ケンちゃんのお姉ちゃん 大寿君の妹ちゃん
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乾君とのデートがあって、それから少し生活が楽しくなった気がした。授業の合間にLINEしたり、たまにだけど学校まで迎えに来てくれてちょっとご飯を食べたりと彼氏みたいな人がいると生活に華が咲いたようで純粋に嬉しい
「……はぁ、でも全然付き合ってとか言われないな」
「姉さんから言えばいいんじゃないですかね」
サラりと真顔で提案してきたちーちゃんの頭を抱き締めて頬にスリスリしながら「自分から告白なんて恥ずかしいじゃないのよぉぉ」と叫ぶと「恥ずかしいのはお前の頭の中だ」と言って額をはたかれる。その衝撃で後ろに倒れる私の後頭部にサッと手を差し伸べてくれた隆は「あぶね」と言って頭を優しく起こしてくれた
「隆ワンダホー!凄ーい」
「ドラケン叩くなよ、怪我するだろ」
「へいへい、悪ぃ悪ぃ」
「……スリスリされてて言うのも何ですけど、三ツ谷君良く毎回怒らないで見てられますね」
「まぁ、……それは慣れてるからな」
「大人ですね」
「隆が何で怒るの?」
「なんでもないよ、雪那さん紅茶飲む?いれてあげるよ」
「飲むー。隆大好き優しい」
「三ツ谷、あんまり甘やかすなよ」
「へいへい」
キッチンで紅茶をいれてくれている隆の横で冷凍庫から取り出したアイスを齧っていると、私の食べる姿を見て微笑んでいる隆の目の前に食べかけのアイスを差し出した。「あーんして」そう言った私に少し固まってからギクシャクとアイスを齧る隆が面白くてケラケラ笑ってしまった
「……笑いすぎだろ。ほい、出来たぞ。蜂蜜多めのミルクティー」
「隆ありがとう、頂きます」
「夕飯の準備するなら手伝う?」
「うん、助かる。隆は本当に良い旦那さんになりそうだよね」
「まぁ、家事はできた方が自分も楽だしな」
「顔も良くて頭も良くて、優しいし学校でモテるんだろうね」
「……そうゆうのは別に、何も無いから」
「はっ、そういえば聞いて。昨日クラスの男の子に告白されちゃった」
「…ふーん。…返事は何てしたの?」
「断った。一応乾君とデートしてる身だし」
「……乾の事好きになっていってるって事?」
「うーん。学校に良く迎えに来てくれてデートしてくれる様に最近なったんだ」
「……へぇ」
「何か距離が縮まった感じかな」
えへへとニヤニヤすると「そ」と言って鍋に水を入れる隆は、それ以上その会話をしてくれる雰囲気を出してなかったので私も何も言わずに冷蔵庫から卵を取り出してボウルに割り入れた。お出汁と豆乳を入れてかき混ぜていると、隣で綺麗に豆腐を賽の目にしている隆の瞳は真剣そのもので「均等にならねぇな」と色んな角度から豆腐を睨みつけている
「なぁ、ワカメってどこ?」
「ワカメは下の棚。味噌汁に葱も入れて良い?」
「うん。あ、俺の味噌汁しょっぱいから味付けは頼んで良い?」
「了解だよ。今日のメインは豚肉とナス炒めはどう?ご飯のおかずにもなるし、栄養もあるし」
「……良いんじゃねーかな」
「じゃあそうしよっか」
だし巻き玉子は隆に焼いて貰って、豆腐と葱とワカメを入れた出し汁に味噌を溶いていると隆の携帯が鳴り、手に取った隆は私をチラっと見てから「パーと一虎腹減ったから来るって」と呆れた様にフッと微笑んだ
「パーちゃんとかずちゃん来たら……豚肉1キロで足りるかな?」
「パーがめっちゃ食うからな」
「まあ、足りなかったら私のあげればいいや」
「……じゃあ俺の分雪那さんにあげるよ」
「隆可愛い。優しい大好き」
「……はいはい、俺も大好き」
顔をこちらに向けずに大好きと言ってくれた隆の頬はちょっぴり赤くて、私がそれを見て満足気に微笑むと何故か頭を優しく撫でてくれた
それから直ぐにかずちゃんとパーちゃんが家に来たので夕食にすると、テーブルに置いたおかずは一瞬で皆の胃の中に消えた。おかわり用の冷凍餃子30個も秒で跡形も無く消え去り「デザート食いたい」と言い出したパーちゃんの頭を撫でていると隆に「それ以上パーに食べ物を与えるな」と言われたので「アイスはお預け」と言えばパーちゃんは泣きそうな顔をしていた
「ドラねーちゃん、そう言えばデートどうだった?」
「うーん。エスコートしてくれたり色々ご馳走してくれて紳士だったかな。1個下であんなに気が配れる子も珍しいよ」
「へぇ、付き合う事になったの?」
「全然。告白とかもされなかった」
ふうんと言ったかずちゃんは「告白されたらOKすんの?」と私をマジマジと見つめながら聞いてきた
「……そういえば考えて無かったな。だってまだ会ったばっかりだし」
「付き合ってから直ぐに処女奪われて捨てられたなんて話も良く聞くからさ。ドラねーちゃん慎重にな」
「……えっ?そんな事する男の人いるの?」
「馬鹿だなぁ。世の中悪い奴いっぱいいるんだぜ。何かされたら直ぐに俺に言えよ」
かずちゃんには絶対に言えないなと思ったけど、一応うんと返事をすると、「頭の中お花畑なんだから気をつけろよ」と優しい様な優しく無いようなケンちゃんの言葉に皆がゲラゲラと笑う。そんな中1人だけ全く笑わずに、つまらなそうな顔をしている隆が少し気になったけれど先程からLINEの通知が来ているので片付けは皆に任せて足早に部屋に戻った。ベッドに寝転がってLINEを開けばやっぱり乾君から連絡が来ていて少しだけ嬉しくなり直ぐに返信する
雪那さん、何してました?
今ご飯食べてたよ
今日は何食べました?
ナスと豚肉炒めに餃子
俺は今日はパスタでした
たまにはイタリアンもいいね~!
今度イタリアン行きます?
わーい!行くいく!
そんな可愛らしいLINEをしてニヤニヤしていると廊下から聞こえて来た足音は私の部屋の前で止まり、控えめなノックが聞こえた。「入っていいよ」と携帯打ちながらドアに向かって叫ぶと、扉から入って来た無表情の隆は私のベッドに腰を下ろした
「 雪那さん」
「ん?……どしたの?」
「……誰とLINEしてんの?」
「え?乾君だよ。……珍しいね、そういう事聞いてくるの」
「…………」
何も言わずに私の携帯を見つめていた隆は携帯を弄る私の手をゆっくりと取った。いつもと違う雰囲気を感じて訝しげに彼の顔を見つめると、私の手の甲を自分の唇に当てて隆は私の瞳を真っ直ぐに見た
その姿を見て心臓がドクンと大きく高鳴り、言葉が出てこなくなる。目を見開いて驚いている私の顔を見て優しく微笑んだ隆は反対の手を伸ばし私の後頭部にそっと置いた
「……えっ?ちょっと、待って」
「待たない」
ハッキリと言いきられて唖然とした私の頭が引き寄せられて唇が重なった。目の前にある隆の瞼が閉じた顔を見つめて呆然としていると、唇の間から入って来た舌が私の舌に絡みついた。その瞬間に私の頭はショートした様に何も考えられなくなり、目の前が真っ白になってしまう
「えっ?ちょっと雪那さん」と焦った様に名前を呼ばれる声がして気が付くと意識を失っていた
ぐわぁぁぁと自分の口から出た色気の無い声にビックリして起き上がる。その瞬間に丸めた雑誌が額に飛んできてポスンと頭がまた枕に戻った
「何すんだよ、ドラケン!気絶してたんだぞ」
「気絶させたのは三ツ谷だろ」
「姉さん大丈夫ですか?分かりますか?」
「てかさ、三ツ谷凄くね?テクニシャンすぎる」
「一虎君、多分そうゆう事じゃないと思いますよ」
「……うん。起きた」
私を見て大笑いしているかずちゃん以外は心配そうに私の顔を見つめている。ちょっとだけ罰が悪そうな隆を見ていたら、さっきの出来事を思い出して恥ずかしくて布団を被ると頬が熱くなっている気がした
「もうちょい寝る」
「ドラねーちゃん可愛いなぁ」
ゲラゲラ笑うかずちゃんの声だけが聞こえてきて、そのまま皆が退室するまで布団から出れずに固まっていた。皆が部屋から出て行ってからも何だか布団から出れずに色々と考えてしまう
今迄、隆からは彼女の話とか女の子関係の話を一切聞いた事が無かった。だから彼女もきっといないし、居たことも無いんだと勝手に思っていたけど……。あのキスの仕方は絶対に慣れているし経験豊富だと思ってしまった。そう思うと何だかムカついてきて腹が立って仕方が無くなり、部屋を破壊したい衝動に駆られるが、片付けが面倒臭いのでやめようと1秒で思った
携帯を見れば、乾君から寝ちゃったかな?おやすみなさいと入っていたけれど、何も返す気になれずに私は携帯を放り投げてイライラとするこの気持ちに向き合わずに寝てしまう事にした
朝起きると隆から珍しくLINEが入っていた。「 雪那さんの気持ちを考えなくてあんな事してごめん」そう書かれた文字を指でなぞって溜息をついてしまう。私はずっと恋愛してる女子に憧れていた
キスにだって興味はあった。でも、好きな人って何なんだろう
隆は私の事が大好きで、私も大好きだ。
でも……乾君の事はどうなんだろう
大好きになりたいから沢山デートして彼を知ろうとしている。でも……隆が他の女の子と色んな事をしているのは嫌だけど乾君がしていてもそんなに腹は立たない気がした
そこまで考えてから1度シャワーを浴びたくなって、立ち上がると脱衣所に向かった。スッキリしない気持ちで熱いシャワーを浴びていると脱衣所から携帯が鳴る音がしてシャワーを止めた
濡れた手で携帯を取り画面を見れば着信は乾君で、少しだけドキドキしたけど通話ボタンを押してから「もしもし」と口を開いた。「もしもし……急にごめん。昨日返事無かったから気になって」と優しい口調の乾君に自然と微笑んでしまう。「ちょっと会いたいんだけど今家?」と聞かれ自宅だと言った瞬間に突然電話は切れ通話終了と画面に表示された
掛け直しても繋がらず、電波が悪かったのかもしれないって事で片付けた。でも会いたいって言われた事が気になってしまい、直ぐにお風呂を出て洗面台で髪を乾かしていると何やら物音がした。どうせケンちゃんだろうと無視をしてそのままドライヤーを掛けながら櫛を通していると、ガチャっと音がしてからゆっくりと脱衣場の扉があいた
「みーつけた」
初めて聞く明るい男性の声が脱衣所に響いて、驚いてと振り向いた瞬間に口を手で塞がれてお腹に手を回された。担ぐように乱暴に持たれ、動かないでねと言われた言葉に抗う様にその男の手を振りほどこうとすると
静かな声で動くなと言って私にナイフを突き付けてきたのは乾君だった
目を見開いた私に対して目を細めた彼は今まであって来た乾君とは別人に見えた。自分を抱えていた黒髪の男が私の顔を覗き込んで来て「ドラケンに全然似てねーじゃん」とつまらなそうに言ってから舌をペロリと出した
2人共同じような服を着ていて、BDと派手に刺繍がしてある。あぁそうか、こうゆう事だったのかと何となく察して力尽きた様に抵抗をやめた。
「君に恨みとかは無いんだけど、ごめんね」
ナイフをポケットにしまった乾君が、「ココ俺が運ぶ」と言うとココと呼ばれた男は私を荷物みたいに彼に渡した。お姫様抱っこは夢だったけど、ガムテープで口を塞がれて紐で手を縛られてされるお姫様抱っこは気分が良くは無い。項垂れて単車に乗せられてもずっと目を瞑り大人しくしている私に、ココって呼ばれてる人が私の顎を痛くないように掴み「変な子だねぇ」何て言ってきた
1年前にも変な名前のチームの男に拉致されそうになったり、生意気だって顔を何度も殴られて入院した。あの時はすっ飛んできてくれた隆と八戒が助けてくれたけど今助けを呼ぼうにも携帯は洗濯機の上だった。ドライヤーが脱衣場の床に転がっている状態をおかしいと思ったケンちゃん達が助けに来てくれるのを待つしかない
連れてこられた所は落書きだらけの倉庫の様な場所で、余り綺麗とは言えないマットの上に優しく置物みたいに置かれた。そんな私の隣に座った乾君は「煩くしないでね」と一言だけ言って口のガムテープを取ってくれた。ガムテープを取られても何も言わないで膝を抱えている私に、何かを言いたそうだったけど彼も何も言わずにそのまま私の横に座っていた。お風呂上がりでキャミソールにジャージ姿。外はまだ5月中頃、風が冷たく感じてくしゅんとクシャミをすると乾君は着ていた上着を私に着せてくれた
「これしか無くてごめん」と言われ首を静かに横に降った
何分経ったのかも分からない。遠くからバイクの音が聞こえて顔を上げてチラリと見ると倉庫の中にいる人数が30人くらい増えてて流石に不味いんじゃないか?と少し冷や汗をかきながらまた下を向いて膝を抱えた。何回か顔の怖い人が私を見に来たけど、「近寄るな」って乾君が一言言えばそれでどっかに行ってくれたのでちょっとだけ安心した。それから少しして聞きなれた沢山のバイクの音がして、ドキドキとしていた心臓が少し落ち着き大きく深呼吸をすると私はその場に倒れる様に寝転がった
横から乾君の「信頼してるんですね」って声が聞こえたので「まぁね。」と初めて言葉で返した
「ねーちゃん!!」と凄いデカいパーちゃんの声が倉庫に響いて、「どこやったコノヤロー」と圭ちゃんの怒鳴り声が遠くで聞こえた。ホッとしたらじんわりと涙が出て来てしまってその瞬間に「雪那さん!」て私の名前を呼ぶ隆の声が聞こえて涙が引っ込んでしまった
遠くて余り見えないけれど、あんな人数に勝てるのか、怪我しないか心配で内心ハラハラしながら拳を握りしめる。そんな私を隣で無表情で見ている乾君に少しづつ腹が立って来て涙目で彼を睨みつけても、乾の表情は何も変わらずに私をただ見つめていた
「……何がしたいの?」
「……無敵のマイキーとドラケンがいるトーマンと喧嘩」
「なら私いなくていいじゃん」
「……お姫様が拐われた方が最大の戦力を発揮するって聞いたから」
「…変な作戦…意味分かんない」
「…ごめんね。実は俺もこの作戦は好きじゃない」
おっと、お出ましだ。そう言って無表情で立ち上がった乾君の横顔はあのデートの時の顔では無くて本当に冷徹な顔をしていた。乾の視線を追うとこちらに一直線に走って来る隆は額から血が出ていて、隆もいつもの隆とは違う冷徹な顔をしていた
「女攫いやがってクソ野郎」と乾君の胸倉を掴んだ隆に、彼は素早くポケットからナイフを出した
躊躇無く顔を切り付けようとしたナイフは咄嗟に庇った隆の腕の刺繍部分を切りつけた
「……ほら、来いよ三ツ谷。来ないならまたこの女殴るからいいけど」
「…またってもしかして…てめぇ……殴ったのか?」
「……あの時お前が雪那を好きなのが分かったからな。嫌がらせだよ三ツ谷」
平然と嘘を吐く乾に驚愕していると、額に血管が浮き出た隆は乾の頬を殴り付けた。「やめて」って私が叫んでも乾がナイフで切りつけても隆は止まらなかった
マイキーしか止められないって頭に浮かんで、必死にマイキーの名前を泣いて叫んで呼んだ
「隆を止めて、マイキー」って叫んでたらその声を聞いてくれたのか走ってきたマイキーが何だかヒーローみたいに見えた。乾を殴り続ける隆の腕を抑えたマイキーに我に返った様な顔をした隆。その顔を見たら安堵して全身の力が抜けてしまった
隆はマイキーから離れるとこちらに走ってきて、私をこれでもかって力で抱き締めてくれる
「ごめんな」と悲痛な声を漏らし私の首に頭を埋めた隆の頭を優しく撫でていた。大丈夫だからねって言葉しか出て来なくてひたすらそう言って彼の背を摩り続けていた
喧嘩は終わったのか、皆がこちらに走って来てくれてちょっとだけ涙目のちーちゃんが珍しく私の肩に顔を乗せてきたので思い切り抱き締めてあげると、私の顔を見て「すみません」と言って涙を流した。「悪くないのに謝らないで」と言って彼の背中を摩り、血塗れの顔を撫でて帰って手当てしようねと言って私は笑った
ケンちゃんもマイキーも皆が皆私の顔を見てごめんなと言ってくる。あんた達別に悪くないじゃんと言っても何だか受け入れて貰えなくて、皆無言のまま単車に乗るとそのまま家に帰宅した
怪我が酷いと思っていた隆は幸いにも深い傷は無くて切り傷みたいな感じだったので、一応全部消毒して傷テープなどで手当てするだけで済んだ。皆の手当も終わったが葬式ムードみたいになってるリビングでパーちゃんがいきなり私に子供みたいにひっついて泣いてくる
ごめんな、ねーちゃんごめんなって泣かれて、背中を摩ってあげても泣き止まずにどうしたものかと困ってしまう
「……パーちゃん本当に大丈夫だって」
「アイツらにひでぇ事されたんだろ?」
「えっ?」
「……ドラねーちゃん、後ろからバットで殴られて暴行されたんだろ?九井が楽しそうに言っててさ」
「……姉貴、本当にごめんな」
珍しいケンちゃんの土下座だった。それを見て驚愕しているとケンちゃんに続くようにマイキーが「チームの事に巻き込んで本当にごめんな」と頭を下げて来たのでブンブンと首を横に振った
「……あのさ、ココ君て人と乾君の言ってる事全部嘘だよ」
その私の言葉にかずちゃんと圭ちゃんが「ハッ?」と目を丸くした
「……確かに家に入られたけど、お姫様抱っこで運ばれただけで、顔見ようとして来たメンバーにも乾君は寄るなって言っててくれた。私はずっとゴロゴロしてただけだよ。」
「……でも、そう聞いたぜ」
「何で嘘つくの?って聞いたら、東京卍會と本気で喧嘩したいからって言ってたけど……。しかも、バットで打たれて暴行されたらこんなに元気じゃなくない?寒いからって上着も貸してくれたし」
シーンと部屋が凍り付いた様に静かになった
かずちゃんが「そ、それなら良かった」と言って乾いたように笑うと、皆の肩の力が抜けた様にその場に座り込んでしまって私はクスクスと笑ってしまう
「ケンちゃんの土下座何て初めて見ちゃった」
「……うるせー」
珍しく顔を赤くしたケンちゃんを見て、ゲラゲラと皆の笑う声を聞いてたら安心したのかどっと疲れが出たのが分かった。珈琲でも飲もうかと思ったが埃っぽい倉庫で寝ていたのを思い出して風呂に入る事にした
お風呂に浸かりながら日も暮れてきたし、今日は1日何も食べてない事に気付く
「ごめんね、これは飲んで」と言われ私の口にペットボトルでお茶を飲ませてくれた乾君を思い出した
手当て、ちゃんとしたかなー何て思いながらお風呂を出るとリビングから良い匂いがしてくる
きっと隆とちーちゃんが何か作ってくれたんだろーな嬉しくなった
「……はぁ、でも全然付き合ってとか言われないな」
「姉さんから言えばいいんじゃないですかね」
サラりと真顔で提案してきたちーちゃんの頭を抱き締めて頬にスリスリしながら「自分から告白なんて恥ずかしいじゃないのよぉぉ」と叫ぶと「恥ずかしいのはお前の頭の中だ」と言って額をはたかれる。その衝撃で後ろに倒れる私の後頭部にサッと手を差し伸べてくれた隆は「あぶね」と言って頭を優しく起こしてくれた
「隆ワンダホー!凄ーい」
「ドラケン叩くなよ、怪我するだろ」
「へいへい、悪ぃ悪ぃ」
「……スリスリされてて言うのも何ですけど、三ツ谷君良く毎回怒らないで見てられますね」
「まぁ、……それは慣れてるからな」
「大人ですね」
「隆が何で怒るの?」
「なんでもないよ、雪那さん紅茶飲む?いれてあげるよ」
「飲むー。隆大好き優しい」
「三ツ谷、あんまり甘やかすなよ」
「へいへい」
キッチンで紅茶をいれてくれている隆の横で冷凍庫から取り出したアイスを齧っていると、私の食べる姿を見て微笑んでいる隆の目の前に食べかけのアイスを差し出した。「あーんして」そう言った私に少し固まってからギクシャクとアイスを齧る隆が面白くてケラケラ笑ってしまった
「……笑いすぎだろ。ほい、出来たぞ。蜂蜜多めのミルクティー」
「隆ありがとう、頂きます」
「夕飯の準備するなら手伝う?」
「うん、助かる。隆は本当に良い旦那さんになりそうだよね」
「まぁ、家事はできた方が自分も楽だしな」
「顔も良くて頭も良くて、優しいし学校でモテるんだろうね」
「……そうゆうのは別に、何も無いから」
「はっ、そういえば聞いて。昨日クラスの男の子に告白されちゃった」
「…ふーん。…返事は何てしたの?」
「断った。一応乾君とデートしてる身だし」
「……乾の事好きになっていってるって事?」
「うーん。学校に良く迎えに来てくれてデートしてくれる様に最近なったんだ」
「……へぇ」
「何か距離が縮まった感じかな」
えへへとニヤニヤすると「そ」と言って鍋に水を入れる隆は、それ以上その会話をしてくれる雰囲気を出してなかったので私も何も言わずに冷蔵庫から卵を取り出してボウルに割り入れた。お出汁と豆乳を入れてかき混ぜていると、隣で綺麗に豆腐を賽の目にしている隆の瞳は真剣そのもので「均等にならねぇな」と色んな角度から豆腐を睨みつけている
「なぁ、ワカメってどこ?」
「ワカメは下の棚。味噌汁に葱も入れて良い?」
「うん。あ、俺の味噌汁しょっぱいから味付けは頼んで良い?」
「了解だよ。今日のメインは豚肉とナス炒めはどう?ご飯のおかずにもなるし、栄養もあるし」
「……良いんじゃねーかな」
「じゃあそうしよっか」
だし巻き玉子は隆に焼いて貰って、豆腐と葱とワカメを入れた出し汁に味噌を溶いていると隆の携帯が鳴り、手に取った隆は私をチラっと見てから「パーと一虎腹減ったから来るって」と呆れた様にフッと微笑んだ
「パーちゃんとかずちゃん来たら……豚肉1キロで足りるかな?」
「パーがめっちゃ食うからな」
「まあ、足りなかったら私のあげればいいや」
「……じゃあ俺の分雪那さんにあげるよ」
「隆可愛い。優しい大好き」
「……はいはい、俺も大好き」
顔をこちらに向けずに大好きと言ってくれた隆の頬はちょっぴり赤くて、私がそれを見て満足気に微笑むと何故か頭を優しく撫でてくれた
それから直ぐにかずちゃんとパーちゃんが家に来たので夕食にすると、テーブルに置いたおかずは一瞬で皆の胃の中に消えた。おかわり用の冷凍餃子30個も秒で跡形も無く消え去り「デザート食いたい」と言い出したパーちゃんの頭を撫でていると隆に「それ以上パーに食べ物を与えるな」と言われたので「アイスはお預け」と言えばパーちゃんは泣きそうな顔をしていた
「ドラねーちゃん、そう言えばデートどうだった?」
「うーん。エスコートしてくれたり色々ご馳走してくれて紳士だったかな。1個下であんなに気が配れる子も珍しいよ」
「へぇ、付き合う事になったの?」
「全然。告白とかもされなかった」
ふうんと言ったかずちゃんは「告白されたらOKすんの?」と私をマジマジと見つめながら聞いてきた
「……そういえば考えて無かったな。だってまだ会ったばっかりだし」
「付き合ってから直ぐに処女奪われて捨てられたなんて話も良く聞くからさ。ドラねーちゃん慎重にな」
「……えっ?そんな事する男の人いるの?」
「馬鹿だなぁ。世の中悪い奴いっぱいいるんだぜ。何かされたら直ぐに俺に言えよ」
かずちゃんには絶対に言えないなと思ったけど、一応うんと返事をすると、「頭の中お花畑なんだから気をつけろよ」と優しい様な優しく無いようなケンちゃんの言葉に皆がゲラゲラと笑う。そんな中1人だけ全く笑わずに、つまらなそうな顔をしている隆が少し気になったけれど先程からLINEの通知が来ているので片付けは皆に任せて足早に部屋に戻った。ベッドに寝転がってLINEを開けばやっぱり乾君から連絡が来ていて少しだけ嬉しくなり直ぐに返信する
雪那さん、何してました?
今ご飯食べてたよ
今日は何食べました?
ナスと豚肉炒めに餃子
俺は今日はパスタでした
たまにはイタリアンもいいね~!
今度イタリアン行きます?
わーい!行くいく!
そんな可愛らしいLINEをしてニヤニヤしていると廊下から聞こえて来た足音は私の部屋の前で止まり、控えめなノックが聞こえた。「入っていいよ」と携帯打ちながらドアに向かって叫ぶと、扉から入って来た無表情の隆は私のベッドに腰を下ろした
「 雪那さん」
「ん?……どしたの?」
「……誰とLINEしてんの?」
「え?乾君だよ。……珍しいね、そういう事聞いてくるの」
「…………」
何も言わずに私の携帯を見つめていた隆は携帯を弄る私の手をゆっくりと取った。いつもと違う雰囲気を感じて訝しげに彼の顔を見つめると、私の手の甲を自分の唇に当てて隆は私の瞳を真っ直ぐに見た
その姿を見て心臓がドクンと大きく高鳴り、言葉が出てこなくなる。目を見開いて驚いている私の顔を見て優しく微笑んだ隆は反対の手を伸ばし私の後頭部にそっと置いた
「……えっ?ちょっと、待って」
「待たない」
ハッキリと言いきられて唖然とした私の頭が引き寄せられて唇が重なった。目の前にある隆の瞼が閉じた顔を見つめて呆然としていると、唇の間から入って来た舌が私の舌に絡みついた。その瞬間に私の頭はショートした様に何も考えられなくなり、目の前が真っ白になってしまう
「えっ?ちょっと雪那さん」と焦った様に名前を呼ばれる声がして気が付くと意識を失っていた
ぐわぁぁぁと自分の口から出た色気の無い声にビックリして起き上がる。その瞬間に丸めた雑誌が額に飛んできてポスンと頭がまた枕に戻った
「何すんだよ、ドラケン!気絶してたんだぞ」
「気絶させたのは三ツ谷だろ」
「姉さん大丈夫ですか?分かりますか?」
「てかさ、三ツ谷凄くね?テクニシャンすぎる」
「一虎君、多分そうゆう事じゃないと思いますよ」
「……うん。起きた」
私を見て大笑いしているかずちゃん以外は心配そうに私の顔を見つめている。ちょっとだけ罰が悪そうな隆を見ていたら、さっきの出来事を思い出して恥ずかしくて布団を被ると頬が熱くなっている気がした
「もうちょい寝る」
「ドラねーちゃん可愛いなぁ」
ゲラゲラ笑うかずちゃんの声だけが聞こえてきて、そのまま皆が退室するまで布団から出れずに固まっていた。皆が部屋から出て行ってからも何だか布団から出れずに色々と考えてしまう
今迄、隆からは彼女の話とか女の子関係の話を一切聞いた事が無かった。だから彼女もきっといないし、居たことも無いんだと勝手に思っていたけど……。あのキスの仕方は絶対に慣れているし経験豊富だと思ってしまった。そう思うと何だかムカついてきて腹が立って仕方が無くなり、部屋を破壊したい衝動に駆られるが、片付けが面倒臭いのでやめようと1秒で思った
携帯を見れば、乾君から寝ちゃったかな?おやすみなさいと入っていたけれど、何も返す気になれずに私は携帯を放り投げてイライラとするこの気持ちに向き合わずに寝てしまう事にした
朝起きると隆から珍しくLINEが入っていた。「 雪那さんの気持ちを考えなくてあんな事してごめん」そう書かれた文字を指でなぞって溜息をついてしまう。私はずっと恋愛してる女子に憧れていた
キスにだって興味はあった。でも、好きな人って何なんだろう
隆は私の事が大好きで、私も大好きだ。
でも……乾君の事はどうなんだろう
大好きになりたいから沢山デートして彼を知ろうとしている。でも……隆が他の女の子と色んな事をしているのは嫌だけど乾君がしていてもそんなに腹は立たない気がした
そこまで考えてから1度シャワーを浴びたくなって、立ち上がると脱衣所に向かった。スッキリしない気持ちで熱いシャワーを浴びていると脱衣所から携帯が鳴る音がしてシャワーを止めた
濡れた手で携帯を取り画面を見れば着信は乾君で、少しだけドキドキしたけど通話ボタンを押してから「もしもし」と口を開いた。「もしもし……急にごめん。昨日返事無かったから気になって」と優しい口調の乾君に自然と微笑んでしまう。「ちょっと会いたいんだけど今家?」と聞かれ自宅だと言った瞬間に突然電話は切れ通話終了と画面に表示された
掛け直しても繋がらず、電波が悪かったのかもしれないって事で片付けた。でも会いたいって言われた事が気になってしまい、直ぐにお風呂を出て洗面台で髪を乾かしていると何やら物音がした。どうせケンちゃんだろうと無視をしてそのままドライヤーを掛けながら櫛を通していると、ガチャっと音がしてからゆっくりと脱衣場の扉があいた
「みーつけた」
初めて聞く明るい男性の声が脱衣所に響いて、驚いてと振り向いた瞬間に口を手で塞がれてお腹に手を回された。担ぐように乱暴に持たれ、動かないでねと言われた言葉に抗う様にその男の手を振りほどこうとすると
静かな声で動くなと言って私にナイフを突き付けてきたのは乾君だった
目を見開いた私に対して目を細めた彼は今まであって来た乾君とは別人に見えた。自分を抱えていた黒髪の男が私の顔を覗き込んで来て「ドラケンに全然似てねーじゃん」とつまらなそうに言ってから舌をペロリと出した
2人共同じような服を着ていて、BDと派手に刺繍がしてある。あぁそうか、こうゆう事だったのかと何となく察して力尽きた様に抵抗をやめた。
「君に恨みとかは無いんだけど、ごめんね」
ナイフをポケットにしまった乾君が、「ココ俺が運ぶ」と言うとココと呼ばれた男は私を荷物みたいに彼に渡した。お姫様抱っこは夢だったけど、ガムテープで口を塞がれて紐で手を縛られてされるお姫様抱っこは気分が良くは無い。項垂れて単車に乗せられてもずっと目を瞑り大人しくしている私に、ココって呼ばれてる人が私の顎を痛くないように掴み「変な子だねぇ」何て言ってきた
1年前にも変な名前のチームの男に拉致されそうになったり、生意気だって顔を何度も殴られて入院した。あの時はすっ飛んできてくれた隆と八戒が助けてくれたけど今助けを呼ぼうにも携帯は洗濯機の上だった。ドライヤーが脱衣場の床に転がっている状態をおかしいと思ったケンちゃん達が助けに来てくれるのを待つしかない
連れてこられた所は落書きだらけの倉庫の様な場所で、余り綺麗とは言えないマットの上に優しく置物みたいに置かれた。そんな私の隣に座った乾君は「煩くしないでね」と一言だけ言って口のガムテープを取ってくれた。ガムテープを取られても何も言わないで膝を抱えている私に、何かを言いたそうだったけど彼も何も言わずにそのまま私の横に座っていた。お風呂上がりでキャミソールにジャージ姿。外はまだ5月中頃、風が冷たく感じてくしゅんとクシャミをすると乾君は着ていた上着を私に着せてくれた
「これしか無くてごめん」と言われ首を静かに横に降った
何分経ったのかも分からない。遠くからバイクの音が聞こえて顔を上げてチラリと見ると倉庫の中にいる人数が30人くらい増えてて流石に不味いんじゃないか?と少し冷や汗をかきながらまた下を向いて膝を抱えた。何回か顔の怖い人が私を見に来たけど、「近寄るな」って乾君が一言言えばそれでどっかに行ってくれたのでちょっとだけ安心した。それから少しして聞きなれた沢山のバイクの音がして、ドキドキとしていた心臓が少し落ち着き大きく深呼吸をすると私はその場に倒れる様に寝転がった
横から乾君の「信頼してるんですね」って声が聞こえたので「まぁね。」と初めて言葉で返した
「ねーちゃん!!」と凄いデカいパーちゃんの声が倉庫に響いて、「どこやったコノヤロー」と圭ちゃんの怒鳴り声が遠くで聞こえた。ホッとしたらじんわりと涙が出て来てしまってその瞬間に「雪那さん!」て私の名前を呼ぶ隆の声が聞こえて涙が引っ込んでしまった
遠くて余り見えないけれど、あんな人数に勝てるのか、怪我しないか心配で内心ハラハラしながら拳を握りしめる。そんな私を隣で無表情で見ている乾君に少しづつ腹が立って来て涙目で彼を睨みつけても、乾の表情は何も変わらずに私をただ見つめていた
「……何がしたいの?」
「……無敵のマイキーとドラケンがいるトーマンと喧嘩」
「なら私いなくていいじゃん」
「……お姫様が拐われた方が最大の戦力を発揮するって聞いたから」
「…変な作戦…意味分かんない」
「…ごめんね。実は俺もこの作戦は好きじゃない」
おっと、お出ましだ。そう言って無表情で立ち上がった乾君の横顔はあのデートの時の顔では無くて本当に冷徹な顔をしていた。乾の視線を追うとこちらに一直線に走って来る隆は額から血が出ていて、隆もいつもの隆とは違う冷徹な顔をしていた
「女攫いやがってクソ野郎」と乾君の胸倉を掴んだ隆に、彼は素早くポケットからナイフを出した
躊躇無く顔を切り付けようとしたナイフは咄嗟に庇った隆の腕の刺繍部分を切りつけた
「……ほら、来いよ三ツ谷。来ないならまたこの女殴るからいいけど」
「…またってもしかして…てめぇ……殴ったのか?」
「……あの時お前が雪那を好きなのが分かったからな。嫌がらせだよ三ツ谷」
平然と嘘を吐く乾に驚愕していると、額に血管が浮き出た隆は乾の頬を殴り付けた。「やめて」って私が叫んでも乾がナイフで切りつけても隆は止まらなかった
マイキーしか止められないって頭に浮かんで、必死にマイキーの名前を泣いて叫んで呼んだ
「隆を止めて、マイキー」って叫んでたらその声を聞いてくれたのか走ってきたマイキーが何だかヒーローみたいに見えた。乾を殴り続ける隆の腕を抑えたマイキーに我に返った様な顔をした隆。その顔を見たら安堵して全身の力が抜けてしまった
隆はマイキーから離れるとこちらに走ってきて、私をこれでもかって力で抱き締めてくれる
「ごめんな」と悲痛な声を漏らし私の首に頭を埋めた隆の頭を優しく撫でていた。大丈夫だからねって言葉しか出て来なくてひたすらそう言って彼の背を摩り続けていた
喧嘩は終わったのか、皆がこちらに走って来てくれてちょっとだけ涙目のちーちゃんが珍しく私の肩に顔を乗せてきたので思い切り抱き締めてあげると、私の顔を見て「すみません」と言って涙を流した。「悪くないのに謝らないで」と言って彼の背中を摩り、血塗れの顔を撫でて帰って手当てしようねと言って私は笑った
ケンちゃんもマイキーも皆が皆私の顔を見てごめんなと言ってくる。あんた達別に悪くないじゃんと言っても何だか受け入れて貰えなくて、皆無言のまま単車に乗るとそのまま家に帰宅した
怪我が酷いと思っていた隆は幸いにも深い傷は無くて切り傷みたいな感じだったので、一応全部消毒して傷テープなどで手当てするだけで済んだ。皆の手当も終わったが葬式ムードみたいになってるリビングでパーちゃんがいきなり私に子供みたいにひっついて泣いてくる
ごめんな、ねーちゃんごめんなって泣かれて、背中を摩ってあげても泣き止まずにどうしたものかと困ってしまう
「……パーちゃん本当に大丈夫だって」
「アイツらにひでぇ事されたんだろ?」
「えっ?」
「……ドラねーちゃん、後ろからバットで殴られて暴行されたんだろ?九井が楽しそうに言っててさ」
「……姉貴、本当にごめんな」
珍しいケンちゃんの土下座だった。それを見て驚愕しているとケンちゃんに続くようにマイキーが「チームの事に巻き込んで本当にごめんな」と頭を下げて来たのでブンブンと首を横に振った
「……あのさ、ココ君て人と乾君の言ってる事全部嘘だよ」
その私の言葉にかずちゃんと圭ちゃんが「ハッ?」と目を丸くした
「……確かに家に入られたけど、お姫様抱っこで運ばれただけで、顔見ようとして来たメンバーにも乾君は寄るなって言っててくれた。私はずっとゴロゴロしてただけだよ。」
「……でも、そう聞いたぜ」
「何で嘘つくの?って聞いたら、東京卍會と本気で喧嘩したいからって言ってたけど……。しかも、バットで打たれて暴行されたらこんなに元気じゃなくない?寒いからって上着も貸してくれたし」
シーンと部屋が凍り付いた様に静かになった
かずちゃんが「そ、それなら良かった」と言って乾いたように笑うと、皆の肩の力が抜けた様にその場に座り込んでしまって私はクスクスと笑ってしまう
「ケンちゃんの土下座何て初めて見ちゃった」
「……うるせー」
珍しく顔を赤くしたケンちゃんを見て、ゲラゲラと皆の笑う声を聞いてたら安心したのかどっと疲れが出たのが分かった。珈琲でも飲もうかと思ったが埃っぽい倉庫で寝ていたのを思い出して風呂に入る事にした
お風呂に浸かりながら日も暮れてきたし、今日は1日何も食べてない事に気付く
「ごめんね、これは飲んで」と言われ私の口にペットボトルでお茶を飲ませてくれた乾君を思い出した
手当て、ちゃんとしたかなー何て思いながらお風呂を出るとリビングから良い匂いがしてくる
きっと隆とちーちゃんが何か作ってくれたんだろーな嬉しくなった
