幻想水滸伝2
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朝日で目覚めると、2人はもう起きていて朝の運動だと剣の撃ち合いをしていた。アナベルはもう何処にも居なかったけれど、その代わりに近くにあった大きな金木犀の木の下に、木で作った十字架の様な物がこんもりとした土の上に刺さっていた。
川で顔を洗い口をゆすいでから川辺に咲いていた名も知らぬ花を十字架の元へ添えていると、それを黙って見ていたフリックとビクトールも川辺で花を根から沢山摘んできて十字架の下に植えていた。
「根から植えるのね、2人とも」
そう言って笑った私に、根からの方が来年もアナベルが見れるじゃねーかとビクトールは笑った。
うん、と頷いた私にフリックがそろそろ出発しようと言って3人でアナベルにお別れを言ってからそこを経った。
道中フリックが、戦いが終わったらミューズの市内に墓を移してやるかと言うとビクトールはあそこの方が遠くにミューズが見えて働き過ぎなアイツには静かで良いと言って首を横に振った。
ずっと忙しかったアナベルさんを見ていたビクトールだから言えるのかもなと私は思いながら足を進めた
クスクスに着くと、直ぐに船を出してもらってサウスウィンドゥに向かった。
ミューズから来たと言った私達に船員さんが何かミューズであったのかい?朝から街が騒がしいんだと言っていたからミューズがおとされた事はまだ知らないんだろう。
ハイランドの兵士もまだこの町には1人も居なくて思っていたよりもあっさりとサウスウィンドゥに到着した。
ミューズと同じくらい栄えているこの街は品揃えも良く拠点にするのはうってつけの場所だった。
宿をとりグランマイヤーさんに挨拶をしてくると言った2人とは別行動で服が売ってる店に行き新しい旅用の服とマチルダから輸入していた可愛い白のワンピースを買うと試着室で旅用の服に着替え、追加料金を払って今着ている血まみれの服をクリーニングしてもらった。
夕方には出来上がりますと言われ店を出ると、道具を買い足して宿に戻り風呂に入って髪や肌にこびり付いた血を流した。
色々と思う所があった戦いだったなと風呂につかりながら自分の反省点をずっと考えていた。
風呂から上がり個室にして貰っていた私は小さなベッドしか無い部屋で髪を乾かしてから剣に付いた血を綺麗に取って手入れをしていた。
部屋のドアをノックされて扉を開ければフリックも風呂あがりだったのか黒の半袖のタートルにラフなズボンを履いてタオルを首に掛けていた。
「腹減ってないのか?」
寝る時に着るワンピースを着ていた私に、もう寝る気マンマンだなとフリックは笑った。お腹は空いてるんだけど疲れて動きたくないと言うと彼は分かったと言ってドアを閉めた。
少し経ってまた部屋の扉がノックされてドアを開ければフリックがビールジョッキ2つを手に持って、もう片方の手にはサラダとフライが付いた肉料理が乗ったトレーを持っていた。
「フリック様!愛してる」
「はいはい。俺もだよ」
フリックの手からトレーを両手で受け取り、テーブルがない為どうしようかと迷っていると面倒だから床で良いだろと言ってきたのでカーペットにトレーを置いてその横に座った。
フリックもブーツを脱いでから私の横にベッドに寄っ掛かる状態であぐらをかくと私にジョッキを1つ渡してくれた。
「ありがとう、乾杯」
「ああ。今回も負けたが生き残れたな」
「そーいえばビクトールは?」
「あいつは寝てるよ。飯を食わないで寝るのは珍しいよ。余程疲れてたんだろう」
「ビクトールの分まで呑もうか。いただきます」
グビグビと喉を鳴らしながら呑むビールの味の美味しい事。思わず美味いとビールをかかげると、フリックは確かにめちゃくちゃ美味いなと言って微笑んだ
「そう言えば、聞きたい事があったのだけど…。随分とミューズの市内に兵が入って来るのが早かった気がするんだけど…。気のせいだと思う?」
「いや、内側から手引きした者がいると言っていたからスパイがいたんだろう。誰だかはまだ分かってないけどな」
「そうだったんだ。直ぐに市庁舎に入ったのにアナベルさん含めて何人か息絶えてたからさ…丘上から走って来た私より早いなんてあり得ないと思ってさ…。」
一瞬、ジョウイが怪しいって思ってると口から出そうになったけれど今は言うのをやめておいた。ポテトフライを口に入れて咀嚼していると段々と言いたかった気持ちが無くなっていった。
「……昔、解放軍てのをやっていたんだがな。初期メンバーにスパイが居たんだ…あの時の衝撃は今でも忘れられない」
もし、アイツが居なかったら彼女は生きていたかもしれない。そう急に昔話を始めたフリックは無表情だった、悔しいとか悲しいとかもう沢山考えて感じて無くなってしまったのかと思う程に。
「そのスパイが居なくて彼女が生きていたら私はフリックとは会えなかったのかな…こうして2人で寄り添って食事はしていなかったかもしれないって思うと生きてて貰いたかったけど何か複雑…」
複雑と言った私に、もしも話何てキリが無いのは良く分かってると言ってフリックはジョッキを傾ける。
「私の愛していた人はまだ生きてるのかな…フリックも辛かったよね…。長く生きていても分かってあげれない気持ちって沢山ある」
「…なぁ、どうしてそいつと離れたんだ?」
「浮気ばっかりするから」
そう言って吹き出した私にフリックは眉間にシワを寄せた。そんな奴が好きだったのか?と言われてコクリと頷くと君が分からないと言って彼は肉を齧った。
「カッコいい所も沢山あって、皆を好きな人だった。ちょっとおいたが過ぎるけどそんな所も愛しかったんじゃないかな。」
あの時の自分からしたらと言うと、フリックは一層顔をしかめる。
「もう聞きたくない。」
「ぷっ、ちょっと可愛い事言って笑わせないで」
顔を背けたフリックが面白くて思わず咽せてしまう。
笑い過ぎてお腹が痛くなると顔を真っ赤にする私に彼はジロリと睨んでくる
「…あんまりからかうと抱き締めるぞ」
「ちょ、何その可愛いお仕置き、本当やめてお腹痛いってば」
ヒーヒーと膝をついて笑う私を見て、笑わせてるつもりは無いんだがと呟くフリックに私の笑いは止まらず夜はふけていった。
朝日が眩しくて目を開けるとあのまま眠ってしまったらしく、床にはトレーもジョッキも置きっぱなしでとてもだらしがない。
よく自分の姿を見ると両足も腕もおまけに顔もフリックの上に乗っかって潰す様に寝ていた。
うーんと寝苦しそうに唸るフリックに申し訳なくなった。
一度起きてカーテンを閉めるとまたゴロリと横になる
うなされていたフリックは私の重みが無くなったからかスヤスヤと安らかな表情で眠っていた。
その時、トントンと扉がノックされて私は立ち上がりドアを開ける。扉の前に居たのはビクトールで疲れがとれたのか爽やかに笑っていた。
「おはよーさん、フリックに食われてないか?」
「ふふふ、面白過ぎて食われても良い程好きになっちゃったわよ」
「なんだよそれ、今度絶対話聞かせろよ」
「フリック起こそうか?」
「いや、いい。今日はゆっくり休め。明日からまた忙しくなるからな」
そう言ってビクトールは一階に降りて行った。
扉を閉めてベッドまで戻った私はゴロリと横になって目を閉じると後ろからお腹に回って来た腕に少しだけビックリする
「なんだ、起きてたの?」
回された逞しい腕に身体が引き寄せられると、うなじにフリックの唇が触れてかかる息がくすぐったい。
「ふふふ、くすぐったいってば」
私が小さく笑うと、フリックの唇が優しく噛む様にして首筋に舌を這わせる。
強くなってゆくキスに身をよじると逃げれない様に回った腕が服の中に入り胸に優しく置かれた。少し手で押し返すがビクともしないので直ぐに抵抗は諦めた。
「ちょっとフリック朝から何してんの」
「食われても良いくらい好きになってくれたんだろ」
ふっと笑った彼に、聞かれてたかと呟くとその途端に上にガバリと覆い被さられる。
美しい瞳が私を見つめて直ぐに唇に深く口付けられるとそのまま服の中にあった手で強く胸を揉まれた。
激しくなるキスに段々と気分が気持ち良くなってくる、トロリとした目になってゆく私を見て満足そうにフリックは微笑むと胸の先端を舐めながらもう片方の手で反対の胸を優しく触る
「ん、ふっ…いや、」
思わず出てしまった声に手で口を抑えると、胸を触っていた手がスカートの中に入れられてビクリとした私に彼は一度顔を上げて私に口付けるとお前を全部俺のものにしたいと言ってまた深く口付けながら優しい手つきで今度は下着の中に手を入れて来る
初めてな訳では無いけれど、久しぶりに触れられた箇所が熱く顔まで熱を持っている様に感じた。
肉芽を優しく撫でられて、濡れた秘部に指を這わせたフリックはそのまま中にズブりと指を入れて来た。気持ちの良い所を指で刺激されると思わず声を出してしまう。声を出す度にフリックは優しく口付けてくれる
「ふっ、もうだめ、」
「…なんだ?お手上げか?」
意地悪く笑って言ったフリックはまた満足そうに薄く笑う。彼の目を見て意地悪と涙目で言った私の耳元で可愛いなと囁くと中に入った指の刺激が強くなって来てそのまま達してしまった。
はぁはぁと目をつむり肩で息をする私に直ぐにまた激しいキスで口内を舐められながら私の中にフリックのものがゆっくりと入ってくる。
久しぶり過ぎて少しだけ苦しくて、ううっと唸ってしまった私に少し困った顔で痛く無いか?と甘い声で囁いてくる
「この前はお預けをくらったからな…。今日は我慢出来そうに無い」
「久しぶりだから苦しいかも…」
「久しぶりって…どれくらいだよ」
「忘れるくらい」
「最近振りって言われるよりは良いな」
「言ったらどうする?」
「お前の事は斬れないから男を斬るかな」
「そんな物騒な…」
そんな冗談に2人で笑い合うと、フリックは珍しく情けない声ですまない、もう優しく出来ないと言い私の頭を抱いて強く打ち付けて来る。思わず出てしまう普段出ない様な声に隣の部屋の事を考えて慌てて口を手で覆う。
そんな私の耳元で、愛してると囁いてくれた彼は涙目になっている目元に優しくキスをしてくれた。
彼は一度達しても抜いてくれず、直ぐにそのまま腰を何度も打ちつけられて激しくなる動きに段々と私も快楽にのまれていった。
気が付いたら眠っていたみたいで隣にフリックは居なかった。部屋は片付けられていて何とも彼は良く出来た男だと内心思った。
汗をかいたのと下半身に残る精液の感じに直ぐに風呂に向かった。妊娠したらどうするんだよと思ったけれど彼なら喜んでくれそうだな何て考えると少しだけ幸せを感じた。
風呂から出て髪を乾かし、久しぶりに化粧をしてクリーニング屋に向かおうと部屋を出るとさっきのラフな格好とは違い青に包まれているフリックが丁度部屋から出て来た。
「何処か行くのか?身体は大丈夫なのか?」
早口で色々聞いてくるフリックに、優しいなと感じて大丈夫だよと微笑むとホッとした様な表情で良かったと言われて頷いた。
「無理させ過ぎたかなと心配だったんだ」
そう言って私を優しく抱き締め、鼻を頬に擦り寄せるフリックに私はとても愛情を感じた。
「…フリックこそ、疲れてるんじゃない?いつも無理しすぎなのは貴方の方よ」
「いや、俺は男だから…。ただ、俺は初めてで加減が分からないから君に無理をさせたんじゃ無いかって」
そう言ったフリックに私の目は見開き時は止まりゆっくりと顔を上に上げて彼を見る。
フリックは私から顔を背けていたが耳まで赤くなっている彼に私の硬直は解けなかった。
初めてだから加減が分からなくての言葉が頭に何度もリピートされながら服屋に向かいクリーニングしてもらった服を受け取って上の空で宿に戻る。
彼女が居たと聞いていたし、何より上手だなと感じて今まで何人と関係を持ったのだろうと嫌な妄想をしてしまったくらいだ。
悶々としながら歩いていると、セツナさんと聞き覚えがある声がして振り返るとアップルちゃんが微笑んでいた。
「アップルちゃん、怪我は無い?無事で良かった」
「女1人だったので口八丁で何とかなりました。ビクトール達は無事ですか?」
「うん、宿とってるから一緒に行こう。疲れたでしょ?」
道中ミューズのアナベルさんが行方不明らしくと言われ、私が亡くなっていたから3人で墓を作ったと話すとアップルはそうですかと強い瞳で頷いた。
さすがに名高いシルババーグのお弟子さんだなと私は素直に関心する。
「そういえば、シルババーグのお弟子さんて聞いたけど誰から軍師の学びを教わったの?」
「解放戦争で活躍した、マッシュ先生に習いました。フリックの恋人だったオデッサさんはマッシュ先生の妹なんですけど彼女にも色々教わりたかった」
アップルがフリックの恋人のオデッサと言った時に私は少しだけチクリと胸が痛んだ気がした。
オデッサは確か解放軍のリーダーだった筈だ。何年前かもう忘れてしまったけどオデッサとゆう名前の栗毛の美人と何回か街に滞在していた時に話した事があり解放軍をやっていると言っていた。
美人な割に男勝りの正義感溢れる女性だった気がする
彼女がフリックの恋人だったのかと少しだけどんよりした気持ちになったけれど、笑顔を作ってアップルと共に宿に戻った。
「アップルじゃねぇか!無事だったんだな」
「フリックにビクトールも無事で良かったわ」
「俺達が死ぬ訳ねーだろ」
宿に入ると受付の横の食事所で昼から2人は酒を呑んでいた。また呑んでるの?と呆れた様に2人を見るアップルの分の部屋を受付でとると彼女に鍵を渡した。
「セツナ、食事は?」
「まだお腹空いてないからいいや、それより今日はずっと眠りたい」
あくびをした私にフリックは椅子から立ち上がるとちょっと来いと言って階段を登った。階段を上がりきった所でポケットに手を入れて私の方を振り返った。
「どしたの?」
「いや、これ貰ってくれないか?」
サッとポケットから取り出したのは小さな箱で、受け取って開けると青く光る宝石の様な石が付いたシンプルなピアスが入っている。
「えっ?良いの?凄い綺麗な石…何だろうサファイアかな?ラピスラズリかな?」
「石の名前は詳しく無いから分からないが、ミューズで見つけたんだ。中々渡せなくて今日になっちまったけど」
「…ありがとう」
さっきまであった胸のチクチクがすっと消えて行った気がした。嬉しくて直ぐにピアスを耳に付けた私に似合っていると言って軽くチュッと音を立てて唇にキスをしてきたフリックに私は素直に照れてしまう。
その瞬間、ガタンと大きな音がして階段の下を見ればアップルが顔を赤くしながら転けていた。
「大丈夫!?!」
私が駆け寄ると、アップルはありがとうと言って私の手を取ると目も見ずに立ち上がりそそくさと部屋に入って行った。
口元を手で覆いアップルに見られた事に少し恥ずかしそうにしているフリックに笑いながらもう一度礼を言い自室に戻った。
少しするとノックの音が聞こえて、フリックかなと思い開けるとアップルが両手に珈琲を持ちながら立っていた。
開口一番にごめんなさいと謝られて何の事かも分からないのでとりあえず部屋に入ってもらう。
珈琲を1つ渡されて礼を言って口につけると、私の隣に座ったアップルはさっきはごめんなさいと言って私を見た。
「えっ?何で謝るの?逆にこっちが変なもの見せてごめんなさい」
そう言った私にアップルは飲んでいた珈琲を少しだけ吹き出して、そこじゃありませんと顔を赤らめて声を荒げた。
「フリックとそうゆう関係なのを知らずに宿に入る前にオデッサさんの話をしてしまったから…。傷付けていたら悪かったなって…」
そう言って下を向いたアップルに私は首を横にふる
「アップルちゃん、わざわざありがとう。オデッサに昔会った事があったからあの時名前聞いてフリックの恋人だったって知ってビックリしたのは確かだけど。傷付いて無いし全然平気よ」
そう言って微笑む私にアップルは良かったと言って胸を撫で下ろした。
「私もさっきごめんね、ビックリさせちゃって」
「いえ、フリックにそうゆう人が出来て私嬉しかったんで。」
「そうなの?」
「オデッサさんが死んだ時の荒れようは酷かったと皆んなから聞いていたので…。彼がまた新しく恋をしていると知ったら皆んな喜びます」
「彼はまだオデッサの事が好きなんだと思うけどね」
「えっ?」
本当に私を見ているのかなと口から空気の様に出てしまった言葉に自分でビックリして手で口を覆う。
「ごめん、何でも無い」
アップルはそれからその話題にはふれて来なかった。
それからミューズでの話などをしていると少しして、部屋のドアが急に開きそこに居たのはナナミとピリカとリオウで。
私達は再会を喜び夕方まで和気藹々と話をしていた。ジョウイの話題も勿論出たけれど皆そこには敢えてふれなかった。
夕飯をみんなで食べて抱っこしてて離れないピリカを抱いて部屋に戻るとフリックが私の部屋のベッドで寝転んでいた。
「どーりで居ないと思った」
「ピリカは眠そうだな」
そう言って珍しく手を広げたフリックにピリカを渡すと優しく抱いてあやしている。そんな姿に、カッコイイのに何故か可愛いからモテるんだなと思い内心笑ってしまう
「何でにやついてるんだ?」
「モテるのも分かるなって思って」
「モテるのか?モテた事なんて無いが…」
「3年前の戦争で随分モテたと聞いたけど」
そう言って隣に座った私に目を泳がせてから知らないなと顔を背ける。そんな事を言うなら君だってモテるだろうと言ったフリックにどうかなーと返すとジトリと睨まれる。
「そういえばさ、ジーンにオデッサにルック、それにレックナート様にゲオルグプライム。皆良い奴だったな。半分はフリックの仲間でしょ?」
「…オデッサを知っているのか?」
「オデッサには解放軍に入って欲しいと頼まれた事があったの。村の犯罪者のネクロードを追っていたから断ったけど、結局はネクロードと会えたのは貴方達だった…」
「…知らなかったよ。そうか、オデッサに会ってたんだな」
「私も知らなかった。フリックとオデッサの事。只、彼女の事けっこう好きだったからフリックが好きになるのが分かる。本当に優しく強いって難しいけど彼女は正にそんな人だった。そんな人を恋人に持てたフリックを尊敬する」
「…君は…今それを俺に言うのか…」
抱いていたピリカを優しくベッドに横にしてから、手を引かれ背中から抱きしめられる。
肩にポツリと涙が落ち私の胸に流れ落ちる。
男がみっともないよな、すまない。と小さな声で呟いたフリックに私は首を横に振ってそれ以上何も言わない彼の手を強く握ると目を閉じた。
川で顔を洗い口をゆすいでから川辺に咲いていた名も知らぬ花を十字架の元へ添えていると、それを黙って見ていたフリックとビクトールも川辺で花を根から沢山摘んできて十字架の下に植えていた。
「根から植えるのね、2人とも」
そう言って笑った私に、根からの方が来年もアナベルが見れるじゃねーかとビクトールは笑った。
うん、と頷いた私にフリックがそろそろ出発しようと言って3人でアナベルにお別れを言ってからそこを経った。
道中フリックが、戦いが終わったらミューズの市内に墓を移してやるかと言うとビクトールはあそこの方が遠くにミューズが見えて働き過ぎなアイツには静かで良いと言って首を横に振った。
ずっと忙しかったアナベルさんを見ていたビクトールだから言えるのかもなと私は思いながら足を進めた
クスクスに着くと、直ぐに船を出してもらってサウスウィンドゥに向かった。
ミューズから来たと言った私達に船員さんが何かミューズであったのかい?朝から街が騒がしいんだと言っていたからミューズがおとされた事はまだ知らないんだろう。
ハイランドの兵士もまだこの町には1人も居なくて思っていたよりもあっさりとサウスウィンドゥに到着した。
ミューズと同じくらい栄えているこの街は品揃えも良く拠点にするのはうってつけの場所だった。
宿をとりグランマイヤーさんに挨拶をしてくると言った2人とは別行動で服が売ってる店に行き新しい旅用の服とマチルダから輸入していた可愛い白のワンピースを買うと試着室で旅用の服に着替え、追加料金を払って今着ている血まみれの服をクリーニングしてもらった。
夕方には出来上がりますと言われ店を出ると、道具を買い足して宿に戻り風呂に入って髪や肌にこびり付いた血を流した。
色々と思う所があった戦いだったなと風呂につかりながら自分の反省点をずっと考えていた。
風呂から上がり個室にして貰っていた私は小さなベッドしか無い部屋で髪を乾かしてから剣に付いた血を綺麗に取って手入れをしていた。
部屋のドアをノックされて扉を開ければフリックも風呂あがりだったのか黒の半袖のタートルにラフなズボンを履いてタオルを首に掛けていた。
「腹減ってないのか?」
寝る時に着るワンピースを着ていた私に、もう寝る気マンマンだなとフリックは笑った。お腹は空いてるんだけど疲れて動きたくないと言うと彼は分かったと言ってドアを閉めた。
少し経ってまた部屋の扉がノックされてドアを開ければフリックがビールジョッキ2つを手に持って、もう片方の手にはサラダとフライが付いた肉料理が乗ったトレーを持っていた。
「フリック様!愛してる」
「はいはい。俺もだよ」
フリックの手からトレーを両手で受け取り、テーブルがない為どうしようかと迷っていると面倒だから床で良いだろと言ってきたのでカーペットにトレーを置いてその横に座った。
フリックもブーツを脱いでから私の横にベッドに寄っ掛かる状態であぐらをかくと私にジョッキを1つ渡してくれた。
「ありがとう、乾杯」
「ああ。今回も負けたが生き残れたな」
「そーいえばビクトールは?」
「あいつは寝てるよ。飯を食わないで寝るのは珍しいよ。余程疲れてたんだろう」
「ビクトールの分まで呑もうか。いただきます」
グビグビと喉を鳴らしながら呑むビールの味の美味しい事。思わず美味いとビールをかかげると、フリックは確かにめちゃくちゃ美味いなと言って微笑んだ
「そう言えば、聞きたい事があったのだけど…。随分とミューズの市内に兵が入って来るのが早かった気がするんだけど…。気のせいだと思う?」
「いや、内側から手引きした者がいると言っていたからスパイがいたんだろう。誰だかはまだ分かってないけどな」
「そうだったんだ。直ぐに市庁舎に入ったのにアナベルさん含めて何人か息絶えてたからさ…丘上から走って来た私より早いなんてあり得ないと思ってさ…。」
一瞬、ジョウイが怪しいって思ってると口から出そうになったけれど今は言うのをやめておいた。ポテトフライを口に入れて咀嚼していると段々と言いたかった気持ちが無くなっていった。
「……昔、解放軍てのをやっていたんだがな。初期メンバーにスパイが居たんだ…あの時の衝撃は今でも忘れられない」
もし、アイツが居なかったら彼女は生きていたかもしれない。そう急に昔話を始めたフリックは無表情だった、悔しいとか悲しいとかもう沢山考えて感じて無くなってしまったのかと思う程に。
「そのスパイが居なくて彼女が生きていたら私はフリックとは会えなかったのかな…こうして2人で寄り添って食事はしていなかったかもしれないって思うと生きてて貰いたかったけど何か複雑…」
複雑と言った私に、もしも話何てキリが無いのは良く分かってると言ってフリックはジョッキを傾ける。
「私の愛していた人はまだ生きてるのかな…フリックも辛かったよね…。長く生きていても分かってあげれない気持ちって沢山ある」
「…なぁ、どうしてそいつと離れたんだ?」
「浮気ばっかりするから」
そう言って吹き出した私にフリックは眉間にシワを寄せた。そんな奴が好きだったのか?と言われてコクリと頷くと君が分からないと言って彼は肉を齧った。
「カッコいい所も沢山あって、皆を好きな人だった。ちょっとおいたが過ぎるけどそんな所も愛しかったんじゃないかな。」
あの時の自分からしたらと言うと、フリックは一層顔をしかめる。
「もう聞きたくない。」
「ぷっ、ちょっと可愛い事言って笑わせないで」
顔を背けたフリックが面白くて思わず咽せてしまう。
笑い過ぎてお腹が痛くなると顔を真っ赤にする私に彼はジロリと睨んでくる
「…あんまりからかうと抱き締めるぞ」
「ちょ、何その可愛いお仕置き、本当やめてお腹痛いってば」
ヒーヒーと膝をついて笑う私を見て、笑わせてるつもりは無いんだがと呟くフリックに私の笑いは止まらず夜はふけていった。
朝日が眩しくて目を開けるとあのまま眠ってしまったらしく、床にはトレーもジョッキも置きっぱなしでとてもだらしがない。
よく自分の姿を見ると両足も腕もおまけに顔もフリックの上に乗っかって潰す様に寝ていた。
うーんと寝苦しそうに唸るフリックに申し訳なくなった。
一度起きてカーテンを閉めるとまたゴロリと横になる
うなされていたフリックは私の重みが無くなったからかスヤスヤと安らかな表情で眠っていた。
その時、トントンと扉がノックされて私は立ち上がりドアを開ける。扉の前に居たのはビクトールで疲れがとれたのか爽やかに笑っていた。
「おはよーさん、フリックに食われてないか?」
「ふふふ、面白過ぎて食われても良い程好きになっちゃったわよ」
「なんだよそれ、今度絶対話聞かせろよ」
「フリック起こそうか?」
「いや、いい。今日はゆっくり休め。明日からまた忙しくなるからな」
そう言ってビクトールは一階に降りて行った。
扉を閉めてベッドまで戻った私はゴロリと横になって目を閉じると後ろからお腹に回って来た腕に少しだけビックリする
「なんだ、起きてたの?」
回された逞しい腕に身体が引き寄せられると、うなじにフリックの唇が触れてかかる息がくすぐったい。
「ふふふ、くすぐったいってば」
私が小さく笑うと、フリックの唇が優しく噛む様にして首筋に舌を這わせる。
強くなってゆくキスに身をよじると逃げれない様に回った腕が服の中に入り胸に優しく置かれた。少し手で押し返すがビクともしないので直ぐに抵抗は諦めた。
「ちょっとフリック朝から何してんの」
「食われても良いくらい好きになってくれたんだろ」
ふっと笑った彼に、聞かれてたかと呟くとその途端に上にガバリと覆い被さられる。
美しい瞳が私を見つめて直ぐに唇に深く口付けられるとそのまま服の中にあった手で強く胸を揉まれた。
激しくなるキスに段々と気分が気持ち良くなってくる、トロリとした目になってゆく私を見て満足そうにフリックは微笑むと胸の先端を舐めながらもう片方の手で反対の胸を優しく触る
「ん、ふっ…いや、」
思わず出てしまった声に手で口を抑えると、胸を触っていた手がスカートの中に入れられてビクリとした私に彼は一度顔を上げて私に口付けるとお前を全部俺のものにしたいと言ってまた深く口付けながら優しい手つきで今度は下着の中に手を入れて来る
初めてな訳では無いけれど、久しぶりに触れられた箇所が熱く顔まで熱を持っている様に感じた。
肉芽を優しく撫でられて、濡れた秘部に指を這わせたフリックはそのまま中にズブりと指を入れて来た。気持ちの良い所を指で刺激されると思わず声を出してしまう。声を出す度にフリックは優しく口付けてくれる
「ふっ、もうだめ、」
「…なんだ?お手上げか?」
意地悪く笑って言ったフリックはまた満足そうに薄く笑う。彼の目を見て意地悪と涙目で言った私の耳元で可愛いなと囁くと中に入った指の刺激が強くなって来てそのまま達してしまった。
はぁはぁと目をつむり肩で息をする私に直ぐにまた激しいキスで口内を舐められながら私の中にフリックのものがゆっくりと入ってくる。
久しぶり過ぎて少しだけ苦しくて、ううっと唸ってしまった私に少し困った顔で痛く無いか?と甘い声で囁いてくる
「この前はお預けをくらったからな…。今日は我慢出来そうに無い」
「久しぶりだから苦しいかも…」
「久しぶりって…どれくらいだよ」
「忘れるくらい」
「最近振りって言われるよりは良いな」
「言ったらどうする?」
「お前の事は斬れないから男を斬るかな」
「そんな物騒な…」
そんな冗談に2人で笑い合うと、フリックは珍しく情けない声ですまない、もう優しく出来ないと言い私の頭を抱いて強く打ち付けて来る。思わず出てしまう普段出ない様な声に隣の部屋の事を考えて慌てて口を手で覆う。
そんな私の耳元で、愛してると囁いてくれた彼は涙目になっている目元に優しくキスをしてくれた。
彼は一度達しても抜いてくれず、直ぐにそのまま腰を何度も打ちつけられて激しくなる動きに段々と私も快楽にのまれていった。
気が付いたら眠っていたみたいで隣にフリックは居なかった。部屋は片付けられていて何とも彼は良く出来た男だと内心思った。
汗をかいたのと下半身に残る精液の感じに直ぐに風呂に向かった。妊娠したらどうするんだよと思ったけれど彼なら喜んでくれそうだな何て考えると少しだけ幸せを感じた。
風呂から出て髪を乾かし、久しぶりに化粧をしてクリーニング屋に向かおうと部屋を出るとさっきのラフな格好とは違い青に包まれているフリックが丁度部屋から出て来た。
「何処か行くのか?身体は大丈夫なのか?」
早口で色々聞いてくるフリックに、優しいなと感じて大丈夫だよと微笑むとホッとした様な表情で良かったと言われて頷いた。
「無理させ過ぎたかなと心配だったんだ」
そう言って私を優しく抱き締め、鼻を頬に擦り寄せるフリックに私はとても愛情を感じた。
「…フリックこそ、疲れてるんじゃない?いつも無理しすぎなのは貴方の方よ」
「いや、俺は男だから…。ただ、俺は初めてで加減が分からないから君に無理をさせたんじゃ無いかって」
そう言ったフリックに私の目は見開き時は止まりゆっくりと顔を上に上げて彼を見る。
フリックは私から顔を背けていたが耳まで赤くなっている彼に私の硬直は解けなかった。
初めてだから加減が分からなくての言葉が頭に何度もリピートされながら服屋に向かいクリーニングしてもらった服を受け取って上の空で宿に戻る。
彼女が居たと聞いていたし、何より上手だなと感じて今まで何人と関係を持ったのだろうと嫌な妄想をしてしまったくらいだ。
悶々としながら歩いていると、セツナさんと聞き覚えがある声がして振り返るとアップルちゃんが微笑んでいた。
「アップルちゃん、怪我は無い?無事で良かった」
「女1人だったので口八丁で何とかなりました。ビクトール達は無事ですか?」
「うん、宿とってるから一緒に行こう。疲れたでしょ?」
道中ミューズのアナベルさんが行方不明らしくと言われ、私が亡くなっていたから3人で墓を作ったと話すとアップルはそうですかと強い瞳で頷いた。
さすがに名高いシルババーグのお弟子さんだなと私は素直に関心する。
「そういえば、シルババーグのお弟子さんて聞いたけど誰から軍師の学びを教わったの?」
「解放戦争で活躍した、マッシュ先生に習いました。フリックの恋人だったオデッサさんはマッシュ先生の妹なんですけど彼女にも色々教わりたかった」
アップルがフリックの恋人のオデッサと言った時に私は少しだけチクリと胸が痛んだ気がした。
オデッサは確か解放軍のリーダーだった筈だ。何年前かもう忘れてしまったけどオデッサとゆう名前の栗毛の美人と何回か街に滞在していた時に話した事があり解放軍をやっていると言っていた。
美人な割に男勝りの正義感溢れる女性だった気がする
彼女がフリックの恋人だったのかと少しだけどんよりした気持ちになったけれど、笑顔を作ってアップルと共に宿に戻った。
「アップルじゃねぇか!無事だったんだな」
「フリックにビクトールも無事で良かったわ」
「俺達が死ぬ訳ねーだろ」
宿に入ると受付の横の食事所で昼から2人は酒を呑んでいた。また呑んでるの?と呆れた様に2人を見るアップルの分の部屋を受付でとると彼女に鍵を渡した。
「セツナ、食事は?」
「まだお腹空いてないからいいや、それより今日はずっと眠りたい」
あくびをした私にフリックは椅子から立ち上がるとちょっと来いと言って階段を登った。階段を上がりきった所でポケットに手を入れて私の方を振り返った。
「どしたの?」
「いや、これ貰ってくれないか?」
サッとポケットから取り出したのは小さな箱で、受け取って開けると青く光る宝石の様な石が付いたシンプルなピアスが入っている。
「えっ?良いの?凄い綺麗な石…何だろうサファイアかな?ラピスラズリかな?」
「石の名前は詳しく無いから分からないが、ミューズで見つけたんだ。中々渡せなくて今日になっちまったけど」
「…ありがとう」
さっきまであった胸のチクチクがすっと消えて行った気がした。嬉しくて直ぐにピアスを耳に付けた私に似合っていると言って軽くチュッと音を立てて唇にキスをしてきたフリックに私は素直に照れてしまう。
その瞬間、ガタンと大きな音がして階段の下を見ればアップルが顔を赤くしながら転けていた。
「大丈夫!?!」
私が駆け寄ると、アップルはありがとうと言って私の手を取ると目も見ずに立ち上がりそそくさと部屋に入って行った。
口元を手で覆いアップルに見られた事に少し恥ずかしそうにしているフリックに笑いながらもう一度礼を言い自室に戻った。
少しするとノックの音が聞こえて、フリックかなと思い開けるとアップルが両手に珈琲を持ちながら立っていた。
開口一番にごめんなさいと謝られて何の事かも分からないのでとりあえず部屋に入ってもらう。
珈琲を1つ渡されて礼を言って口につけると、私の隣に座ったアップルはさっきはごめんなさいと言って私を見た。
「えっ?何で謝るの?逆にこっちが変なもの見せてごめんなさい」
そう言った私にアップルは飲んでいた珈琲を少しだけ吹き出して、そこじゃありませんと顔を赤らめて声を荒げた。
「フリックとそうゆう関係なのを知らずに宿に入る前にオデッサさんの話をしてしまったから…。傷付けていたら悪かったなって…」
そう言って下を向いたアップルに私は首を横にふる
「アップルちゃん、わざわざありがとう。オデッサに昔会った事があったからあの時名前聞いてフリックの恋人だったって知ってビックリしたのは確かだけど。傷付いて無いし全然平気よ」
そう言って微笑む私にアップルは良かったと言って胸を撫で下ろした。
「私もさっきごめんね、ビックリさせちゃって」
「いえ、フリックにそうゆう人が出来て私嬉しかったんで。」
「そうなの?」
「オデッサさんが死んだ時の荒れようは酷かったと皆んなから聞いていたので…。彼がまた新しく恋をしていると知ったら皆んな喜びます」
「彼はまだオデッサの事が好きなんだと思うけどね」
「えっ?」
本当に私を見ているのかなと口から空気の様に出てしまった言葉に自分でビックリして手で口を覆う。
「ごめん、何でも無い」
アップルはそれからその話題にはふれて来なかった。
それからミューズでの話などをしていると少しして、部屋のドアが急に開きそこに居たのはナナミとピリカとリオウで。
私達は再会を喜び夕方まで和気藹々と話をしていた。ジョウイの話題も勿論出たけれど皆そこには敢えてふれなかった。
夕飯をみんなで食べて抱っこしてて離れないピリカを抱いて部屋に戻るとフリックが私の部屋のベッドで寝転んでいた。
「どーりで居ないと思った」
「ピリカは眠そうだな」
そう言って珍しく手を広げたフリックにピリカを渡すと優しく抱いてあやしている。そんな姿に、カッコイイのに何故か可愛いからモテるんだなと思い内心笑ってしまう
「何でにやついてるんだ?」
「モテるのも分かるなって思って」
「モテるのか?モテた事なんて無いが…」
「3年前の戦争で随分モテたと聞いたけど」
そう言って隣に座った私に目を泳がせてから知らないなと顔を背ける。そんな事を言うなら君だってモテるだろうと言ったフリックにどうかなーと返すとジトリと睨まれる。
「そういえばさ、ジーンにオデッサにルック、それにレックナート様にゲオルグプライム。皆良い奴だったな。半分はフリックの仲間でしょ?」
「…オデッサを知っているのか?」
「オデッサには解放軍に入って欲しいと頼まれた事があったの。村の犯罪者のネクロードを追っていたから断ったけど、結局はネクロードと会えたのは貴方達だった…」
「…知らなかったよ。そうか、オデッサに会ってたんだな」
「私も知らなかった。フリックとオデッサの事。只、彼女の事けっこう好きだったからフリックが好きになるのが分かる。本当に優しく強いって難しいけど彼女は正にそんな人だった。そんな人を恋人に持てたフリックを尊敬する」
「…君は…今それを俺に言うのか…」
抱いていたピリカを優しくベッドに横にしてから、手を引かれ背中から抱きしめられる。
肩にポツリと涙が落ち私の胸に流れ落ちる。
男がみっともないよな、すまない。と小さな声で呟いたフリックに私は首を横に振ってそれ以上何も言わない彼の手を強く握ると目を閉じた。