ケンちゃんのお姉ちゃん 大寿君の妹ちゃん
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中学生3年生になると周りにカップルが増えだして私はそれを少し羨ましい気持ちで眺めていた
あの事件から、義母は少し心配性になってしまい週に2回は顔を見に来るようになった。ケンちゃんやマイキー達が恋人を作らないって決めたのを聞いていたから私は何だか自然に自分も作らない方が良いんじゃ無いだろうかなんて思い初めていた
世の中には無抵抗の女の子に暴力を振るう変な輩がいるんだから、もしかしたら彼氏が出来たら私を含めてケンちゃんやマイキーに恨みを持つ輩何かに狙われちゃうかもしれない
そんな事は100%有り得ないって今まで思っていたけれどこの間の事でその考えはサラサラと無くなっていった
この間の事がトラウマになって変に勘ぐり過ぎているなと思いながら、手を繋いで帰宅するクラスメイトの後ろ姿をボンヤリとしながら見送った
チラっと教室から外を見れば黒髪ロン毛と金髪のラブリーちゃんを校門に発見して私は鞄を持ってルンルンで走り出す
靴を履いて外に出れば学校の皆が、圭ちゃん達と目が合わない様にそっぽを向きながら校門から出ていく姿を見て笑いを堪えながら走って、そのままちーちゃんの胸に飛びつくと優しく抱きとめてくれる
「たっだいま~」
「お姉さんお疲れ様です」
「ドラねーおっせぇよ。ほら、早よ行くぞ」
「ちーちゃんかわゆかわゆ」
ちーちゃんの胸にがっしりとしがみついてスリスリしていると、呆れた様に私を見る圭ちゃんは最近ケンちゃんに似てきたなぁと思う。最近チームに入ったと紹介されたちーちゃんは頭を撫でるとほんのり頬を染める犬系男子で、弟ラブな私からしたら最近の1番のメガヒットだった
雪那さん、よろしくお願いいたします。と言われたのでお姉ちゃんて呼んでねと頭を撫でなですると、普通にはい!と元気に返事する所がスレていなくてまた可愛かった
「うちの弟達は皆ワンコみたいで可愛いいわ~。圭ちゃんもドーベルマンみたいだし、ちーちゃんもチワワみたいだし」
「チワワですか……」
「三ツ谷はとパーは?」
「……シベリアンハスキーとブルドック」
「「確かに」」
3人で大笑いをして、そんな下らない話をしながら目的地に向かい歩き出した。学校から10分程歩くと見えてくる大きな建物に私は喜びで万歳する。軽食コーナーからレストランに雑貨屋からショッピング、映画からゲームセンターにボーリングまで揃っている最近出来たばかりの大型モールだ
クラスメイトの話題になっているこのモールに来てみたくて、1度少しだけ女の子達と軽食コーナーでハンバーガーを食べて楽しかった事を義母に話すと可愛い女の子達だけじゃ危ないから気をつけてとオロオロされてしまった
その話を多分、ケンちゃんが圭ちゃんにしたんだろう。私の携帯に急に圭ちゃんから珍しく電話が掛かってきて遊びに誘ってくれた
「どこ行く??」
「あー、待て。今他のやつも来るから」
「じゃあゲームセンター行こ」
「ドラねー全然話聞いてねーよな」
「俺が電話してゲームセンターにいるって言っておきますよ」
ちーちゃん優しいと腕を組み直して彼を引っ張ると、私に笑顔を向けながら携帯を取り出し電話を掛けだしたちーちゃんに何ていい子とスリスリする
まったくよーと言いながら、何だかんだ隣を歩いてくれる圭ちゃんにも優しさを感じて私は満足満足と幸せに浸りながら歩き出した
4階のゲームセンターに到着して、キョロキョロしながらUFOキャッチャーの景品を覗いていると
お菓子詰め合わせやネイル詰め合わせ、今流行りのキャラクターのフィギュアなどが沢山あって見ていて楽しい。お金はけっこう持ち合わせがあるけれと、なるべく安く損せず取りたくてお菓子の詰め合わせのUFOキャッチャーにお金を入れて操作する
横から見たり斜めから角度を変えて、真剣にゲーム機と向き合っていると圭ちゃんでもちーちゃんでも無い声が私に話しかけてくる
「……雪那さんてお菓子そんな好きだっけ?」
「私の愛するパーちゃんにプレゼントするのよ」
「だってよ、良かったな。パー」
「……あれ?2人共いつ来たの?」
「姉ちゃん。俺めっちゃ嬉しい」
私服のタカちゃんとパーちゃんが私を囲むように両隣にいた。ゲームに熱中していて全く気づかなかった私に2人はケラケラと笑い、3人で奮闘しながらも600円で詰め合わせを取ることが出来た私達は子供みたいにはしゃぎ回る
景品が出てくるガラスの扉から大きな袋を取り出してパーちゃんにはいッと渡すと、感動した様な声で姉ちゃんありがと。と可愛らしく言ったパーちゃんが可愛くて携帯で写真を撮りまくっていた
そろそろ行こうとタカちゃんに手を取られてゲームセンターの入口まで戻ると、ケンちゃんと圭ちゃん、ちーちゃんは何やら白い紙を見ながら話し合っている様だった
「……何その紙」
「クジ引きチケット」
「ん?どうゆう事?」
義母がケンちゃんに渡してきたのは映画のチケットが4枚とレストランのチケットが2枚、それと5000円の商品券が2枚。映画のチケットを見せてもらうと、今話題のベッタベタな恋愛邦画。それに何故かホラー映画のチョイス
レストランのチケットは2階にあるブュッフェ式のレストラン招待券だった。
「んで?ケンちゃんこれどうすんの?」
「クジ引きで決める」
「…何でクジ引き?何で皆バラバラ?…まぁ、いいけどさ」
絶対レストラン引くと意気込むパーちゃんと、恋愛映画見たいと目を輝かせるちーちゃん。特に何でもいいやの顔のタカちゃんと18禁映画追加しねぇ?とケンちゃんに聞く圭ちゃん
「……恋愛映画はちーちゃんで、レストランはパーちゃんで良くない?他だけクジ引きすれば?」
「ぜってー駄目だ。平等にする。後18禁は無い」
頑なにそう言ったケンちゃんに私と圭ちゃんはちぇっと唇を尖らせた
誰が作ったか分からないような汚い字のクジを皆で引いて、そのクジとご対面する。4番と書かれた文字に4番て何?!とはしゃぐ私の隣にいた圭ちゃんが私の声を聞いてスっと自分のクジをタカちゃんに渡して、タカちゃんのクジをサッと取ったのが横目で見えた
何してんだろと思ったけど、気にせずにケンちゃんにクジを渡すと微笑ましい笑みでホラー映画のチケットを渡されて白目になる
1番と大きな声で叫んだパーちゃんにニッコリと笑ったケンちゃんは恋愛映画のチケットを渡した
私の肩に寄りかかり白目になっているパーちゃんの背中を摩っていると、急に手を取られて雪那さん行こうと微笑んだのはタカちゃんだった
私がベンチからどき、そのままバタリと倒れたパーちゃんに皆でゲラゲラ笑っていると、白目の圭ちゃんがそんなパーちゃんを引きずりながら映画館の道を歩いていった
「……圭ちゃんとパーちゃんで恋愛映画キツいわ」
「…場地さん、やっぱカッケェな……」
「かっこいい部分今あった?」
「……いや、何でもないです。お姉さんは三ツ谷君と映画楽しんできて下さい」
「マジで俺ラッキー。な、千冬。俺達はレストランに居るから、もし姉貴に何かあったら三ツ谷俺に連絡して」
「ウッス」
「じゃ、また後でな」
変なクジ引きだな。何て思いながら手を引かれて、歩き出したタカちゃんの後ろを歩く。事件からいつも家にいてくれて色々お世話になったけど最近は会えて無かったから久しぶりに会えて凄い嬉しかった
人もそんなに多くない映画館に着いた私達はまず二人でチケット売り場の横にある飲食コーナーに向かった
「雪那さん、何か食べます?」
「ポップコーン何てどう?キャラメルと塩半分づつのやつ」
「すげぇ美味そうかも。雪那さん飲み物は?紅茶?」
「うん、紅茶にする。私が払うからいいよ」
「俺に払わせて」
そう言ってスっと会計を済ませ、飲み物とポップコーンを両手で持ったタカちゃんに素直にお礼を言うと、優しい笑みを向けられて久しぶりにその顔を見た私は抱き着きたくなるのを必死で抑える
「くっ……ぐぬぬ」
「急にどうしたんすか?」
「ポップコーンが邪魔で抱き付けない」
プッと吹き出したタカちゃんは楽しそうにケラケラ笑ってから、中暗いんで転ばない様にと言って私の手を自分の腕に掴ませて荷物を持ち直した
いちいち何てかっこいいんだ。けしからんと私がブツブツ言う度に笑うものだから私も少しづつ楽しくなってきて二人でケラケラ笑っていた
館内は以外に暗くて、何度か躓きそうになったけど彼の腕を持っていたお陰で転びはしなかった
二人でチケットの席に座り小声で話をしていると、上映前の広告が始まったのでワクワクしながら画面を見つめる
チラッと隣を見れば、垂れた目で静かに画面に釘付けなタカちゃん。聞いてなかったけどホラー映画大丈夫な人?と聞けば、雪那さん、作りもんだよ。とシラっと返されてそれは確かにそうなんだけどさ。と言いながら目線を画面に戻した
上映から30分くらいして、席を立ちたくなる衝動に駆られる。呪いとか、髪の長い女の人が四つん這いんでとか頭がパニックになってきて内心今日夜寝れるのかすら不安なレベルだ
これを作った監督は相当天才だな何て思いながら顔を手で隠す作戦に出た私に、隣に居るタカちゃんは背中を丸めてうずくまっていた
「ど、どしたの?」
小声でお腹痛いの?と心配して彼の耳元に唇を寄せると、クククッと笑い声が聞こえてきたので、額に優しくデコピンをかました
「……この歳で、顔隠すって技中々見ねえよ」
小さく笑い続けるタカちゃんに、ムスッとしながら彼の腕に抱き着いて片目だけで画面を見つめる
いきなり出て来た髪の毛を振り乱した女性にビクーンと体を震わせると、どんだけ怖ぇんだよと笑いながら優しく頭を撫でてくれた
結局、紅茶を飲もうとしてまた女の人に驚いてストローを思いっきり喉に刺し、ビックりして唇を噛んだ私にタカちゃんは笑えなくなって私の手を引いて荷物を持ち退席した
「……けっこう深く噛んだな」
「そんな強く触ったら痛い」
「悪ぃ、ここだと消毒も出来ねーや。大丈夫?」
「全然平気、でも、もうビクビクしすぎて体が疲れたよ」
「マジで笑わせないで。あー、けっこう時間あるな。……他を色々見て見て回ろうか」
「うん」
血を拭いてくれて、未だに笑いが収まらないタカちゃんは私の手を取るとエスカレーターに乗って3階に降りた。3階には出店みたいな雑貨屋が並んでいて、キラキラと色とりどりなお店にワクワクとしてきて急ぎ足で近くのお店から品物を覗く
「可愛い~、サンキャッチャーか。お洒落」
「何か色々あんな、欲しい物ありますか?」
「うーん、どうかな……。ちょっと見てみる」
タカちゃんから離れてブラブラと出店を覗いていると、淡いグレーパープルのジルコニアが1ミリサイズで横に6個入っている細めのゴールドの指輪と小さな同じデザインのピアスセットを見つけて立ち止まる
24金とか良い物では無いけれど、錆びにくい素材で作られていると説明欄に書いてあり指輪が2500円でピアスが1900円と中々手頃だ。同じ様な物を作れないか考えたけど指輪は作るのは難しいかな何て思いながら手に取り右手の中指に嵌めると最後まで入らない
無理して入れても取れなくなったら怖いので、他の指に入れようかと見つめていると、ヒョイと顔を出したタカちゃんがそれ欲しいの?と聞いてくる
「うーん、凄く気に入ったから欲しいんだけど右手に入らなかった」
「けっこう細いリングだな、ありきたりのデザインだから雪那さんのが可愛いの作れるんじゃね?」
「うーん、この色が凄い気にいったんよね。」
指輪をつまみ、タカちゃんの瞳の横に掲げるとやっぱり同じ色をしていた。ニシシと笑いながら、隆の瞳と同じ色と言えば少しだけ目を見開いてからフッと笑ったタカちゃんはその指輪を私の左手の薬指に優しく嵌めた
「あ、ピッタリ」
「……かわい」
「可愛い?私も凄い気に入ったんだ」
「そっちじゃねーよ」
「ん?」
「 雪那さん、良かったらプレゼントさせてよ」
「えっ?いいの?」
「……ちょっと早いけど気に入ったんなら誕生日プレゼント」
「えー……じゃあさ」
隣に置いてあったお揃いの細い小さなリングのピアスを手に取ると、タカちゃんのピアスを優しく外してそのリングピアスを耳に付ける
「じゃあ、私からお揃いでプレゼント」
似合うと私が笑えば、嬉しそうな気恥しい様な顔をしたタカちゃんはありがとうと言って片手で私を軽く抱き締めてから頭に軽く唇を付けた
あの時の口付けと一緒だな、何て思いながら込み上げてくる愛しさに蓋をして私はこちらこそありがとうと笑った
店員さんを呼んで、お互いお金を払うと商品を包装せずにそのままお店を出た。内心、隆が指に嵌めてくれたから取りたくなかった何てポンと出て来た思いに恥ずかしくなって嬉しくてずっと指輪を見ていた
弟分で、可愛くて、大好きなのに何か違う愛してるがある事に私は少しづつ気付いているような気がした。そう言えばお店を出てから終始無言なタカちゃんにあれ?と思い、腕に抱き着いても無反応。
「……タカちゃん、?たかしくーん」
「……ん?」
「どしたの??」
タカちゃんの目線を追えば、私の指輪を見ている様だった。見て何か考えている様にぼーっとしている彼の耳に付いたピアスを見て何だか色々な思いが込み上げて来て私もぼーっとしていると、聞きなれた声が遠くから聞こえて私はタカちゃんの頬を優しく引っ張った
「タカちゃん、ケンちゃん呼んでるよ」
「……やべ、忘れてた」
2階から3階に上がってくるエスカレーターの前でこちらを見ながら手を振るケンちゃんの元に走って行くと何故か私が電話出ろやと頭にゲンコツを食らって。
それで隆が殴るんじゃねぇとケンちゃんに切れて珍しく喧嘩になり、ちーちゃんが一人で止めに入り2人に殴られ
騒ぎを聞いて走って来た圭ちゃんとパーちゃんが2人を止めて殴られて切れて結局4人が喧嘩になった
私が巻き込まれて怪我をする事を恐れたちーちゃんに手を引かれ二人で離れた所から4人を見ながら紅茶の残りを啜っていると、20分くらいしてから息を切らした4人がこちらに向かってきて私はそれを見て大笑いしていた
家までの帰り道、喧嘩で疲れきった4人と私とちーちゃんで夕陽が差す街並みをトボトボと歩く
「……てかよ、結局何でドラケンと三ツ谷が喧嘩してたの?」
「ドラケンが雪那さんの頭にゲンコツかましたから俺が怒った」
「ドラケンが悪い」
「ドラケンが悪ぃ」
「ケンちゃんが悪い」
「……チッ」
舌打ちしたケンちゃんは、へーへー悪かったですねと言いながら携帯に手を伸ばす。震える携帯の通話ボタンを押すと私達から少し離れた
「圭ちゃん、パーちゃん映画どうだった?」
「……ま、映画自体は良かったんじゃね?」
「場地泣いてたじゃん」
「お前はずっと寝てたけどな」
「なんだよ、パー寝てたのかよ」
「三ツ谷は映画どうだったんだよ」
「……笑いすぎて死ぬかと思った」
「ホラー映画じゃなかったか?」
「…映画は、まぁ普通にホラー映画だったけど。雪那さんが手で目隠して画面見ててそれに最初吹いて、次に俺を目隠し代わりにしてきてビクんて毎回なるからそれに吹き出して、最後に紅茶飲んでる時にビクッってなったらストローが喉に刺さって唇深く噛んで流血して笑えなくて途中で映画館でた」
「「「…………」」」
「皆してその悲しい目で見てこないで」
「何だ、唇腫れてるから何事かと思ったらそうゆう事かよ」
「姉さん、そんなに怖かったんですね。」
「久しぶりに怖かったわ」
「姉ちゃんは怖がりだなー、あんなん作りもんだぜ」
そんな会話をしていると、いつの間にかうちの近くまで帰って来ていて圭ちゃんとパーちゃん、ちーちゃんはじゃーなと言って帰宅してしまう。まだ電話をしていたケンちゃんもありがとうなと3人に言うとまた通話に戻ってどこかに歩いて行ってしまった
「疲れたー。タカちゃんお腹空かない?」
「空いたな」
「昨日作った炊き込みご飯があるから食べよ」
「ドラケンも電話終わらねーみたいだし、先に飯の準備しますか。雪那さん、手伝います」
疲れていたので手伝うと言ってくれたので少しテンションが上がり、帰宅して直ぐにエプロンを付けると手を洗ってから保温してある炊き込みご飯の状態を確認する。
ふんわりと鶏五目の良い匂い。豚汁の残りも漬物の残りもあるしこれで済ませちゃおうと思ったが、せっかくタカちゃんが来てくれているのでだし巻き玉子だけ作っていると、手伝える事あります?と聞いてくれたタカちゃんに配膳だけお願いする事にした
ささっとだし巻きを作って切り分けお皿に盛り温めた豚汁をよそえば、1度丁寧にテーブルを拭いたタカちゃんが配膳してくれていた
ケンちゃんが来るまで待とうと思ったけど、帰ってくる様子が全く無いので二人だけで映画の話をしながらご飯を食べた。その後9時から始まった海外ドラマを見ながらアイスを齧り、二人でソファでゴロゴロしていると、タカちゃんの携帯が鳴る。通話を押すと受話器の向こうからはケンちゃんの声が聞こえた
「ちょっとエマん所行ってくる。三ツ谷悪ぃんだけど明日の昼まで姉貴頼むわ」
「……ドラケン、エマちゃんち泊まんの?」
「マイキーも一緒だけどな」
「ああ、分かった。何かあったら連絡する」
ガチャリと切れた電話に、私でも分かるくらい隆の目が動揺しているのが分かった。そう言えば2人きりでうちに泊まる事は久しぶりかもしれない
私まで緊張すると、気まずくなりそうなので普通にケンちゃん帰って来ないの?と聞けばあぁ。としか言わないのでこちらも何も言わずにソファの背もたれに横になった
「ねー、この女優さん前に一緒に見た映画にも出てたよね」
「……」
「……どしたの?」
「あぁ、何?」
「さっきからぼーっとしすぎでしょ。眠いなら寝ていいよ」
おいでと言って、彼の肩を掴み自分の膝に寝かせようとするとバシッと手を振りほどかれて私は久しぶりに胸がズキリとした
「あ、悪ぃ。じゃなくてごめんな。違うんだ」
「うわーん。胸が痛い」
痛かったのは事実だけど、泣く程の事じゃない。
いつもみたいに冗談で泣き真似をしていると、本当に出て来た涙に自分がビックリして泣き真似をやめた
「……悲しい。寝る」
「……えっ」
タカちゃんの顔も見ずに早足で脱衣場に入り鍵を閉めた
何か泣いちゃって悪かったなと思いながら重い気分でお風呂に入り髪を乾かしてからリビングに寄らずにそのまま自室のベッドにダイブした
暗い部屋で枕に顔を埋めていると、何だか泣きたいような泣きたくない様な不思議な気持ちになってきた
開けっ放しのドアから足音が聞こえて、ポスンとベッドが沈む。ごめんな。と言いながら優しく頭を撫でてくるタカちゃんに内心こちらがごめんと言いたくなったが、このシリアスな空気でいると泣いてしまいそうなので
ひょっこりと布団から目元だけ出して冗談混じりに睨むと、困った様な顔で私を見ていた
「……むー」
「……ごめん、痛かった?」
「痛かったので、タカちゃんお仕置していい?」
「いいよ」
叩いていいよと言って、目を瞑ったタカちゃんに叩かないだろと内心笑ってしまう。可愛い顔してるなと思いながら彼の鼻の頭にちゅっと優しく口付けると、目を開いて少し困った様に笑い溜息をつかれる
「ふふふ、引っかかった」
「……おいで」
何だかその、おいでが優しい様な怖い様な声に聞こえた。ごめん、怒ったかな?と言えばフルフルと首を横に振り、手を引き私を自分の上に乗せて優しく抱き締めてくる
「…どしたの?」
「……いや、今日は……雪那さんに甘えて良いかな?」
「全然いいよ、添い寝もしてあげる」
「……じゃあ、してもらおうかな」
珍しいなと思った。いつもならハイハイって言ってリビングに戻るのに。
困惑が少しだけ見え隠れする瞳のまま、そのままパタンと私を倒したタカちゃんは自分も横になると私の頭を優しく抱いた
何だか落ち着く匂いと、温かさに目を瞑る
背中に手を回して彼の背を優しく摩っていると何だか眠くなってきてしまい欠伸をすると、急に私の首筋に顔を埋めてきて、ドキリと心臓が高鳴った
ドキドキと鳴る心臓の音。煩いくらいの音を聞いたのか少しだけ彼はフッと小さく笑うと私の頬に優しく口付けを落としお休みと微笑んだ
「……うん。お休み」
何だかこのまま寝てもいいのかな何て少し思ったけれど、温かくて落ち着く匂いがして彼にギュッと抱き着いていると安心して瞼が開かなくなってしまった
「……隆だーいすき」
「……かわい。おれも」
意識が落ちる直前に服を握りしめてそう言えば、優しい声色で返ってきて、何だか安心してそのまま意識を手放した
手放す直前に、これだけ許してって小さな声が聞こえて温かくて柔らかい物が唇に触れた様な気がした
あの事件から、義母は少し心配性になってしまい週に2回は顔を見に来るようになった。ケンちゃんやマイキー達が恋人を作らないって決めたのを聞いていたから私は何だか自然に自分も作らない方が良いんじゃ無いだろうかなんて思い初めていた
世の中には無抵抗の女の子に暴力を振るう変な輩がいるんだから、もしかしたら彼氏が出来たら私を含めてケンちゃんやマイキーに恨みを持つ輩何かに狙われちゃうかもしれない
そんな事は100%有り得ないって今まで思っていたけれどこの間の事でその考えはサラサラと無くなっていった
この間の事がトラウマになって変に勘ぐり過ぎているなと思いながら、手を繋いで帰宅するクラスメイトの後ろ姿をボンヤリとしながら見送った
チラっと教室から外を見れば黒髪ロン毛と金髪のラブリーちゃんを校門に発見して私は鞄を持ってルンルンで走り出す
靴を履いて外に出れば学校の皆が、圭ちゃん達と目が合わない様にそっぽを向きながら校門から出ていく姿を見て笑いを堪えながら走って、そのままちーちゃんの胸に飛びつくと優しく抱きとめてくれる
「たっだいま~」
「お姉さんお疲れ様です」
「ドラねーおっせぇよ。ほら、早よ行くぞ」
「ちーちゃんかわゆかわゆ」
ちーちゃんの胸にがっしりとしがみついてスリスリしていると、呆れた様に私を見る圭ちゃんは最近ケンちゃんに似てきたなぁと思う。最近チームに入ったと紹介されたちーちゃんは頭を撫でるとほんのり頬を染める犬系男子で、弟ラブな私からしたら最近の1番のメガヒットだった
雪那さん、よろしくお願いいたします。と言われたのでお姉ちゃんて呼んでねと頭を撫でなですると、普通にはい!と元気に返事する所がスレていなくてまた可愛かった
「うちの弟達は皆ワンコみたいで可愛いいわ~。圭ちゃんもドーベルマンみたいだし、ちーちゃんもチワワみたいだし」
「チワワですか……」
「三ツ谷はとパーは?」
「……シベリアンハスキーとブルドック」
「「確かに」」
3人で大笑いをして、そんな下らない話をしながら目的地に向かい歩き出した。学校から10分程歩くと見えてくる大きな建物に私は喜びで万歳する。軽食コーナーからレストランに雑貨屋からショッピング、映画からゲームセンターにボーリングまで揃っている最近出来たばかりの大型モールだ
クラスメイトの話題になっているこのモールに来てみたくて、1度少しだけ女の子達と軽食コーナーでハンバーガーを食べて楽しかった事を義母に話すと可愛い女の子達だけじゃ危ないから気をつけてとオロオロされてしまった
その話を多分、ケンちゃんが圭ちゃんにしたんだろう。私の携帯に急に圭ちゃんから珍しく電話が掛かってきて遊びに誘ってくれた
「どこ行く??」
「あー、待て。今他のやつも来るから」
「じゃあゲームセンター行こ」
「ドラねー全然話聞いてねーよな」
「俺が電話してゲームセンターにいるって言っておきますよ」
ちーちゃん優しいと腕を組み直して彼を引っ張ると、私に笑顔を向けながら携帯を取り出し電話を掛けだしたちーちゃんに何ていい子とスリスリする
まったくよーと言いながら、何だかんだ隣を歩いてくれる圭ちゃんにも優しさを感じて私は満足満足と幸せに浸りながら歩き出した
4階のゲームセンターに到着して、キョロキョロしながらUFOキャッチャーの景品を覗いていると
お菓子詰め合わせやネイル詰め合わせ、今流行りのキャラクターのフィギュアなどが沢山あって見ていて楽しい。お金はけっこう持ち合わせがあるけれと、なるべく安く損せず取りたくてお菓子の詰め合わせのUFOキャッチャーにお金を入れて操作する
横から見たり斜めから角度を変えて、真剣にゲーム機と向き合っていると圭ちゃんでもちーちゃんでも無い声が私に話しかけてくる
「……雪那さんてお菓子そんな好きだっけ?」
「私の愛するパーちゃんにプレゼントするのよ」
「だってよ、良かったな。パー」
「……あれ?2人共いつ来たの?」
「姉ちゃん。俺めっちゃ嬉しい」
私服のタカちゃんとパーちゃんが私を囲むように両隣にいた。ゲームに熱中していて全く気づかなかった私に2人はケラケラと笑い、3人で奮闘しながらも600円で詰め合わせを取ることが出来た私達は子供みたいにはしゃぎ回る
景品が出てくるガラスの扉から大きな袋を取り出してパーちゃんにはいッと渡すと、感動した様な声で姉ちゃんありがと。と可愛らしく言ったパーちゃんが可愛くて携帯で写真を撮りまくっていた
そろそろ行こうとタカちゃんに手を取られてゲームセンターの入口まで戻ると、ケンちゃんと圭ちゃん、ちーちゃんは何やら白い紙を見ながら話し合っている様だった
「……何その紙」
「クジ引きチケット」
「ん?どうゆう事?」
義母がケンちゃんに渡してきたのは映画のチケットが4枚とレストランのチケットが2枚、それと5000円の商品券が2枚。映画のチケットを見せてもらうと、今話題のベッタベタな恋愛邦画。それに何故かホラー映画のチョイス
レストランのチケットは2階にあるブュッフェ式のレストラン招待券だった。
「んで?ケンちゃんこれどうすんの?」
「クジ引きで決める」
「…何でクジ引き?何で皆バラバラ?…まぁ、いいけどさ」
絶対レストラン引くと意気込むパーちゃんと、恋愛映画見たいと目を輝かせるちーちゃん。特に何でもいいやの顔のタカちゃんと18禁映画追加しねぇ?とケンちゃんに聞く圭ちゃん
「……恋愛映画はちーちゃんで、レストランはパーちゃんで良くない?他だけクジ引きすれば?」
「ぜってー駄目だ。平等にする。後18禁は無い」
頑なにそう言ったケンちゃんに私と圭ちゃんはちぇっと唇を尖らせた
誰が作ったか分からないような汚い字のクジを皆で引いて、そのクジとご対面する。4番と書かれた文字に4番て何?!とはしゃぐ私の隣にいた圭ちゃんが私の声を聞いてスっと自分のクジをタカちゃんに渡して、タカちゃんのクジをサッと取ったのが横目で見えた
何してんだろと思ったけど、気にせずにケンちゃんにクジを渡すと微笑ましい笑みでホラー映画のチケットを渡されて白目になる
1番と大きな声で叫んだパーちゃんにニッコリと笑ったケンちゃんは恋愛映画のチケットを渡した
私の肩に寄りかかり白目になっているパーちゃんの背中を摩っていると、急に手を取られて雪那さん行こうと微笑んだのはタカちゃんだった
私がベンチからどき、そのままバタリと倒れたパーちゃんに皆でゲラゲラ笑っていると、白目の圭ちゃんがそんなパーちゃんを引きずりながら映画館の道を歩いていった
「……圭ちゃんとパーちゃんで恋愛映画キツいわ」
「…場地さん、やっぱカッケェな……」
「かっこいい部分今あった?」
「……いや、何でもないです。お姉さんは三ツ谷君と映画楽しんできて下さい」
「マジで俺ラッキー。な、千冬。俺達はレストランに居るから、もし姉貴に何かあったら三ツ谷俺に連絡して」
「ウッス」
「じゃ、また後でな」
変なクジ引きだな。何て思いながら手を引かれて、歩き出したタカちゃんの後ろを歩く。事件からいつも家にいてくれて色々お世話になったけど最近は会えて無かったから久しぶりに会えて凄い嬉しかった
人もそんなに多くない映画館に着いた私達はまず二人でチケット売り場の横にある飲食コーナーに向かった
「雪那さん、何か食べます?」
「ポップコーン何てどう?キャラメルと塩半分づつのやつ」
「すげぇ美味そうかも。雪那さん飲み物は?紅茶?」
「うん、紅茶にする。私が払うからいいよ」
「俺に払わせて」
そう言ってスっと会計を済ませ、飲み物とポップコーンを両手で持ったタカちゃんに素直にお礼を言うと、優しい笑みを向けられて久しぶりにその顔を見た私は抱き着きたくなるのを必死で抑える
「くっ……ぐぬぬ」
「急にどうしたんすか?」
「ポップコーンが邪魔で抱き付けない」
プッと吹き出したタカちゃんは楽しそうにケラケラ笑ってから、中暗いんで転ばない様にと言って私の手を自分の腕に掴ませて荷物を持ち直した
いちいち何てかっこいいんだ。けしからんと私がブツブツ言う度に笑うものだから私も少しづつ楽しくなってきて二人でケラケラ笑っていた
館内は以外に暗くて、何度か躓きそうになったけど彼の腕を持っていたお陰で転びはしなかった
二人でチケットの席に座り小声で話をしていると、上映前の広告が始まったのでワクワクしながら画面を見つめる
チラッと隣を見れば、垂れた目で静かに画面に釘付けなタカちゃん。聞いてなかったけどホラー映画大丈夫な人?と聞けば、雪那さん、作りもんだよ。とシラっと返されてそれは確かにそうなんだけどさ。と言いながら目線を画面に戻した
上映から30分くらいして、席を立ちたくなる衝動に駆られる。呪いとか、髪の長い女の人が四つん這いんでとか頭がパニックになってきて内心今日夜寝れるのかすら不安なレベルだ
これを作った監督は相当天才だな何て思いながら顔を手で隠す作戦に出た私に、隣に居るタカちゃんは背中を丸めてうずくまっていた
「ど、どしたの?」
小声でお腹痛いの?と心配して彼の耳元に唇を寄せると、クククッと笑い声が聞こえてきたので、額に優しくデコピンをかました
「……この歳で、顔隠すって技中々見ねえよ」
小さく笑い続けるタカちゃんに、ムスッとしながら彼の腕に抱き着いて片目だけで画面を見つめる
いきなり出て来た髪の毛を振り乱した女性にビクーンと体を震わせると、どんだけ怖ぇんだよと笑いながら優しく頭を撫でてくれた
結局、紅茶を飲もうとしてまた女の人に驚いてストローを思いっきり喉に刺し、ビックりして唇を噛んだ私にタカちゃんは笑えなくなって私の手を引いて荷物を持ち退席した
「……けっこう深く噛んだな」
「そんな強く触ったら痛い」
「悪ぃ、ここだと消毒も出来ねーや。大丈夫?」
「全然平気、でも、もうビクビクしすぎて体が疲れたよ」
「マジで笑わせないで。あー、けっこう時間あるな。……他を色々見て見て回ろうか」
「うん」
血を拭いてくれて、未だに笑いが収まらないタカちゃんは私の手を取るとエスカレーターに乗って3階に降りた。3階には出店みたいな雑貨屋が並んでいて、キラキラと色とりどりなお店にワクワクとしてきて急ぎ足で近くのお店から品物を覗く
「可愛い~、サンキャッチャーか。お洒落」
「何か色々あんな、欲しい物ありますか?」
「うーん、どうかな……。ちょっと見てみる」
タカちゃんから離れてブラブラと出店を覗いていると、淡いグレーパープルのジルコニアが1ミリサイズで横に6個入っている細めのゴールドの指輪と小さな同じデザインのピアスセットを見つけて立ち止まる
24金とか良い物では無いけれど、錆びにくい素材で作られていると説明欄に書いてあり指輪が2500円でピアスが1900円と中々手頃だ。同じ様な物を作れないか考えたけど指輪は作るのは難しいかな何て思いながら手に取り右手の中指に嵌めると最後まで入らない
無理して入れても取れなくなったら怖いので、他の指に入れようかと見つめていると、ヒョイと顔を出したタカちゃんがそれ欲しいの?と聞いてくる
「うーん、凄く気に入ったから欲しいんだけど右手に入らなかった」
「けっこう細いリングだな、ありきたりのデザインだから雪那さんのが可愛いの作れるんじゃね?」
「うーん、この色が凄い気にいったんよね。」
指輪をつまみ、タカちゃんの瞳の横に掲げるとやっぱり同じ色をしていた。ニシシと笑いながら、隆の瞳と同じ色と言えば少しだけ目を見開いてからフッと笑ったタカちゃんはその指輪を私の左手の薬指に優しく嵌めた
「あ、ピッタリ」
「……かわい」
「可愛い?私も凄い気に入ったんだ」
「そっちじゃねーよ」
「ん?」
「 雪那さん、良かったらプレゼントさせてよ」
「えっ?いいの?」
「……ちょっと早いけど気に入ったんなら誕生日プレゼント」
「えー……じゃあさ」
隣に置いてあったお揃いの細い小さなリングのピアスを手に取ると、タカちゃんのピアスを優しく外してそのリングピアスを耳に付ける
「じゃあ、私からお揃いでプレゼント」
似合うと私が笑えば、嬉しそうな気恥しい様な顔をしたタカちゃんはありがとうと言って片手で私を軽く抱き締めてから頭に軽く唇を付けた
あの時の口付けと一緒だな、何て思いながら込み上げてくる愛しさに蓋をして私はこちらこそありがとうと笑った
店員さんを呼んで、お互いお金を払うと商品を包装せずにそのままお店を出た。内心、隆が指に嵌めてくれたから取りたくなかった何てポンと出て来た思いに恥ずかしくなって嬉しくてずっと指輪を見ていた
弟分で、可愛くて、大好きなのに何か違う愛してるがある事に私は少しづつ気付いているような気がした。そう言えばお店を出てから終始無言なタカちゃんにあれ?と思い、腕に抱き着いても無反応。
「……タカちゃん、?たかしくーん」
「……ん?」
「どしたの??」
タカちゃんの目線を追えば、私の指輪を見ている様だった。見て何か考えている様にぼーっとしている彼の耳に付いたピアスを見て何だか色々な思いが込み上げて来て私もぼーっとしていると、聞きなれた声が遠くから聞こえて私はタカちゃんの頬を優しく引っ張った
「タカちゃん、ケンちゃん呼んでるよ」
「……やべ、忘れてた」
2階から3階に上がってくるエスカレーターの前でこちらを見ながら手を振るケンちゃんの元に走って行くと何故か私が電話出ろやと頭にゲンコツを食らって。
それで隆が殴るんじゃねぇとケンちゃんに切れて珍しく喧嘩になり、ちーちゃんが一人で止めに入り2人に殴られ
騒ぎを聞いて走って来た圭ちゃんとパーちゃんが2人を止めて殴られて切れて結局4人が喧嘩になった
私が巻き込まれて怪我をする事を恐れたちーちゃんに手を引かれ二人で離れた所から4人を見ながら紅茶の残りを啜っていると、20分くらいしてから息を切らした4人がこちらに向かってきて私はそれを見て大笑いしていた
家までの帰り道、喧嘩で疲れきった4人と私とちーちゃんで夕陽が差す街並みをトボトボと歩く
「……てかよ、結局何でドラケンと三ツ谷が喧嘩してたの?」
「ドラケンが雪那さんの頭にゲンコツかましたから俺が怒った」
「ドラケンが悪い」
「ドラケンが悪ぃ」
「ケンちゃんが悪い」
「……チッ」
舌打ちしたケンちゃんは、へーへー悪かったですねと言いながら携帯に手を伸ばす。震える携帯の通話ボタンを押すと私達から少し離れた
「圭ちゃん、パーちゃん映画どうだった?」
「……ま、映画自体は良かったんじゃね?」
「場地泣いてたじゃん」
「お前はずっと寝てたけどな」
「なんだよ、パー寝てたのかよ」
「三ツ谷は映画どうだったんだよ」
「……笑いすぎて死ぬかと思った」
「ホラー映画じゃなかったか?」
「…映画は、まぁ普通にホラー映画だったけど。雪那さんが手で目隠して画面見ててそれに最初吹いて、次に俺を目隠し代わりにしてきてビクんて毎回なるからそれに吹き出して、最後に紅茶飲んでる時にビクッってなったらストローが喉に刺さって唇深く噛んで流血して笑えなくて途中で映画館でた」
「「「…………」」」
「皆してその悲しい目で見てこないで」
「何だ、唇腫れてるから何事かと思ったらそうゆう事かよ」
「姉さん、そんなに怖かったんですね。」
「久しぶりに怖かったわ」
「姉ちゃんは怖がりだなー、あんなん作りもんだぜ」
そんな会話をしていると、いつの間にかうちの近くまで帰って来ていて圭ちゃんとパーちゃん、ちーちゃんはじゃーなと言って帰宅してしまう。まだ電話をしていたケンちゃんもありがとうなと3人に言うとまた通話に戻ってどこかに歩いて行ってしまった
「疲れたー。タカちゃんお腹空かない?」
「空いたな」
「昨日作った炊き込みご飯があるから食べよ」
「ドラケンも電話終わらねーみたいだし、先に飯の準備しますか。雪那さん、手伝います」
疲れていたので手伝うと言ってくれたので少しテンションが上がり、帰宅して直ぐにエプロンを付けると手を洗ってから保温してある炊き込みご飯の状態を確認する。
ふんわりと鶏五目の良い匂い。豚汁の残りも漬物の残りもあるしこれで済ませちゃおうと思ったが、せっかくタカちゃんが来てくれているのでだし巻き玉子だけ作っていると、手伝える事あります?と聞いてくれたタカちゃんに配膳だけお願いする事にした
ささっとだし巻きを作って切り分けお皿に盛り温めた豚汁をよそえば、1度丁寧にテーブルを拭いたタカちゃんが配膳してくれていた
ケンちゃんが来るまで待とうと思ったけど、帰ってくる様子が全く無いので二人だけで映画の話をしながらご飯を食べた。その後9時から始まった海外ドラマを見ながらアイスを齧り、二人でソファでゴロゴロしていると、タカちゃんの携帯が鳴る。通話を押すと受話器の向こうからはケンちゃんの声が聞こえた
「ちょっとエマん所行ってくる。三ツ谷悪ぃんだけど明日の昼まで姉貴頼むわ」
「……ドラケン、エマちゃんち泊まんの?」
「マイキーも一緒だけどな」
「ああ、分かった。何かあったら連絡する」
ガチャリと切れた電話に、私でも分かるくらい隆の目が動揺しているのが分かった。そう言えば2人きりでうちに泊まる事は久しぶりかもしれない
私まで緊張すると、気まずくなりそうなので普通にケンちゃん帰って来ないの?と聞けばあぁ。としか言わないのでこちらも何も言わずにソファの背もたれに横になった
「ねー、この女優さん前に一緒に見た映画にも出てたよね」
「……」
「……どしたの?」
「あぁ、何?」
「さっきからぼーっとしすぎでしょ。眠いなら寝ていいよ」
おいでと言って、彼の肩を掴み自分の膝に寝かせようとするとバシッと手を振りほどかれて私は久しぶりに胸がズキリとした
「あ、悪ぃ。じゃなくてごめんな。違うんだ」
「うわーん。胸が痛い」
痛かったのは事実だけど、泣く程の事じゃない。
いつもみたいに冗談で泣き真似をしていると、本当に出て来た涙に自分がビックリして泣き真似をやめた
「……悲しい。寝る」
「……えっ」
タカちゃんの顔も見ずに早足で脱衣場に入り鍵を閉めた
何か泣いちゃって悪かったなと思いながら重い気分でお風呂に入り髪を乾かしてからリビングに寄らずにそのまま自室のベッドにダイブした
暗い部屋で枕に顔を埋めていると、何だか泣きたいような泣きたくない様な不思議な気持ちになってきた
開けっ放しのドアから足音が聞こえて、ポスンとベッドが沈む。ごめんな。と言いながら優しく頭を撫でてくるタカちゃんに内心こちらがごめんと言いたくなったが、このシリアスな空気でいると泣いてしまいそうなので
ひょっこりと布団から目元だけ出して冗談混じりに睨むと、困った様な顔で私を見ていた
「……むー」
「……ごめん、痛かった?」
「痛かったので、タカちゃんお仕置していい?」
「いいよ」
叩いていいよと言って、目を瞑ったタカちゃんに叩かないだろと内心笑ってしまう。可愛い顔してるなと思いながら彼の鼻の頭にちゅっと優しく口付けると、目を開いて少し困った様に笑い溜息をつかれる
「ふふふ、引っかかった」
「……おいで」
何だかその、おいでが優しい様な怖い様な声に聞こえた。ごめん、怒ったかな?と言えばフルフルと首を横に振り、手を引き私を自分の上に乗せて優しく抱き締めてくる
「…どしたの?」
「……いや、今日は……雪那さんに甘えて良いかな?」
「全然いいよ、添い寝もしてあげる」
「……じゃあ、してもらおうかな」
珍しいなと思った。いつもならハイハイって言ってリビングに戻るのに。
困惑が少しだけ見え隠れする瞳のまま、そのままパタンと私を倒したタカちゃんは自分も横になると私の頭を優しく抱いた
何だか落ち着く匂いと、温かさに目を瞑る
背中に手を回して彼の背を優しく摩っていると何だか眠くなってきてしまい欠伸をすると、急に私の首筋に顔を埋めてきて、ドキリと心臓が高鳴った
ドキドキと鳴る心臓の音。煩いくらいの音を聞いたのか少しだけ彼はフッと小さく笑うと私の頬に優しく口付けを落としお休みと微笑んだ
「……うん。お休み」
何だかこのまま寝てもいいのかな何て少し思ったけれど、温かくて落ち着く匂いがして彼にギュッと抱き着いていると安心して瞼が開かなくなってしまった
「……隆だーいすき」
「……かわい。おれも」
意識が落ちる直前に服を握りしめてそう言えば、優しい声色で返ってきて、何だか安心してそのまま意識を手放した
手放す直前に、これだけ許してって小さな声が聞こえて温かくて柔らかい物が唇に触れた様な気がした
