷がこんなにお前に怒った事あるか?」
「……無いね」
「……信用してるとかしてないとかじゃなく、お前にどんな形であれ触れた相手がいると思ったら頭に血が登っちまったんだよ。信用してたって、惚れた女のそんな話聞いたら冷静な三ツ谷もこうなるって事だ。許してやってくれ」
その話を聞いているとストンと腑に落ちる物を感じた
「……ドラちゃんの話聞いたら、何だか納得出来た」
「お、物分り良くて助かるぜ。なぁ三ツ谷」
「……あぁ。悪ぃ」
「……うん、これからずっと一生私の傍にいてくれたら許してあげる」
そう言って隆の手を強く握る
生気が無く虚ろな私の瞳は隆を見つめていた。その私の様子に怪訝な顔をした隆はドラちゃんを1度ちらりと見たがドラちゃんは何も言わなかった。2人が目を合わせたのが分かったけれど、おかしな奴だと思われても今は良いと思った。
只々隆の冷たくなった手を握り、穴の空いた額と向き合い絶望を感じていた時から私にとっては1時間も経っていないのだ
「雪那、何かあったのか?あの馬鹿に何か言われたのか??」
「……ううん。今少し混乱しててさ」
心配そうな2人に口元だけ笑みを浮かべると2人は納得してなさそうに頷いたが私もそれ以上は言わなかった。隆の顔を見ていると、また溢れて来てしまう涙を手で拭いながら隣にドラちゃんが居る事も忘れて彼の胸に抱き着いて擦り寄る。心臓の音を確認するとまた出てきてしまう涙が隆の特攻服を濡らした
「…お、おぃ………お前震えてんじゃん」
「……平気。もう大丈夫、怖くない」
怖くないと言った私の背中にゆっくりと手が回されてギュッと力がこもった。隆が生きてるって実感をしっかり感じて安心してほっとしていると、隆のやっぱり何かされたんだなと怒りが滲み出るような声にハッとする
「ち、違うよ。ちょっと色々あって弱ってるだけだから。あの男の子は関係無いの」
「……かばうのか?」
「違うってば。……隆信じてよ」
「……三ツ谷、信じてやれよ」
「……悪ぃ。……分かった」
これから集会ならそろそろ帰ると言って涙を拭いてから立ち上がると、肩をがしりと組まれてそちらを振り返ると幼い顔立ちのマイキーが居た。ドラちゃんもそうだけど、2人と会話をするのは凄く凄く久しぶりで少しだけ嬉しくなった
「帰んの?お菓子ちょーだい」
「……今日あるかな、ちょっと待ってね」
いつもあげてたなと何だか懐かしくなって、ポケットを探る。棒付きの駄菓子みたいな可愛いパッケージに包まれた飴が出て来て、綺麗なのを確認するとマイキーに渡した。ひゃほーと喜ぶ姿は相変わらずで、彼等は隆の友達だから私からすると可愛く見えるけど、そうじゃなかったらドラちゃんもマイキーも林も可愛くないんだろうなぁ。何て思いながら渇いた笑いで飴のパッケージを破り捨てるマイキーを見ていた
急に腕を引かれ、振り返ると隆は垂れた目を私に向ける
「送る」
「今日は一人で帰るよ、集会行ってきな。大丈夫だからさ」
「駄目だ。あんな事の後だぞ。……危ねぇよ」
まだ少し機嫌が悪い隆を見ているとふと、霊安室で私の肩を抱いたルナとマナの顔が浮かんで会いたくなった
「……ねぇ、お母さんて今日仕事??」
「ん?あぁ」
「ルナとマナ、見てても大丈夫?」
「…急にどした?……まぁ、助かるけど」
「平気なら今から2人に会いに行くね。……何かあったら必ず電話するから、…めそめそしてごめんね」
目を見て真剣にそう言えば、少し怪訝な顔をした隆は分かったと頷いてくれた。
首を傾げるドラちゃんとマイキーに2人共ありがとうと言って手を振ると、振り返らずに階段を降りてまずは自宅に歩き出した
コンビニを過ぎて、神社から10分程度で自宅に着いた私はポケットに入っていた鍵で家に入る
匂いが違う。お母さんの香水の香りで家中が充たされている。一年に1回のペース、早い時は3ヶ月で男が変わるお母さんは家に居る事があまりない
かと言って仲が悪い訳でも無く、干渉されるよりマシかな何て思っている私だから仲良く出来るのかもしれない。テーブルに置いてある5000円と、ご飯代3日分と書かれたメモを手に取る。そういえばこの時のお母さんの彼氏さんはお金持ちで優しいからいつも機嫌が良くて多めにくれていたなとありがたくなった
5000円を財布にしまい、キッチンにあるホットケーキMIXの粉と適当に具やサラダになる物を大きな鞄にしまう。今日そう言えば何曜日だっけ?とポケットにしまってある携帯を取り出そうと手を入れると出てきたのは25歳の私が使っていた携帯と15歳の私の携帯2つだった
直ぐに両方チェックしたが、25歳の方は使えなかった。電波も入らないし、メールや電話の機能も使えない。15歳の方は土曜日19時を表示していた
土曜日なら明日は学校休みだな、何て考えながら制服から動きやすい服装に着替える事にした。クローゼットを覗けば微妙な洋服が並んでいて、文句は言えないけれどセンスが無いと言うか。この歳でこの服着れないわと思ったが鏡に写る自分を見たらそう言えば15歳だったんだ。何て普通に思った
何か未だに不思議な感じがするし、まだ頭がごちゃごちゃしていて内心心配でソワソワしている気がする。
無難な黒のロングキャミソールワンピースを持って浴室に入り、シャワーを浴びてからナチュラルにメイクだけすればもう時間は19時半を過ぎていて。面倒なのでサンダルを引っ掛けて鍵をかけて家を出てると隆の住むアパートに早足で向かった
取り壊された筈の家があったり、潰れた店がまだやっていたりして中々楽しい散歩をしながら古びたアパートの階段を登ると靴の音がやけに響いて何だか懐かしくなった。綺麗とはまるで言えないが、今見ると中々味があるアパートだな何て思いながらインターフォンを押した
はーい。と直ぐに可愛い声が聞こえてきて、雪那だよーと扉に向かって話しかける。 雪那ちゃんだーと高めの声が返ってきて、扉が開くと小さな2人の姿が可愛くて新鮮で、思わず屈んで2人を抱き締めた。キャーと笑顔で可愛く笑う2人に私は自然と笑顔になる
「2人共ご飯食べた?」
「ルナ食べたくなーい」
「あれ?何で?」
「マナは食べたよ」
「ルナ、もしかしてピーマン入ってたのかな??」
ギクリとしたルナの様子に優しく頭を撫でて今からクレープ作るぞと2人に笑いかけると、2人の目がキラキラと輝いてから食べるーと万歳していて、何だか私は嬉しくて笑ってしまった。三ツ谷家の台所に立った事は数回しか無いけれど大体どこに何があるかは覚えていて、分からない事はルナに聞きながらマナを抱っこして3人でクレープを作った
ご飯を食べてから3人でお人形さん遊びをしていると、その時には喧嘩の事何てもう忘れていて。3人で遊んでいる姿を写真に撮って隆に送ると、直ぐに返ってきた返信にはありがとな。と一言だけ入っていた
3人共可愛いとかないのー?と返信すると、はいはい、可愛い可愛いと適当な返事しか返って来なかったので唇を尖らせながらそのまま携帯を閉じた
トントントンと小さくブーツの足音がして私はソファから起き上がった。膝で寝ている2人を起こさないように上半身だけ起こすと、玄関の扉が静かに開いて隆がリビングに入ってきた
おかえりと小さく呟いた私の膝で眠る2人を見て穏やかな笑みを浮かべた隆は悪かったなと小さい声で言ってから私の頭を撫でてからルナとマナの頭を撫でた
「ちょっと布団に寝かしてくるね」
「ルナ貸せ」
寝ているルナの両脇にソッと手を入れて持ち上げると慣れた手つきで抱き直し寝室に運ぶ隆の後ろにマナを抱いて続く。2人を布団に寝かせると、風呂入ってくるわと言った隆はそのまま脱衣場に入って行った
隆がお風呂に入っている間に、先程多めに焼いておいたクレープにツナと卵と野菜を挟み、それを2人分作り簡単な残り野菜のコンソメスープも作ったので弱火で温め直していると、お風呂から上がった隆は私を見てギョッとした顔をした
「……何その顔、どしたの?」
「お前、それどしたの?」
「ん?クレープとスープ作っといたけど食べる?」
「……作ったの?」
「まぁ、うん。」
「いや、お前料理出来ないじゃん」
シーンとした空気になり、上半身裸にスウェットの隆は不思議な物を見るような目でクレープを見てから手に取り大きな口で齧りつく。咀嚼しながら目を見開き美味いと笑った顔が可愛くて少しだけ私も笑ってしまった。カップに注いで渡したスープを啜りながら、本当にお前が作ったの?と眉を寄せた隆に、たまたま上手く出来たなーと作り笑いをすれば不思議そうに首を傾げていた
そういえば15歳の時は買い食いやカップラーメン、コンビニが当たり前だった気がする。1度ゆで卵が食べたくて電子レンジにそのまま卵を入れ大爆発を起こしたと言った私に珍しく隆はヒーヒーと腹を抱えて笑っていたのを思い出した
これ、おばさんの分ね。と言って包んだクレープにラップをすると隆はありがとなと言って私の髪を優しく撫でた。今日は色々あって疲れたな何て考えながらクレープを美味しそうに頬張る隆を見ていると、元の時代に戻りたいけど生きている隆が居ないなら戻りたくなくて。もうこのままでもいいかな何て思いながらソファにゴロリと横になった
「ふぁ、眠くなって来ちゃった」
「……食ったら送る」
「あ、うん。……ありがと」
お礼を言ってふと、考える。目が覚めたらもとの時代に帰らされてる何て事にならないだろうか
眠って起きたらやっぱりこれは夢で、あの霊安室にいるのでは無いだろうか……。そう考えた時全身に鳥肌が立った
「……ねぇ、隆」
「……ん?」
目が合った私に機嫌が良さそうな隆はスープを飲みながら何だよと言って軽く微笑む
「今日さ、一緒に寝ても良い?」
その瞬間に盛大に口から発射されたスープは私の顔面とワンピースをびちょびちょに濡らす。目の中に入ったスープが痛くてグワァーっと色気の無い声を出しながら目をぱちぱちさせている私を見て、隆はルナとマナが寝ているのも忘れているのか大笑いしだした
「隆、しー」
「悪ぃ」
「起きちゃうから静かに。壁も薄いんだから怒られるよ」
「……てかさ、今日お前変じゃね?」
「……そう?」
「アイツに何か言われたなら言えよ」
「嫌、むしろあの人とは何話したかも覚えても無い」
「……ふーん。」
「とゆうか、あの人誰?結局何だったの?」
「……あぁ、俺が前にシメたのを逆恨みしてたみたいでさ。お前を襲ったら失敗して挙句の果てに俺にお前と関係持ったとか嘘ついてきて、殴ろうとしたらドラケンに止められた感じ」
「凄い阿呆じゃん」
「……阿呆だから心配した。……色々悪かったな。信用してねー訳じゃねーよ。ただ、最近お前冷たかったから。本当はちょっとそっちのが心配だった」
「……冷たかった?」
「出掛けようって誘っても断られるし、キスしようとすると嫌がるし」
「……そんな事あったっけ?」
「あったから言ってんだろ。2人でこうやってゆっくり話すのも久しぶりだしよ。そしたらいきなり今日泣くわ料理するわ家にいるわ、寝よーだ言うしよ」
「……確かに、それなら変な奴だね」
「おめぇだろーが」
「ふふっ、何かそんな言葉使いも可愛く感じる」
「……」
ポカンと口を開けたまま呆れた様に私を見つめる隆に、昔は口が悪いのが嫌だったけど何か今は可愛いなぁ何て思いながら見つめていると、変な奴。と言って立ち上がった隆は大きめのタオルを私に渡してくる
「何これ」
「顔洗って服脱げ。洗濯するから」
「あ、そっか。スープだらけだった」
ごめんごめんと言いながらワンピースを脱ごうと肩紐を下ろすと、隆は呆れ顔で馬鹿かと言った
不思議そうな顔をした私の手を引いた隆は脱衣所を開けて私を押し込み、やっぱり今の時間は洗濯機が回せないから手洗いしろと言うと廊下に消えて行ってしまう
さっきの会話で気になる事があった。隆は私が冷たかったって言っていた。その事について色々思い出そうとしたり、心当たりを探したが全く検討もつかない
そんな事を考えながらシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かしているとドアの隙間からtシャツを渡してきてくれたのでありがたく着る事にした
スープで濡れたブラジャーとワンピースをシャワーのお湯で流し、キツく絞ってからベランダに出て物干し竿に干すと凄い勢いで自室から出てきた隆がワンピースと下着をひったくって自室に戻っていく
テケテケと後ろを付いて行くと、自室のカーテンレールに引っ掛けた洗濯干しに下着とワンピースを干してくれた
「ごめんごめん、もう夜中だもんね」
「……そうゆう問題でもねーけどな」
いつもの呆れ顔で疲れた様に肩を落とした隆と一緒に歯磨きをしてから自然に布団に入ると、ドアの前で立ち止まっている隆に何やってんの?と声をかける
その私の声に、なんでもねーと一言だけ呟いてから布団に入った彼の腕に躊躇無く抱き着いて目を瞑った
本当は起きたら霊安室にいるのが怖い
真っ白な隆を見るのが怖かった。でも、誰にもそんな事言えなくてこの抱き締めている体温に今はすがり付きたくて仕方なかった
「……なぁ、雪那。やっぱり何かあっただろ」
こっち向けと優しく頬に手を置かれ、何て言っていいのか分からずにその優しい手に重ねる様に手を置いた
「……ねぇ隆」
「ん?」
「キスしていい?」
「……ああ」
愛しいな何て思いが込み上げて来て、坊主頭の隆の髪を撫でながら唇に口付ける。下唇を優しく舐め口の中に入れた舌を絡ませて幸せな気持ちに浸る
暖かくて、生きているって実感すると安堵からか目に涙が浮かんできてしまう
すると隆の手が私の手を掴み、反対の手で肩を押され枕にストンと頭が落ちた。目を開ければ私の上に被さるように乗った隆の目は座っていた
「……どしたの?」
「お前、本当に雪那か?」
「……何で?」
「キスの仕方が全然違う」
「……」
「……何だよ」
「……本当に好きだよって気持ちを込めてしただけだよ。上手いとか下手とかじゃなくて。ただ本当に触れたいって思っただけ」
「……はァ。んな事言われたらもう俺も我慢しねーよ」
「……うん。……我慢、しなくていい」
「……ああ」
目を瞑ると、左手がギュッと1度握られて唇に柔らかい温かな唇が触れる。唇から入ってきた舌は優しく舌を絡め取り控えめなやらしい水音が自分の耳に届く
シャツの中に入ってきた手が腹を撫でてから下着をしていない膨らみを優しく触る。身体の感覚が全然ちがくて少しだけ戸惑ってしまった。この間、25歳の隆とした時は胸を舐められただけでも顔が熱くなる程気持ちが良くて、自分で濡れるのが分かるくらいだったのに……この15歳の身体はまだそれを知らないみたいだ。唇から離れ、シャツを捲った隆は優しく胸の膨らみから突起を舐め転がした
気持ちいいとゆうよりは少しくすぐったい。ふふっと笑ってしまった私に隆は、ん?と言って顔を上げた
「くすぐったくて」
「気持ち良くはねーんだ」
「まだそんなに身体は成熟してないよ。多分、数をこなさないと難しいかも」
「……そうゆうもんか」
「触れ合う事に意味があるんだから良いじゃん。私は満足だよ」
そう言って額にキスを落とすと、隆はそうだなと言って優しく微笑み頷いた。胸にキスをされながら内股を撫でていた手は下着の中に入り突起を優しく撫でられる。痺れる様な不思議な感覚に、んんと小さく喘いでしまうと痛かったら言えよと髪を撫でられて、こくりと頷いた
時間をかけて慣らしたからか、指がすんなりと入る様になる頃には不思議と少しだけ気持ちが良い。ゆるゆると中と突起を擦られる度に口からイヤらしい声が出てしまう
「……ァァァ、たか、しも駄目」
「…気持ち良くなってきた?…かわい」
気持ちが良い所ばかり撫でられていると強い快感を1度感じて彼の首に唇を埋め、なるべく声を出さない様に口を噤む。そんな私を見つめ、髪を撫でてフッと微笑んだ隆と25歳の隆が重なって見えて何だか切なくて嬉しくて、彼の首筋に舌を這わせながら何度も口付けた
「……ん」
「……ん?……隆も気持ちいい?」
「……あぁ。お前からこうゆう愛情表現されんの初めてかも」
「……そうかもね」
「していいか?」と聞かれ、我慢が出来ない様な顔をしている彼が可愛くて頷くとベッドサイドの棚に置いてある避妊具を着けた隆はゆっくりと私の上に被さってくる。ミチミチと硬い質量の物が自分の中に入ってきて息を抜いているとスルッと入ってくる様な感じを覚えて浅い深呼吸を繰り返す
奥まで入ったのが分かると、何故か脱力してしまいフゥーと身体の力が一気に抜けた。同時に唇に舌が入って来たので優しく迎え入れ、目を開ければ優しい目をした隆が私を見つめていた
「……」
「……ん?」
「痛くねーか?」
「……うん、大丈夫」
「悪ぃ、ちょっと動いて良い?」
「……うん」
1度浅く引き抜かれ、深く入ってきたそれが奥を突く度に鈍い痛みに変わる。でも……。隆の顔を見ているだけで段々とその痛みが無くなっていくのが分かった
あの時、25歳の自分が隆と体を重ねた時に思った事
どうしてあの時別れてしまったんだろう
別れていなければ、彼の初めても私の物でずっと傍にいれば隆は死ななかったかもしれないのに
「……?」
「ん?少し痛く、なくなってきた」
「……痛かったらやめるから言えよ」
「大丈夫……私、本当はずっとこうしたかったんだ」
「…俺も… 雪那すげぇー好き 」
「……うん。私も」
首筋をキツく吸われながら奥を突かれる。ジンジンとした痛みが鈍い気持ちよさに変わってきた頃
隆が死ぬ前に思い描いた夢が叶った事が嬉しくて私は静かに、バレない様に涙を流した
朝日の陽射しと鳥の鳴き声で目を覚ます
目の前に居たのは髪が短い隆で、まだ深く眠っている
安心して息を吐いた
2人共服を着ているのは何故だろうと思ったけれど、隆が着せてくれたんだろうなとすぐに分かった。最後にシャワーも浴びず服も着ずに寝てしまった事を少し反省してスヤスヤと眠る彼の腕にしがみついた
次に目を覚ました時には隆は居なくて、ルナとマナが私の横でスヤスヤと眠っていた。何で?と思いながら布団を掛けて2人の髪を優しく撫でる
携帯を見れば昼の12時。やっちまったと思い、部屋を出る前にブラジャーをしてワンピースに着替えて鞄から化粧道具を取り出して脱衣場に向かう
顔を洗い歯磨きをして眉毛を書いていると、玄関が開く音がして直ぐに脱衣場のドアが開きジーンズにシャツにベストの外着を着た隆が私を見下ろしていた
「はよ」
「おはよー寝坊しちゃったよ」
「ルナとマナは?」
「隆の部屋で寝てる」
「ったく、あいつら自分の部屋で昼寝しろって言ったのによー。」
「皆ご飯食べたの?」
「朝は食った」
「ルナとマナも食べた?」
「食ってから寝たっぽい」
「おばさんもう仕事行ったの?」
「あぁ。最近忙しいらしい。」
「大変だね、そっか。隆は今日どっか出掛けんの?」
「日曜は子守りだろ」
「付き合うよ」
そう言って彼の頬に手を添え背伸びしてから優しく口付けると、隆は少しだけ困った様な顔をした
「…あれ?…嫌だった?」
「嫌、その逆。慣れねーだけ」
「……何かごめんね。今は言えないけど、色々あったんだよね」
「……言えないなら聞かねーけど」
「……心配させてごめんね」
「…そういえば…体平気か?」
「全然大丈夫。2人が起きたら公園でも行こうか」
「たまには二人で出掛けてーよな、あ、……良い事思いついた」
ニシシと悪い笑みを浮かべた隆は携帯を手に取ると、どこかに電話を掛けだした。今のうちに化粧を済ませてしまおうと、ラインを引いてアイシャドウをのせてとテキパキ手を動かしているといつの間にか横に隆は居なかった
化粧と髪のセットを軽く済ませて、リビングに入ると
ソファーにゴロリと横になる隆は携帯をいじりながら私にテーブルの上にある物食いなと言ってくる
ありがとうと言って、家から持ってきた鞄を漁りインスタント珈琲を取り出してお湯を沸かす。粉に優しくお湯をかけて少し蒸らしていると、良い香りが部屋中に広がった
「何飲んでんの?」
「珈琲いる?もう1つあるよ」
「……お前珈琲飲めないじゃん」
「……」
今は好きなのと、言ってもおかしい気がした。最近好きになったんだと笑いながらお湯を少しづつ入れる。ふーん、としか言わなかった隆はテーブルの上にあった紙を持ってきてそれを私に渡してくる、珈琲を啜りながらその紙を見ると綺麗な字が並んでいた
雪那ちゃんへ
スープとクレープ凄い美味しかった、ありがとう
いつもルナやマナにまで良くしてくれてありがとうね
これからも隆をお願いしますと丁寧に書かれてあった。ふとテーブルを見ると、紙が置いてあった場所には可愛らしいパンやドーナッツが並んでいた。
「隆はもう食べたの?」
「あぁ」
「じゃあ頂いちゃお」
ホッコリとした気持ちでパンを口に入れる。優しい味がして思わず笑顔になった。それから直ぐに隆の幼馴染兄弟が家にきてくれて快くルナとマナを預かってくれる事になり、私達は久しぶりに二人で出掛ける事が出来た
歌舞伎町を歩いていると、ショーウィンドウに写る自分に違和感を感じた。髪の染め方は雑だしアクセサリーもプチプラで洋服も無難でお洒落さがまるで無い。まあ中学生だしプチプラでも仕方が無いっちゃ無いのだが、隣を歩く隆は全身お洒落で何だか自分で凄くモヤモヤしてしまった。それに、当然の様に25歳の自分と比べてしまっているから不満になるのも分かるけれどやっぱり隆の前では綺麗でいたいなぁと思った
「どした?」
「何か自分の容姿に不満」
「……急になんだよ、……服?」
「うーん。服も髪の色もメイクもアクセサリーも全部」
「なんだよ急に。買えるものなら買ってやるからさ」
「……お金も自分で稼ぎたいなぁ。センスも磨かないとな。隆の隣にいるならやっぱり可愛くいたいし」
「……」
「どしたの?」
「……昨日からお前が素直過ぎて可愛くて怖ぇ」
「確かに昔の私は素直じゃ無かったかも。可愛くなかったな」
「昔って何だよ」
「……何でもない。何かさ、大事な人と居るなら素直でいて沢山気持ちを伝えたくなったんだ。だって……いつ失うか分からないじゃん」
「……いつ別れるか分かんないって事?」
「……ごめん、違うよ」
大好きだよ、だから失うのが怖くなったって事。と言って隆の腕に顔を寄せて手を握ると街中なのに珍しく額に口付けしてくれた隆に私は微笑んだ
それから2人で色々なお店を見たり、マックでオヤツを食べたりして中学生らしい可愛いデートにほっこりしている自分がいた。飲食店から出てその店の前で次はどこ行こうか何て話をしているとグイっと急に手を思い切り引かれて転びそうになる。頭を上げると目の前には隆の背中があり、何人かの男達に囲まれているのが分かって、またか。と溜息をついた
「三ツ谷だな」
「あぁ。」
「この間、お前ん所の2番隊にうちのがやられてな」
「……知らねーよ。お前らどこのやつ?」
25歳の私から見ると、何て下らないんだろうと思ってしまう今日この頃。今忙しいんでとか言って隆を連れて行きたい衝動にかられるが15歳の彼の手前何も言わない事にした。
「雪那、ちょっとあっち行ってろ。危ねーから」
「お姉ちゃんはこっちにおいでー可愛がってあげますよ」
「てめぇ」
安っぽい挑発にゲンナリとしてから、言われた通りに端に寄って距離を取った。それから喧嘩が始まって、それを何故か映画のワンシーンみたいな感じで見ている自分が居た。タイマンだとか言ってた癖に、隆に負けそうになっている男を助けようとしているのか、仲間の細身の男が隆の背後に回り近くにあったゴミ箱を手に持った。卑怯な手口に頭にきて、その男の背後に走り寄ってから勢い良く彼が持つゴミ箱を掴んだ
「何しやがんだてめぇ、……女?」
「それは卑怯でしょ」
うるせぇなと言いながらゴミ箱を凄い勢いでひったくられると思った瞬間に手を離してその男の鳩尾をなるべく強く押した。バターンとゴミと一緒に倒れた男は真っ赤な顔をして立ち上がり拳を振り上げて私に向かってくる
倒れた時の音で気付いたのか、私の名前を呼びながら珍しく焦った表情で隆がこちらに向かって走ってきていた
何故かそれら全部、周りの風景全てをスローモーションで見ている自分がいた
怖くもなく、ただ映画の様に。
振りあがった手がゆっくりと降りてきて、瞬間に避けなくちゃと思い屈んで避ける。目の前にある男の股間に思いっ切り右手でパンチを繰り出すと気付いた時には目の前の男は白目を向いて倒れていた
「あ、……ご、ごめんなさい」
咄嗟に口から出たのはその言葉。勿論彼には届いてい無い。怒り狂った隆が女狙いやがってと言って失神している男を持ち上げようとして、何故かタイマンをしていた男に止められていた
「おい、三ツ谷。そいつもう意識ねーから」
「関係ねぇ、人の女狙いやがって」
4人係で羽交い締めにされる隆を見ながら、何かさっきのスロー感は本当に変だったなと首を傾げていると
隆と喧嘩していた図体のデカイ男にうちのが卑怯な真似してすまんと謝られて、私こそすみませんと謝った
「いてててて」
「我慢我慢」
我が家に帰ってきて、瞼と口が切れた部分を消毒する
怪我が余り酷く無くて何よりだけど、暴走族って本当に大変だなぁ何て思いを顔には出さずに傷テープを貼り付けた
「今日ごめんな、危ない目に合わせた」
お腹に手を回してきた隆に、よしよしと言って頭を優しく撫でる。子供扱いされているのが良く分かるのか、少しだけムスッとしていたけど私の胸に顔を埋めて力強く抱き締めてくる隆の頭を優しく撫でていた
「…私は…大丈夫だけど、色々大変だね」
「何が?」
「うーん。私にはあんまり分からないけど、隊長とかだとその隊の人がやった事も自分の責任になる事とかあるみたいだし」
はい、終わりと髪を撫でた私にサンキュと言った隆は医療品の片付けをしている私の隣にそのままゴロンと横になる
「……まぁ、それは仕方ねーから」
「……そだね。私も早く下が欲しいなぁ」
「はァ?どうゆう事だよ」
「早く自分のデザインで売れて、会社やって部下とか欲しい」
にししと笑う私に、雪那って物作り好きなんだなと言われこくりと頷く
「隆みたいにミシンは使えないけど、本当は鞄とか服も作ってみたいんだよね。」
「服?……それはまるで興味ねーってこの間言ってたじゃん」
シーンと部屋が静まり返る
お前何言ってんの?みたいな顔で見られて、固まった私はニッコリと笑い隆の唇にチュッとキスをしてからキッチンに逃げる様に向かう
冷蔵庫からスーパーで買ってきた挽肉を出してボールに入れて玉葱を微塵切りしていると、私の後ろで冷蔵庫から麦茶を取り出す隆。目を細めて包丁を見つめていた
「……何?」
「……手捌きが前と違くね?練習したの?」
「う、うん」
「……ふーん。何作ってんの?」
「……ハンバーグ」
「おっしゃあ!」
怪訝な顔から笑顔に変わり、ふぅと内心ホッとする
「1kg買って来たから大体玉葱と豆腐でかさ増しすれば10個は作れるかな」
「……すげーな。卵レンチンする子が短期間にここまで出来んのか」
「あ、うんうん隆の事愛してるからさ。凄い喜んで欲しくて練習したんだよ」
「……へぇ」
「何その、ふーんみたいな目は」
「俺も雪那の事愛してるからさ。愛情表現してもいい?」
フッと口元だけ笑った隆に、目が笑って無くて怖いんだけどと言えば後ろからスカートを捲り太ももを撫でてくる
「……ハンバーグがボロボロになるから今はやめて」
「ちぇっ」
可愛く口を尖らせた隆は後ろから私を抱き締めるとグイッと少し強引にこちらを向かせ唇を重ねてきた
夜までこれで我慢するわと言って、ペロリと唇を舐められる。中学生でもこの男の色気は変わらないんだなぁ何て思いながら私はどーもと言ってハンバーグを捏ねだした
私の横で携帯を取り出した隆の指が画面に触れると、いつの間にか待ち受け画面がこの間送ったルナとマナと3人で撮った写真になっていた。直ぐに写真から目を離して込み上げてくる可愛いなって気持ちを抑えながら半笑いでハンバーグを捏ね続けた
顎を掴まれて耳元で、ハウリングがかかった様な音と聞いてんのかよ……と懐かしい愛しい声がする
その声にビクリとして反射的に目を開けると、そこには髪が短くて若返った隆が怖い形相をしながら私を睨みつけていた
「お前、さっきから何で黙ってんの?あのヤローがお前ん家に泊まったって言ってた事否定しねーのかよ」
何を言われてるのか内容が良く分からない。そんな形相をしているのに、掴まれている顎は痛くは無くて、怒鳴っているのは何度見ても中学生の頃の隆。まだ状況が良くわからないけれどこれは夢か……
でもそんな事は今はどうでも良くて、怒鳴る彼を見ていたら生きてるって嬉しくて気づいたら私は隆の胸に飛び込んで声を出して泣いていた
離せやコラ、浮気したか聞いてんだろと巻舌だった隆も私の尋常じゃない泣き方に最後の方はアタフタとしだして、ヨシヨシと私を撫でながらあやし出し俺が悪かったまで言って来た
涙がおさまっても、何も言いたくなくて今は話もしたくなくてダンマリな私の手を引いてくれて神社の階段下から上に上がりベンチに座らされた。そして、ただひたすらに隆の腕にしがみついて放心していた。少しづつ落ち着いてきて辺りを見渡せば確かここは隆達が集会に使っていた神社だった。何かあったのか特攻服を着ている人達は皆バタバタとせわしなく感じる
そういえば、私はこの光景を見た事は無かった筈だ。何故なら神社の階段下で顎を掴まれて怒鳴られた時に、頭にきて隆の頬を思いきり殴った。それを見ていたマイキーのゲラゲラと楽しそうな笑い声を背中で聞きながら帰宅した覚えがある。そして、後日謝ってきた隆に私は信用されてないのが良く分かった。今は寄りは戻せないと言った
「落ち着いたか??」
頭上から降ってきた声に顔を上げると、懐かしい顔に思わずドラちゃん……と口が開いてしまった
「……その可愛い呼び方やめろや雪那 」
「……ドラケン、アイツはなんつってた?」
「ん?あぁ。浮気はやっぱり嘘だってよ。前に単車の金の件で三ツ谷に殴られた事を根に持ってたらしいぜ。…あれは彼奴が悪ぃのにな」
「…やっぱり腹立つ…殺してくるわ」
「三ツ谷やめろよ、もういいだろ」
「…… 雪那を、女を襲おうとした事だけは許さねえ」
「て、三ツ谷なら言うと思ったから、マイキーが代わりに今シメてる。女襲おうとしたからな、相当ご立腹だし破門だ。雪那も今居るしお前から離れねーしもういいだろ」
「……」
2人の会話をまるで第三者の様に聞いていた私は、ドラちゃんが頭を優しくポンポンと叩いてくる感覚に我に返る。やはり夢じゃない……匂いも空気も感覚もしっかり感じる
それより何だろう、今ここにいて今感じるこの込み上げてくる怒りは
「ねぇ、隆」
「ん?」
「私、言ったよね?泊めてないしそんな奴知らないし、ホウキで追い返したって。確かに1回言ったよね」
「……あ、ああ」
「……何で私さっき怒鳴られたの?」
「あれは、……信じてねーとかじゃなくて。あいつがお前ん家に本当に泊まってたらと思ったらすげー腹立ってきて……」
「信じてくれてないじゃん」
ギロっと睨むと明らかに何も言えなくなった隆は私から目を逸らし口を噤んだ
「まぁ雪那。気持ちは分かるけどな、三ツ谷がこんなにお前に怒った事あるか?」
「……無いね」
「……信用してるとかしてないとかじゃなく、お前にどんな形であれ触れた相手がいると思ったら頭に血が登っちまったんだよ。信用してたって、惚れた女のそんな話聞いたら冷静な三ツ谷もこうなるって事だ。許してやってくれ」
その話を聞いているとストンと腑に落ちる物を感じた
「……ドラちゃんの話聞いたら、何だか納得出来た」
「お、物分り良くて助かるぜ。なぁ三ツ谷」
「……あぁ。悪ぃ」
「……うん、これからずっと一生私の傍にいてくれたら許してあげる」
そう言って隆の手を強く握る
生気が無く虚ろな私の瞳は隆を見つめていた。その私の様子に怪訝な顔をした隆はドラちゃんを1度ちらりと見たがドラちゃんは何も言わなかった。2人が目を合わせたのが分かったけれど、おかしな奴だと思われても今は良いと思った。
只々隆の冷たくなった手を握り、穴の空いた額と向き合い絶望を感じていた時から私にとっては1時間も経っていないのだ
「雪那、何かあったのか?あの馬鹿に何か言われたのか??」
「……ううん。今少し混乱しててさ」
心配そうな2人に口元だけ笑みを浮かべると2人は納得してなさそうに頷いたが私もそれ以上は言わなかった。隆の顔を見ていると、また溢れて来てしまう涙を手で拭いながら隣にドラちゃんが居る事も忘れて彼の胸に抱き着いて擦り寄る。心臓の音を確認するとまた出てきてしまう涙が隆の特攻服を濡らした
「…お、おぃ………お前震えてんじゃん」
「……平気。もう大丈夫、怖くない」
怖くないと言った私の背中にゆっくりと手が回されてギュッと力がこもった。隆が生きてるって実感をしっかり感じて安心してほっとしていると、隆のやっぱり何かされたんだなと怒りが滲み出るような声にハッとする
「ち、違うよ。ちょっと色々あって弱ってるだけだから。あの男の子は関係無いの」
「……かばうのか?」
「違うってば。……隆信じてよ」
「……三ツ谷、信じてやれよ」
「……悪ぃ。……分かった」
これから集会ならそろそろ帰ると言って涙を拭いてから立ち上がると、肩をがしりと組まれてそちらを振り返ると幼い顔立ちのマイキーが居た。ドラちゃんもそうだけど、2人と会話をするのは凄く凄く久しぶりで少しだけ嬉しくなった
「帰んの?お菓子ちょーだい」
「……今日あるかな、ちょっと待ってね」
いつもあげてたなと何だか懐かしくなって、ポケットを探る。棒付きの駄菓子みたいな可愛いパッケージに包まれた飴が出て来て、綺麗なのを確認するとマイキーに渡した。ひゃほーと喜ぶ姿は相変わらずで、彼等は隆の友達だから私からすると可愛く見えるけど、そうじゃなかったらドラちゃんもマイキーも林も可愛くないんだろうなぁ。何て思いながら渇いた笑いで飴のパッケージを破り捨てるマイキーを見ていた
急に腕を引かれ、振り返ると隆は垂れた目を私に向ける
「送る」
「今日は一人で帰るよ、集会行ってきな。大丈夫だからさ」
「駄目だ。あんな事の後だぞ。……危ねぇよ」
まだ少し機嫌が悪い隆を見ているとふと、霊安室で私の肩を抱いたルナとマナの顔が浮かんで会いたくなった
「……ねぇ、お母さんて今日仕事??」
「ん?あぁ」
「ルナとマナ、見てても大丈夫?」
「…急にどした?……まぁ、助かるけど」
「平気なら今から2人に会いに行くね。……何かあったら必ず電話するから、…めそめそしてごめんね」
目を見て真剣にそう言えば、少し怪訝な顔をした隆は分かったと頷いてくれた。
首を傾げるドラちゃんとマイキーに2人共ありがとうと言って手を振ると、振り返らずに階段を降りてまずは自宅に歩き出した
コンビニを過ぎて、神社から10分程度で自宅に着いた私はポケットに入っていた鍵で家に入る
匂いが違う。お母さんの香水の香りで家中が充たされている。一年に1回のペース、早い時は3ヶ月で男が変わるお母さんは家に居る事があまりない
かと言って仲が悪い訳でも無く、干渉されるよりマシかな何て思っている私だから仲良く出来るのかもしれない。テーブルに置いてある5000円と、ご飯代3日分と書かれたメモを手に取る。そういえばこの時のお母さんの彼氏さんはお金持ちで優しいからいつも機嫌が良くて多めにくれていたなとありがたくなった
5000円を財布にしまい、キッチンにあるホットケーキMIXの粉と適当に具やサラダになる物を大きな鞄にしまう。今日そう言えば何曜日だっけ?とポケットにしまってある携帯を取り出そうと手を入れると出てきたのは25歳の私が使っていた携帯と15歳の私の携帯2つだった
直ぐに両方チェックしたが、25歳の方は使えなかった。電波も入らないし、メールや電話の機能も使えない。15歳の方は土曜日19時を表示していた
土曜日なら明日は学校休みだな、何て考えながら制服から動きやすい服装に着替える事にした。クローゼットを覗けば微妙な洋服が並んでいて、文句は言えないけれどセンスが無いと言うか。この歳でこの服着れないわと思ったが鏡に写る自分を見たらそう言えば15歳だったんだ。何て普通に思った
何か未だに不思議な感じがするし、まだ頭がごちゃごちゃしていて内心心配でソワソワしている気がする。
無難な黒のロングキャミソールワンピースを持って浴室に入り、シャワーを浴びてからナチュラルにメイクだけすればもう時間は19時半を過ぎていて。面倒なのでサンダルを引っ掛けて鍵をかけて家を出てると隆の住むアパートに早足で向かった
取り壊された筈の家があったり、潰れた店がまだやっていたりして中々楽しい散歩をしながら古びたアパートの階段を登ると靴の音がやけに響いて何だか懐かしくなった。綺麗とはまるで言えないが、今見ると中々味があるアパートだな何て思いながらインターフォンを押した
はーい。と直ぐに可愛い声が聞こえてきて、雪那だよーと扉に向かって話しかける。 雪那ちゃんだーと高めの声が返ってきて、扉が開くと小さな2人の姿が可愛くて新鮮で、思わず屈んで2人を抱き締めた。キャーと笑顔で可愛く笑う2人に私は自然と笑顔になる
「2人共ご飯食べた?」
「ルナ食べたくなーい」
「あれ?何で?」
「マナは食べたよ」
「ルナ、もしかしてピーマン入ってたのかな??」
ギクリとしたルナの様子に優しく頭を撫でて今からクレープ作るぞと2人に笑いかけると、2人の目がキラキラと輝いてから食べるーと万歳していて、何だか私は嬉しくて笑ってしまった。三ツ谷家の台所に立った事は数回しか無いけれど大体どこに何があるかは覚えていて、分からない事はルナに聞きながらマナを抱っこして3人でクレープを作った
ご飯を食べてから3人でお人形さん遊びをしていると、その時には喧嘩の事何てもう忘れていて。3人で遊んでいる姿を写真に撮って隆に送ると、直ぐに返ってきた返信にはありがとな。と一言だけ入っていた
3人共可愛いとかないのー?と返信すると、はいはい、可愛い可愛いと適当な返事しか返って来なかったので唇を尖らせながらそのまま携帯を閉じた
トントントンと小さくブーツの足音がして私はソファから起き上がった。膝で寝ている2人を起こさないように上半身だけ起こすと、玄関の扉が静かに開いて隆がリビングに入ってきた
おかえりと小さく呟いた私の膝で眠る2人を見て穏やかな笑みを浮かべた隆は悪かったなと小さい声で言ってから私の頭を撫でてからルナとマナの頭を撫でた
「ちょっと布団に寝かしてくるね」
「ルナ貸せ」
寝ているルナの両脇にソッと手を入れて持ち上げると慣れた手つきで抱き直し寝室に運ぶ隆の後ろにマナを抱いて続く。2人を布団に寝かせると、風呂入ってくるわと言った隆はそのまま脱衣場に入って行った
隆がお風呂に入っている間に、先程多めに焼いておいたクレープにツナと卵と野菜を挟み、それを2人分作り簡単な残り野菜のコンソメスープも作ったので弱火で温め直していると、お風呂から上がった隆は私を見てギョッとした顔をした
「……何その顔、どしたの?」
「お前、それどしたの?」
「ん?クレープとスープ作っといたけど食べる?」
「……作ったの?」
「まぁ、うん。」
「いや、お前料理出来ないじゃん」
シーンとした空気になり、上半身裸にスウェットの隆は不思議な物を見るような目でクレープを見てから手に取り大きな口で齧りつく。咀嚼しながら目を見開き美味いと笑った顔が可愛くて少しだけ私も笑ってしまった。カップに注いで渡したスープを啜りながら、本当にお前が作ったの?と眉を寄せた隆に、たまたま上手く出来たなーと作り笑いをすれば不思議そうに首を傾げていた
そういえば15歳の時は買い食いやカップラーメン、コンビニが当たり前だった気がする。1度ゆで卵が食べたくて電子レンジにそのまま卵を入れ大爆発を起こしたと言った私に珍しく隆はヒーヒーと腹を抱えて笑っていたのを思い出した
これ、おばさんの分ね。と言って包んだクレープにラップをすると隆はありがとなと言って私の髪を優しく撫でた。今日は色々あって疲れたな何て考えながらクレープを美味しそうに頬張る隆を見ていると、元の時代に戻りたいけど生きている隆が居ないなら戻りたくなくて。もうこのままでもいいかな何て思いながらソファにゴロリと横になった
「ふぁ、眠くなって来ちゃった」
「……食ったら送る」
「あ、うん。……ありがと」
お礼を言ってふと、考える。目が覚めたらもとの時代に帰らされてる何て事にならないだろうか
眠って起きたらやっぱりこれは夢で、あの霊安室にいるのでは無いだろうか……。そう考えた時全身に鳥肌が立った
「……ねぇ、隆」
「……ん?」
目が合った私に機嫌が良さそうな隆はスープを飲みながら何だよと言って軽く微笑む
「今日さ、一緒に寝ても良い?」
その瞬間に盛大に口から発射されたスープは私の顔面とワンピースをびちょびちょに濡らす。目の中に入ったスープが痛くてグワァーっと色気の無い声を出しながら目をぱちぱちさせている私を見て、隆はルナとマナが寝ているのも忘れているのか大笑いしだした
「隆、しー」
「悪ぃ」
「起きちゃうから静かに。壁も薄いんだから怒られるよ」
「……てかさ、今日お前変じゃね?」
「……そう?」
「アイツに何か言われたなら言えよ」
「嫌、むしろあの人とは何話したかも覚えても無い」
「……ふーん。」
「とゆうか、あの人誰?結局何だったの?」
「……あぁ、俺が前にシメたのを逆恨みしてたみたいでさ。お前を襲ったら失敗して挙句の果てに俺にお前と関係持ったとか嘘ついてきて、殴ろうとしたらドラケンに止められた感じ」
「凄い阿呆じゃん」
「……阿呆だから心配した。……色々悪かったな。信用してねー訳じゃねーよ。ただ、最近お前冷たかったから。本当はちょっとそっちのが心配だった」
「……冷たかった?」
「出掛けようって誘っても断られるし、キスしようとすると嫌がるし」
「……そんな事あったっけ?」
「あったから言ってんだろ。2人でこうやってゆっくり話すのも久しぶりだしよ。そしたらいきなり今日泣くわ料理するわ家にいるわ、寝よーだ言うしよ」
「……確かに、それなら変な奴だね」
「おめぇだろーが」
「ふふっ、何かそんな言葉使いも可愛く感じる」
「……」
ポカンと口を開けたまま呆れた様に私を見つめる隆に、昔は口が悪いのが嫌だったけど何か今は可愛いなぁ何て思いながら見つめていると、変な奴。と言って立ち上がった隆は大きめのタオルを私に渡してくる
「何これ」
「顔洗って服脱げ。洗濯するから」
「あ、そっか。スープだらけだった」
ごめんごめんと言いながらワンピースを脱ごうと肩紐を下ろすと、隆は呆れ顔で馬鹿かと言った
不思議そうな顔をした私の手を引いた隆は脱衣所を開けて私を押し込み、やっぱり今の時間は洗濯機が回せないから手洗いしろと言うと廊下に消えて行ってしまう
さっきの会話で気になる事があった。隆は私が冷たかったって言っていた。その事について色々思い出そうとしたり、心当たりを探したが全く検討もつかない
そんな事を考えながらシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かしているとドアの隙間からtシャツを渡してきてくれたのでありがたく着る事にした
スープで濡れたブラジャーとワンピースをシャワーのお湯で流し、キツく絞ってからベランダに出て物干し竿に干すと凄い勢いで自室から出てきた隆がワンピースと下着をひったくって自室に戻っていく
テケテケと後ろを付いて行くと、自室のカーテンレールに引っ掛けた洗濯干しに下着とワンピースを干してくれた
「ごめんごめん、もう夜中だもんね」
「……そうゆう問題でもねーけどな」
いつもの呆れ顔で疲れた様に肩を落とした隆と一緒に歯磨きをしてから自然に布団に入ると、ドアの前で立ち止まっている隆に何やってんの?と声をかける
その私の声に、なんでもねーと一言だけ呟いてから布団に入った彼の腕に躊躇無く抱き着いて目を瞑った
本当は起きたら霊安室にいるのが怖い
真っ白な隆を見るのが怖かった。でも、誰にもそんな事言えなくてこの抱き締めている体温に今はすがり付きたくて仕方なかった
「……なぁ、雪那。やっぱり何かあっただろ」
こっち向けと優しく頬に手を置かれ、何て言っていいのか分からずにその優しい手に重ねる様に手を置いた
「……ねぇ隆」
「ん?」
「キスしていい?」
「……ああ」
愛しいな何て思いが込み上げて来て、坊主頭の隆の髪を撫でながら唇に口付ける。下唇を優しく舐め口の中に入れた舌を絡ませて幸せな気持ちに浸る
暖かくて、生きているって実感すると安堵からか目に涙が浮かんできてしまう
すると隆の手が私の手を掴み、反対の手で肩を押され枕にストンと頭が落ちた。目を開ければ私の上に被さるように乗った隆の目は座っていた
「……どしたの?」
「お前、本当に雪那か?」
「……何で?」
「キスの仕方が全然違う」
「……」
「……何だよ」
「……本当に好きだよって気持ちを込めてしただけだよ。上手いとか下手とかじゃなくて。ただ本当に触れたいって思っただけ」
「……はァ。んな事言われたらもう俺も我慢しねーよ」
「……うん。……我慢、しなくていい」
「……ああ」
目を瞑ると、左手がギュッと1度握られて唇に柔らかい温かな唇が触れる。唇から入ってきた舌は優しく舌を絡め取り控えめなやらしい水音が自分の耳に届く
シャツの中に入ってきた手が腹を撫でてから下着をしていない膨らみを優しく触る。身体の感覚が全然ちがくて少しだけ戸惑ってしまった。この間、25歳の隆とした時は胸を舐められただけでも顔が熱くなる程気持ちが良くて、自分で濡れるのが分かるくらいだったのに……この15歳の身体はまだそれを知らないみたいだ。唇から離れ、シャツを捲った隆は優しく胸の膨らみから突起を舐め転がした
気持ちいいとゆうよりは少しくすぐったい。ふふっと笑ってしまった私に隆は、ん?と言って顔を上げた
「くすぐったくて」
「気持ち良くはねーんだ」
「まだそんなに身体は成熟してないよ。多分、数をこなさないと難しいかも」
「……そうゆうもんか」
「触れ合う事に意味があるんだから良いじゃん。私は満足だよ」
そう言って額にキスを落とすと、隆はそうだなと言って優しく微笑み頷いた。胸にキスをされながら内股を撫でていた手は下着の中に入り突起を優しく撫でられる。痺れる様な不思議な感覚に、んんと小さく喘いでしまうと痛かったら言えよと髪を撫でられて、こくりと頷いた
時間をかけて慣らしたからか、指がすんなりと入る様になる頃には不思議と少しだけ気持ちが良い。ゆるゆると中と突起を擦られる度に口からイヤらしい声が出てしまう
「……ァァァ、たか、しも駄目」
「…気持ち良くなってきた?…かわい」
気持ちが良い所ばかり撫でられていると強い快感を1度感じて彼の首に唇を埋め、なるべく声を出さない様に口を噤む。そんな私を見つめ、髪を撫でてフッと微笑んだ隆と25歳の隆が重なって見えて何だか切なくて嬉しくて、彼の首筋に舌を這わせながら何度も口付けた
「……ん」
「……ん?……隆も気持ちいい?」
「……あぁ。お前からこうゆう愛情表現されんの初めてかも」
「……そうかもね」
「していいか?」と聞かれ、我慢が出来ない様な顔をしている彼が可愛くて頷くとベッドサイドの棚に置いてある避妊具を着けた隆はゆっくりと私の上に被さってくる。ミチミチと硬い質量の物が自分の中に入ってきて息を抜いているとスルッと入ってくる様な感じを覚えて浅い深呼吸を繰り返す
奥まで入ったのが分かると、何故か脱力してしまいフゥーと身体の力が一気に抜けた。同時に唇に舌が入って来たので優しく迎え入れ、目を開ければ優しい目をした隆が私を見つめていた
「……」
「……ん?」
「痛くねーか?」
「……うん、大丈夫」
「悪ぃ、ちょっと動いて良い?」
「……うん」
1度浅く引き抜かれ、深く入ってきたそれが奥を突く度に鈍い痛みに変わる。でも……。隆の顔を見ているだけで段々とその痛みが無くなっていくのが分かった
あの時、25歳の自分が隆と体を重ねた時に思った事
どうしてあの時別れてしまったんだろう
別れていなければ、彼の初めても私の物でずっと傍にいれば隆は死ななかったかもしれないのに
「……?」
「ん?少し痛く、なくなってきた」
「……痛かったらやめるから言えよ」
「大丈夫……私、本当はずっとこうしたかったんだ」
「…俺も… 雪那すげぇー好き 」
「……うん。私も」
首筋をキツく吸われながら奥を突かれる。ジンジンとした痛みが鈍い気持ちよさに変わってきた頃
隆が死ぬ前に思い描いた夢が叶った事が嬉しくて私は静かに、バレない様に涙を流した
朝日の陽射しと鳥の鳴き声で目を覚ます
目の前に居たのは髪が短い隆で、まだ深く眠っている
安心して息を吐いた
2人共服を着ているのは何故だろうと思ったけれど、隆が着せてくれたんだろうなとすぐに分かった。最後にシャワーも浴びず服も着ずに寝てしまった事を少し反省してスヤスヤと眠る彼の腕にしがみついた
次に目を覚ました時には隆は居なくて、ルナとマナが私の横でスヤスヤと眠っていた。何で?と思いながら布団を掛けて2人の髪を優しく撫でる
携帯を見れば昼の12時。やっちまったと思い、部屋を出る前にブラジャーをしてワンピースに着替えて鞄から化粧道具を取り出して脱衣場に向かう
顔を洗い歯磨きをして眉毛を書いていると、玄関が開く音がして直ぐに脱衣場のドアが開きジーンズにシャツにベストの外着を着た隆が私を見下ろしていた
「はよ」
「おはよー寝坊しちゃったよ」
「ルナとマナは?」
「隆の部屋で寝てる」
「ったく、あいつら自分の部屋で昼寝しろって言ったのによー。」
「皆ご飯食べたの?」
「朝は食った」
「ルナとマナも食べた?」
「食ってから寝たっぽい」
「おばさんもう仕事行ったの?」
「あぁ。最近忙しいらしい。」
「大変だね、そっか。隆は今日どっか出掛けんの?」
「日曜は子守りだろ」
「付き合うよ」
そう言って彼の頬に手を添え背伸びしてから優しく口付けると、隆は少しだけ困った様な顔をした
「…あれ?…嫌だった?」
「嫌、その逆。慣れねーだけ」
「……何かごめんね。今は言えないけど、色々あったんだよね」
「……言えないなら聞かねーけど」
「……心配させてごめんね」
「…そういえば…体平気か?」
「全然大丈夫。2人が起きたら公園でも行こうか」
「たまには二人で出掛けてーよな、あ、……良い事思いついた」
ニシシと悪い笑みを浮かべた隆は携帯を手に取ると、どこかに電話を掛けだした。今のうちに化粧を済ませてしまおうと、ラインを引いてアイシャドウをのせてとテキパキ手を動かしているといつの間にか横に隆は居なかった
化粧と髪のセットを軽く済ませて、リビングに入ると
ソファーにゴロリと横になる隆は携帯をいじりながら私にテーブルの上にある物食いなと言ってくる
ありがとうと言って、家から持ってきた鞄を漁りインスタント珈琲を取り出してお湯を沸かす。粉に優しくお湯をかけて少し蒸らしていると、良い香りが部屋中に広がった
「何飲んでんの?」
「珈琲いる?もう1つあるよ」
「……お前珈琲飲めないじゃん」
「……」
今は好きなのと、言ってもおかしい気がした。最近好きになったんだと笑いながらお湯を少しづつ入れる。ふーん、としか言わなかった隆はテーブルの上にあった紙を持ってきてそれを私に渡してくる、珈琲を啜りながらその紙を見ると綺麗な字が並んでいた
雪那ちゃんへ
スープとクレープ凄い美味しかった、ありがとう
いつもルナやマナにまで良くしてくれてありがとうね
これからも隆をお願いしますと丁寧に書かれてあった。ふとテーブルを見ると、紙が置いてあった場所には可愛らしいパンやドーナッツが並んでいた。
「隆はもう食べたの?」
「あぁ」
「じゃあ頂いちゃお」
ホッコリとした気持ちでパンを口に入れる。優しい味がして思わず笑顔になった。それから直ぐに隆の幼馴染兄弟が家にきてくれて快くルナとマナを預かってくれる事になり、私達は久しぶりに二人で出掛ける事が出来た
歌舞伎町を歩いていると、ショーウィンドウに写る自分に違和感を感じた。髪の染め方は雑だしアクセサリーもプチプラで洋服も無難でお洒落さがまるで無い。まあ中学生だしプチプラでも仕方が無いっちゃ無いのだが、隣を歩く隆は全身お洒落で何だか自分で凄くモヤモヤしてしまった。それに、当然の様に25歳の自分と比べてしまっているから不満になるのも分かるけれどやっぱり隆の前では綺麗でいたいなぁと思った
「どした?」
「何か自分の容姿に不満」
「……急になんだよ、……服?」
「うーん。服も髪の色もメイクもアクセサリーも全部」
「なんだよ急に。買えるものなら買ってやるからさ」
「……お金も自分で稼ぎたいなぁ。センスも磨かないとな。隆の隣にいるならやっぱり可愛くいたいし」
「……」
「どしたの?」
「……昨日からお前が素直過ぎて可愛くて怖ぇ」
「確かに昔の私は素直じゃ無かったかも。可愛くなかったな」
「昔って何だよ」
「……何でもない。何かさ、大事な人と居るなら素直でいて沢山気持ちを伝えたくなったんだ。だって……いつ失うか分からないじゃん」
「……いつ別れるか分かんないって事?」
「……ごめん、違うよ」
大好きだよ、だから失うのが怖くなったって事。と言って隆の腕に顔を寄せて手を握ると街中なのに珍しく額に口付けしてくれた隆に私は微笑んだ
それから2人で色々なお店を見たり、マックでオヤツを食べたりして中学生らしい可愛いデートにほっこりしている自分がいた。飲食店から出てその店の前で次はどこ行こうか何て話をしているとグイっと急に手を思い切り引かれて転びそうになる。頭を上げると目の前には隆の背中があり、何人かの男達に囲まれているのが分かって、またか。と溜息をついた
「三ツ谷だな」
「あぁ。」
「この間、お前ん所の2番隊にうちのがやられてな」
「……知らねーよ。お前らどこのやつ?」
25歳の私から見ると、何て下らないんだろうと思ってしまう今日この頃。今忙しいんでとか言って隆を連れて行きたい衝動にかられるが15歳の彼の手前何も言わない事にした。
「雪那、ちょっとあっち行ってろ。危ねーから」
「お姉ちゃんはこっちにおいでー可愛がってあげますよ」
「てめぇ」
安っぽい挑発にゲンナリとしてから、言われた通りに端に寄って距離を取った。それから喧嘩が始まって、それを何故か映画のワンシーンみたいな感じで見ている自分が居た。タイマンだとか言ってた癖に、隆に負けそうになっている男を助けようとしているのか、仲間の細身の男が隆の背後に回り近くにあったゴミ箱を手に持った。卑怯な手口に頭にきて、その男の背後に走り寄ってから勢い良く彼が持つゴミ箱を掴んだ
「何しやがんだてめぇ、……女?」
「それは卑怯でしょ」
うるせぇなと言いながらゴミ箱を凄い勢いでひったくられると思った瞬間に手を離してその男の鳩尾をなるべく強く押した。バターンとゴミと一緒に倒れた男は真っ赤な顔をして立ち上がり拳を振り上げて私に向かってくる
倒れた時の音で気付いたのか、私の名前を呼びながら珍しく焦った表情で隆がこちらに向かって走ってきていた
何故かそれら全部、周りの風景全てをスローモーションで見ている自分がいた
怖くもなく、ただ映画の様に。
振りあがった手がゆっくりと降りてきて、瞬間に避けなくちゃと思い屈んで避ける。目の前にある男の股間に思いっ切り右手でパンチを繰り出すと気付いた時には目の前の男は白目を向いて倒れていた
「あ、……ご、ごめんなさい」
咄嗟に口から出たのはその言葉。勿論彼には届いてい無い。怒り狂った隆が女狙いやがってと言って失神している男を持ち上げようとして、何故かタイマンをしていた男に止められていた
「おい、三ツ谷。そいつもう意識ねーから」
「関係ねぇ、人の女狙いやがって」
4人係で羽交い締めにされる隆を見ながら、何かさっきのスロー感は本当に変だったなと首を傾げていると
隆と喧嘩していた図体のデカイ男にうちのが卑怯な真似してすまんと謝られて、私こそすみませんと謝った
「いてててて」
「我慢我慢」
我が家に帰ってきて、瞼と口が切れた部分を消毒する
怪我が余り酷く無くて何よりだけど、暴走族って本当に大変だなぁ何て思いを顔には出さずに傷テープを貼り付けた
「今日ごめんな、危ない目に合わせた」
お腹に手を回してきた隆に、よしよしと言って頭を優しく撫でる。子供扱いされているのが良く分かるのか、少しだけムスッとしていたけど私の胸に顔を埋めて力強く抱き締めてくる隆の頭を優しく撫でていた
「…私は…大丈夫だけど、色々大変だね」
「何が?」
「うーん。私にはあんまり分からないけど、隊長とかだとその隊の人がやった事も自分の責任になる事とかあるみたいだし」
はい、終わりと髪を撫でた私にサンキュと言った隆は医療品の片付けをしている私の隣にそのままゴロンと横になる
「……まぁ、それは仕方ねーから」
「……そだね。私も早く下が欲しいなぁ」
「はァ?どうゆう事だよ」
「早く自分のデザインで売れて、会社やって部下とか欲しい」
にししと笑う私に、雪那って物作り好きなんだなと言われこくりと頷く
「隆みたいにミシンは使えないけど、本当は鞄とか服も作ってみたいんだよね。」
「服?……それはまるで興味ねーってこの間言ってたじゃん」
シーンと部屋が静まり返る
お前何言ってんの?みたいな顔で見られて、固まった私はニッコリと笑い隆の唇にチュッとキスをしてからキッチンに逃げる様に向かう
冷蔵庫からスーパーで買ってきた挽肉を出してボールに入れて玉葱を微塵切りしていると、私の後ろで冷蔵庫から麦茶を取り出す隆。目を細めて包丁を見つめていた
「……何?」
「……手捌きが前と違くね?練習したの?」
「う、うん」
「……ふーん。何作ってんの?」
「……ハンバーグ」
「おっしゃあ!」
怪訝な顔から笑顔に変わり、ふぅと内心ホッとする
「1kg買って来たから大体玉葱と豆腐でかさ増しすれば10個は作れるかな」
「……すげーな。卵レンチンする子が短期間にここまで出来んのか」
「あ、うんうん隆の事愛してるからさ。凄い喜んで欲しくて練習したんだよ」
「……へぇ」
「何その、ふーんみたいな目は」
「俺も雪那の事愛してるからさ。愛情表現してもいい?」
フッと口元だけ笑った隆に、目が笑って無くて怖いんだけどと言えば後ろからスカートを捲り太ももを撫でてくる
「……ハンバーグがボロボロになるから今はやめて」
「ちぇっ」
可愛く口を尖らせた隆は後ろから私を抱き締めるとグイッと少し強引にこちらを向かせ唇を重ねてきた
夜までこれで我慢するわと言って、ペロリと唇を舐められる。中学生でもこの男の色気は変わらないんだなぁ何て思いながら私はどーもと言ってハンバーグを捏ねだした
私の横で携帯を取り出した隆の指が画面に触れると、いつの間にか待ち受け画面がこの間送ったルナとマナと3人で撮った写真になっていた。直ぐに写真から目を離して込み上げてくる可愛いなって気持ちを抑えながら半笑いでハンバーグを捏ね続けた
