歩くような速さで
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作業続きで痛む肩を小さな可愛い手で優しく揉まれ、 雪那ちゃん治りましたかー?と私の顔を覗き込んでくるマナにホッコリとしながら首を縦にふる
お医者さんごっこをしてくるマナと冬のアニメ特集に釘付けなルナにコタツでぬくぬくしながらテーブルに顔をうつ伏してクタクタな私
この間入学したと思ったらもう年越しも終わり、冬休みも終わろうとしていた。特にこれといって何も無い休みだったのにこんなにクタクタなのは何故なのか
お薬ですよーと言って剥いたミカンの粒を口の中に入れられてそのままむしゃむしゃと咀嚼する。
苦くてもしっかり飲みましょうと言われコクコクと頷いた
私の口の中がパンパンになってもミカンを入れてくるマナにコンビニに行っていた隆が帰ってくるなりその様子を見ると、首を横に振りマナの手を止めた
「マナ、それ以上入れると雪那が呑み込めない」
「まだ半分あるのにー。……そうだ八戒あーん」
「……雪那の唾液ついてそうだし汚いからいらね」
「……お前の唾液より綺麗だわい」
「えー雪那ちゃんのよだれついてないよ、八戒」
「じゃあ食べる」
「チッ」
「タカちゃん、ブスが舌打ちしてくる」
「八戒、目を凝らしてよーく見てみろ。スゲー可愛いから」
「……」
「ふははは、聞いたか八戒」
うつ伏したまま笑う私に八戒が無表情で投げたミカンが私の目に当たり汁が目の中に入る。ぎゃああああ痛いとのたうち回っていると顎を掴まれて、上を向いた私に隆は優しくティシュで目を拭いてくれる
「八戒、女の子には優しくな」
「怒られてやんの」
「女じゃねーもん。タカちゃんだけだよ、女だと思ってんの」
「……その発想は無かったな」
「んな訳あるかーい」
「さっきから皆うるさい!アニメの音が聞こえない」
急に怒り出したルナに私達はすみませんと言って口を閉じた。
そういえば、ここ最近はお雑煮ばっかり食べて餅を食べアイスを食べての繰り返し。他の時間は大体コタツでヌクヌクしている
丁度良いタイミングで腰に手を回して来た隆。
むにゅうと腹を摘まれて、私は時が止まった様に感じた
「……何か雪那ムチムチしてね?」
「……うん」
「……女の子はこれくらいあった方が可愛いって」
「隆、そんなに腹肉揉み揉みしないで」
「……ブタ……」
「八戒やかましいわ」
「ブタのが可愛いかも」
「キィィィィ」
太ってねーよ。とフッと笑った隆は私の肩に頭を置いて抱き締めてくる。その様子を嫌そうに見る八戒にニヤニヤと腹ただしい顔を向けてやった
あんまり煩くしてもルナに怒られるので、マナの可愛いマッサージを受けながらウトウトとしていると腹が減っただの、デザートが食べたいだのと騒ぐ声が耳に入る
隆が作ってくれるから動かなくていいかな何て思いながらそのまま目を閉じた
中学の時のお付き合いとは少しだけ変わった気がする
隆も少しだけやんちゃが落ち着いたし、恥ずかしいとか気を使うとかも少しづつ無くなってきた様に感じる。隆はどうかは分からないけど、いつも隣に居るのが当たり前で何かあったら1番に話す。温もりを感じたくなったら抱き締める
私にとっては彼の存在が精神安定剤みたいな感じなのかもしれない
ふと、隆が他の女の子と付き合う事を想像してみたけれど私が隆に愛されている実感があり過ぎてイメージすら沸いてこなかった
冬休みが終わって新学期が始まり高校から出来た友達と放課後に良く遊ぶようになった。定番だけどカラオケに行ったりショッピングしたり。ワイワイと女同士4人組で色んな所に出掛けて夜騒ぐのが日常になってしまっていた
帰ってきて1人ぼっちの部屋で仕事をして眠い目を擦りながら宿題をする。この位大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせて最初は頑張って来たけど、1ヶ月くらいしたら勉強が疎かになっていってるのに気付いた。
隆からのLINEは毎回返しているけれど、最近全然会えねーなとちょっと不機嫌なメッセージが入ってきて何だか少し考えなきゃダメかな何て思っていた
放課後、いつも通り仲が良い4人でファミレスに入り恋話や学校の話などで盛り上がっていると友人の着信が鳴り、何やら嬉しそうに会話している
私を含めた3人はその様子を見てニヤニヤとしていると電話を切った友人、瑞希はいきなり声を弾ませた
「今から好きな人がここに来ます」
パチパチパチと私達が送る拍手に嬉しそうに笑った瑞希。まだ付き合っても無いんだけどねと照れくさそうにしていて内心皆可愛いと感じたのだろう。
私と同じ様に瑞希なら絶対いけるよと3人声が揃って全員で大笑いをした
それから、直ぐに瑞希の好きな男の子とそのお友達3人が来て隣のテーブルに座るのかと思いきや男の子達は1人づつ私達の隣に座った
男の子達は全員が少し髪を染めたりして流行りの服を着ている今時っぽい感じだった。その中でも瑞希の隣に座った男の子。多分彼が好きな人何だろう
ちょっとやんちゃっぽいけれど、瑞希に見せる笑顔は少し幼くて可愛らしい。挨拶もちゃんと出来る人だったので内心少し安心した
私達の隣に男の子達が座った事に、瑞希がごめんねと手で合図したのが分かって私達3人は嫌な顔はせずにこくりと頷いた
隣に座られたからと言って、触られたりする事も無く普通に8人で下らない話や男の子達が通う高校の話何かを聞いていると
友人の由香が、顔を引き攣らせながら私を見ている事に気付き首を傾げる。すると、ゲッと声を出した美咲が三ツ谷来たけど雪那大丈夫?と苦笑いでこちらを見た
何もやましい事はしていないので、大丈夫だと思うよと返す
こちらに真っ直ぐ歩いてきたのは隆と八戒、ちーちゃんにドラちゃんだった
「……お前携帯見てねーの?」
私達のテーブルの前に来て、真っ直ぐと私を見つめ開口1番にそう言った隆に男の子達は振り返る
隆よりもドラちゃんを見て気まずそうに席を立ったのは何故か瑞希の好きな男の子で、足早にお金も払わずに出口に向かう。それに続くように3人の男の子も足早に去っていった
「……あ、ごめん。見てないや」
「てか、彼奴ら誰?ナンパ?」
「違うよ、瑞希の友達」
「……三ツ谷ごめんね、私の好きな人なんだ。前の通りのカラオケに4人でいるからちょっと顔だしていい?って聞かれてOKしちゃったの。雪那借りてごめんね」
「……北原さん、怒ってないから大丈夫だよ」
ニコッと人の良さそうな笑みで笑う隆に由香も美咲も瑞希も全員良かったと脱力したように顔を合わせる。
まぁ、怒られる事は無いけど私が心配したのは瑞希の友人の男の子達が隆達に難癖つけたらどうしようだった何て事は言わないでおいた
「腹減ったわ、とりあえず何か食うべ」
そう言ったドラちゃんは普通に私の隣に座った。それを見て隆もドラちゃん隣に座ると、相席しちゃってごめんねと一言皆に言ってくれて私は少し嬉しくなった
ちーちゃんは美咲に手を取られて隣に座らされるが、慣れているのか余り動じないちーちゃんはお邪魔しますと小さく呟いて大人しく座りメニューを取った
由香が八戒にここ座りなよと言われてガチガチに固まりながら何故か私の隣に座った
「……ちょっと八戒、由香の隣いきなよ」
「……凄い辛いけどここで我慢するわ」
「……いや、聞き捨てならないんだけど」
そんな八戒に、可愛い八戒君と言って由香が八戒の隣に座り、ロボットみたいになった八戒に隆とドラちゃんがゲラゲラ笑い瑞希も八戒君てこんな感じなんだねと笑っていた
何だかそんな流れがあって、和やかに皆でご飯を食べてお喋りをしているといつの間にか時刻は21時を過ぎていて皆が解散ムードになる
流石のちーちゃんが皆を送ると言ってくれたので私は安心して彼に皆を任せる事にした。一人で帰ろうとしている八戒の服をちーちゃんが引っ張って、方向が違う私達に手を振り皆帰路につく後姿を眺めていると
隆がトイレ行ってくるからちょっと待っててと言うので電信柱に寄っかかり携帯を開いた
隆からのLINEには今日も出掛けんの?の一言だけ学校が終わったであろう時間に入っていた
「なぁ、雪那 」
「んー?」
手すりの上に座ったドラちゃんの声で携帯を閉じる
何?と言えば、言いにくそうな顔で何やら考えている様子が伺えた
「……あー。多分怒っては無いんだけど不満?みたいな感じ?かな?たかしくん」
「お前、それ分かってんのに今日返事返してねーの?」
「いや、女子トークで盛り上がってしまって携帯見てなくてさ。男の子の事も瑞希が急に呼んだから何も言えなくて。うーん、やましい事が無いから言い訳しても逆に不自然だし……。てか何か言いたい事わかんなくなってきた」
「……ま、別にただ友達と居るのが楽しいって事だろ?三ツ谷の事が大事じゃないとかじゃなく」
「……まさにそれ」
「……俺もチームのメンバーと居る時が1番おもしれーけど。エマが大事だ。そんな感じだよな」
「うん、隆は分かってくれると思う」
「……あー、それなんだけどよ。三ツ谷は分かってくれてはいるぜ。ただ頭で理解してても感情が追いつかない何て事もあるからな」
「……」
男が女に振り回されて不貞腐れるのがかっこ悪いって分かってる奴なんだよ。とドラちゃんはケラケラ笑い私を見つめる
もう少し隆の事も考えてあげなきゃな。とポロっと出た言葉にドラちゃんはニカっと笑ってくれた
隆が戻ってきて、ドラちゃんは直ぐにネオン街に向かって行った。機嫌が悪くは見えないけれどご機嫌を取ろうと思い、腕に抱き着いてお礼を口にする
「隆、今日ありがとう。私の友達と仲良くしてくれて嬉しい」
「あー、うん。友達皆いい子じゃん」
「うん、……そういえば昨日さ時間あったから隆の好きな煮物作っといたんだ。持っていく?」
「……ふーん。返事は返さねーのにな」
「ごめんて、ちょっと今日は瑞希の好きな人の話で盛り上がっててさ」
「……それで?あの連中に隣に座られてお前は嫌な顔もしねーでニコニコしてんだ」
「……」
目が笑っていない隆はそう言ってから私の手首を掴み
顔を近づけてくる
耳元に寄せた唇から、何か言えよと言葉が小さく漏れて私はびっくりしてその場で目を見開いた。この声は相当怒ってる時の声だ
どうしようかと考えていると手首がキツく握られて咄嗟に頭に出てくるのは、私はやましい事してないとか。あれは、ただ瑞希の友達だから
あの場面で嫌がれないしとか言われてない事の言い訳まで頭に色々浮かんできて
気付けば隆の手を振り払って走っていた
玄関に入り施術してそのまま真っ暗な部屋のベットにダイブする。はァと溜息が出て来たら自然に涙も出て来た
あんな顔をされたのは昔に変な男の子がウチに泊まっただ何だ隆に嘘をついた時だったなぁ。何てボンヤリ考えていると、ふとメイクしたまま寝るのは良くないかなと思い涙を流しながらシャワーを浴びた
髪を乾かして珈琲を入れて啜っていると何だか気持ちが落ち着いてくる様な感じがした。毎日毎日、老夫婦みたいに仲が良くてずっと一緒にいたから、何だかビックリしすぎたのかなと思った
体力的にまだ動けるし少し仕事しよーと思い机に向かった時、ピンポンと鳴ったチャイムにはァと溜息が出る
あの感じだとまだ怒られそうだなぁ何て思いながら仕事用の眼鏡を外して玄関を開けると立っていたのは全然違う人物だった
「よぉ」
「いぬぴーじゃん。どしたの?」
「お裾分け。前に林檎貰ったじゃん、これは桃だけどな」
「はァ、びっくりした。てか林檎あげたの相当前なんだけど良く覚えてんね」
「…まぁな…昨日箱で届いた。三ツ谷家族と食えば?」
「あー、うん。サンキュ。珈琲飲んでく?」
「仕事あるから帰る」
じゃあ下まで送るーと言ってサンダルを引っ掛けた時、ガンと玄関を殴る音がしてビクリと体が震えた
「……隆」
「……さっきの今で何で乾といんの?」
「……三ツ谷何でキレてんの?」
もの凄いタイミング悪いなぁ何て思っていると、いぬぴーは冷静に私が持っている紙袋を指さした
「 雪那に前に林檎貰ったから、桃のお裾分けしにきただけ」
「……てめぇ、何人の女呼び捨てにしてんの?」
「ドラケンだってしてんじゃん」
「お前とドラケン一緒にすんじゃねーよ」
「……いぬぴーごめん。ただのとばっちり。」
「だろーな。仕事あるから帰るわ」
くるりと方向転換したいぬぴーは溜息を吐いた私を見て立ち止まる
「…… 雪那 、こんな女に怒り狂ってくる男より俺のが良いんじゃない?」
そう言い終えた時にはもう遅かった。隆の振り上げた拳はいぬぴーのお腹に入り、少しだけ口元に笑みを浮かべたいぬぴーは
そのまま右手の拳で隆の頬を殴り飛ばす
なんでそうなるのよぉと涙が出そうになり、その涙を堪えて隆の拳の前に踏み出した
漫画の様に目の前に星が飛んだ様な感覚だった
頬から鼻にかけて衝撃が走り、自分の名前を叫ぶ隆といぬぴーの声を聞きながら気を失ってしまった
何だか痛い。眠いけど痛くて手を動かす
頭を優しく撫でられる様な温かさに目を開ける
「……ドラちゃん」
「……はァ、……まだ痛いか?」
「……?ここどこ?」
「お前ん家。乾から事情聞いた、悪かったな」
「……何で謝んの?」
「乾が三ツ谷の事煽ったろ、まぁ、その前にあの時嫌な予感してたのに俺帰っちまったからよ」
「……隆は?」
「死んでる」
「……何それ」
「リビングにいるから覗いてきな」
少しフッと笑ったドラちゃん
ゆっくり起き上がり、リビングの扉を開ければ顔に怪我をしている隆がソファに力無く座っている
ちーちゃんとタケミチ君、いぬぴーにガミガミとお説教されている隆は何も言わずに下を向いていた
そっとドアを閉じてベットに戻ると、あの3人組怖ぇよなとケラケラ笑ったドラちゃんに隆が怪我してると言えば、俺が殴ったと笑った
「……まぁ、三ツ谷も反省しただろーよ」
「……私が飛び出しただけで、隆は悪くない」
「んな事皆分かってんだよ」
「……」
「……ま、ゆっくり話し合いな」
ドラちゃんは立ち上がると3人を連れて家を出てってしまう。玄関からお邪魔しましたと聞こえても、何だかありがとうも言えずにベットから動けなかった
珈琲飲もうかな何て考えていると、静かに扉が開いて顔が傷だらけの隆は私の隣にそっと座った
「……悪かった」
「……フッ、あんなパンチ余裕だし」
私がにっこり笑うと、悲しそうな瞳で私を見つめる
何だか子供みたいに見えてきて、肩に顔を寄せて背中を摩れば応えるように抱き締めてくる
よしよしと頭を撫でてから腫れた目元に口付けして、大丈夫だよと耳元でつぶやいた
「……悪ぃしか出てこねぇ」
「……私もごめんね、寂しい思いさせちゃった」
「お前は友達と居て楽しかっただけだ。何も悪くねーよ」
「でも、隆が私の事好きすぎるから私はちゃんとその時間も取らないと」
冗談まじりに言ってブハッと吹き出した私に、隆は笑わなかった。お前の負担になるのが辛いって呟いた隆はそのまま立ち上がり1度だけ泣きそうな顔で私を見る
本当に悪かった、じゃあな。そう言った隆は私の頬を壊れ物の様に手で包み触れるだけの口付けを落とした
まるで時が止まった様だった。状況を理解出来ない私を置き去りにする様に隆はそのまま玄関から出て行った
何故か……、覚悟を見た気がしちゃって追い掛けられなかった
胸が痛くて苦しくて、そのままずっと泣いていた
きっと隆もこれくらい苦しいんじゃないかって考えたら辛くて辛くてどうしていいのか分からなくなってしまった
それから心にポッカリと穴が空いた様な生活が始まった。
ここまでが本編の番外編です
↓ 皆が2人の為に頑張るif話
学校に行っても遊んでいても、仕事をしていても上の空。1週間目で苦しすぎて家で泣き過ぎて目が腫れて学校を休んだ
2日目くらいまでは明日連絡来るよね何て思っていたけど、そのポジティブ思考も直ぐに消えた
腫れた瞼を氷枕で冷やしていると何やらガヤガヤと騒がしい。ピンポンとチャイムが鳴ってそのままドアを開ければ隆以外のいつもの面子が扉から顔を覗かせた
「……上がっていーよ」
「ひでー顔だな」
私の顔をマジマジと見て珍しく目を見開いて心配そうにしているドラちゃんを押しのけたちーちゃんは目が合うと泣きそうな顔をする
雪那さんと名前を呼びながら鼻をすすり、私の肩に顔を埋めたちーちゃんの背を摩ると、いぬぴーとタケミチ君、ドラちゃんはお前が泣くんかいと3人でちーちゃんの尻を叩いた
リビングに通した4人に珈琲を入れていると、タケミチ君がシュークリーム買ってきましたと言って箱を差し出してくれる。微笑んだ私にホッとした様な顔をしたので心配かけて悪かったな何て気持ちが出てきた
ずっと自分の事しか考えられなかったから
「皆揃っていきなりどしたの?はい、珈琲」
「……どしたの?じゃねーべ。三ツ谷もお前も顔死にそうじゃん」
「…フッ、別れた時は全世界の人間はこんなもんよ」
「……すげー強がるじゃん」
「いぬぴー煩いよ。強がりじゃないもん。……でもそっか。隆もこんな顔してるんだ」
「……」
はぁぁぁと溜息を吐いた私に、どうして会いに行かないんですか?とストレートに突っ込んでくるタケミチ君の言葉が胸に刺さる。サヨナラって言われたら中々行けないよぉと肩を落とした私にちーちゃんは良い作戦があるんですけどと言って少し悪い顔をする
俺が三ツ谷君にいぬぴー君が雪那さんに猛アタックしてるって嘘付いたら、三ツ谷君は焦って雪那さんに会いに行くと思います
と小学生がする様な作戦を自信満々で発表してきた
「ドラケン君どうですかね?」
「……ちなみに、千冬だったらどうすんだ?三ツ谷の立場だったら」
「聞いた直後に走って会いにいきます」
「まぁ、そーゆー奴だから考えつく作戦だよな。……乾は?三ツ谷の立場だったら?」
「……俺の事半殺しにするかも」
「……」
「…うーん。…今の隆は何もしなそーな気がするけどね。自分で言っちゃった手前」
「僕もそう思います。三ツ谷君、一人で余計苦しんじゃいそう」
「……苦しんでいいんじゃね?アイツはそんな柔じゃねーし。根性もある。沢山苦しんで下らねー事にこだわってたのは自分だって分かるんじゃねーか?何が1番大事なのか。どんな事があっても隣に居れれば良いんだなって三ツ谷が腑に落ちれば成功だろ」
「ドラちゃんに惚れた」
「「俺も」」
「……ジンと来た」
コクコクと首を縦に振る私達4人にドラちゃんは続ける。でもその作戦をするなら、必ず俺が間に入る
千冬1人じゃダメだと言うとちーちゃんはこくりと頷いた
私は何もしなくていいのか?そもそも、その作戦本当に大丈夫なのかな?と少し不安になるがドラちゃんの真面目な顔を見ていたら何だか少しだけ平気な気がしてきた
「いぬぴーごめんね、損な役させて」
「いや、別に俺は大丈夫」
「まぁ、他のメンバーじゃ三ツ谷も騙されないしな」
「そう言えばそうだね」
「パーチん君が雪那さんに猛アタックしててとか言っても鼻で笑われそう」
「八戒とかな」
「そのチョイスやめろや」
そんな事を笑いも交えて話ていたら少しづつ気分が晴れて行くのが良くわかった。ありがとうと私が笑うと4人は寄りが戻ったら三ツ谷に奢ってもらうと言って帰って行った
その日は久しぶりにぐっすり眠れた気がした
だけど、それから2週間経っても誰からの音沙汰無く、学校で隆の後ろ姿を見掛けたくらいで何も無かった。気分は落ち着いてきているし、何だかもう考えると辛くて瑞希達と遊びに出掛けてカラオケに行ったり夜遊びをしたりをくり返していた
その日もカラオケに行き、4人で騒いでいると携帯のLINEにはちーちゃんから家に居ますか?と入っている。何だか心がザワザワして、瑞希達に急用が出来たと言って走りながら家に向かう
LINEで今から帰るとちーちゃんに返信を打ち、息をきらせて家に帰って来ると玄関の前に居たのはいぬぴーだった
「いぬぴーどしたの??」
「……悪ぃ。三ツ谷と喧嘩になった」
「……はぁ?」
とりあえず上がってと言って玄関を開ける。電気を付けようと靴を脱いで手を伸ばせば玄関に置いてあったダンボールにつまづいて、ギャッと声を出してしまう
パシっと私が倒れる前に手を取ってくれたいぬぴーにお礼を言うと何だか変な空気が流れて、手を離してくれない事に違和感を感じる
「……何?」
「…丁度いいかなって思ってたんだよな。俺お前の事気に入ってたし」
「……ちょ、どうゆう事?……いぬぴー怖いし痛いって。離して」
振りほどこうとしたが、握られた手首はビクともしない
パチリとついた電気にビクリとすると、片手でいぬぴーが電気を付けていた
無表情な顔に私は何の冗談?と後退りをしようとするが手を引かれて壁に優しく押し付けられて身動きが取れない
動揺して泣きそうな顔になると、彼は私の耳元に顔を寄せる。耳に息がかかり、目を瞑りヤダヤダとバタつかせた手足は押さえ込まれて本気で涙が出てきた時
急にドンと大きな音がして壁に押し付けられていた体が解放され、同時にまた違った鈍い音が部屋に響き恐怖で心臓がドクンと高鳴った
グイッと手を引かれて胸に押し込まれる感覚と懐かし香り。ゆっくり目を開けると目が座った隆は私を見てはいなくて口元の血を拭ういぬぴーを見てた
「……てめぇ、乾」
「……三ツ谷。お前、別れたんだろ?しゃしゃって出てくんなよ」
「…………」
「…何も言えねーなら、雪那の事を俺はお前みたいに諦めねーけど」
「……」
「根性ねぇな、三ツ谷。……お前雪那の顔良く見ろよ」
そう言ったいぬぴーの言葉に隆はゆっくり私を見た。涙でぐしゃぐしゃな私の顔。目が合って嬉しくて、つい会いたかったよぉとワンワン泣いてしまう。そんな私を見て隆は凄くびっくりした顔をした
涙を優しく指で拭かれて困った顔をした隆は、泣かせてごめんなと言って強く抱き締めてくれる。ぐしぐしとまだ泣いている私の目元に口付けを落とし、髪を優しく撫でらると涙が少しづつ止まってきた
はぁぁと長い溜息が聞こえてそちらを見れば、疲れきった顔をしたいぬぴーと、いぬぴーの頭を撫でるドラちゃん。ニヤニヤしたちーちゃんが廊下に立っているのを見て肩から力が抜けてしまった
「すげー疲れた。俳優を尊敬するわ」
「凄く良い演技だったよ、いぬぴー君」
「マジでお疲れ」
多分隆はあんまり分かって無くて、はァ?みたいな顔をしている
「…演技か………私まで騙されたんだけど……いぬぴーにマジでビビってしまった」
「ぷッ、お前震えてたもんな」
「……てかドラちゃん達、ウチの中に居たんだ、気が付かなかったよ」
「三ツ谷の家の玄関にお前ん家の鍵が置いてあるの知ってたからな」
「……つうか、どうゆう事?」
ポカンとしている隆の肩を持ってリビングに連れていくドラちゃんに私達も続く。ちーちゃんがキッチンでお茶を入れてくれているので、それはお任せして隆の隣に座った
「……悪かったな、三ツ谷。俺のは全部嘘」
「……嘘?」
「あー俺が説明するわ。ちなみに、今日急に呼び出した理由も嘘」
「……それは見て分かったけどよ」
「どんな嘘ついたらあのタイミングで隆がうちに来るの?」
「三ツ谷と別れてから飯食わなくて倒れたって送った」
「……それは逆なら私も走って行くわ」
まぁ、とりあえず全部話すと言って口を開いたドラちゃんの分かりやすい説明は私達にとっての反省部分も交えて話してくれて、私は少し耳が痛かったけど隆もマジメに聞いていた
「2人共、別れた日から今まで会えなくてすげー苦しかっただろ?」
「……ああ。」
「ただ、会えるだけで幸せなんだよ」
そう言ったドラちゃんに隆も私も下を向いた
本当にそうだよね。って私が言えばちーちゃんが何も言わずにお茶を皆に出してくれて、隆は面倒かけて悪かったと言って皆に頭を下げた
「……こんな場面で言うのもなんだけど、すげー口が痛ェ。血が止まんねぇ」
「……悪ぃ。乾。本気で殴った」
「いぬぴー今消毒するね」
救急箱を取りに行って帰ってくると、みんなは何故か笑っていて和やかなムードになっていた。何の話?と私も微笑みながらいぬぴーの隣に座り救急箱から消毒液を取り出した
「いや、お前の話」
「……何?何か面白かった?」
「お前が電気付けようとして空振りしてたからさ、これじゃあ三ツ谷に見えないじゃんと思って俺が電気付けたんだよ」
「…そういえば、何で付けんのか意味不明だったわ」
「そしたらお前がめっちゃ泣き出して、その顔見てたら自分の演技にもお前の顔にもちょっと笑っちゃってさ。だから耳元に顔隠したんだけど、そしたら三ツ谷のパンチが避けきれなかったって話」
泣いてんのに笑うなしと突っ込むと、ビクビクしてて面白かったと言われてびちょ濡れになるまで口元を消毒してやるとイテテと言いながらも思い出し笑いを始めたいぬぴーに皆笑っていた
仕事があるから帰ると席を立った皆を隆と二人で見送る。ありがとうと私が笑えば二度と別れんなよといぬぴーは隆にデコピンする
ああ。と言った隆に私が微笑むとその様子を見た3人は安心した顔をして帰って行った
玄関の扉を閉めると、グイッっと腕を引かれて隆は直ぐに私を抱き締めてくれた。温かくて懐かしい香りに目を瞑りぐりぐりと胸に顔を押し付ける
「……お前本当にぐりぐり好きだよな」
いつもみたいにフッと薄く笑っているんだろうなと思って目を開けると凄く切ない顔で私を見ていた隆に思わずどしたの?と聞いてしまう
「……いや、久しぶりだなって」
「そうだね、中学生の時からずっと一緒だし。離れててもちゃんと付き合ってるって絆もあったしね」
「……俺の事好き?」
「当たり前でしょ」
「俺も」
真面目な顔で愛してるよって言われて、手にされた口付けに私は何だかホッとしてしまった。隆の頬に擦り寄って瞼に口付けると指で優しく唇を開けられて深くキスをされる
唇が離れ、重荷になってごめんなと隆の口から溢れ出た言葉に私は頬を膨らませる。
「重荷何て思った事無いよ、世界で1番大事で愛してるもーん」
そう言ってにししと笑った私に、まぁお前はそう言ってくれるよなと優しい手が私を撫でる
「……隆がいて、隆との将来を見てるから仕事も勉強も大好きな料理も頑張れてるんだ」
「……」
「ルナとマナが居るからやる気が出るんだ」
「……」
「……私は隆がいなきゃ、何もしたくなくなっちゃうかも」
そう言ってたら本当に大事なんだなって実感が沸いてきて、涙が出てきてしまう。その涙を優しく拭ってくれる隆は馬鹿だなぁと小さく笑った
「……俺なんかお前が居ないなら生きてたくも無くなったわ」
「……一緒だよ」
涙が止まらない私をずっと抱き締めてくれて、それから一緒にお風呂に入って抱き締め合って眠った
朝起きて何を作ってあげようかなと考えている自分がいて、その小さな幸せが胸に染み渡る様に感じた
お医者さんごっこをしてくるマナと冬のアニメ特集に釘付けなルナにコタツでぬくぬくしながらテーブルに顔をうつ伏してクタクタな私
この間入学したと思ったらもう年越しも終わり、冬休みも終わろうとしていた。特にこれといって何も無い休みだったのにこんなにクタクタなのは何故なのか
お薬ですよーと言って剥いたミカンの粒を口の中に入れられてそのままむしゃむしゃと咀嚼する。
苦くてもしっかり飲みましょうと言われコクコクと頷いた
私の口の中がパンパンになってもミカンを入れてくるマナにコンビニに行っていた隆が帰ってくるなりその様子を見ると、首を横に振りマナの手を止めた
「マナ、それ以上入れると雪那が呑み込めない」
「まだ半分あるのにー。……そうだ八戒あーん」
「……雪那の唾液ついてそうだし汚いからいらね」
「……お前の唾液より綺麗だわい」
「えー雪那ちゃんのよだれついてないよ、八戒」
「じゃあ食べる」
「チッ」
「タカちゃん、ブスが舌打ちしてくる」
「八戒、目を凝らしてよーく見てみろ。スゲー可愛いから」
「……」
「ふははは、聞いたか八戒」
うつ伏したまま笑う私に八戒が無表情で投げたミカンが私の目に当たり汁が目の中に入る。ぎゃああああ痛いとのたうち回っていると顎を掴まれて、上を向いた私に隆は優しくティシュで目を拭いてくれる
「八戒、女の子には優しくな」
「怒られてやんの」
「女じゃねーもん。タカちゃんだけだよ、女だと思ってんの」
「……その発想は無かったな」
「んな訳あるかーい」
「さっきから皆うるさい!アニメの音が聞こえない」
急に怒り出したルナに私達はすみませんと言って口を閉じた。
そういえば、ここ最近はお雑煮ばっかり食べて餅を食べアイスを食べての繰り返し。他の時間は大体コタツでヌクヌクしている
丁度良いタイミングで腰に手を回して来た隆。
むにゅうと腹を摘まれて、私は時が止まった様に感じた
「……何か雪那ムチムチしてね?」
「……うん」
「……女の子はこれくらいあった方が可愛いって」
「隆、そんなに腹肉揉み揉みしないで」
「……ブタ……」
「八戒やかましいわ」
「ブタのが可愛いかも」
「キィィィィ」
太ってねーよ。とフッと笑った隆は私の肩に頭を置いて抱き締めてくる。その様子を嫌そうに見る八戒にニヤニヤと腹ただしい顔を向けてやった
あんまり煩くしてもルナに怒られるので、マナの可愛いマッサージを受けながらウトウトとしていると腹が減っただの、デザートが食べたいだのと騒ぐ声が耳に入る
隆が作ってくれるから動かなくていいかな何て思いながらそのまま目を閉じた
中学の時のお付き合いとは少しだけ変わった気がする
隆も少しだけやんちゃが落ち着いたし、恥ずかしいとか気を使うとかも少しづつ無くなってきた様に感じる。隆はどうかは分からないけど、いつも隣に居るのが当たり前で何かあったら1番に話す。温もりを感じたくなったら抱き締める
私にとっては彼の存在が精神安定剤みたいな感じなのかもしれない
ふと、隆が他の女の子と付き合う事を想像してみたけれど私が隆に愛されている実感があり過ぎてイメージすら沸いてこなかった
冬休みが終わって新学期が始まり高校から出来た友達と放課後に良く遊ぶようになった。定番だけどカラオケに行ったりショッピングしたり。ワイワイと女同士4人組で色んな所に出掛けて夜騒ぐのが日常になってしまっていた
帰ってきて1人ぼっちの部屋で仕事をして眠い目を擦りながら宿題をする。この位大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせて最初は頑張って来たけど、1ヶ月くらいしたら勉強が疎かになっていってるのに気付いた。
隆からのLINEは毎回返しているけれど、最近全然会えねーなとちょっと不機嫌なメッセージが入ってきて何だか少し考えなきゃダメかな何て思っていた
放課後、いつも通り仲が良い4人でファミレスに入り恋話や学校の話などで盛り上がっていると友人の着信が鳴り、何やら嬉しそうに会話している
私を含めた3人はその様子を見てニヤニヤとしていると電話を切った友人、瑞希はいきなり声を弾ませた
「今から好きな人がここに来ます」
パチパチパチと私達が送る拍手に嬉しそうに笑った瑞希。まだ付き合っても無いんだけどねと照れくさそうにしていて内心皆可愛いと感じたのだろう。
私と同じ様に瑞希なら絶対いけるよと3人声が揃って全員で大笑いをした
それから、直ぐに瑞希の好きな男の子とそのお友達3人が来て隣のテーブルに座るのかと思いきや男の子達は1人づつ私達の隣に座った
男の子達は全員が少し髪を染めたりして流行りの服を着ている今時っぽい感じだった。その中でも瑞希の隣に座った男の子。多分彼が好きな人何だろう
ちょっとやんちゃっぽいけれど、瑞希に見せる笑顔は少し幼くて可愛らしい。挨拶もちゃんと出来る人だったので内心少し安心した
私達の隣に男の子達が座った事に、瑞希がごめんねと手で合図したのが分かって私達3人は嫌な顔はせずにこくりと頷いた
隣に座られたからと言って、触られたりする事も無く普通に8人で下らない話や男の子達が通う高校の話何かを聞いていると
友人の由香が、顔を引き攣らせながら私を見ている事に気付き首を傾げる。すると、ゲッと声を出した美咲が三ツ谷来たけど雪那大丈夫?と苦笑いでこちらを見た
何もやましい事はしていないので、大丈夫だと思うよと返す
こちらに真っ直ぐ歩いてきたのは隆と八戒、ちーちゃんにドラちゃんだった
「……お前携帯見てねーの?」
私達のテーブルの前に来て、真っ直ぐと私を見つめ開口1番にそう言った隆に男の子達は振り返る
隆よりもドラちゃんを見て気まずそうに席を立ったのは何故か瑞希の好きな男の子で、足早にお金も払わずに出口に向かう。それに続くように3人の男の子も足早に去っていった
「……あ、ごめん。見てないや」
「てか、彼奴ら誰?ナンパ?」
「違うよ、瑞希の友達」
「……三ツ谷ごめんね、私の好きな人なんだ。前の通りのカラオケに4人でいるからちょっと顔だしていい?って聞かれてOKしちゃったの。雪那借りてごめんね」
「……北原さん、怒ってないから大丈夫だよ」
ニコッと人の良さそうな笑みで笑う隆に由香も美咲も瑞希も全員良かったと脱力したように顔を合わせる。
まぁ、怒られる事は無いけど私が心配したのは瑞希の友人の男の子達が隆達に難癖つけたらどうしようだった何て事は言わないでおいた
「腹減ったわ、とりあえず何か食うべ」
そう言ったドラちゃんは普通に私の隣に座った。それを見て隆もドラちゃん隣に座ると、相席しちゃってごめんねと一言皆に言ってくれて私は少し嬉しくなった
ちーちゃんは美咲に手を取られて隣に座らされるが、慣れているのか余り動じないちーちゃんはお邪魔しますと小さく呟いて大人しく座りメニューを取った
由香が八戒にここ座りなよと言われてガチガチに固まりながら何故か私の隣に座った
「……ちょっと八戒、由香の隣いきなよ」
「……凄い辛いけどここで我慢するわ」
「……いや、聞き捨てならないんだけど」
そんな八戒に、可愛い八戒君と言って由香が八戒の隣に座り、ロボットみたいになった八戒に隆とドラちゃんがゲラゲラ笑い瑞希も八戒君てこんな感じなんだねと笑っていた
何だかそんな流れがあって、和やかに皆でご飯を食べてお喋りをしているといつの間にか時刻は21時を過ぎていて皆が解散ムードになる
流石のちーちゃんが皆を送ると言ってくれたので私は安心して彼に皆を任せる事にした。一人で帰ろうとしている八戒の服をちーちゃんが引っ張って、方向が違う私達に手を振り皆帰路につく後姿を眺めていると
隆がトイレ行ってくるからちょっと待っててと言うので電信柱に寄っかかり携帯を開いた
隆からのLINEには今日も出掛けんの?の一言だけ学校が終わったであろう時間に入っていた
「なぁ、雪那 」
「んー?」
手すりの上に座ったドラちゃんの声で携帯を閉じる
何?と言えば、言いにくそうな顔で何やら考えている様子が伺えた
「……あー。多分怒っては無いんだけど不満?みたいな感じ?かな?たかしくん」
「お前、それ分かってんのに今日返事返してねーの?」
「いや、女子トークで盛り上がってしまって携帯見てなくてさ。男の子の事も瑞希が急に呼んだから何も言えなくて。うーん、やましい事が無いから言い訳しても逆に不自然だし……。てか何か言いたい事わかんなくなってきた」
「……ま、別にただ友達と居るのが楽しいって事だろ?三ツ谷の事が大事じゃないとかじゃなく」
「……まさにそれ」
「……俺もチームのメンバーと居る時が1番おもしれーけど。エマが大事だ。そんな感じだよな」
「うん、隆は分かってくれると思う」
「……あー、それなんだけどよ。三ツ谷は分かってくれてはいるぜ。ただ頭で理解してても感情が追いつかない何て事もあるからな」
「……」
男が女に振り回されて不貞腐れるのがかっこ悪いって分かってる奴なんだよ。とドラちゃんはケラケラ笑い私を見つめる
もう少し隆の事も考えてあげなきゃな。とポロっと出た言葉にドラちゃんはニカっと笑ってくれた
隆が戻ってきて、ドラちゃんは直ぐにネオン街に向かって行った。機嫌が悪くは見えないけれどご機嫌を取ろうと思い、腕に抱き着いてお礼を口にする
「隆、今日ありがとう。私の友達と仲良くしてくれて嬉しい」
「あー、うん。友達皆いい子じゃん」
「うん、……そういえば昨日さ時間あったから隆の好きな煮物作っといたんだ。持っていく?」
「……ふーん。返事は返さねーのにな」
「ごめんて、ちょっと今日は瑞希の好きな人の話で盛り上がっててさ」
「……それで?あの連中に隣に座られてお前は嫌な顔もしねーでニコニコしてんだ」
「……」
目が笑っていない隆はそう言ってから私の手首を掴み
顔を近づけてくる
耳元に寄せた唇から、何か言えよと言葉が小さく漏れて私はびっくりしてその場で目を見開いた。この声は相当怒ってる時の声だ
どうしようかと考えていると手首がキツく握られて咄嗟に頭に出てくるのは、私はやましい事してないとか。あれは、ただ瑞希の友達だから
あの場面で嫌がれないしとか言われてない事の言い訳まで頭に色々浮かんできて
気付けば隆の手を振り払って走っていた
玄関に入り施術してそのまま真っ暗な部屋のベットにダイブする。はァと溜息が出て来たら自然に涙も出て来た
あんな顔をされたのは昔に変な男の子がウチに泊まっただ何だ隆に嘘をついた時だったなぁ。何てボンヤリ考えていると、ふとメイクしたまま寝るのは良くないかなと思い涙を流しながらシャワーを浴びた
髪を乾かして珈琲を入れて啜っていると何だか気持ちが落ち着いてくる様な感じがした。毎日毎日、老夫婦みたいに仲が良くてずっと一緒にいたから、何だかビックリしすぎたのかなと思った
体力的にまだ動けるし少し仕事しよーと思い机に向かった時、ピンポンと鳴ったチャイムにはァと溜息が出る
あの感じだとまだ怒られそうだなぁ何て思いながら仕事用の眼鏡を外して玄関を開けると立っていたのは全然違う人物だった
「よぉ」
「いぬぴーじゃん。どしたの?」
「お裾分け。前に林檎貰ったじゃん、これは桃だけどな」
「はァ、びっくりした。てか林檎あげたの相当前なんだけど良く覚えてんね」
「…まぁな…昨日箱で届いた。三ツ谷家族と食えば?」
「あー、うん。サンキュ。珈琲飲んでく?」
「仕事あるから帰る」
じゃあ下まで送るーと言ってサンダルを引っ掛けた時、ガンと玄関を殴る音がしてビクリと体が震えた
「……隆」
「……さっきの今で何で乾といんの?」
「……三ツ谷何でキレてんの?」
もの凄いタイミング悪いなぁ何て思っていると、いぬぴーは冷静に私が持っている紙袋を指さした
「 雪那に前に林檎貰ったから、桃のお裾分けしにきただけ」
「……てめぇ、何人の女呼び捨てにしてんの?」
「ドラケンだってしてんじゃん」
「お前とドラケン一緒にすんじゃねーよ」
「……いぬぴーごめん。ただのとばっちり。」
「だろーな。仕事あるから帰るわ」
くるりと方向転換したいぬぴーは溜息を吐いた私を見て立ち止まる
「…… 雪那 、こんな女に怒り狂ってくる男より俺のが良いんじゃない?」
そう言い終えた時にはもう遅かった。隆の振り上げた拳はいぬぴーのお腹に入り、少しだけ口元に笑みを浮かべたいぬぴーは
そのまま右手の拳で隆の頬を殴り飛ばす
なんでそうなるのよぉと涙が出そうになり、その涙を堪えて隆の拳の前に踏み出した
漫画の様に目の前に星が飛んだ様な感覚だった
頬から鼻にかけて衝撃が走り、自分の名前を叫ぶ隆といぬぴーの声を聞きながら気を失ってしまった
何だか痛い。眠いけど痛くて手を動かす
頭を優しく撫でられる様な温かさに目を開ける
「……ドラちゃん」
「……はァ、……まだ痛いか?」
「……?ここどこ?」
「お前ん家。乾から事情聞いた、悪かったな」
「……何で謝んの?」
「乾が三ツ谷の事煽ったろ、まぁ、その前にあの時嫌な予感してたのに俺帰っちまったからよ」
「……隆は?」
「死んでる」
「……何それ」
「リビングにいるから覗いてきな」
少しフッと笑ったドラちゃん
ゆっくり起き上がり、リビングの扉を開ければ顔に怪我をしている隆がソファに力無く座っている
ちーちゃんとタケミチ君、いぬぴーにガミガミとお説教されている隆は何も言わずに下を向いていた
そっとドアを閉じてベットに戻ると、あの3人組怖ぇよなとケラケラ笑ったドラちゃんに隆が怪我してると言えば、俺が殴ったと笑った
「……まぁ、三ツ谷も反省しただろーよ」
「……私が飛び出しただけで、隆は悪くない」
「んな事皆分かってんだよ」
「……」
「……ま、ゆっくり話し合いな」
ドラちゃんは立ち上がると3人を連れて家を出てってしまう。玄関からお邪魔しましたと聞こえても、何だかありがとうも言えずにベットから動けなかった
珈琲飲もうかな何て考えていると、静かに扉が開いて顔が傷だらけの隆は私の隣にそっと座った
「……悪かった」
「……フッ、あんなパンチ余裕だし」
私がにっこり笑うと、悲しそうな瞳で私を見つめる
何だか子供みたいに見えてきて、肩に顔を寄せて背中を摩れば応えるように抱き締めてくる
よしよしと頭を撫でてから腫れた目元に口付けして、大丈夫だよと耳元でつぶやいた
「……悪ぃしか出てこねぇ」
「……私もごめんね、寂しい思いさせちゃった」
「お前は友達と居て楽しかっただけだ。何も悪くねーよ」
「でも、隆が私の事好きすぎるから私はちゃんとその時間も取らないと」
冗談まじりに言ってブハッと吹き出した私に、隆は笑わなかった。お前の負担になるのが辛いって呟いた隆はそのまま立ち上がり1度だけ泣きそうな顔で私を見る
本当に悪かった、じゃあな。そう言った隆は私の頬を壊れ物の様に手で包み触れるだけの口付けを落とした
まるで時が止まった様だった。状況を理解出来ない私を置き去りにする様に隆はそのまま玄関から出て行った
何故か……、覚悟を見た気がしちゃって追い掛けられなかった
胸が痛くて苦しくて、そのままずっと泣いていた
きっと隆もこれくらい苦しいんじゃないかって考えたら辛くて辛くてどうしていいのか分からなくなってしまった
それから心にポッカリと穴が空いた様な生活が始まった。
ここまでが本編の番外編です
↓ 皆が2人の為に頑張るif話
学校に行っても遊んでいても、仕事をしていても上の空。1週間目で苦しすぎて家で泣き過ぎて目が腫れて学校を休んだ
2日目くらいまでは明日連絡来るよね何て思っていたけど、そのポジティブ思考も直ぐに消えた
腫れた瞼を氷枕で冷やしていると何やらガヤガヤと騒がしい。ピンポンとチャイムが鳴ってそのままドアを開ければ隆以外のいつもの面子が扉から顔を覗かせた
「……上がっていーよ」
「ひでー顔だな」
私の顔をマジマジと見て珍しく目を見開いて心配そうにしているドラちゃんを押しのけたちーちゃんは目が合うと泣きそうな顔をする
雪那さんと名前を呼びながら鼻をすすり、私の肩に顔を埋めたちーちゃんの背を摩ると、いぬぴーとタケミチ君、ドラちゃんはお前が泣くんかいと3人でちーちゃんの尻を叩いた
リビングに通した4人に珈琲を入れていると、タケミチ君がシュークリーム買ってきましたと言って箱を差し出してくれる。微笑んだ私にホッとした様な顔をしたので心配かけて悪かったな何て気持ちが出てきた
ずっと自分の事しか考えられなかったから
「皆揃っていきなりどしたの?はい、珈琲」
「……どしたの?じゃねーべ。三ツ谷もお前も顔死にそうじゃん」
「…フッ、別れた時は全世界の人間はこんなもんよ」
「……すげー強がるじゃん」
「いぬぴー煩いよ。強がりじゃないもん。……でもそっか。隆もこんな顔してるんだ」
「……」
はぁぁぁと溜息を吐いた私に、どうして会いに行かないんですか?とストレートに突っ込んでくるタケミチ君の言葉が胸に刺さる。サヨナラって言われたら中々行けないよぉと肩を落とした私にちーちゃんは良い作戦があるんですけどと言って少し悪い顔をする
俺が三ツ谷君にいぬぴー君が雪那さんに猛アタックしてるって嘘付いたら、三ツ谷君は焦って雪那さんに会いに行くと思います
と小学生がする様な作戦を自信満々で発表してきた
「ドラケン君どうですかね?」
「……ちなみに、千冬だったらどうすんだ?三ツ谷の立場だったら」
「聞いた直後に走って会いにいきます」
「まぁ、そーゆー奴だから考えつく作戦だよな。……乾は?三ツ谷の立場だったら?」
「……俺の事半殺しにするかも」
「……」
「…うーん。…今の隆は何もしなそーな気がするけどね。自分で言っちゃった手前」
「僕もそう思います。三ツ谷君、一人で余計苦しんじゃいそう」
「……苦しんでいいんじゃね?アイツはそんな柔じゃねーし。根性もある。沢山苦しんで下らねー事にこだわってたのは自分だって分かるんじゃねーか?何が1番大事なのか。どんな事があっても隣に居れれば良いんだなって三ツ谷が腑に落ちれば成功だろ」
「ドラちゃんに惚れた」
「「俺も」」
「……ジンと来た」
コクコクと首を縦に振る私達4人にドラちゃんは続ける。でもその作戦をするなら、必ず俺が間に入る
千冬1人じゃダメだと言うとちーちゃんはこくりと頷いた
私は何もしなくていいのか?そもそも、その作戦本当に大丈夫なのかな?と少し不安になるがドラちゃんの真面目な顔を見ていたら何だか少しだけ平気な気がしてきた
「いぬぴーごめんね、損な役させて」
「いや、別に俺は大丈夫」
「まぁ、他のメンバーじゃ三ツ谷も騙されないしな」
「そう言えばそうだね」
「パーチん君が雪那さんに猛アタックしててとか言っても鼻で笑われそう」
「八戒とかな」
「そのチョイスやめろや」
そんな事を笑いも交えて話ていたら少しづつ気分が晴れて行くのが良くわかった。ありがとうと私が笑うと4人は寄りが戻ったら三ツ谷に奢ってもらうと言って帰って行った
その日は久しぶりにぐっすり眠れた気がした
だけど、それから2週間経っても誰からの音沙汰無く、学校で隆の後ろ姿を見掛けたくらいで何も無かった。気分は落ち着いてきているし、何だかもう考えると辛くて瑞希達と遊びに出掛けてカラオケに行ったり夜遊びをしたりをくり返していた
その日もカラオケに行き、4人で騒いでいると携帯のLINEにはちーちゃんから家に居ますか?と入っている。何だか心がザワザワして、瑞希達に急用が出来たと言って走りながら家に向かう
LINEで今から帰るとちーちゃんに返信を打ち、息をきらせて家に帰って来ると玄関の前に居たのはいぬぴーだった
「いぬぴーどしたの??」
「……悪ぃ。三ツ谷と喧嘩になった」
「……はぁ?」
とりあえず上がってと言って玄関を開ける。電気を付けようと靴を脱いで手を伸ばせば玄関に置いてあったダンボールにつまづいて、ギャッと声を出してしまう
パシっと私が倒れる前に手を取ってくれたいぬぴーにお礼を言うと何だか変な空気が流れて、手を離してくれない事に違和感を感じる
「……何?」
「…丁度いいかなって思ってたんだよな。俺お前の事気に入ってたし」
「……ちょ、どうゆう事?……いぬぴー怖いし痛いって。離して」
振りほどこうとしたが、握られた手首はビクともしない
パチリとついた電気にビクリとすると、片手でいぬぴーが電気を付けていた
無表情な顔に私は何の冗談?と後退りをしようとするが手を引かれて壁に優しく押し付けられて身動きが取れない
動揺して泣きそうな顔になると、彼は私の耳元に顔を寄せる。耳に息がかかり、目を瞑りヤダヤダとバタつかせた手足は押さえ込まれて本気で涙が出てきた時
急にドンと大きな音がして壁に押し付けられていた体が解放され、同時にまた違った鈍い音が部屋に響き恐怖で心臓がドクンと高鳴った
グイッと手を引かれて胸に押し込まれる感覚と懐かし香り。ゆっくり目を開けると目が座った隆は私を見てはいなくて口元の血を拭ういぬぴーを見てた
「……てめぇ、乾」
「……三ツ谷。お前、別れたんだろ?しゃしゃって出てくんなよ」
「…………」
「…何も言えねーなら、雪那の事を俺はお前みたいに諦めねーけど」
「……」
「根性ねぇな、三ツ谷。……お前雪那の顔良く見ろよ」
そう言ったいぬぴーの言葉に隆はゆっくり私を見た。涙でぐしゃぐしゃな私の顔。目が合って嬉しくて、つい会いたかったよぉとワンワン泣いてしまう。そんな私を見て隆は凄くびっくりした顔をした
涙を優しく指で拭かれて困った顔をした隆は、泣かせてごめんなと言って強く抱き締めてくれる。ぐしぐしとまだ泣いている私の目元に口付けを落とし、髪を優しく撫でらると涙が少しづつ止まってきた
はぁぁと長い溜息が聞こえてそちらを見れば、疲れきった顔をしたいぬぴーと、いぬぴーの頭を撫でるドラちゃん。ニヤニヤしたちーちゃんが廊下に立っているのを見て肩から力が抜けてしまった
「すげー疲れた。俳優を尊敬するわ」
「凄く良い演技だったよ、いぬぴー君」
「マジでお疲れ」
多分隆はあんまり分かって無くて、はァ?みたいな顔をしている
「…演技か………私まで騙されたんだけど……いぬぴーにマジでビビってしまった」
「ぷッ、お前震えてたもんな」
「……てかドラちゃん達、ウチの中に居たんだ、気が付かなかったよ」
「三ツ谷の家の玄関にお前ん家の鍵が置いてあるの知ってたからな」
「……つうか、どうゆう事?」
ポカンとしている隆の肩を持ってリビングに連れていくドラちゃんに私達も続く。ちーちゃんがキッチンでお茶を入れてくれているので、それはお任せして隆の隣に座った
「……悪かったな、三ツ谷。俺のは全部嘘」
「……嘘?」
「あー俺が説明するわ。ちなみに、今日急に呼び出した理由も嘘」
「……それは見て分かったけどよ」
「どんな嘘ついたらあのタイミングで隆がうちに来るの?」
「三ツ谷と別れてから飯食わなくて倒れたって送った」
「……それは逆なら私も走って行くわ」
まぁ、とりあえず全部話すと言って口を開いたドラちゃんの分かりやすい説明は私達にとっての反省部分も交えて話してくれて、私は少し耳が痛かったけど隆もマジメに聞いていた
「2人共、別れた日から今まで会えなくてすげー苦しかっただろ?」
「……ああ。」
「ただ、会えるだけで幸せなんだよ」
そう言ったドラちゃんに隆も私も下を向いた
本当にそうだよね。って私が言えばちーちゃんが何も言わずにお茶を皆に出してくれて、隆は面倒かけて悪かったと言って皆に頭を下げた
「……こんな場面で言うのもなんだけど、すげー口が痛ェ。血が止まんねぇ」
「……悪ぃ。乾。本気で殴った」
「いぬぴー今消毒するね」
救急箱を取りに行って帰ってくると、みんなは何故か笑っていて和やかなムードになっていた。何の話?と私も微笑みながらいぬぴーの隣に座り救急箱から消毒液を取り出した
「いや、お前の話」
「……何?何か面白かった?」
「お前が電気付けようとして空振りしてたからさ、これじゃあ三ツ谷に見えないじゃんと思って俺が電気付けたんだよ」
「…そういえば、何で付けんのか意味不明だったわ」
「そしたらお前がめっちゃ泣き出して、その顔見てたら自分の演技にもお前の顔にもちょっと笑っちゃってさ。だから耳元に顔隠したんだけど、そしたら三ツ谷のパンチが避けきれなかったって話」
泣いてんのに笑うなしと突っ込むと、ビクビクしてて面白かったと言われてびちょ濡れになるまで口元を消毒してやるとイテテと言いながらも思い出し笑いを始めたいぬぴーに皆笑っていた
仕事があるから帰ると席を立った皆を隆と二人で見送る。ありがとうと私が笑えば二度と別れんなよといぬぴーは隆にデコピンする
ああ。と言った隆に私が微笑むとその様子を見た3人は安心した顔をして帰って行った
玄関の扉を閉めると、グイッっと腕を引かれて隆は直ぐに私を抱き締めてくれた。温かくて懐かしい香りに目を瞑りぐりぐりと胸に顔を押し付ける
「……お前本当にぐりぐり好きだよな」
いつもみたいにフッと薄く笑っているんだろうなと思って目を開けると凄く切ない顔で私を見ていた隆に思わずどしたの?と聞いてしまう
「……いや、久しぶりだなって」
「そうだね、中学生の時からずっと一緒だし。離れててもちゃんと付き合ってるって絆もあったしね」
「……俺の事好き?」
「当たり前でしょ」
「俺も」
真面目な顔で愛してるよって言われて、手にされた口付けに私は何だかホッとしてしまった。隆の頬に擦り寄って瞼に口付けると指で優しく唇を開けられて深くキスをされる
唇が離れ、重荷になってごめんなと隆の口から溢れ出た言葉に私は頬を膨らませる。
「重荷何て思った事無いよ、世界で1番大事で愛してるもーん」
そう言ってにししと笑った私に、まぁお前はそう言ってくれるよなと優しい手が私を撫でる
「……隆がいて、隆との将来を見てるから仕事も勉強も大好きな料理も頑張れてるんだ」
「……」
「ルナとマナが居るからやる気が出るんだ」
「……」
「……私は隆がいなきゃ、何もしたくなくなっちゃうかも」
そう言ってたら本当に大事なんだなって実感が沸いてきて、涙が出てきてしまう。その涙を優しく拭ってくれる隆は馬鹿だなぁと小さく笑った
「……俺なんかお前が居ないなら生きてたくも無くなったわ」
「……一緒だよ」
涙が止まらない私をずっと抱き締めてくれて、それから一緒にお風呂に入って抱き締め合って眠った
朝起きて何を作ってあげようかなと考えている自分がいて、その小さな幸せが胸に染み渡る様に感じた
