短編 シリーズ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨日の夜に1時間かけて丁寧に塗った爪がブルーのライトに照らされてキラキラと細かい光を放っている。その指をそっと掴まれて、わざとらしく私の目を見つめながら唇を這わす隆の色気に頭がくらくらしてくる
まるでテキーラを一気飲みした直後の様な感覚がしてきて、何だか少し彼の魅力に恐ろしくなり同時に何故こんなホテルに付いてきてしまったんだと内心少しだけ後悔した
そんな私の心情を察した様に、少し目尻が下がった瞳が私を真っ直ぐに捉えて唇が彼に食べられる様に塞がれた
下半身に埋められた指が激しく動かされて、イヤらしい自分の声が部屋に響くと彼は嬉しそうに微笑んだ
「……すげぇ久しぶりだな。その顔見るのは」
「ンン……ちょ今、……喋れないから」
中学の時に何度も彼に抱かれた記憶を思い出す
私の初めてを奪ったのも、私の心をズタズタにしたのも彼だった。隆が好きで堪らなくて、初めてを渡しても私は2番目なのかなって思ってもひたすらに彼だけを見ていたそんな時期が私にはあった
何度か痙攣した中をいい具合だと言って1度かき混ぜ、引き抜いた手を私の目の前で舐め熱の籠った目で見てくるこの男は本当に隆なんだろうか
中学の頃とは大分違う。でも、それだけ私の知らない時間に歳と経験を重ねてきたのかと思うと少しだけ胸がチクッと痛んだ気がした
避妊具も着けずに腰を埋められて、それだけは止めてと堅い胸を叩けば、ニッコリと笑い私の唇に舌を突っ込んだ
私の両手を片手で掴み、首筋に舌を這わす彼に泣いても無駄だなと悟った。ひたすらに快楽を与えらてそのまま彼の良いように抱かれて私はまた自分の塞ぎ始めていた心の傷をえぐられる様な感覚を感じた
目を覚ますとベッドに寝ていたのは私1人だった
直ぐにシャワーを浴びてからフロントに電話してタクシーを呼んでもらう。何だか1秒でもここにいたくなくて髪を乾かして歯を磨き直ぐにマスクを付けて着替えをしていると電話が鳴り、タクシーが到着しましたとスタッフの声が受話器から聞こえて足早にホテルを後にした
タクシーの中、自宅に到着するまでに考えていたのは
どうしてこうなってしまったんだろうの1つだけだった
久しぶりの東京での仕事帰り、行きつけだったBARに入るとカウンター席からこちらを見ていたのは元彼の三ツ谷隆だった
目を見開いた私とは逆で、驚いた様子も無く当たり前の様に久しぶりと言った懐かしい声に私の心臓は高鳴った。座れば?と微笑まれてこくりと頷き彼の隣に座った
最初は少し緊張したけれど、話し方や声も変わっていなくて話せば話すほどに再会を喜べたし何よりも私はずっと会いたかったんだなと実感した
楽しい昔話やら同級生の話など色んな話をした。昔の悲しい話をお互い避けながら話しているのが良く分かったしあえて口にも出さなかった
深夜になり、そろそろ帰るねと言うと手を握られて舞い上がった気持ちを抑えながら隆の瞳を見つめた
耳元に寄せられた唇から出た言葉
ずっと会いたかった。その言葉が私の古傷を癒し昔の苦しみが消え去るようだった
自宅に到着して料金を払うと直ぐに家に入りベッドに横になる。腰がだるくて眠い。今日はせっかくの休みなのに何だか深く考えたくない事ばかりだ。水も飲まずにウトウトしているとそのまま意識を手放してしまった
古い記憶が蘇るような懐かしい夢を見た
ミシン台の前に座る私を抱き締めてくれた記憶
誰も居ない教室で彼と口付けをしている記憶
初めて彼として、凄く痛いのに何だか距離が縮んだ気がすると嬉しくてこっそり泣いた記憶
いつもいつも優しくて純粋で沢山愛してくれていたのに、私の知らない女の子と仲良くしていて。そんな彼を許せなくて傷つけて別れた5年も前の記憶
嫌な気分になり目を覚ませば外は夕陽が差していた
仕事の疲れもあったとは思うけどまさかこんなに寝てしまうとは思わなかった。かったるい体を起こして簡単に食べられる物を胃に入れてからテレビをつける
今日も東京は物騒な事件が多いな何てニュースを見ながら思っていると、ふとその集団の1人が隆に似ているような気がしたが
昨日の今日だから見間違いかな何て思い、リモコンを放りゴロリとソファに横になった
仕事の関係であちこち行っていたから、久しぶりに東京に戻ってきてこの家でまったりと出来るのも久しぶりだ
京都から自分で送ったダンボールもまだ中身を開けて整理もしておらず、今日はかったるいと言い聞かせて見て見ぬふりをする
手を何気なく電気に伸ばすと、ネイルのラメがキラキラと細かく光り私の手に口付けを落とした隆の顔を思い出した
幼さは余り無く、黒髪で目元は変わって無かった
相変わらず言葉選びは上手で甘やかしな所も変わっていなかったけれど、妙な雰囲気が出ているのが気になった
高そうなアクセサリーやブランドのスーツ。チラリと見えた財布の中身は現金の束が入っていて、思わず危ないから現金で持ち歩くのやめなよなんて口に出すと
今日ちょっと集金があったからたまたまだ。とフッと薄く笑った隆にそれ以上は突っ込まなかった
今考えると、集金何て言われて思い付くのは給食代金くらいだと笑ってやれば良かったと思う
昨日は互いの仕事の話は出なかったし、私も何してるのか何て聞かなかった。付き合っている時から所属していた隆のチーム名をふと思い出して先程のニュースを思い出す
1度そう思ったら思い当たる節が沢山あって、私は頭が痛くなってきてしまいクッションに顔を埋めた
だけど、昨日の事を思い出せば思い出す程彼の顔を見れて話が出来た事が何だか凄く自分にとって大きい事に感じた。やってしまった事は何とも言えないけれど、話が出来た事で古い胸のしこりが少し消えた様に感じているのも確かだった
そんな事を考えながらまたウトウトしていたらしい。気付けば携帯の着信音が部屋に響いていた。薄目で携帯の場所を確認して手を伸ばしそのまま通話ボタンを押した
「だれー?」
「おれー」
「……何で番号知ってるの?」
「そんな驚くなよ、昨日お前が寝てる時に登録しておいた。それよりホテル出る時に送るから電話しろって言ったら返事したのに電話くれねーからさ」
「……ん?そうだっけ?全然記憶に無いけど……」
「寝惚けてたんだな。まぁいいや、飯食った?」
「軽くなら」
「食べにいかね?」
「……ちょっと疲れてるから寝る。ずっと出張だったし昨日も飲み過ぎて動きたくない感じ」
「そ、分かった。また電話する……なぁ、昨日ごめんな」
「……何の事を謝ってるの?」
「もうちょっと優しくしてやれば良かった。……お前と会えたのが嬉しくてガキみたいに求めて悪かった」
「……そう言われたら、嫌な気はしないからいいよ。じゃあ、おやすみ」
「……あぁ。じゃあ」
通話ボタンを切ると最後の言葉に心臓がドキドキしていて、胸を手で抑えて深呼吸してから着信履歴の番号を三ツ谷隆で登録した
そのページを見ていると、初めて連絡先を交換した時の嬉しかった感情を思い出す
隆を独り占めにしたくて早く距離を縮めたかったから、沢山体を重ねて沢山キスをして沢山抱き締めてもらった
彼に愛されて重たい愛情を注がれてる毎日が幸せだった
そんな事もあったなとぼんやり考える
それと同時に何だか昔の自分が愚かに感じた。中学生だったから仕方ないとは思うけどもっと沢山話をすれば良かったな何て今思う。強がらないでもっと寂しいとか、不満を言えば別れなかったのかなと高校の時にずっと思ってた事を今また考えていた
そんな事ばかりが頭の中を埋めつくした
中学から今も尚そんな事を考えてる自分が嫌になってきて、テーブルに置いてあるグラスの中身を飲み干して自分自身に呆れてしまった
それから隆からの電話は無くて、2ヶ月以上が過ぎた。寂しい気はしたが、元々5年くらい会っていなかったし彼からすればそんなものだったんだなで以外と直ぐに心の決着はついた
相変わらず忙しい仕事に目まぐるしいながら何とかやっていた。毎日毎日東京のグルメスポットを周りレポートを書いて社長の叔父に渡す
お前は文章力が無いなぁとまじまじと言われて、頑張った分すこぶるショックを受ける
破顔している私を見て眉を寄せた叔父にどしたの?と尋ねると、鏡見てこいと言われて首を傾げながらもお手洗いに向かった
どうせラーメンのレポだったから歯にメンマでも挟まってるとかそんなもんだろうと思いながらお手洗いのドアを開けると顔面青白い顔の自分が写っていた
頬に手を当てて鏡の中の自分を見つめていると、トントンとノックが聞こえて返事をすれば叔父さんに体温計を渡される
「ちょっと熱計ってみろ。今流行りの感染症かもしれんからな」
「あ、ああ。うん」
手に取った体温計を脇に差して手を引かれてソファに座らされタオルケットを肩に掛けられた。暖かくて嬉しいが、いささか大袈裟なんじゃないか?と思いながらアラームが鳴った体温計をみれば37℃を指していた
「叔父さん、37℃。微熱だった」
「感染症かもしれないから明日病院行けよ、それまで出入り禁止な」
「うーん、食欲が無いくらいで別に何とも無いから風邪系とか感染症とかでは無いんじゃないかな?」
「職場ではもしもを考えるのも大事さ」
それを言われてしまえばその通りなので私は了解しましたと元気に返事をしてから、帰り支度を済ませて職場を出た。内心休める事が嬉しくて、コンビニにルンルン気分で寄りデザートや簡単に食べれる物を買って
自宅に帰ってきた
洗濯物を取り込んでいると、体が少し熱い気がして無理せずに1度横になる。やっぱり風邪かもしれないと何だか急に心配になったので近くの小さな病院に向かった
待合室には殆ど誰も居なくて、ラッキーだとか思っていた自分をどん底に落としたのは先生だった
「妊娠してますね」
はぁ?と本当にこんな阿呆みたいな声が出るんだなって関心するくらいの声が出た
そんな私に先生は産婦人科に行って下さいと無表情で言い放ち、次の人どうぞと口を開いた
看護婦さんが気まずそうに口を開いて呆然としている私を立たせて廊下に案内をする
そこからは心ココに在らずの状態で、意識は上の空で産婦人科に行って診察を受けた
心臓が動いてます、おめでとうございますと笑顔で言われた時にお母さんになるのかなってちょっと思ったら何だか少し感動してしまって帰り道にずっと写真を眺めていた
上の空のまま家に帰って来て、お風呂に浸かっていたら涙が出て来てしまう。母親になるって事の喜びと、隆に話したら降ろせって言われたらどうしようとか一人で育てたら貯金足りるのかとか。色んな不安に押し潰されそうになった。こんな関係で付き合ってもいなくて産める訳無いのも分かっていた
ふやけそうになる手前で風呂を出て、実家に電話しようかなとLINEを開く。暫く連絡を取っておらず、今は祖母の家で介護をしている母親のLINEを探していると、隆からメッセージが来ていてそれを見て固まってしまった
1週間前に来ていたLINEには、忙しい?とか時間あったら電話くれとかそんなメッセージが何件か来ていた
1番古いメッセージで1ヶ月前。広告を消さずにそのままにしていなければもっと早く気付いたのになと少し申し訳無くなった
手が震えているのが分かったけれど、通話ボタンを押した。3コールもしないで出た隆の周りはザワザワとしていて、もしもしと言った声に何だか淋しくなった
「……ごめん。LINE今見た」
「……嘘?本当に?」
「嘘は吐いてない。仕事で東京のグルメスポット巡りしてて、LINEは広告に埋もれてて見てなかった。とゆうより気づかなかった、ごめんね」
「……グルメスポット巡りは知ってる。ま、どちらにしても連絡来たからもうそれはいいよ」
「……何で知ってるの?」
「まぁ、色々。それよりも飯食った?食ってないなら何か食いに行かない?それか飲みにでも良いし」
めちゃくちゃ美味い店あってさ、と続ける隆に何て言っていいのか分からずに黙っていると
心配そうな声で私の名前を呼んだ隆の声にウルっと来てしまってそれを隠すように口を開いた
「…あのね…今さ、ちょっと熱あってね。今日の午前中に早退して来たんだよね。叔父さんの会社で働いてるんだけど、当分もしかしたら仕事も出来ないかも」
「……そんなに悪ぃの?」
「……う、うーん。悪くは無いかな」
「なんだよそれ。相変わらず意味わかんねーな。今家だろ?」
「うん」
「ちょっと待ってて」
ガチャリと一方的に電話を切られて、嫌な予感がした
付き合っていた時にいつもうちに居たので当然彼は自宅を知っているし、今の流れは多分うちに来る
髪の毛を梳かしてから毛玉のスウェットを脱いで可愛い部屋着に着替え、散らかっている洗濯物をまとめてクローゼットに押し込む。その奥にあるダンボールを見て古傷が痛んだような気がした
ピンポンが鳴らないので、ギリギリまで綺麗にしていようと思いトイレや廊下に掃除機を掛けているとインターフォンが鳴ったので鍵を開けてドアを開く
「……何だその顔」
「その言い方やめてよ」
「いや、悪ぃ。でも真っ青じゃん」
「元々貧血持ちなのもあるからさ、余計顔色悪く見えるんだよね」
「…そういやそうだったな。…大丈夫か?何食ったの?」
「……とりあえず上がって」
サンキュと言って靴を脱いだ隆はリビングに入ってソファに腰かける。久しぶりだなと辺りを見渡す彼が少し微笑ましい
珈琲で良い?と聞けば座ってろよ、具合悪いんだろ?と言われ優しく手を引かれる。入って来た時から持っていた大きめのコンビニ袋からプリンや珈琲、紅茶やケーキ、鍋焼きうどんやサンドイッチをテーブルに並べて好きなの食えよと笑った
「ふふ、ありがと」
自然に自分の口から出た言葉と笑みに内心ちょっとビックリした。本当は会いたかった、気を使ってくれて凄く嬉しいと心が感じ、熱くなったのを感じた
「何食いたい?」
「うーん、おにぎり」
「うどんのが消化良くね?」
「だってこのおにぎり美味しそうだし」
ピリピリと包装を破りおにぎりを口に入れる。咀嚼しながら頂きますと彼に言えば食べる前に言えよと笑われてしまった
今日も高そうなスーツに身を包む彼にスーツが皺になるから掛けてとハンガーを渡すと、素直に上着を脱いで掛けサンドイッチに手を伸ばした
黒のタートルネックの服の下が何だかでこぼこしている様に見える、サンドイッチの包装を破っている三ツ谷の服に手を伸ばすと堅い何かに触れた
その瞬間にビクッとした隆は目を見開いて私を見た、触れていた私の手を取りそのまま固まっている
「……ごめん、何か服が膨らんでる様に見えたから何だろうと思って。触ってごめんね」
「……いや、悪ぃ。ちょっとビックリした」
「買ってきてくれた紅茶か珈琲あっためるけどどっちにする?」
「じゃあ珈琲で」
「はーい」
服の中身の話はしたくない様に見えたので、それは聞かずに残り一口のおにぎりを口に入れて珈琲を持って立ち上がると、突然胃から胃液が逆流するような気持ち悪さが込み上げてきてしゃがみ混み口を抑えた
「大丈夫か?……雪那?どした?」
「吐きそう」
「トイレ行く?動けないならこのビニール使え」
「……トイレ行ってくる」
「ちょっと動かすぞ、吐いてもいいからな」
ゆっくりと肩を支えられて立ち上がる
トイレまでの距離を長く感じながら、噎せ返るのを我慢しながらゆっくり歩く。隆に寄っかかる様にしてトイレの前までくると急いで中に入り便座を上げて嘔吐を繰り返した
全部吐ききった感じがしたら何だか疲れてしまって直ぐにトイレを出た足でお風呂に入りシャワーを浴びる。すると、脱衣所から大丈夫か?と声が聞こえ、返事をするのもかったるくてうん。とだけ言うと躊躇無く浴室の扉がガラガラガラと音を立てて開いた
「…おかしいでしょ…何で開けるのよ」
「いや、シャワーの音で何言ってるか聞こえねーし。倒れてたらやばいから開けた」
「……平気だから閉めて」
「顔色悪いな、早く出ろよ」
少し恥ずかしかったけど、この間見られてるし大丈夫と開き直り直ぐに風呂を出た。廊下で座って待っていてくれた隆に少し嬉しくなって彼の肩に触れてありがとうと言えば少し眉を寄せた隆は病院行くかと言って私の手を取った
「……行かない」
「顔色も悪ぃし、嘔吐するくらいなんだから病院行かなきゃ駄目だろ」
「…病院は……行ったから大丈夫」
「診断は?」
「……えと、」
「……何で言わねーの?薬もらったんだろ?」
「薬は……」
黙り込む私にはァと溜息を吐いた隆。何だかそれにイライラとして顔を背けて寝室に入りベッドに丸まった
眠くてイライラする、喉が痛くて全部全部あんたのせいだもん何て思いながらゆっくり目を閉じる
寝室に入って来た隆はベッドに座り私の背中を摩ってくれていた
ぼんやりと思い出す屋上の風景、あの時も背中を摩ってくれたな何て思いながらゆっくり起き上がる
「……怒んなよ、悪かったよ」
少し困った顔で呟いた隆を睨みつけてからクローゼットを力いっぱい開けて中のダンボールを持ち上げて隆に叩き付けた
東京卍會と丁寧に刺繍がされたスウェットにバイクをいじる時用に作ったつなぎ。喧嘩の時に破られたと言っていたから新しく作った腕章。冬用のジャンパー
苺柄のお揃いのワンピースが欲しいと言ったルナとマナの為に買った布、隆と一緒に考えたデザイン画
箱から出てぐちゃぐちゃになった服や紙を見て、隆は何も言わずにその服を手に取った。ハアハアと息切れしてきて気持ちが悪くなってきてしまいそのまま倒れ込んだ私を抱えた隆は何も言わずに私の首に顔を埋めた
あのまま気持ちが悪くて眠ってしまったみたいだ
夜中にふと喉が渇き目が覚めると隆は後ろから私を抱き締めて眠っていた。起こさない様に起き上がり枕元にあった水を飲んで隆の顔を覗き込む
この間は見れなかったから彼の寝顔は凄く久しぶりで、見ているとさっきの様なイライラはすっかり無くなっていた
本当にごめんね。と言って彼の頭を撫でてから胸に顔を埋めて気持ちを落ち着かせながら目を閉じた
起きて隆が隣に居なくて少し寂しくなった
LINEを開けば仕事が入ったからまた連絡すると入っていて、溜息が出てきてそのまま携帯を閉じた
仕事なんだから仕方ないし、むしろ一緒に居てもらっても気持ちが悪いのが収まる訳でも無いし、具合が悪い理由も言えないくせに私は何なんだと自分でイライラする
昨日撒き散らかしたダンボールも服も全部無くなっていて、何処を探しても出てこなかった
多分隆が持って行ったんだろうけどその事を聞く気には今はなれなかった
冷蔵庫の中身も空だし、スーパーに買い出しに行かないとな。叔父さんにも電話しなくちゃと思いかったるい体を起こした
あれから1ヶ月が経った。その間暇さえあれば隆は顔を出してくれて、体調も悪くない時が多かったので食事をしたりドライブに連れてってくれた。不思議だったのは夜一緒に寝ても抱き締める以上の事はしてこなかった。最初のあれは何だったのか同じ人物なのかと疑うくらい私の中で疑問だったが
赤ちゃんに影響があったら困るので、それはそれでまおいいのかなと思う様にはしていた
仕事にも復帰出来たけれど、なるべく体に負担がかからない仕事を叔父に頼んで重い物も運ばずに走る事もせずにマイペースでやらせてもらってありがたかった
それなら少ししてお腹が出てきたけれど、まだ全然見た目は変わらなくて内心ホッとしている。逆にいつまで隠してるんだ自分と泣きたくなる事も多くなっていたそんな時
5ヶ月目の検診に向かおうと身支度を整えてバックを持ち玄関を開けた時だった
「雪那、どっか行くのか?」
「び、ビックリした。」
「ちょっと時間空いたからさ。食材買ってきた。出かけんなら夜作るけど」
「……あー、うん出かけてくる」
いつもの様にスーツでは無く、ラフな格好の隆は手にスーパーの袋を下げていた。袋から見え隠れするチーズやパスタにイタリアンでも作りに来てくれたんだろうけどタイミング悪いな何て思う。でも、これはもうこのタイミングで言った方が楽になるんじゃないかなと頭に過ぎる
「聞いてんの?出かけんなら送るからちょっと待ってて」
「あ、うん。聞いてる」
「お前はいつも聞いてねーよ、冷蔵庫にこれ入れてくるわ」
「……私も1回部屋戻る」
「何で?」
「話があるから」
「ああ」
一度キッチンに二人で向かい、食材を冷蔵庫にしまったタイミングで覚悟を決めてバックから母子手帳を取り出して隆に渡す。ん?と言って手に取った隆は1度目を見開いてから私を見た
「……お前、妊娠してんの?」
「……うん」
「今までの具合の悪さってもしかして悪阻だった?」
「...そう」
「……相手誰?」
「えっ?...はっ?」
「彼氏居たんだな。知らなかったつーか。俺も聞かなかったな」
「……いや」
「……悪ぃけど、お前の口から言わないなら相手調べるからな。」
「調べ……て、どうすんの?」
「……お前の事は絶対に譲らねぇ」
隆のこんな顔は久しぶりに見たかもしれない。目が座っていて冷静さを保っているけれど、内面から怒りが滲み出ていて怒鳴り散らすよりも逆に怖い気がする
「……譲らねぇって言うけどどうすんの?」
「……別れてもらうか、了承しないなら消えてもらうしかねーな」
「...この子の父親、消されたら困るんだけど」
「…お前は…そいつの事そんなに好きなの?」
「……うん。昔から……ずっと愛してる」
私が愛してると呟いた瞬間に隆の目に涙が溜まって、時が止まった気がした。溜まった涙はこぼれ落ちなくて隆自身も涙で潤んでいる事にビックリしているのか口を手で覆い、かなり動揺していた
「……泣くくらい私の事好きならもっと早く連絡欲しかった。……高校生とか……あの日の次の日とか」
「……」
「……何で何も言わないのよ。お前だってしてこなかっただろって怒ればいいじゃない」
「……俺が悪かった。もう、あの頃には戻れねぇけどもう一度やり直したい。腹に子供がいてもお前が俺を嫌だって言っても他の男には絶対に譲らねぇ」
涙を浮べた私に真っ直ぐな瞳を向けた隆に私は震える手を握り締めて下を向いた
「…………パパになるんだよ、隆」
「……パパ?」
「……隆の子に決まってるじゃん。私は産まれてきてから隆としかしてないのに」
「……嘘だろ……」
「………5年間ずっと引きずってたから彼氏も作らなかったし。拒絶されたら嫌だから連絡も出来なかった」
「……」
「……私臆病者だったんだ。隆に会った時偶然会えて嬉しかったけど……。妊娠が分かっても隆の仕事も分からないし、降ろしてとか言われたらどうしようって一人で泣いてた。それからずっと言えないままこんなに時間経っちゃっててさ。本当は高校の頃もそう。自分から連絡出来なくてこんなに時間経っちゃった」
いつも意地をはってごめんなさい。そう言って隆を真っ直ぐに見つめる。少しだけ鼻が赤くなっていて何だか可愛いな何て思っているとスっと彼の目線がお腹に向いた。指先で優しく撫でられて、それからそっと背中に手が回された
「……俺も本当にごめんな、本当に寂しい思いさせたと思う。俺が父親か……。何かまだ実感がわかねぇ」
「ふふ、消すんじゃないの?」
「…茶化すなよ、本気で焦ったんだから。てかお前は…俺が居なくなってもいいの?」
「阿呆な事言わないで。……仕事も危ない仕事はしないで。良く考えて……」
「……それは分かってる。ちょっと仲間にも相談してみっから」
そう言って、にっと笑った三ツ谷は昔の笑顔のままだった
それから5ヶ月はあっとゆう間だった。隆がウチに引っ越してきて暫くしてからだけど、仲間と話し合ってくれて無事普通の仕事にもつけた。普通の仕事といっても結局仕事が普通なだけで東京卍會には変わらないから微妙だけど、彼なりに頑張ってくれたんだなと思いそこは何も言わなかった
隆が私の事を好きだとかは実は内心ちょっとだけ疑ってしまっていたけど、毎日毎日お腹を撫でて愛しい目で私を見つめてくる事や家事を率先してやってくれる事など色々見てきて私も少しづつ確信が持てていった
それから、直ぐに出産はやってきた
苦しんで痛くて自分から産まれて来た子の顔を見た時に、隆と同じ顔をした男の子で私は笑ってしまった
痛いとか辛いとかが吹っ飛んだみたいに嬉しくて涙が出てきた。仕事が終わったのか、すっ飛んで来た隆とパーちゃんとぺーちゃんは赤ちゃんを見て目を潤ませていた。三ツ谷、パパになったんだよと何故か私より泣いているパーちゃんに笑ってしまうと隆はあぁ。としか言わなかったけど私を優しく抱き締めてありがとうと言葉をくれた
3人での生活は生きてきた中で1番幸せを感じている
ただいまと言って毎日早く帰って来てくれるのが嬉しくて、同じ顔をして二人で眠る姿を見ているだけで幸福を感じた
ふと、夜中に目を覚ますと隆も子供も隣に居なくて心配になり寝室を出るとリビングの灯りがついていた
リビングに入ればベランダで夜空を眺める隆と腕の中で眠る我が子に安心する
そういえば、夜泣きが酷い時は外の空気を吸わせると泣き止む事があると中学の頃に教えてくれたのは隆だったなと思い出す
「ここに居たんだ」
「悪ぃ、起こした?」
首を横に振りながら隆の腕の中にいる我が子の頭を起こさない様にそっと撫でる
「ふふ、隆と同じ顔」
「……少し落ち着いたら、次は雪那に似てる女の子が欲しい」
「……まだまだ先ね。この子が5歳くらいになったらね」
そう言って笑う私の肩を優しく片手で抱いた隆は、額に軽く口付けをして来るとそういえば言ってなかったけどよと言って罰が悪そうに笑った
「……本当は、お前が京都から東京に移動になったのもBARで会ったのも偶然じゃねーんだ」
「……はい?」
探して、調べたって事。と言った隆に凄くビックリして目を見開くともう1度会いたかったと切なそうに呟いた隆に胸が温かくなる
移動の事に関しては頑なに言わない隆に溜息しか出ないかったけど、今はまぁいいかと思ってスルーする事にした
「……中学の頃卒業式の時に別れて、それからずっと何でお前が離れて行ったのか分からなかった。ドラケンに相談したら、お前が手芸部で虐められてる女とばっかり居たからじゃね?って言われて気が付いた。俺は雪那なら全部俺を信用して分かってくれるとか思ってた」
「…そうだったんだ…でも、ドラケン君じゃなくて私に言って欲しかった」
「俺も、今はそう思うよ」
「……私はさ、あの頃隆が大好きすぎた。自分が無くて、隆しかいなかった。何より、信用出来ない自分が何だか虚しくて離れて楽になりたかった」
「……俺は、そんな雪那だから好きだったし忘れられなかったんだけどな。……重すぎた愛情しか分からなくて、大事な事は何も言わないで分かってくれるとかほざいていつもガキでごめんな」
「………お互い様だよ、ありがとう。その言葉が聞けて隆といれて今本当に幸せ」
嬉しくて少し微笑むと、隆は熱の籠った瞳で私を見つめ唇に口付けしてくる。そんな彼を凄く愛しく感じながら目を閉じた。あんな自分だったと過去の自分を否定してたけどそんな自分だったから今の幸せがここにあるんだなと初めて思えた
「……でも、まさか1回で出来るとは思わなかったけどな」
「……それは、私も凄いと思った。……そういえば私が作った服はどこ行ったの?ルナとマナの服の布とか」
「……アレ見てるとすげー何か懐かしくて、お前が作ってくれたから着たくて仕事に来て行ってる」
「……あれ中学3年の時に作ったやつだよ。サイズ良く大丈夫だったね」
「……まぁ、背はあんまり伸びてねーし。まぁ、でも周りから好評だしもう注文入ってっから」
「……嘘でしょ?あれが?」
「つなぎはドラケンとイヌピー、スウェットはマイキーとパーにぺーやん、場地に一虎、ジャンパーはたけみっちに千冬」
「ふふ、皆古株だね」
「……あの服からは愛情を感じるって皆言ってたからな」
「……シンプルなデザインだから不良っぽくは無いしね。私あの時はまだ応援団だと思ってたし」
「応援団だと思って作ってたんだぜって話したら皆大爆笑だよ。相変わらずだなヨメって言われた」
「……ふふふ、皆に宜しくね」
「ああ」
結婚してこれからも言わなきゃ分からない事も沢山あるだろうし、喧嘩もするかもしれない。先の事はまだ分からないけれど
少し前まで京都に居て独り身で彼氏もいなかった自分が今は愛する人と子供を作り幸せな家庭を築けている
人生って何があるか分からないね。と微笑むと隆は昔と同じ優しい笑みを浮かべて中学からずっとずっと愛してるよと言って深い口付けをくれた
まるでテキーラを一気飲みした直後の様な感覚がしてきて、何だか少し彼の魅力に恐ろしくなり同時に何故こんなホテルに付いてきてしまったんだと内心少しだけ後悔した
そんな私の心情を察した様に、少し目尻が下がった瞳が私を真っ直ぐに捉えて唇が彼に食べられる様に塞がれた
下半身に埋められた指が激しく動かされて、イヤらしい自分の声が部屋に響くと彼は嬉しそうに微笑んだ
「……すげぇ久しぶりだな。その顔見るのは」
「ンン……ちょ今、……喋れないから」
中学の時に何度も彼に抱かれた記憶を思い出す
私の初めてを奪ったのも、私の心をズタズタにしたのも彼だった。隆が好きで堪らなくて、初めてを渡しても私は2番目なのかなって思ってもひたすらに彼だけを見ていたそんな時期が私にはあった
何度か痙攣した中をいい具合だと言って1度かき混ぜ、引き抜いた手を私の目の前で舐め熱の籠った目で見てくるこの男は本当に隆なんだろうか
中学の頃とは大分違う。でも、それだけ私の知らない時間に歳と経験を重ねてきたのかと思うと少しだけ胸がチクッと痛んだ気がした
避妊具も着けずに腰を埋められて、それだけは止めてと堅い胸を叩けば、ニッコリと笑い私の唇に舌を突っ込んだ
私の両手を片手で掴み、首筋に舌を這わす彼に泣いても無駄だなと悟った。ひたすらに快楽を与えらてそのまま彼の良いように抱かれて私はまた自分の塞ぎ始めていた心の傷をえぐられる様な感覚を感じた
目を覚ますとベッドに寝ていたのは私1人だった
直ぐにシャワーを浴びてからフロントに電話してタクシーを呼んでもらう。何だか1秒でもここにいたくなくて髪を乾かして歯を磨き直ぐにマスクを付けて着替えをしていると電話が鳴り、タクシーが到着しましたとスタッフの声が受話器から聞こえて足早にホテルを後にした
タクシーの中、自宅に到着するまでに考えていたのは
どうしてこうなってしまったんだろうの1つだけだった
久しぶりの東京での仕事帰り、行きつけだったBARに入るとカウンター席からこちらを見ていたのは元彼の三ツ谷隆だった
目を見開いた私とは逆で、驚いた様子も無く当たり前の様に久しぶりと言った懐かしい声に私の心臓は高鳴った。座れば?と微笑まれてこくりと頷き彼の隣に座った
最初は少し緊張したけれど、話し方や声も変わっていなくて話せば話すほどに再会を喜べたし何よりも私はずっと会いたかったんだなと実感した
楽しい昔話やら同級生の話など色んな話をした。昔の悲しい話をお互い避けながら話しているのが良く分かったしあえて口にも出さなかった
深夜になり、そろそろ帰るねと言うと手を握られて舞い上がった気持ちを抑えながら隆の瞳を見つめた
耳元に寄せられた唇から出た言葉
ずっと会いたかった。その言葉が私の古傷を癒し昔の苦しみが消え去るようだった
自宅に到着して料金を払うと直ぐに家に入りベッドに横になる。腰がだるくて眠い。今日はせっかくの休みなのに何だか深く考えたくない事ばかりだ。水も飲まずにウトウトしているとそのまま意識を手放してしまった
古い記憶が蘇るような懐かしい夢を見た
ミシン台の前に座る私を抱き締めてくれた記憶
誰も居ない教室で彼と口付けをしている記憶
初めて彼として、凄く痛いのに何だか距離が縮んだ気がすると嬉しくてこっそり泣いた記憶
いつもいつも優しくて純粋で沢山愛してくれていたのに、私の知らない女の子と仲良くしていて。そんな彼を許せなくて傷つけて別れた5年も前の記憶
嫌な気分になり目を覚ませば外は夕陽が差していた
仕事の疲れもあったとは思うけどまさかこんなに寝てしまうとは思わなかった。かったるい体を起こして簡単に食べられる物を胃に入れてからテレビをつける
今日も東京は物騒な事件が多いな何てニュースを見ながら思っていると、ふとその集団の1人が隆に似ているような気がしたが
昨日の今日だから見間違いかな何て思い、リモコンを放りゴロリとソファに横になった
仕事の関係であちこち行っていたから、久しぶりに東京に戻ってきてこの家でまったりと出来るのも久しぶりだ
京都から自分で送ったダンボールもまだ中身を開けて整理もしておらず、今日はかったるいと言い聞かせて見て見ぬふりをする
手を何気なく電気に伸ばすと、ネイルのラメがキラキラと細かく光り私の手に口付けを落とした隆の顔を思い出した
幼さは余り無く、黒髪で目元は変わって無かった
相変わらず言葉選びは上手で甘やかしな所も変わっていなかったけれど、妙な雰囲気が出ているのが気になった
高そうなアクセサリーやブランドのスーツ。チラリと見えた財布の中身は現金の束が入っていて、思わず危ないから現金で持ち歩くのやめなよなんて口に出すと
今日ちょっと集金があったからたまたまだ。とフッと薄く笑った隆にそれ以上は突っ込まなかった
今考えると、集金何て言われて思い付くのは給食代金くらいだと笑ってやれば良かったと思う
昨日は互いの仕事の話は出なかったし、私も何してるのか何て聞かなかった。付き合っている時から所属していた隆のチーム名をふと思い出して先程のニュースを思い出す
1度そう思ったら思い当たる節が沢山あって、私は頭が痛くなってきてしまいクッションに顔を埋めた
だけど、昨日の事を思い出せば思い出す程彼の顔を見れて話が出来た事が何だか凄く自分にとって大きい事に感じた。やってしまった事は何とも言えないけれど、話が出来た事で古い胸のしこりが少し消えた様に感じているのも確かだった
そんな事を考えながらまたウトウトしていたらしい。気付けば携帯の着信音が部屋に響いていた。薄目で携帯の場所を確認して手を伸ばしそのまま通話ボタンを押した
「だれー?」
「おれー」
「……何で番号知ってるの?」
「そんな驚くなよ、昨日お前が寝てる時に登録しておいた。それよりホテル出る時に送るから電話しろって言ったら返事したのに電話くれねーからさ」
「……ん?そうだっけ?全然記憶に無いけど……」
「寝惚けてたんだな。まぁいいや、飯食った?」
「軽くなら」
「食べにいかね?」
「……ちょっと疲れてるから寝る。ずっと出張だったし昨日も飲み過ぎて動きたくない感じ」
「そ、分かった。また電話する……なぁ、昨日ごめんな」
「……何の事を謝ってるの?」
「もうちょっと優しくしてやれば良かった。……お前と会えたのが嬉しくてガキみたいに求めて悪かった」
「……そう言われたら、嫌な気はしないからいいよ。じゃあ、おやすみ」
「……あぁ。じゃあ」
通話ボタンを切ると最後の言葉に心臓がドキドキしていて、胸を手で抑えて深呼吸してから着信履歴の番号を三ツ谷隆で登録した
そのページを見ていると、初めて連絡先を交換した時の嬉しかった感情を思い出す
隆を独り占めにしたくて早く距離を縮めたかったから、沢山体を重ねて沢山キスをして沢山抱き締めてもらった
彼に愛されて重たい愛情を注がれてる毎日が幸せだった
そんな事もあったなとぼんやり考える
それと同時に何だか昔の自分が愚かに感じた。中学生だったから仕方ないとは思うけどもっと沢山話をすれば良かったな何て今思う。強がらないでもっと寂しいとか、不満を言えば別れなかったのかなと高校の時にずっと思ってた事を今また考えていた
そんな事ばかりが頭の中を埋めつくした
中学から今も尚そんな事を考えてる自分が嫌になってきて、テーブルに置いてあるグラスの中身を飲み干して自分自身に呆れてしまった
それから隆からの電話は無くて、2ヶ月以上が過ぎた。寂しい気はしたが、元々5年くらい会っていなかったし彼からすればそんなものだったんだなで以外と直ぐに心の決着はついた
相変わらず忙しい仕事に目まぐるしいながら何とかやっていた。毎日毎日東京のグルメスポットを周りレポートを書いて社長の叔父に渡す
お前は文章力が無いなぁとまじまじと言われて、頑張った分すこぶるショックを受ける
破顔している私を見て眉を寄せた叔父にどしたの?と尋ねると、鏡見てこいと言われて首を傾げながらもお手洗いに向かった
どうせラーメンのレポだったから歯にメンマでも挟まってるとかそんなもんだろうと思いながらお手洗いのドアを開けると顔面青白い顔の自分が写っていた
頬に手を当てて鏡の中の自分を見つめていると、トントンとノックが聞こえて返事をすれば叔父さんに体温計を渡される
「ちょっと熱計ってみろ。今流行りの感染症かもしれんからな」
「あ、ああ。うん」
手に取った体温計を脇に差して手を引かれてソファに座らされタオルケットを肩に掛けられた。暖かくて嬉しいが、いささか大袈裟なんじゃないか?と思いながらアラームが鳴った体温計をみれば37℃を指していた
「叔父さん、37℃。微熱だった」
「感染症かもしれないから明日病院行けよ、それまで出入り禁止な」
「うーん、食欲が無いくらいで別に何とも無いから風邪系とか感染症とかでは無いんじゃないかな?」
「職場ではもしもを考えるのも大事さ」
それを言われてしまえばその通りなので私は了解しましたと元気に返事をしてから、帰り支度を済ませて職場を出た。内心休める事が嬉しくて、コンビニにルンルン気分で寄りデザートや簡単に食べれる物を買って
自宅に帰ってきた
洗濯物を取り込んでいると、体が少し熱い気がして無理せずに1度横になる。やっぱり風邪かもしれないと何だか急に心配になったので近くの小さな病院に向かった
待合室には殆ど誰も居なくて、ラッキーだとか思っていた自分をどん底に落としたのは先生だった
「妊娠してますね」
はぁ?と本当にこんな阿呆みたいな声が出るんだなって関心するくらいの声が出た
そんな私に先生は産婦人科に行って下さいと無表情で言い放ち、次の人どうぞと口を開いた
看護婦さんが気まずそうに口を開いて呆然としている私を立たせて廊下に案内をする
そこからは心ココに在らずの状態で、意識は上の空で産婦人科に行って診察を受けた
心臓が動いてます、おめでとうございますと笑顔で言われた時にお母さんになるのかなってちょっと思ったら何だか少し感動してしまって帰り道にずっと写真を眺めていた
上の空のまま家に帰って来て、お風呂に浸かっていたら涙が出て来てしまう。母親になるって事の喜びと、隆に話したら降ろせって言われたらどうしようとか一人で育てたら貯金足りるのかとか。色んな不安に押し潰されそうになった。こんな関係で付き合ってもいなくて産める訳無いのも分かっていた
ふやけそうになる手前で風呂を出て、実家に電話しようかなとLINEを開く。暫く連絡を取っておらず、今は祖母の家で介護をしている母親のLINEを探していると、隆からメッセージが来ていてそれを見て固まってしまった
1週間前に来ていたLINEには、忙しい?とか時間あったら電話くれとかそんなメッセージが何件か来ていた
1番古いメッセージで1ヶ月前。広告を消さずにそのままにしていなければもっと早く気付いたのになと少し申し訳無くなった
手が震えているのが分かったけれど、通話ボタンを押した。3コールもしないで出た隆の周りはザワザワとしていて、もしもしと言った声に何だか淋しくなった
「……ごめん。LINE今見た」
「……嘘?本当に?」
「嘘は吐いてない。仕事で東京のグルメスポット巡りしてて、LINEは広告に埋もれてて見てなかった。とゆうより気づかなかった、ごめんね」
「……グルメスポット巡りは知ってる。ま、どちらにしても連絡来たからもうそれはいいよ」
「……何で知ってるの?」
「まぁ、色々。それよりも飯食った?食ってないなら何か食いに行かない?それか飲みにでも良いし」
めちゃくちゃ美味い店あってさ、と続ける隆に何て言っていいのか分からずに黙っていると
心配そうな声で私の名前を呼んだ隆の声にウルっと来てしまってそれを隠すように口を開いた
「…あのね…今さ、ちょっと熱あってね。今日の午前中に早退して来たんだよね。叔父さんの会社で働いてるんだけど、当分もしかしたら仕事も出来ないかも」
「……そんなに悪ぃの?」
「……う、うーん。悪くは無いかな」
「なんだよそれ。相変わらず意味わかんねーな。今家だろ?」
「うん」
「ちょっと待ってて」
ガチャリと一方的に電話を切られて、嫌な予感がした
付き合っていた時にいつもうちに居たので当然彼は自宅を知っているし、今の流れは多分うちに来る
髪の毛を梳かしてから毛玉のスウェットを脱いで可愛い部屋着に着替え、散らかっている洗濯物をまとめてクローゼットに押し込む。その奥にあるダンボールを見て古傷が痛んだような気がした
ピンポンが鳴らないので、ギリギリまで綺麗にしていようと思いトイレや廊下に掃除機を掛けているとインターフォンが鳴ったので鍵を開けてドアを開く
「……何だその顔」
「その言い方やめてよ」
「いや、悪ぃ。でも真っ青じゃん」
「元々貧血持ちなのもあるからさ、余計顔色悪く見えるんだよね」
「…そういやそうだったな。…大丈夫か?何食ったの?」
「……とりあえず上がって」
サンキュと言って靴を脱いだ隆はリビングに入ってソファに腰かける。久しぶりだなと辺りを見渡す彼が少し微笑ましい
珈琲で良い?と聞けば座ってろよ、具合悪いんだろ?と言われ優しく手を引かれる。入って来た時から持っていた大きめのコンビニ袋からプリンや珈琲、紅茶やケーキ、鍋焼きうどんやサンドイッチをテーブルに並べて好きなの食えよと笑った
「ふふ、ありがと」
自然に自分の口から出た言葉と笑みに内心ちょっとビックリした。本当は会いたかった、気を使ってくれて凄く嬉しいと心が感じ、熱くなったのを感じた
「何食いたい?」
「うーん、おにぎり」
「うどんのが消化良くね?」
「だってこのおにぎり美味しそうだし」
ピリピリと包装を破りおにぎりを口に入れる。咀嚼しながら頂きますと彼に言えば食べる前に言えよと笑われてしまった
今日も高そうなスーツに身を包む彼にスーツが皺になるから掛けてとハンガーを渡すと、素直に上着を脱いで掛けサンドイッチに手を伸ばした
黒のタートルネックの服の下が何だかでこぼこしている様に見える、サンドイッチの包装を破っている三ツ谷の服に手を伸ばすと堅い何かに触れた
その瞬間にビクッとした隆は目を見開いて私を見た、触れていた私の手を取りそのまま固まっている
「……ごめん、何か服が膨らんでる様に見えたから何だろうと思って。触ってごめんね」
「……いや、悪ぃ。ちょっとビックリした」
「買ってきてくれた紅茶か珈琲あっためるけどどっちにする?」
「じゃあ珈琲で」
「はーい」
服の中身の話はしたくない様に見えたので、それは聞かずに残り一口のおにぎりを口に入れて珈琲を持って立ち上がると、突然胃から胃液が逆流するような気持ち悪さが込み上げてきてしゃがみ混み口を抑えた
「大丈夫か?……雪那?どした?」
「吐きそう」
「トイレ行く?動けないならこのビニール使え」
「……トイレ行ってくる」
「ちょっと動かすぞ、吐いてもいいからな」
ゆっくりと肩を支えられて立ち上がる
トイレまでの距離を長く感じながら、噎せ返るのを我慢しながらゆっくり歩く。隆に寄っかかる様にしてトイレの前までくると急いで中に入り便座を上げて嘔吐を繰り返した
全部吐ききった感じがしたら何だか疲れてしまって直ぐにトイレを出た足でお風呂に入りシャワーを浴びる。すると、脱衣所から大丈夫か?と声が聞こえ、返事をするのもかったるくてうん。とだけ言うと躊躇無く浴室の扉がガラガラガラと音を立てて開いた
「…おかしいでしょ…何で開けるのよ」
「いや、シャワーの音で何言ってるか聞こえねーし。倒れてたらやばいから開けた」
「……平気だから閉めて」
「顔色悪いな、早く出ろよ」
少し恥ずかしかったけど、この間見られてるし大丈夫と開き直り直ぐに風呂を出た。廊下で座って待っていてくれた隆に少し嬉しくなって彼の肩に触れてありがとうと言えば少し眉を寄せた隆は病院行くかと言って私の手を取った
「……行かない」
「顔色も悪ぃし、嘔吐するくらいなんだから病院行かなきゃ駄目だろ」
「…病院は……行ったから大丈夫」
「診断は?」
「……えと、」
「……何で言わねーの?薬もらったんだろ?」
「薬は……」
黙り込む私にはァと溜息を吐いた隆。何だかそれにイライラとして顔を背けて寝室に入りベッドに丸まった
眠くてイライラする、喉が痛くて全部全部あんたのせいだもん何て思いながらゆっくり目を閉じる
寝室に入って来た隆はベッドに座り私の背中を摩ってくれていた
ぼんやりと思い出す屋上の風景、あの時も背中を摩ってくれたな何て思いながらゆっくり起き上がる
「……怒んなよ、悪かったよ」
少し困った顔で呟いた隆を睨みつけてからクローゼットを力いっぱい開けて中のダンボールを持ち上げて隆に叩き付けた
東京卍會と丁寧に刺繍がされたスウェットにバイクをいじる時用に作ったつなぎ。喧嘩の時に破られたと言っていたから新しく作った腕章。冬用のジャンパー
苺柄のお揃いのワンピースが欲しいと言ったルナとマナの為に買った布、隆と一緒に考えたデザイン画
箱から出てぐちゃぐちゃになった服や紙を見て、隆は何も言わずにその服を手に取った。ハアハアと息切れしてきて気持ちが悪くなってきてしまいそのまま倒れ込んだ私を抱えた隆は何も言わずに私の首に顔を埋めた
あのまま気持ちが悪くて眠ってしまったみたいだ
夜中にふと喉が渇き目が覚めると隆は後ろから私を抱き締めて眠っていた。起こさない様に起き上がり枕元にあった水を飲んで隆の顔を覗き込む
この間は見れなかったから彼の寝顔は凄く久しぶりで、見ているとさっきの様なイライラはすっかり無くなっていた
本当にごめんね。と言って彼の頭を撫でてから胸に顔を埋めて気持ちを落ち着かせながら目を閉じた
起きて隆が隣に居なくて少し寂しくなった
LINEを開けば仕事が入ったからまた連絡すると入っていて、溜息が出てきてそのまま携帯を閉じた
仕事なんだから仕方ないし、むしろ一緒に居てもらっても気持ちが悪いのが収まる訳でも無いし、具合が悪い理由も言えないくせに私は何なんだと自分でイライラする
昨日撒き散らかしたダンボールも服も全部無くなっていて、何処を探しても出てこなかった
多分隆が持って行ったんだろうけどその事を聞く気には今はなれなかった
冷蔵庫の中身も空だし、スーパーに買い出しに行かないとな。叔父さんにも電話しなくちゃと思いかったるい体を起こした
あれから1ヶ月が経った。その間暇さえあれば隆は顔を出してくれて、体調も悪くない時が多かったので食事をしたりドライブに連れてってくれた。不思議だったのは夜一緒に寝ても抱き締める以上の事はしてこなかった。最初のあれは何だったのか同じ人物なのかと疑うくらい私の中で疑問だったが
赤ちゃんに影響があったら困るので、それはそれでまおいいのかなと思う様にはしていた
仕事にも復帰出来たけれど、なるべく体に負担がかからない仕事を叔父に頼んで重い物も運ばずに走る事もせずにマイペースでやらせてもらってありがたかった
それなら少ししてお腹が出てきたけれど、まだ全然見た目は変わらなくて内心ホッとしている。逆にいつまで隠してるんだ自分と泣きたくなる事も多くなっていたそんな時
5ヶ月目の検診に向かおうと身支度を整えてバックを持ち玄関を開けた時だった
「雪那、どっか行くのか?」
「び、ビックリした。」
「ちょっと時間空いたからさ。食材買ってきた。出かけんなら夜作るけど」
「……あー、うん出かけてくる」
いつもの様にスーツでは無く、ラフな格好の隆は手にスーパーの袋を下げていた。袋から見え隠れするチーズやパスタにイタリアンでも作りに来てくれたんだろうけどタイミング悪いな何て思う。でも、これはもうこのタイミングで言った方が楽になるんじゃないかなと頭に過ぎる
「聞いてんの?出かけんなら送るからちょっと待ってて」
「あ、うん。聞いてる」
「お前はいつも聞いてねーよ、冷蔵庫にこれ入れてくるわ」
「……私も1回部屋戻る」
「何で?」
「話があるから」
「ああ」
一度キッチンに二人で向かい、食材を冷蔵庫にしまったタイミングで覚悟を決めてバックから母子手帳を取り出して隆に渡す。ん?と言って手に取った隆は1度目を見開いてから私を見た
「……お前、妊娠してんの?」
「……うん」
「今までの具合の悪さってもしかして悪阻だった?」
「...そう」
「……相手誰?」
「えっ?...はっ?」
「彼氏居たんだな。知らなかったつーか。俺も聞かなかったな」
「……いや」
「……悪ぃけど、お前の口から言わないなら相手調べるからな。」
「調べ……て、どうすんの?」
「……お前の事は絶対に譲らねぇ」
隆のこんな顔は久しぶりに見たかもしれない。目が座っていて冷静さを保っているけれど、内面から怒りが滲み出ていて怒鳴り散らすよりも逆に怖い気がする
「……譲らねぇって言うけどどうすんの?」
「……別れてもらうか、了承しないなら消えてもらうしかねーな」
「...この子の父親、消されたら困るんだけど」
「…お前は…そいつの事そんなに好きなの?」
「……うん。昔から……ずっと愛してる」
私が愛してると呟いた瞬間に隆の目に涙が溜まって、時が止まった気がした。溜まった涙はこぼれ落ちなくて隆自身も涙で潤んでいる事にビックリしているのか口を手で覆い、かなり動揺していた
「……泣くくらい私の事好きならもっと早く連絡欲しかった。……高校生とか……あの日の次の日とか」
「……」
「……何で何も言わないのよ。お前だってしてこなかっただろって怒ればいいじゃない」
「……俺が悪かった。もう、あの頃には戻れねぇけどもう一度やり直したい。腹に子供がいてもお前が俺を嫌だって言っても他の男には絶対に譲らねぇ」
涙を浮べた私に真っ直ぐな瞳を向けた隆に私は震える手を握り締めて下を向いた
「…………パパになるんだよ、隆」
「……パパ?」
「……隆の子に決まってるじゃん。私は産まれてきてから隆としかしてないのに」
「……嘘だろ……」
「………5年間ずっと引きずってたから彼氏も作らなかったし。拒絶されたら嫌だから連絡も出来なかった」
「……」
「……私臆病者だったんだ。隆に会った時偶然会えて嬉しかったけど……。妊娠が分かっても隆の仕事も分からないし、降ろしてとか言われたらどうしようって一人で泣いてた。それからずっと言えないままこんなに時間経っちゃっててさ。本当は高校の頃もそう。自分から連絡出来なくてこんなに時間経っちゃった」
いつも意地をはってごめんなさい。そう言って隆を真っ直ぐに見つめる。少しだけ鼻が赤くなっていて何だか可愛いな何て思っているとスっと彼の目線がお腹に向いた。指先で優しく撫でられて、それからそっと背中に手が回された
「……俺も本当にごめんな、本当に寂しい思いさせたと思う。俺が父親か……。何かまだ実感がわかねぇ」
「ふふ、消すんじゃないの?」
「…茶化すなよ、本気で焦ったんだから。てかお前は…俺が居なくなってもいいの?」
「阿呆な事言わないで。……仕事も危ない仕事はしないで。良く考えて……」
「……それは分かってる。ちょっと仲間にも相談してみっから」
そう言って、にっと笑った三ツ谷は昔の笑顔のままだった
それから5ヶ月はあっとゆう間だった。隆がウチに引っ越してきて暫くしてからだけど、仲間と話し合ってくれて無事普通の仕事にもつけた。普通の仕事といっても結局仕事が普通なだけで東京卍會には変わらないから微妙だけど、彼なりに頑張ってくれたんだなと思いそこは何も言わなかった
隆が私の事を好きだとかは実は内心ちょっとだけ疑ってしまっていたけど、毎日毎日お腹を撫でて愛しい目で私を見つめてくる事や家事を率先してやってくれる事など色々見てきて私も少しづつ確信が持てていった
それから、直ぐに出産はやってきた
苦しんで痛くて自分から産まれて来た子の顔を見た時に、隆と同じ顔をした男の子で私は笑ってしまった
痛いとか辛いとかが吹っ飛んだみたいに嬉しくて涙が出てきた。仕事が終わったのか、すっ飛んで来た隆とパーちゃんとぺーちゃんは赤ちゃんを見て目を潤ませていた。三ツ谷、パパになったんだよと何故か私より泣いているパーちゃんに笑ってしまうと隆はあぁ。としか言わなかったけど私を優しく抱き締めてありがとうと言葉をくれた
3人での生活は生きてきた中で1番幸せを感じている
ただいまと言って毎日早く帰って来てくれるのが嬉しくて、同じ顔をして二人で眠る姿を見ているだけで幸福を感じた
ふと、夜中に目を覚ますと隆も子供も隣に居なくて心配になり寝室を出るとリビングの灯りがついていた
リビングに入ればベランダで夜空を眺める隆と腕の中で眠る我が子に安心する
そういえば、夜泣きが酷い時は外の空気を吸わせると泣き止む事があると中学の頃に教えてくれたのは隆だったなと思い出す
「ここに居たんだ」
「悪ぃ、起こした?」
首を横に振りながら隆の腕の中にいる我が子の頭を起こさない様にそっと撫でる
「ふふ、隆と同じ顔」
「……少し落ち着いたら、次は雪那に似てる女の子が欲しい」
「……まだまだ先ね。この子が5歳くらいになったらね」
そう言って笑う私の肩を優しく片手で抱いた隆は、額に軽く口付けをして来るとそういえば言ってなかったけどよと言って罰が悪そうに笑った
「……本当は、お前が京都から東京に移動になったのもBARで会ったのも偶然じゃねーんだ」
「……はい?」
探して、調べたって事。と言った隆に凄くビックリして目を見開くともう1度会いたかったと切なそうに呟いた隆に胸が温かくなる
移動の事に関しては頑なに言わない隆に溜息しか出ないかったけど、今はまぁいいかと思ってスルーする事にした
「……中学の頃卒業式の時に別れて、それからずっと何でお前が離れて行ったのか分からなかった。ドラケンに相談したら、お前が手芸部で虐められてる女とばっかり居たからじゃね?って言われて気が付いた。俺は雪那なら全部俺を信用して分かってくれるとか思ってた」
「…そうだったんだ…でも、ドラケン君じゃなくて私に言って欲しかった」
「俺も、今はそう思うよ」
「……私はさ、あの頃隆が大好きすぎた。自分が無くて、隆しかいなかった。何より、信用出来ない自分が何だか虚しくて離れて楽になりたかった」
「……俺は、そんな雪那だから好きだったし忘れられなかったんだけどな。……重すぎた愛情しか分からなくて、大事な事は何も言わないで分かってくれるとかほざいていつもガキでごめんな」
「………お互い様だよ、ありがとう。その言葉が聞けて隆といれて今本当に幸せ」
嬉しくて少し微笑むと、隆は熱の籠った瞳で私を見つめ唇に口付けしてくる。そんな彼を凄く愛しく感じながら目を閉じた。あんな自分だったと過去の自分を否定してたけどそんな自分だったから今の幸せがここにあるんだなと初めて思えた
「……でも、まさか1回で出来るとは思わなかったけどな」
「……それは、私も凄いと思った。……そういえば私が作った服はどこ行ったの?ルナとマナの服の布とか」
「……アレ見てるとすげー何か懐かしくて、お前が作ってくれたから着たくて仕事に来て行ってる」
「……あれ中学3年の時に作ったやつだよ。サイズ良く大丈夫だったね」
「……まぁ、背はあんまり伸びてねーし。まぁ、でも周りから好評だしもう注文入ってっから」
「……嘘でしょ?あれが?」
「つなぎはドラケンとイヌピー、スウェットはマイキーとパーにぺーやん、場地に一虎、ジャンパーはたけみっちに千冬」
「ふふ、皆古株だね」
「……あの服からは愛情を感じるって皆言ってたからな」
「……シンプルなデザインだから不良っぽくは無いしね。私あの時はまだ応援団だと思ってたし」
「応援団だと思って作ってたんだぜって話したら皆大爆笑だよ。相変わらずだなヨメって言われた」
「……ふふふ、皆に宜しくね」
「ああ」
結婚してこれからも言わなきゃ分からない事も沢山あるだろうし、喧嘩もするかもしれない。先の事はまだ分からないけれど
少し前まで京都に居て独り身で彼氏もいなかった自分が今は愛する人と子供を作り幸せな家庭を築けている
人生って何があるか分からないね。と微笑むと隆は昔と同じ優しい笑みを浮かべて中学からずっとずっと愛してるよと言って深い口付けをくれた
