ケンちゃんのお姉ちゃん 大寿君の妹ちゃん
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中学2年生の夏休み、毎日凄く暑くて勿論宿題はやる気はしないしプールも日焼けするのが嫌だし。毎日毎日夏のアニメ特集を見たりアイスを齧りながらダラダラと過ごしていた
段々と迫ってくる夏休みの終わり。カレンダーを見てゲンナリしながらそろそろ宿題に手を付けようか考えているとクラスの女の子から携帯に電話が来て皆でお祭りに行かないかと誘われた。
「浴衣で17時に〇〇公園に集合ね。」と明るい声で言われて、「ええっ?浴衣?」と思わず声を出せば既に通話は終わっていた。耳から離したスマホをベットに投げ捨てて直ぐにクローゼットを漁れば去年の夏に買った白地にグレーと黒の牡丹の浴衣がクリーニング済の袋に入ったままタンスの奥から出てきた
浴衣を見つめながら着付け何て私1人で出来るのか?と考えながら唸っていると、「ただいま」と聞こえて来た声にハッと顔を上げた。丁度良く帰宅したケンちゃんに着付けの手伝いをお願いすると機嫌が良いのか「別にいーけど」と言ってくれたので、「ひゃほー」と言って万歳しながら腕に抱き着いた。嫌そうに白い目でこちらを見てくるケンちゃんにニヤニヤしながらそのまま擦り付くと普通に頭をはたかれた
「分かったから近寄るな」
「ぐぬぬ……意地悪」
「……着付けか。俺は出来ねぇから三ツ谷かエマに頼むべ」
「着付けでタカちゃんの名前が出るのは凄いなぁ。あの子は本当に優秀だねぇ」
「三ツ谷なら集会あるから多分俺の事迎えにくるんじゃね?待ってれば?」
「……17時だから時間無いしとりあえず自分で出来る所までやるわ」
「よく言った、頑張れ姉貴」
「頑張るー」
おーと言いながら部屋に戻り、ファッション雑誌に載っていた浴衣特集の着付けを見ながらその通りに着こなしてみる事にした。エアコンが付いているのに段々と暑くなってきてアップにした項から汗がしたたり浴衣は上手く着れずに何故か体が紐でぐるぐる巻きになった。泣きそうになっていると裾を踏んでしまいひっくり返ってそのまま扉に頭をぶつけ「ギャ」と間抜けな声が自室に響いた。
頭を撫でながら無表情で起き上がり浴衣を脱ぎ捨てて力いっぱい解いた紐を扉に投げつけると、ガチャリと扉が開いて何か言おうとしていたケンちゃんの顔にムチみたいに紐がヒットした
「……あ、ごめん」
「いってぇ、お前何すんのマジで」
ケンちゃんの後ろに居たタカちゃんが私を見てギョッとして顔を背けると、ケンちゃんが「服着ろよ馬鹿」と頭をピシャリと叩いて来たので脱ぎ捨てた浴衣を羽織りながら「テメーがノックしろよ」と怒り狂ると、優しい笑みを浮かべながらこちらに歩いて来たタカちゃんは「この柄凄ぇ似合ってる、可愛い」と言って私の頭を撫でた
「えへへ。白似合うかな?」
「めっちゃ可愛いよ、後でメイクもしてあげるね」
「……三ツ谷」
「……何だよ、ドラケン」
「ハァ……何でもねぇ」
「雪那さん、ちょっと腕上げて」と言って、その言葉に素直に腕を上げた。器用に紐で長さを調節しながら結い、苦しくないか確認しながら上手に帯を結んでいく彼の手捌きは無駄が無く思わず感心してしまう。「やっぱり三ツ谷スゲェな」と言って笑っているケンちゃんに私もうんうんと頷いた
「タカちゃん凄ーい。こんなに早く出来るなんてビックリだよ」
「後ろ向いて……。はい、これでOK。あ、雪那さん待ち合わせ何時?良かったら送ってくよ」
バイク危ないから歩いて行くよと微笑むと、一人で転ばない?と心配されて幼稚園児かよと泣きたくなった。絶対転ぶだろと言ってくるケンちゃんを無視してゆっくりとベットに座り汗を拭いてメイクを直していると、タカちゃんはこの色のがこの浴衣には良いよと言って私のポーチから銀色のアイシャドウを手に取った。真面目な顔をしたタカちゃんの指の腹が私の瞼を優しく撫で、私はその真面目な顔を穴が空くんじゃないかって程見つめていた
「…見すぎじゃね?」
「可愛くてカッコイイ、凄いしゅきしゅき」
「……頼むから至近距離で言わないで」
「お前馬鹿じゃねーの?」
「ケンちゃんはやかましいわ」
「はい、出来たよ。あんまり濃くすると腫れぼったくなっちゃうからこれくらいのが良いと思う」
「……本当だ。何か目がハッキリした感じ」
「雪那さん、すげーかわい。」
「タカちゃんいつもありがとう、だーいすき」
立ち上がり彼の柔らかな頬に軽くちゅっとキスをすると、目を見開いたタカちゃんに行ってきますと笑顔で言って、呆れた顔をしているケンちゃんの横をすり抜けてルンルン気分で下駄を履いて家を出た。
少し歩くと後ろからケンちゃんが玄関から手を振って何かを叫んでいたけれど、行ってらっしゃいって言ってるんだなと思い手を振り返して待ち合わせ場所に急いだ
待ち合わせ場所の公園に着くと皆は既に到着していた。私を見つけ、手を振ってこちらに向かってくるのは電話をくれた友人とクラスの女の子達で「雪那ちゃん似合ってるね、その柄の浴衣」と微笑んでくれる
「ありがとう、昔のだけどこれしか無くてさ。自分で着付け出来なくて時間間に合うかヒヤヒヤしたよ」
「急に電話してごめんねぇ」
「ううん、誘ってくれてありがとう」
そんな会話をしていると、クラスの男の子達がそろそろ行こーぜ何て言って歩き始め、私達も彼等に続いてお喋りをしながら歩き出した
出店を見ているだけで楽しくて、何を食べようかと悩んでいるとそれは皆同じだったらしい。「たこ焼きと焼きそばどっちにしよう」とポツリと呟いた友人の一言に皆も「……悩む……全部食べたいよね」と言って全員で頷いていた。
「何か、食べたい物買ったらあのべっこう飴の出店の横にテーブルあるから集合しようとか言ってたよ」
「分かった、私はさっきの通りで見掛けた串焼き食べたいから買ってくるね」
「私はそこの焼きそばにする、後でね」
そう言って来た道を少し戻り串焼き屋の前に来ると、屋台のおじさんに声を掛ける前にふと気付く。バックと財布が無い。
先程、何か叫んでるケンちゃんの事を思い出して私は泣きたくなった。「忘れ物してんぞー」って言ってたんだなと今更気付きどうしようか考えたが、皆の元に1回戻り事情を話して1000円貸して貰おうと思い
また、来た道を戻り歩き出して少し経った時だった
急にガシッと掴まれた手に体が自然とビクリと揺れて直ぐに振り返ると、そこに居たのは私のバックを持って笑っているタカちゃんだった
「……た、タカちゃん」
「 雪那さん、すげぇ探した。見つかって良かった、財布ないから何も食えなかったんじゃない?」
「うわぁーん。本当に大好きー」
「……俺も」
大好きと言ってスリスリと腕に擦り寄る私の頭を撫でるタカちゃんの表情は優しかった。内心この子は神だと思いながらバックを受け取り中身を確認すると、財布と携帯に何故か絆創膏まで入っていて何だか女子力の違いを見せつけられた気がした。それに、携帯まで忘れていた事さえ知らなくて少しだけ自分のアホさ加減に悲しくなった
「タカちゃん集会まで時間あるなら何かお礼にご馳走する」
「いらねーよ、なら俺がご馳走するわ。何食べたい?足痛くない?買ってくるよ」
「……タカちゃんは本当にいつも優しい。」
「俺は誰にでも優しい訳じゃねーけどな」
「ん?そうかな?」
「……何か食いたいの無いの?」
「串焼きと焼きそば買うから半分こしよ。払いは絶対譲らない」
「はいはい、じゃあ頂きます」
「……既に足が痛いから腕組んでも良い?」
「ぷっ、平気??絆創膏大当たりだな。……はい、どうぞ」
優しく手を取られて、その手を自分の腕に巻き付けると「体重かけて良いからな」と言って彼は歩き出した。そんな言動に自然と微笑んでしまう自分が居て、ニコニコと笑顔で歩いていると「後で絆創膏貼ろうな」と言ったタカちゃんに素直に頷いた
人混みを二人で歩いているとすれ違ったクラスメイトの女の子が振り返り、「 雪那ちゃん居ないと思ったら彼氏と居たんだね」と声をかけてきて「忘れ物届けて貰ってたの」と言えば親指を立てて笑った彼女は手を振り行ってしまった。
圭ちゃんと居ようがパーちゃんと居ようが兄弟で居ても二人だと皆彼氏と言ってくるので、中2になってからは特に否定もしなくなった。タカちゃんはそんな私達のやりとりを静かに見ていて、手を振り去ってゆくクラスメイトに小さく頭を下げている姿は何だか可愛かった
友人に手を振って別れると私達は人混みの中をまた歩き出す。人が多くて中々思うように進まなくて向かいから歩いてきた男の人にぶつかりそうになる手前で手を引かれて支えられる
「……あーぶね」
「ごめんごめん。下駄が歩きにくいわ」
「……下駄じゃなくても危なっかしいとは言わないでおく」
「もー言っちゃってるじゃんよぉ」
ハハハと笑ったタカちゃんに唇を尖らせながらやっと到着した串焼き屋の列に並んだ。直ぐに順番はやって来て、鉢巻をした汗だくのおじさんに「4本下さい」と言って財布を開く。……中身が入っていない。そういえばこの間有り金を全部使ってからお財布に金を入れて無かったのを思い出して私は泣きそうになりながら空を見つめた
「……何その顔、どしたの?…もしかして…財布に金入って無いとか?」
「……うぅ」
「 雪那さん、そんな悲しそうな顔しないで」
笑いを堪えているタカちゃんは自分の財布から1000円を取り出して店主に渡すと励ますように私の背を撫でた。それを見て微笑んだおじさんは、「お姉ちゃん優しい彼氏だな」何て言ってくる。その言葉に素直に照れているとタカちゃんは笑いもせず無表情だった
いつもなら何かしら返してくれるのに、何かマズかっただろうか
「……タカちゃん、ごめんね。...怒った?」
「……あ、ううん。ちょっとぼーっとしてただけ。俺が 雪那さんに怒るわけないじゃん」
「……何だ良かった。」
「後焼きそば買わないとな」
「焼きそばは……ごめんね。また払わしちゃう」
「全然いいからさ、寧ろ二人でデートみたいで嬉しいし」
「タカちゃん可愛い優しい大好き」
「……可愛いねぇ。まぁ、今はいいけど」
品物を受け取ったタカちゃんは私を見つめて「はい」と手を出した。その手を取ると指を絡められて恋人繋ぎをしてくるからちょっと照れてしまったけれど、赤くなっている顔を背けて歩いている隆が可愛くて見ていて今にも鼻血が出そうだった。
弟の友人写真集でも作ろうか、デジカメを持ってくればよかったと本気で考えていると、いつの間にか焼きそばの出店の行列に並んでいた
足がまた痛くなって来たのでタカちゃんに寄りかかって順番を待っていると、少し先の方に一緒に来たクラスの男子達を発見して私は笑顔で手を振った。すると、全員が気まずそうに下を向いて人混みに紛れて行ってしまう。バッグを持って来てくれた喜びと、懐いてくるタカちゃんが可愛すぎて忘れていたが普通にこの子は特攻服だったな。と私はいつも見慣れすぎて忘れてたけど世間の反応を改めて実感した
「さっきのクラスメイト??」
「……ん?うん、スルーされちゃった」
「この服で来なきゃ良かったよね。ごめんね雪那さん」
「どっちにしても、男の子はいつも話し掛けて来ないから大丈夫よ」
「ドラケン姉だから?」
「そうそう。男はいらんから、タカちゃんもマイキーもかずちゃんもパーちゃんも皆弟に欲しい」
「あれ?場地は?」
「圭ちゃんは色気あって可愛くないからダメ」
「ぷッ、何それ笑える」
「後性癖もアカンからダメ」
「……性癖?……」
「ん?どしたの?」
急にギュッと握られた手が痛くてビクリとすると、眉を寄せたタカちゃんは性癖って何?と低い声を出して私を冷たい目で見つめてきた。良く分からなくて口をポカンと開けた私はタカちゃんの浮き出た額をツンツンと触る
「…タカちゃん……額の血管切れそうだけど急にどしたの?」
「……雪那さん。何で場地の性癖何て知ってんの?」
「ん?この間ウチのリビングでsmプレイが最高だったって言いながらカレー食べてたから」
「…何だよ…聞いただけか」
「聞く以外に無いじゃん」
「……そうだ、ね。……ほら、順番きたよ」
いつもの表情に戻ったタカちゃんに良く分からずに変なのと首を傾げると、焼きそばの代金を払い品物を受け取った彼はまた私の手を優しく握り歩き出した
人混みの中彼の背中にくっついて歩いてるいると、段々と人気は少なくなっていった。手を引かれるまま何分か歩いているといつも彼等が集会をしている神社に辿り着き、端っこのベンチに腰を降ろしたタカちゃんの横に腰掛けて二人でガサガサとビニールを漁った
「美味しそー」
「腹減ったー」
まだ温かいパックを持って、頂きますと頭を下げてからパクリと食らいつく。座った事で足の痛みも和らぎ、口に入れた焼きそばは外で食べてるからか凄く美味しくて私は思わず頬に手を当てながら幸せに浸る。そんな私を見て優しい表情で見つめてくるタカちゃんの瞳から何だか愛情を感じた気がした
「本当に美味しぃぃ。やっぱりたまには外で食べるのもいいよね。お祭りの雰囲気が更に美味しくさせてる」
「俺は雪那さんの飯が1番好き」
「ふふっ、焼きそばも美味しいよ、口開けて」
言われた通りに素直に口を開けたタカちゃんの口に焼きそばを入れると、私を見つめてふわりと優しく笑った綺麗な彼の顔を見て私も微笑んだ
「……おい、バカップル。見てて恥ずかしいからマジで止めろ。本当にマジで」
「ねーちゃん、三ツ谷。俺にも焼きそば頂戴」
「姉ちゃん俺にも焼きそば分けて」
嫌そうなケンちゃんの声に振り返ると、マイキーやパーちゃんも居て2人は私の持っている焼きそばを見つめている。先程から聞いた事がある様なバイクの音が近いなと思っていたけどやっぱり彼等だった。タカちゃんは分かっていたのか驚く様子も無く串焼きを咀嚼していた
「1口だけね」
隣に座って来たマイキーの口にやきそばを入れると、私の膝の上にあったパックの焼きそばを全部そのまま口に入れたパーちゃんは1口だよと私に微笑んだ
「……うん、1口だったね。仕方ないね」
「うめぇ」と言いながらむしゃむしゃと焼きそばを咀嚼するパーちゃんの頭を無言で撫でると、「パーのバカヤロー」と言ってタカちゃんとマイキーが蹴りを入れ焼きそば吐き出せと背中を叩き出した
「コラコラやめなさい。パーちゃん吐いちゃうから」
「姉ちゃん、俺絶対意地でも吐かないから大丈夫」
何だか説得力あるなと思って笑っていると、ケンちゃんがそろそろ集会だからお前は帰れと言ってきたので素直に立ち上がった
「はいはい、皆喧嘩しない様にね」
「 雪那さん、送ります」
「大丈夫だよ、近いし。今日は人通りも多いから危なくないし」
「三ツ谷行くぞー」
「姉ちゃんまたな」
ちょっと眉を下げたタカちゃんの頭を撫でてから、気をつけてと言ってくれたマイキーとパーちゃんに手を振って帰路についた。以外に神社からは真っ直ぐ歩くだけなのだが東京なのに薄暗く畑や森も多い場所だ
人通りはあると思っていたが、余り無かったなぁなんて思いながら痛む足でゆっくり歩いていると、道の真ん中に4人くらいで座っている男の子達が見えて私は一瞬引き返そうか考えたが……
足も痛むし早く帰りたい。回り道は面倒なので目を合わさずにその横をすり抜けるように早足で歩いた
彼等の横を通り過ぎる瞬間、ガンと鈍い音が響いたと同時に頭に衝撃が走り膝をついた。痛む箇所を抑えると、生暖かくどロリとした物が頭から流れていた
石?転がった赤黒い物を眺めていると、帯を掴まれて私の体は反転した
「…お前…さっき三ツ谷と居ただろ」
「……居たけど。こんな事される筋合い無いけど」
「クソ生意気な女だな」
パシンと顔をはたかれて、目を見開くと首を掴まれて声が出せなくなった。背丈もそんなに変わらない中学生みたいな子なのにと力の違いを見せ付けられて内心びくびしてしまう
そんな内心を隠しながら、キッと睨んだ私の顔を覗き込んでニヤニヤと嫌な笑みで見てくる男の子達に本気でゾッとした
右手首に絡ませていた巾着バッグにゆっくりと手を入れてボタンを押して手で探りながら通話を押した
一か八かだけど、着信履歴の1番上は絶対に探してたと言っていた隆の筈だ。彼ならきっと私を助けてくれる
大人しくしていると少しだけ首を絞めている手が緩み、この女どうするよと4人が会話している中で巾着を持った震える手を顔に近付けて思い切り叫んだ
助けてと叫んだ声に4人は怯んだ顔を一瞬見せたが直ぐに口を塞がれて抱えられた
倉庫に連れていこうと言った男の発言に産まれて初めて怖くて足や手が震えてしまう。暴れていたらもしかしたら時間が稼げるかもと一瞬過ぎって、男の股間に思い切りパンチを入れると唸った男は怒り狂い私の顔に何回も拳を振るった
目の前が見えない。血なのか、瞼なのか分からない。目が痛くて髪が痛くて体を引き摺られているような感覚に意識が飛びそうになっていると聞きなれた単車の音が近付いてきてグッと手を強く握りしめた
三ツ谷だと言った男の手が私の髪を離し、隆の聞いた事が無いような大きな怒鳴り声と彼等の声が混ざりあって良く分からないけど
あぁ、隆が近くにいるからもう大丈夫なんだなって思えたらアドレナリンが消えた様に全身がズキズキと痛み出した
それから何分経ったのか分からないけれど、辺りは静かになっていた
「……雪那さん」
痛む体を支えられる感覚がして、ゆっくり目を開けると目の前にはさっきまで一緒に居たタカちゃんが私を見ていた。目が開かなくて2重に見えるけど確かに隆で手を頬に近付けるとギュッと手が握られて温かい雫がポタポタと私の頬に落ちてきた
「……た、かし、泣かないで、大丈夫」
「…… 雪那さん。ごめんな。俺が送ってればこんな事にならなかったのに」
「…タカちゃんのせいじゃない。…あの人達は?」
「……もう、いや、あんな奴らの事今は考え無くていいから」
「……姉ちゃん」
「は、八戒も来てくれたんだ……」
走って来てくれたのか、ハァハァと息を切らしている八戒の泣きそうな声に大丈夫だよと笑うと、次々と聞こえて来たバイクの音に私は力が抜けてタカちゃんの胸に擦り寄った
珍しく相当焦った声で私を呼ぶケンちゃんとマイキーに少し笑うと足音が近くなってきて皆が私を見ているのが分かったけど、痛くて目が開かなくて大丈夫だからと言いながらそのまま意識を手放してしまった
起きたら見慣れないベッドの上だった
個人部屋なのかベッドは部屋にポツンと置かれ1人きり。傍らに飾られている花はまだ新しい
浴衣は着ていなくて、病院のパジャマみたいな姿で横になっていた
ぼんやりとしながら起き上がり、辺りを見渡しても誰もいない。サイドテーブルにあった携帯を開けば充電は切れていてどうしようかと思っているとガラガラと開いた扉から入って来たのは私服のタカちゃんだった
「 雪那さん!」
「……タカちゃん良かった、ここ病院?」
「良かった、普通に話せてる」
「……何で?」
「はァ、説明は後で。とにかく良かった」
眼帯をされている目を優しく撫でられて、頭を包みこまれる様に抱き締めらる。その背を撫でて心配かけてごめんねと言えば首元に埋められた顔がふるふると横に揺れた
「……まだちょっと顔が痛いけど大丈夫そう。皆は?怪我してないよね?」
「……してない。皆も大丈夫だよ」
「あの人達は?」
「……あの馬鹿達は知らねーけど、全員病院にいるんじゃね?自業自得だろ」
「……そっか」
「……隆が……電話気付いてくれて良かった。本当にありがとう」
「……あの時」
タカちゃんのギリっと鳴った歯にビクリとして顔を上げる。目が合って悔しそうに目を逸らすと、あの時に 雪那さんの叫び声を聞いて心臓が止まるかと思った
本当に、守れなくてごめん。そう言って私を抱き締めるタカちゃんは13歳とは思えなかった
「……そんな事言わないで。来てくれたじゃん」
口元に笑みを作り彼の手を握る。まだ少し幼さ残るタカちゃんは何だか可愛いよりもカッコよくなったなと内心感じている自分がいた
それからケンちゃんと皆がお見舞いに来てくれた日には義母の付き添いの元退院も出来た
私は手足などに酷い怪我は無かったが、頭や顔を相当殴られていたらしく言語障害が残るんじゃないかとまで心配されていたらしい
勿論、私を殴っていた男の子もその周りも少年院に入る事になったと聞かされた
「痛いよー痛いよー」
「……うるせぇな。その顔は嘘だろ」
「ケンちん、流石に可哀想だろ。ねーちゃんどしたの?」
「マイキーちゃん優しい」
マイキーの顔を抱き締めてスリスリと擦り寄ると、どうせ姉ちゃんはアイスでも食いたいんだろと傷になっている口にアイスを突っ込まれて痛みで枕に倒れ込む
姉ちゃん!と言いながらつかさず私の口の中のアイスを奪おうとするパーちゃんに圭ちゃんとかずちゃんが
流石にやめろとツッコミを入れた
「ドラ姉ちゃん可哀想にな。今飲み物持ってくるからさ」
何だかんだ、かずちゃんと圭ちゃんは女の子に優しくて、私にお茶を運んでくれたり。圭ちゃんは買い物してきてくれたり包帯を変えてくれたり。
パーちゃんはずっと暇さえあればお菓子を買ってきてくれて私にお供えしてから自分で食べていた
マイキーやケンちゃんは控えめにしているけど、相当今回の事は応えたらしくて未だに少し、私を見て悲しそうな悔しそうな顔をしている時があった
「…ねぇ、ケンちゃん…タカちゃんは?」
「……三ツ谷は連絡取れない」
「……何で?」
シンと静まり返る室内。ゆっくりとマイキーが私の肩を優しく抱いて、ちょっとそっとしといてやってと言って笑った
「……まぁ、俺が三ツ谷なら相当辛いからな。姉貴も怪我治るまでゆっくりして、三ツ谷の事はそっとしといてやれ」
「……タカちゃん悪くないのに……」
「……ドラねーちゃん、今回の事は男からしたら悔しくて堪らないと思う」
「……かずちゃん」
「だな、でも三ツ谷は集会中にも関わらずに飛び出して行って、ドラねーを結果的に助けた。」
すげーよなとニカっと笑った圭ちゃんに微笑んでから頷いた
「電話してから、タカちゃんが来るの早かったからアレで済んだのに……。責任感じる事無いのにな」
俺が帰れなんて言わずに姉貴を近くで待たせておけば良かった。俺が悪ぃと言ったケンちゃんに私は首を横に振った。どちらにせよあの男の子達に、三ツ谷と居たなって言われたからもしかしたら遅かれ早かれやられてたかもと言えば、皆が目を合わせたのが分かった
「……ねーちゃんの事もあるし、少し考えねーとな。どちらにしろ隊長格は彼女作んの当分禁止な。妹や姉貴も狙われるかもしれねーし」
マイキーの言った一言に、皆は黙って頷くだけだった
何だか中学生って青春なのになぁ。何て思ったけれど
バイクと喧嘩があればけっこう大丈夫な人達だし。
もし誰かに彼女が出来て暴行されたりしてそれを聞いても嫌だし仕方ないのかなと思った
それから少しづつだけど、買い物はケンちゃんや義母と行ったり顔が治ってきたら学校にも行きだして私は普通の生活を取り戻した。が、やはり気になる
マイキーに言われた事を破るのは嫌だったけど、タカちゃんの姿がどうしても見たくて私は学校が終わると自転車を飛ばしてタカちゃんの家の前まで来た
集会には来てるってケンちゃんが言ってたから元気には元気何だろうけど、階段を上がりピンポンを押すか迷っていると手土産を忘れたな何て思い1度帰って何かデザートでも作ってから来ようかと思い付き家に帰ろうと振り返ると、そこには制服のタカちゃんが少しだけ微笑んで立っていた
何だかウルっときてしまって、走って行って飛び付くと手を広げてキャッチしてくれた彼の胸を抱き締めた
「……お見舞い来てくれなかったから、私から来ちゃった」
「……ごめんな。合わす顔無かった」
「...そんな事言わないで。泣いちゃうじゃない」
優しく撫でられた髪がサラサラと落ち、私の頭に口付ける仕草がやけに色っぽく感じて少し顔が熱くなったけど隊長格は恋愛禁止ってマイキーの言葉が直ぐに頭を埋めて、私はこの感情に蓋をする事にした
「……もう、傷痛くねぇの?」
「……ちょっとたまに痛いかな。タカちゃんのご飯食べたら良くなるのになぁ。全然看病してくれないし」
「……分かった。明日から毎日通うから」
「……前に言ってくれたじゃん、俺が守るって。」
「……あぁ」
雪那さんが、隣に居て良いって言ってくれるなら居ると言って私の首に顔を埋めたタカちゃんの背中を優しく撫でた。この蓋をした感情がどんな感情であれ、今彼が私の傍にいてくれれば良い
笑って抱き締めてくれたらどんな関係であれ幸せ何だと思うと、また涙が出て来てしまった
段々と迫ってくる夏休みの終わり。カレンダーを見てゲンナリしながらそろそろ宿題に手を付けようか考えているとクラスの女の子から携帯に電話が来て皆でお祭りに行かないかと誘われた。
「浴衣で17時に〇〇公園に集合ね。」と明るい声で言われて、「ええっ?浴衣?」と思わず声を出せば既に通話は終わっていた。耳から離したスマホをベットに投げ捨てて直ぐにクローゼットを漁れば去年の夏に買った白地にグレーと黒の牡丹の浴衣がクリーニング済の袋に入ったままタンスの奥から出てきた
浴衣を見つめながら着付け何て私1人で出来るのか?と考えながら唸っていると、「ただいま」と聞こえて来た声にハッと顔を上げた。丁度良く帰宅したケンちゃんに着付けの手伝いをお願いすると機嫌が良いのか「別にいーけど」と言ってくれたので、「ひゃほー」と言って万歳しながら腕に抱き着いた。嫌そうに白い目でこちらを見てくるケンちゃんにニヤニヤしながらそのまま擦り付くと普通に頭をはたかれた
「分かったから近寄るな」
「ぐぬぬ……意地悪」
「……着付けか。俺は出来ねぇから三ツ谷かエマに頼むべ」
「着付けでタカちゃんの名前が出るのは凄いなぁ。あの子は本当に優秀だねぇ」
「三ツ谷なら集会あるから多分俺の事迎えにくるんじゃね?待ってれば?」
「……17時だから時間無いしとりあえず自分で出来る所までやるわ」
「よく言った、頑張れ姉貴」
「頑張るー」
おーと言いながら部屋に戻り、ファッション雑誌に載っていた浴衣特集の着付けを見ながらその通りに着こなしてみる事にした。エアコンが付いているのに段々と暑くなってきてアップにした項から汗がしたたり浴衣は上手く着れずに何故か体が紐でぐるぐる巻きになった。泣きそうになっていると裾を踏んでしまいひっくり返ってそのまま扉に頭をぶつけ「ギャ」と間抜けな声が自室に響いた。
頭を撫でながら無表情で起き上がり浴衣を脱ぎ捨てて力いっぱい解いた紐を扉に投げつけると、ガチャリと扉が開いて何か言おうとしていたケンちゃんの顔にムチみたいに紐がヒットした
「……あ、ごめん」
「いってぇ、お前何すんのマジで」
ケンちゃんの後ろに居たタカちゃんが私を見てギョッとして顔を背けると、ケンちゃんが「服着ろよ馬鹿」と頭をピシャリと叩いて来たので脱ぎ捨てた浴衣を羽織りながら「テメーがノックしろよ」と怒り狂ると、優しい笑みを浮かべながらこちらに歩いて来たタカちゃんは「この柄凄ぇ似合ってる、可愛い」と言って私の頭を撫でた
「えへへ。白似合うかな?」
「めっちゃ可愛いよ、後でメイクもしてあげるね」
「……三ツ谷」
「……何だよ、ドラケン」
「ハァ……何でもねぇ」
「雪那さん、ちょっと腕上げて」と言って、その言葉に素直に腕を上げた。器用に紐で長さを調節しながら結い、苦しくないか確認しながら上手に帯を結んでいく彼の手捌きは無駄が無く思わず感心してしまう。「やっぱり三ツ谷スゲェな」と言って笑っているケンちゃんに私もうんうんと頷いた
「タカちゃん凄ーい。こんなに早く出来るなんてビックリだよ」
「後ろ向いて……。はい、これでOK。あ、雪那さん待ち合わせ何時?良かったら送ってくよ」
バイク危ないから歩いて行くよと微笑むと、一人で転ばない?と心配されて幼稚園児かよと泣きたくなった。絶対転ぶだろと言ってくるケンちゃんを無視してゆっくりとベットに座り汗を拭いてメイクを直していると、タカちゃんはこの色のがこの浴衣には良いよと言って私のポーチから銀色のアイシャドウを手に取った。真面目な顔をしたタカちゃんの指の腹が私の瞼を優しく撫で、私はその真面目な顔を穴が空くんじゃないかって程見つめていた
「…見すぎじゃね?」
「可愛くてカッコイイ、凄いしゅきしゅき」
「……頼むから至近距離で言わないで」
「お前馬鹿じゃねーの?」
「ケンちゃんはやかましいわ」
「はい、出来たよ。あんまり濃くすると腫れぼったくなっちゃうからこれくらいのが良いと思う」
「……本当だ。何か目がハッキリした感じ」
「雪那さん、すげーかわい。」
「タカちゃんいつもありがとう、だーいすき」
立ち上がり彼の柔らかな頬に軽くちゅっとキスをすると、目を見開いたタカちゃんに行ってきますと笑顔で言って、呆れた顔をしているケンちゃんの横をすり抜けてルンルン気分で下駄を履いて家を出た。
少し歩くと後ろからケンちゃんが玄関から手を振って何かを叫んでいたけれど、行ってらっしゃいって言ってるんだなと思い手を振り返して待ち合わせ場所に急いだ
待ち合わせ場所の公園に着くと皆は既に到着していた。私を見つけ、手を振ってこちらに向かってくるのは電話をくれた友人とクラスの女の子達で「雪那ちゃん似合ってるね、その柄の浴衣」と微笑んでくれる
「ありがとう、昔のだけどこれしか無くてさ。自分で着付け出来なくて時間間に合うかヒヤヒヤしたよ」
「急に電話してごめんねぇ」
「ううん、誘ってくれてありがとう」
そんな会話をしていると、クラスの男の子達がそろそろ行こーぜ何て言って歩き始め、私達も彼等に続いてお喋りをしながら歩き出した
出店を見ているだけで楽しくて、何を食べようかと悩んでいるとそれは皆同じだったらしい。「たこ焼きと焼きそばどっちにしよう」とポツリと呟いた友人の一言に皆も「……悩む……全部食べたいよね」と言って全員で頷いていた。
「何か、食べたい物買ったらあのべっこう飴の出店の横にテーブルあるから集合しようとか言ってたよ」
「分かった、私はさっきの通りで見掛けた串焼き食べたいから買ってくるね」
「私はそこの焼きそばにする、後でね」
そう言って来た道を少し戻り串焼き屋の前に来ると、屋台のおじさんに声を掛ける前にふと気付く。バックと財布が無い。
先程、何か叫んでるケンちゃんの事を思い出して私は泣きたくなった。「忘れ物してんぞー」って言ってたんだなと今更気付きどうしようか考えたが、皆の元に1回戻り事情を話して1000円貸して貰おうと思い
また、来た道を戻り歩き出して少し経った時だった
急にガシッと掴まれた手に体が自然とビクリと揺れて直ぐに振り返ると、そこに居たのは私のバックを持って笑っているタカちゃんだった
「……た、タカちゃん」
「 雪那さん、すげぇ探した。見つかって良かった、財布ないから何も食えなかったんじゃない?」
「うわぁーん。本当に大好きー」
「……俺も」
大好きと言ってスリスリと腕に擦り寄る私の頭を撫でるタカちゃんの表情は優しかった。内心この子は神だと思いながらバックを受け取り中身を確認すると、財布と携帯に何故か絆創膏まで入っていて何だか女子力の違いを見せつけられた気がした。それに、携帯まで忘れていた事さえ知らなくて少しだけ自分のアホさ加減に悲しくなった
「タカちゃん集会まで時間あるなら何かお礼にご馳走する」
「いらねーよ、なら俺がご馳走するわ。何食べたい?足痛くない?買ってくるよ」
「……タカちゃんは本当にいつも優しい。」
「俺は誰にでも優しい訳じゃねーけどな」
「ん?そうかな?」
「……何か食いたいの無いの?」
「串焼きと焼きそば買うから半分こしよ。払いは絶対譲らない」
「はいはい、じゃあ頂きます」
「……既に足が痛いから腕組んでも良い?」
「ぷっ、平気??絆創膏大当たりだな。……はい、どうぞ」
優しく手を取られて、その手を自分の腕に巻き付けると「体重かけて良いからな」と言って彼は歩き出した。そんな言動に自然と微笑んでしまう自分が居て、ニコニコと笑顔で歩いていると「後で絆創膏貼ろうな」と言ったタカちゃんに素直に頷いた
人混みを二人で歩いているとすれ違ったクラスメイトの女の子が振り返り、「 雪那ちゃん居ないと思ったら彼氏と居たんだね」と声をかけてきて「忘れ物届けて貰ってたの」と言えば親指を立てて笑った彼女は手を振り行ってしまった。
圭ちゃんと居ようがパーちゃんと居ようが兄弟で居ても二人だと皆彼氏と言ってくるので、中2になってからは特に否定もしなくなった。タカちゃんはそんな私達のやりとりを静かに見ていて、手を振り去ってゆくクラスメイトに小さく頭を下げている姿は何だか可愛かった
友人に手を振って別れると私達は人混みの中をまた歩き出す。人が多くて中々思うように進まなくて向かいから歩いてきた男の人にぶつかりそうになる手前で手を引かれて支えられる
「……あーぶね」
「ごめんごめん。下駄が歩きにくいわ」
「……下駄じゃなくても危なっかしいとは言わないでおく」
「もー言っちゃってるじゃんよぉ」
ハハハと笑ったタカちゃんに唇を尖らせながらやっと到着した串焼き屋の列に並んだ。直ぐに順番はやって来て、鉢巻をした汗だくのおじさんに「4本下さい」と言って財布を開く。……中身が入っていない。そういえばこの間有り金を全部使ってからお財布に金を入れて無かったのを思い出して私は泣きそうになりながら空を見つめた
「……何その顔、どしたの?…もしかして…財布に金入って無いとか?」
「……うぅ」
「 雪那さん、そんな悲しそうな顔しないで」
笑いを堪えているタカちゃんは自分の財布から1000円を取り出して店主に渡すと励ますように私の背を撫でた。それを見て微笑んだおじさんは、「お姉ちゃん優しい彼氏だな」何て言ってくる。その言葉に素直に照れているとタカちゃんは笑いもせず無表情だった
いつもなら何かしら返してくれるのに、何かマズかっただろうか
「……タカちゃん、ごめんね。...怒った?」
「……あ、ううん。ちょっとぼーっとしてただけ。俺が 雪那さんに怒るわけないじゃん」
「……何だ良かった。」
「後焼きそば買わないとな」
「焼きそばは……ごめんね。また払わしちゃう」
「全然いいからさ、寧ろ二人でデートみたいで嬉しいし」
「タカちゃん可愛い優しい大好き」
「……可愛いねぇ。まぁ、今はいいけど」
品物を受け取ったタカちゃんは私を見つめて「はい」と手を出した。その手を取ると指を絡められて恋人繋ぎをしてくるからちょっと照れてしまったけれど、赤くなっている顔を背けて歩いている隆が可愛くて見ていて今にも鼻血が出そうだった。
弟の友人写真集でも作ろうか、デジカメを持ってくればよかったと本気で考えていると、いつの間にか焼きそばの出店の行列に並んでいた
足がまた痛くなって来たのでタカちゃんに寄りかかって順番を待っていると、少し先の方に一緒に来たクラスの男子達を発見して私は笑顔で手を振った。すると、全員が気まずそうに下を向いて人混みに紛れて行ってしまう。バッグを持って来てくれた喜びと、懐いてくるタカちゃんが可愛すぎて忘れていたが普通にこの子は特攻服だったな。と私はいつも見慣れすぎて忘れてたけど世間の反応を改めて実感した
「さっきのクラスメイト??」
「……ん?うん、スルーされちゃった」
「この服で来なきゃ良かったよね。ごめんね雪那さん」
「どっちにしても、男の子はいつも話し掛けて来ないから大丈夫よ」
「ドラケン姉だから?」
「そうそう。男はいらんから、タカちゃんもマイキーもかずちゃんもパーちゃんも皆弟に欲しい」
「あれ?場地は?」
「圭ちゃんは色気あって可愛くないからダメ」
「ぷッ、何それ笑える」
「後性癖もアカンからダメ」
「……性癖?……」
「ん?どしたの?」
急にギュッと握られた手が痛くてビクリとすると、眉を寄せたタカちゃんは性癖って何?と低い声を出して私を冷たい目で見つめてきた。良く分からなくて口をポカンと開けた私はタカちゃんの浮き出た額をツンツンと触る
「…タカちゃん……額の血管切れそうだけど急にどしたの?」
「……雪那さん。何で場地の性癖何て知ってんの?」
「ん?この間ウチのリビングでsmプレイが最高だったって言いながらカレー食べてたから」
「…何だよ…聞いただけか」
「聞く以外に無いじゃん」
「……そうだ、ね。……ほら、順番きたよ」
いつもの表情に戻ったタカちゃんに良く分からずに変なのと首を傾げると、焼きそばの代金を払い品物を受け取った彼はまた私の手を優しく握り歩き出した
人混みの中彼の背中にくっついて歩いてるいると、段々と人気は少なくなっていった。手を引かれるまま何分か歩いているといつも彼等が集会をしている神社に辿り着き、端っこのベンチに腰を降ろしたタカちゃんの横に腰掛けて二人でガサガサとビニールを漁った
「美味しそー」
「腹減ったー」
まだ温かいパックを持って、頂きますと頭を下げてからパクリと食らいつく。座った事で足の痛みも和らぎ、口に入れた焼きそばは外で食べてるからか凄く美味しくて私は思わず頬に手を当てながら幸せに浸る。そんな私を見て優しい表情で見つめてくるタカちゃんの瞳から何だか愛情を感じた気がした
「本当に美味しぃぃ。やっぱりたまには外で食べるのもいいよね。お祭りの雰囲気が更に美味しくさせてる」
「俺は雪那さんの飯が1番好き」
「ふふっ、焼きそばも美味しいよ、口開けて」
言われた通りに素直に口を開けたタカちゃんの口に焼きそばを入れると、私を見つめてふわりと優しく笑った綺麗な彼の顔を見て私も微笑んだ
「……おい、バカップル。見てて恥ずかしいからマジで止めろ。本当にマジで」
「ねーちゃん、三ツ谷。俺にも焼きそば頂戴」
「姉ちゃん俺にも焼きそば分けて」
嫌そうなケンちゃんの声に振り返ると、マイキーやパーちゃんも居て2人は私の持っている焼きそばを見つめている。先程から聞いた事がある様なバイクの音が近いなと思っていたけどやっぱり彼等だった。タカちゃんは分かっていたのか驚く様子も無く串焼きを咀嚼していた
「1口だけね」
隣に座って来たマイキーの口にやきそばを入れると、私の膝の上にあったパックの焼きそばを全部そのまま口に入れたパーちゃんは1口だよと私に微笑んだ
「……うん、1口だったね。仕方ないね」
「うめぇ」と言いながらむしゃむしゃと焼きそばを咀嚼するパーちゃんの頭を無言で撫でると、「パーのバカヤロー」と言ってタカちゃんとマイキーが蹴りを入れ焼きそば吐き出せと背中を叩き出した
「コラコラやめなさい。パーちゃん吐いちゃうから」
「姉ちゃん、俺絶対意地でも吐かないから大丈夫」
何だか説得力あるなと思って笑っていると、ケンちゃんがそろそろ集会だからお前は帰れと言ってきたので素直に立ち上がった
「はいはい、皆喧嘩しない様にね」
「 雪那さん、送ります」
「大丈夫だよ、近いし。今日は人通りも多いから危なくないし」
「三ツ谷行くぞー」
「姉ちゃんまたな」
ちょっと眉を下げたタカちゃんの頭を撫でてから、気をつけてと言ってくれたマイキーとパーちゃんに手を振って帰路についた。以外に神社からは真っ直ぐ歩くだけなのだが東京なのに薄暗く畑や森も多い場所だ
人通りはあると思っていたが、余り無かったなぁなんて思いながら痛む足でゆっくり歩いていると、道の真ん中に4人くらいで座っている男の子達が見えて私は一瞬引き返そうか考えたが……
足も痛むし早く帰りたい。回り道は面倒なので目を合わさずにその横をすり抜けるように早足で歩いた
彼等の横を通り過ぎる瞬間、ガンと鈍い音が響いたと同時に頭に衝撃が走り膝をついた。痛む箇所を抑えると、生暖かくどロリとした物が頭から流れていた
石?転がった赤黒い物を眺めていると、帯を掴まれて私の体は反転した
「…お前…さっき三ツ谷と居ただろ」
「……居たけど。こんな事される筋合い無いけど」
「クソ生意気な女だな」
パシンと顔をはたかれて、目を見開くと首を掴まれて声が出せなくなった。背丈もそんなに変わらない中学生みたいな子なのにと力の違いを見せ付けられて内心びくびしてしまう
そんな内心を隠しながら、キッと睨んだ私の顔を覗き込んでニヤニヤと嫌な笑みで見てくる男の子達に本気でゾッとした
右手首に絡ませていた巾着バッグにゆっくりと手を入れてボタンを押して手で探りながら通話を押した
一か八かだけど、着信履歴の1番上は絶対に探してたと言っていた隆の筈だ。彼ならきっと私を助けてくれる
大人しくしていると少しだけ首を絞めている手が緩み、この女どうするよと4人が会話している中で巾着を持った震える手を顔に近付けて思い切り叫んだ
助けてと叫んだ声に4人は怯んだ顔を一瞬見せたが直ぐに口を塞がれて抱えられた
倉庫に連れていこうと言った男の発言に産まれて初めて怖くて足や手が震えてしまう。暴れていたらもしかしたら時間が稼げるかもと一瞬過ぎって、男の股間に思い切りパンチを入れると唸った男は怒り狂い私の顔に何回も拳を振るった
目の前が見えない。血なのか、瞼なのか分からない。目が痛くて髪が痛くて体を引き摺られているような感覚に意識が飛びそうになっていると聞きなれた単車の音が近付いてきてグッと手を強く握りしめた
三ツ谷だと言った男の手が私の髪を離し、隆の聞いた事が無いような大きな怒鳴り声と彼等の声が混ざりあって良く分からないけど
あぁ、隆が近くにいるからもう大丈夫なんだなって思えたらアドレナリンが消えた様に全身がズキズキと痛み出した
それから何分経ったのか分からないけれど、辺りは静かになっていた
「……雪那さん」
痛む体を支えられる感覚がして、ゆっくり目を開けると目の前にはさっきまで一緒に居たタカちゃんが私を見ていた。目が開かなくて2重に見えるけど確かに隆で手を頬に近付けるとギュッと手が握られて温かい雫がポタポタと私の頬に落ちてきた
「……た、かし、泣かないで、大丈夫」
「…… 雪那さん。ごめんな。俺が送ってればこんな事にならなかったのに」
「…タカちゃんのせいじゃない。…あの人達は?」
「……もう、いや、あんな奴らの事今は考え無くていいから」
「……姉ちゃん」
「は、八戒も来てくれたんだ……」
走って来てくれたのか、ハァハァと息を切らしている八戒の泣きそうな声に大丈夫だよと笑うと、次々と聞こえて来たバイクの音に私は力が抜けてタカちゃんの胸に擦り寄った
珍しく相当焦った声で私を呼ぶケンちゃんとマイキーに少し笑うと足音が近くなってきて皆が私を見ているのが分かったけど、痛くて目が開かなくて大丈夫だからと言いながらそのまま意識を手放してしまった
起きたら見慣れないベッドの上だった
個人部屋なのかベッドは部屋にポツンと置かれ1人きり。傍らに飾られている花はまだ新しい
浴衣は着ていなくて、病院のパジャマみたいな姿で横になっていた
ぼんやりとしながら起き上がり、辺りを見渡しても誰もいない。サイドテーブルにあった携帯を開けば充電は切れていてどうしようかと思っているとガラガラと開いた扉から入って来たのは私服のタカちゃんだった
「 雪那さん!」
「……タカちゃん良かった、ここ病院?」
「良かった、普通に話せてる」
「……何で?」
「はァ、説明は後で。とにかく良かった」
眼帯をされている目を優しく撫でられて、頭を包みこまれる様に抱き締めらる。その背を撫でて心配かけてごめんねと言えば首元に埋められた顔がふるふると横に揺れた
「……まだちょっと顔が痛いけど大丈夫そう。皆は?怪我してないよね?」
「……してない。皆も大丈夫だよ」
「あの人達は?」
「……あの馬鹿達は知らねーけど、全員病院にいるんじゃね?自業自得だろ」
「……そっか」
「……隆が……電話気付いてくれて良かった。本当にありがとう」
「……あの時」
タカちゃんのギリっと鳴った歯にビクリとして顔を上げる。目が合って悔しそうに目を逸らすと、あの時に 雪那さんの叫び声を聞いて心臓が止まるかと思った
本当に、守れなくてごめん。そう言って私を抱き締めるタカちゃんは13歳とは思えなかった
「……そんな事言わないで。来てくれたじゃん」
口元に笑みを作り彼の手を握る。まだ少し幼さ残るタカちゃんは何だか可愛いよりもカッコよくなったなと内心感じている自分がいた
それからケンちゃんと皆がお見舞いに来てくれた日には義母の付き添いの元退院も出来た
私は手足などに酷い怪我は無かったが、頭や顔を相当殴られていたらしく言語障害が残るんじゃないかとまで心配されていたらしい
勿論、私を殴っていた男の子もその周りも少年院に入る事になったと聞かされた
「痛いよー痛いよー」
「……うるせぇな。その顔は嘘だろ」
「ケンちん、流石に可哀想だろ。ねーちゃんどしたの?」
「マイキーちゃん優しい」
マイキーの顔を抱き締めてスリスリと擦り寄ると、どうせ姉ちゃんはアイスでも食いたいんだろと傷になっている口にアイスを突っ込まれて痛みで枕に倒れ込む
姉ちゃん!と言いながらつかさず私の口の中のアイスを奪おうとするパーちゃんに圭ちゃんとかずちゃんが
流石にやめろとツッコミを入れた
「ドラ姉ちゃん可哀想にな。今飲み物持ってくるからさ」
何だかんだ、かずちゃんと圭ちゃんは女の子に優しくて、私にお茶を運んでくれたり。圭ちゃんは買い物してきてくれたり包帯を変えてくれたり。
パーちゃんはずっと暇さえあればお菓子を買ってきてくれて私にお供えしてから自分で食べていた
マイキーやケンちゃんは控えめにしているけど、相当今回の事は応えたらしくて未だに少し、私を見て悲しそうな悔しそうな顔をしている時があった
「…ねぇ、ケンちゃん…タカちゃんは?」
「……三ツ谷は連絡取れない」
「……何で?」
シンと静まり返る室内。ゆっくりとマイキーが私の肩を優しく抱いて、ちょっとそっとしといてやってと言って笑った
「……まぁ、俺が三ツ谷なら相当辛いからな。姉貴も怪我治るまでゆっくりして、三ツ谷の事はそっとしといてやれ」
「……タカちゃん悪くないのに……」
「……ドラねーちゃん、今回の事は男からしたら悔しくて堪らないと思う」
「……かずちゃん」
「だな、でも三ツ谷は集会中にも関わらずに飛び出して行って、ドラねーを結果的に助けた。」
すげーよなとニカっと笑った圭ちゃんに微笑んでから頷いた
「電話してから、タカちゃんが来るの早かったからアレで済んだのに……。責任感じる事無いのにな」
俺が帰れなんて言わずに姉貴を近くで待たせておけば良かった。俺が悪ぃと言ったケンちゃんに私は首を横に振った。どちらにせよあの男の子達に、三ツ谷と居たなって言われたからもしかしたら遅かれ早かれやられてたかもと言えば、皆が目を合わせたのが分かった
「……ねーちゃんの事もあるし、少し考えねーとな。どちらにしろ隊長格は彼女作んの当分禁止な。妹や姉貴も狙われるかもしれねーし」
マイキーの言った一言に、皆は黙って頷くだけだった
何だか中学生って青春なのになぁ。何て思ったけれど
バイクと喧嘩があればけっこう大丈夫な人達だし。
もし誰かに彼女が出来て暴行されたりしてそれを聞いても嫌だし仕方ないのかなと思った
それから少しづつだけど、買い物はケンちゃんや義母と行ったり顔が治ってきたら学校にも行きだして私は普通の生活を取り戻した。が、やはり気になる
マイキーに言われた事を破るのは嫌だったけど、タカちゃんの姿がどうしても見たくて私は学校が終わると自転車を飛ばしてタカちゃんの家の前まで来た
集会には来てるってケンちゃんが言ってたから元気には元気何だろうけど、階段を上がりピンポンを押すか迷っていると手土産を忘れたな何て思い1度帰って何かデザートでも作ってから来ようかと思い付き家に帰ろうと振り返ると、そこには制服のタカちゃんが少しだけ微笑んで立っていた
何だかウルっときてしまって、走って行って飛び付くと手を広げてキャッチしてくれた彼の胸を抱き締めた
「……お見舞い来てくれなかったから、私から来ちゃった」
「……ごめんな。合わす顔無かった」
「...そんな事言わないで。泣いちゃうじゃない」
優しく撫でられた髪がサラサラと落ち、私の頭に口付ける仕草がやけに色っぽく感じて少し顔が熱くなったけど隊長格は恋愛禁止ってマイキーの言葉が直ぐに頭を埋めて、私はこの感情に蓋をする事にした
「……もう、傷痛くねぇの?」
「……ちょっとたまに痛いかな。タカちゃんのご飯食べたら良くなるのになぁ。全然看病してくれないし」
「……分かった。明日から毎日通うから」
「……前に言ってくれたじゃん、俺が守るって。」
「……あぁ」
雪那さんが、隣に居て良いって言ってくれるなら居ると言って私の首に顔を埋めたタカちゃんの背中を優しく撫でた。この蓋をした感情がどんな感情であれ、今彼が私の傍にいてくれれば良い
笑って抱き締めてくれたらどんな関係であれ幸せ何だと思うと、また涙が出て来てしまった
