幻想水滸伝2
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それからビクトールと砦の昔話に花を咲かせてたっぷりと酒を飲んで部屋に戻った。
色々と歳の事を詳しく聞かれたりするかと思っていたけれど、彼は特に何も聞いて来なかった。
テーブルにある水を口に含んで今日は飲み過ぎたなと思ったけれど、ビクトールに本当の事を少しだけ話せたのは良かったなと思いながらベッドに潜り込み目を閉じた。
朝、ノックの音で目が覚めるとフリックの声で多分リオウ達が到着したようだから迎えに行ってくるとドア越しに声がかかり、思わず飛び起きてしまった。
直ぐに顔を洗い身支度をしてから一階に降りるとそこには誰の姿も無くしょんぼりとカウンターに向かう。
「セツナおはよう」
「レオナさん、おはよう」
「リオウ達が到着したみたいだね、安心したよ」
「本当ですね、帰ってきたらお腹空いてるかもしれないしご飯作っておきますか」
「それは喜ぶだろうね」
「そう言えば、昨日の肉料理なんですけど注文されてないってフリックに言われたのに出しちゃったから私お金払います」
忘れてて本当すみませんと言った私にレオナさんは金はいらないよと笑った。
「あれは…まぁ。あの兄さんに一生懸命手料理を作る
あんたの姿を見てフリックが不機嫌になってたからね。ちょっと可哀想に思ってあんたにご機嫌とりをしてもらったんだよ。フリックもまだまだ青いからねぇ」
ふふふと2人で笑い合った私達は直ぐに食事の準備に取り掛かる。野菜のサンドイッチと卵のサンドイッチに温かいミルクと野菜のスープ。
難しい料理では無いので直ぐに出来上がった。2人で皿に盛り付けていると、2階から降りて来たナッシュが私を見つけて笑顔で歩いてくる
「おはよーさん。昨日はご馳走様な」
「あれくらい別にいいよ、今日は出かけるの?」
「道具屋に行こうと思ってね。薬とすりぬけの札がもう無いんだ」
「あー。たぶん今はあんまり品薄だと思うよ、戦いの最中だし」
「まぁ、そうだな。セツナは今日は時間無いのか?」
「今なら暇だよ」
じゃあ買い物に付き合ってくれよと言ったナッシュに頷いてからレオナさんに断り2人で宿を出た。
少し何か言いたそうなレオナさんだったけれど、私がその表情に首を傾げるとなるべく早く戻りなよと言ってそのまま厨房に戻って行った。
2人で歩いていると、通り過ぎる女性が皆ナッシュを見ているように感じて私も彼の横顔をまじまじと眺める。
金髪の髪が揺れてエメラルドグリーンの瞳が眩しい。フリックやジョウイとはまた違った系統のカッコ良さがあるなぁと思いながら歩いているとふと、目の前を通った赤い騎士の男性と目が合った。
ふんわりとした雰囲気でニコリと微笑まれ、思わずこちらもつられて微笑んでしまった。赤騎士様は去ってゆく後ろ姿まで優雅で、私はその後ろ姿を食い入る様に見つめてしまった
「ねぇ…今の見た?ナッシュ」
「ああ、マチルダ騎士だろ」
「ナッシュもあれ着て白馬に乗ったら王子様みたいだよ。たぶん」
「なんだそれ」
ドアの入り口まで来て居た私達は、変な奴だなぁと笑うナッシュと道具屋に入った。店から入って直ぐの棚に並べてある雑貨などを見ていると彼は直ぐに店主の元まで行って薬や道具を購入していた。
「おまたせ、次はどこへ行こうかお姫様」
「うーん、特に買い物は無いけどお腹空いたから鍛冶屋の近くにあったたこ焼き屋に行きたい」
「たこ焼きなら買ってやる」
「何なら駄目なの?」
「うーん、フルコースとかは金が無い」
「ばかねぇ。フルコース出す店が無いじゃない」
そんな話をしながら2人でまず宿まで戻る道を歩いていると門の方からナナミの声がして私は早足でそちらに向かった。
「ナッシュ!早く」
「おい、何だよ」
中々急いでくれないナッシュの手を取り走り出すと、リオウ達が私の姿を見つけて駆け寄ってきたのが見えて私も笑顔になる
「セツナちゃーん」
「久しぶりです、セツナさん」
手を広げて来たナナミに私も広げて抱き締める。
リオウとジョウイ、ピリカの顔を見て生きていて本当良かったと抱いた手に力を込めながら噛み締めていると頭に優しく手が置かれた。
「どこ行ってたんだ?」
「フリック、ビクトール、お迎えお疲れ様ね。今はナッシュと買い物中よ」
頭に急に置かれた革手袋の手はフリックで、ビクトールはナッシュに気付くと昨日はすまなかったと言って頭を下げ出した。
「ビクトールさん、このお兄さんに何かしたの?」
わざとじゃないけど、殴り飛ばしたのよと笑うとリオウやジョウイは苦笑いだけしてその話題には何も言わなかった。
ビクトールに謝られたナッシュは、セツナが治療してくれたから大丈夫だと言って優しい笑みでビクトールに対応している
「お兄ちゃん、ナッシュって言うのか。珍しい毛色だな」
「ん?ああ。まぁね」
「俺は都市同盟傭兵隊長のビクトールだ。こっちはフリック」
「ああ、よろしく」
そう言ってナッシュがフリックに手を差し出すと、フリックは無表情でその手を取った。
ニコリともしないフリックにナッシュが苦笑いしていると、ビクトールがフリックの脇腹を肘で小突いた
それを見た私はナッシュの手を取って微妙な笑みでビクトールとフリックに鍛冶屋に行ってきますと言って歩き出した。
少し離れた所でナッシュが口を開く
「あの2人強いな、特にフリックの方は隙も無いし俺を警戒してるよな。そんなに危険に見えるか?俺」
「あの人は心配症なのよ。」
「まぁ、俺がお前といる事も気に入らないんだろうけどな」
「過保護だからね、フリックは」
「あーゆーのが過保護ねぇ」
鍛冶屋の隣の屋台に着くと、体格が良いおじさんが笑顔でたこ焼きを売っていた。
ナッシュはたこ焼きを四つも買ってくれて、ナナミ達にも食べさせなと言って私に袋を渡してくれた。やったねと喜んでその袋をナッシュの手から取ると、いきなりグラリとまた血の衝動にかられ膝を地に着けてしまった。
「お、おいどうした?大丈夫か!?」
「う、うん貧血みたい」
「…ちょっと待ってろよ」
えっ?と私が頭を上げると、ナッシュは私の両脇に手を入れて優しく抱き上げてくれる。
クラクラとする頭を下に向けるとナッシュの首元に自分の唇が触れてしまい、ギュッと口をつぐんだ。
このままでは欲に駆られて噛んでしまいそうでマズイと思い顔を離せば
ナッシュの首元にあるまだ新めの噛み傷に目を奪われた
「…これ、もしかしてシエラ?」
「ああ。あんの妖怪オババ人の血を吸いやがって。それよりもうすぐ宿に着くからな。」
揺さぶらないようにゆっくり歩いてくれるナッシュは私の頭を自分の肩に優しく抑えてから背中をさすってくれる。
本当は血が欲しいだけとはやっぱり言えず、私はシエラの吸った傷口を食い入るように見つめていた。
宿に入れば、入った瞬間にフリックが慌てた様に私を呼ぶ声が聞こえて思わず内心笑ってしまった。
ナッシュの、貧血みたいだから部屋に運ぶと言った声を最後に衝動が強くなって来た私は胸を抑えながら意識を失った。
ふと目が覚めてまたやってしまったとため息をつく。
窓から見える夕陽はもう沈みかけていて、けっこう寝てしまっていたのが分かる
少しだけでも血を分けて貰わないとミューズでの戦いに支障がでるのが分かっていたけれど、分けて欲しいなんて自分からはやはり言いにくい。
献血と嘘を付いてまた金を渡して人様から血を貰う事にしようか何て考えていると、ノックの音が聞こえてから直ぐに私の返事を待たずに扉は開いた。
そこには怪訝な顔をしたフリックが無言で立っていたが、私が目を開けているのが分かると扉を閉めてからベッドの横に座った。
バンダナもしておらず、シャツとズボンだけの姿。風呂あがりだろうか、かすかに石鹸の匂いがした。
「フリック、また心配かけてごめんね」
「……」
そう言っても返事は返ってはこず、困惑した私は彼の腕を少しだけ引っ張った。
「ねぇ、どうしたの?」
「…お前を運んできた時に、ナッシュと話した。」
「う?うん。」
「あいつの首に噛み傷があった。何で俺に頼らなかった?」
「えっ?あれは…」
私じゃないと言おうとした時、フリックが自分の唇を少し噛んでから私に深く口付けた。
口の中に血の味が広がると優しく舌を舐められて思わず彼の胸を力を込めて押したがビクともしない。
押した途端にその手を取られてベッドに押し付けられる。唇を合わせてから何分経ったのか、何秒なのか分からないけれどゆっくりと唇が離され、彼は私の目を見ずに首元に顔を埋めた。
何も言わずにキツく抱き締められて、思わず私も彼の気持ちを察して抱き締め返してしまった。
「…ねぇ、フリック。もしかしてナッシュに妬いてるの?」
「…ああ、悪いかよ」
「…悪いとゆうか、ナッシュの首の噛み傷は私じゃないわよ」
「…えっ?」
ガバっと顔を上げたフリックの顔を見ると、耳まで赤くなっていて私は声を出してつい笑ってしまった。
「おい、笑うなよ」
「だって早とちりしすぎなんだもん」
「…あのなぁ。お前だと思うに決まってるだろ。」
「まぁ、そうよね。でも本当にあれは私じゃないわ。私も都市同盟に同族の知り合いが来てるなんてナッシュからさっき聞いてビックリしてたのよ」
「…そうか。それなら良いんだ。でも頼むから他の男の血は飲むなよ」
「何で?」
「嫌だからに決まってんだろ」
「えー何で嫌なの??ふふふ」
そう言って嬉しそうに笑う私にフリックは呆れたような顔をしたけれど、急に少し真面目な顔になると私の手を握って口を開いた
「…こんな話されても困るかもしれないが。…俺にはずっと好きな女がいた。彼女に近づく為、釣り合う男になりたかった。…でもお前が砦に来てから俺はお前を女として見てるんだなって自覚する事が多くなったんだ。」
「…フリックは好きな人がいるのね」
「…3年前に死んじまったけどな」
「…ごめん」
「いや、謝るなよ。…俺も何が言いたいかわからなくなってきた。」
そう言って赤くなった顔で目を逸らすフリックに、精一杯ありがとうとだけ伝える。そしてぼんやりと思った。恋をしたら…また必ず先に彼は死んでしまう。一緒に老いてはいけない。でも気持ちは止められなくて辛い…。
「セツナ?」
少しだけ昔を思い出して涙が出て来た私に、慌てふためいて何処か痛いのか?と聞いて来たフリックに首を横にふる。
「昔、好きだった人がいたの。彼も貴方みたいに優しいキスをしてくれたなって恋心を思い出しちゃった」
そう言って涙を拭うと、何か言いたそうな彼は一度厳しい表情に変わり何も言わずにまた自分の口を傷付けてから私の唇を塞いだ。
優しく血を与える様に深くなってゆく口付けに身を任せていると、唇が離れて今度は首筋をキツく吸われる
ん、と思わず声が出てしまうと今度は鎖骨にキスをされる。フリックと小さく私が名前を呼ぶと、手を繋いで無い方の手がシャツの中に入って来て優しく胸を撫でる
「…ちょ、フリック…」
思わず声に出してしまったけど、フリックは聞く耳を持たずにシャツのボタンを開けて胸に優しくキスをすると胸の先端を舐めながら反対の手で腰に手を回してくる
「ん、や、ふっフリック」
「…可愛いな、…いつもからかわれてるからな。お返しだ」
胸を舐められながら、腰に回っていた手が反対の胸を優しく掴んでくる。大きな手の中で私の胸がすっぽり収まると指で先端を撫でられて思わず少し大きな声が出る。その瞬間にガチャリと開いたドアに私はビクンと身体を震わせた。
サッと私から手と唇を離したフリックはドアの方に振り返ると、そこに立っていたのはぬいぐるみを持ったピリカちゃんで。
私達は口を開けたまま少し固まってしまった。
何も言わずにこちらに歩いて来たピリカはじっと私達を見つめると、ベッドによじ登ってから私のシャツのボタンを閉め始めたのでギョッとしてしまう。
それを見てフリックは苦笑いしながら立ち上がると、ピリカちゃんの頭を撫でてからはぁと深く溜息を吐いて部屋を出て行ってしまった。
「…ピリカちゃん、どしたの?」
「……」
寂しそうなピリカに首を傾げると、手を引っ張られて一階の酒場を通り過ぎてミューズ市の入り口の門に向かっていく
門から出た所で走り出したピリカを追うと、階段の下でリオウとナナミが腰を下ろしていた。リオウのその目は遠くを見つめ、いつもの様に真っ直ぐと輝いていた。
色々と歳の事を詳しく聞かれたりするかと思っていたけれど、彼は特に何も聞いて来なかった。
テーブルにある水を口に含んで今日は飲み過ぎたなと思ったけれど、ビクトールに本当の事を少しだけ話せたのは良かったなと思いながらベッドに潜り込み目を閉じた。
朝、ノックの音で目が覚めるとフリックの声で多分リオウ達が到着したようだから迎えに行ってくるとドア越しに声がかかり、思わず飛び起きてしまった。
直ぐに顔を洗い身支度をしてから一階に降りるとそこには誰の姿も無くしょんぼりとカウンターに向かう。
「セツナおはよう」
「レオナさん、おはよう」
「リオウ達が到着したみたいだね、安心したよ」
「本当ですね、帰ってきたらお腹空いてるかもしれないしご飯作っておきますか」
「それは喜ぶだろうね」
「そう言えば、昨日の肉料理なんですけど注文されてないってフリックに言われたのに出しちゃったから私お金払います」
忘れてて本当すみませんと言った私にレオナさんは金はいらないよと笑った。
「あれは…まぁ。あの兄さんに一生懸命手料理を作る
あんたの姿を見てフリックが不機嫌になってたからね。ちょっと可哀想に思ってあんたにご機嫌とりをしてもらったんだよ。フリックもまだまだ青いからねぇ」
ふふふと2人で笑い合った私達は直ぐに食事の準備に取り掛かる。野菜のサンドイッチと卵のサンドイッチに温かいミルクと野菜のスープ。
難しい料理では無いので直ぐに出来上がった。2人で皿に盛り付けていると、2階から降りて来たナッシュが私を見つけて笑顔で歩いてくる
「おはよーさん。昨日はご馳走様な」
「あれくらい別にいいよ、今日は出かけるの?」
「道具屋に行こうと思ってね。薬とすりぬけの札がもう無いんだ」
「あー。たぶん今はあんまり品薄だと思うよ、戦いの最中だし」
「まぁ、そうだな。セツナは今日は時間無いのか?」
「今なら暇だよ」
じゃあ買い物に付き合ってくれよと言ったナッシュに頷いてからレオナさんに断り2人で宿を出た。
少し何か言いたそうなレオナさんだったけれど、私がその表情に首を傾げるとなるべく早く戻りなよと言ってそのまま厨房に戻って行った。
2人で歩いていると、通り過ぎる女性が皆ナッシュを見ているように感じて私も彼の横顔をまじまじと眺める。
金髪の髪が揺れてエメラルドグリーンの瞳が眩しい。フリックやジョウイとはまた違った系統のカッコ良さがあるなぁと思いながら歩いているとふと、目の前を通った赤い騎士の男性と目が合った。
ふんわりとした雰囲気でニコリと微笑まれ、思わずこちらもつられて微笑んでしまった。赤騎士様は去ってゆく後ろ姿まで優雅で、私はその後ろ姿を食い入る様に見つめてしまった
「ねぇ…今の見た?ナッシュ」
「ああ、マチルダ騎士だろ」
「ナッシュもあれ着て白馬に乗ったら王子様みたいだよ。たぶん」
「なんだそれ」
ドアの入り口まで来て居た私達は、変な奴だなぁと笑うナッシュと道具屋に入った。店から入って直ぐの棚に並べてある雑貨などを見ていると彼は直ぐに店主の元まで行って薬や道具を購入していた。
「おまたせ、次はどこへ行こうかお姫様」
「うーん、特に買い物は無いけどお腹空いたから鍛冶屋の近くにあったたこ焼き屋に行きたい」
「たこ焼きなら買ってやる」
「何なら駄目なの?」
「うーん、フルコースとかは金が無い」
「ばかねぇ。フルコース出す店が無いじゃない」
そんな話をしながら2人でまず宿まで戻る道を歩いていると門の方からナナミの声がして私は早足でそちらに向かった。
「ナッシュ!早く」
「おい、何だよ」
中々急いでくれないナッシュの手を取り走り出すと、リオウ達が私の姿を見つけて駆け寄ってきたのが見えて私も笑顔になる
「セツナちゃーん」
「久しぶりです、セツナさん」
手を広げて来たナナミに私も広げて抱き締める。
リオウとジョウイ、ピリカの顔を見て生きていて本当良かったと抱いた手に力を込めながら噛み締めていると頭に優しく手が置かれた。
「どこ行ってたんだ?」
「フリック、ビクトール、お迎えお疲れ様ね。今はナッシュと買い物中よ」
頭に急に置かれた革手袋の手はフリックで、ビクトールはナッシュに気付くと昨日はすまなかったと言って頭を下げ出した。
「ビクトールさん、このお兄さんに何かしたの?」
わざとじゃないけど、殴り飛ばしたのよと笑うとリオウやジョウイは苦笑いだけしてその話題には何も言わなかった。
ビクトールに謝られたナッシュは、セツナが治療してくれたから大丈夫だと言って優しい笑みでビクトールに対応している
「お兄ちゃん、ナッシュって言うのか。珍しい毛色だな」
「ん?ああ。まぁね」
「俺は都市同盟傭兵隊長のビクトールだ。こっちはフリック」
「ああ、よろしく」
そう言ってナッシュがフリックに手を差し出すと、フリックは無表情でその手を取った。
ニコリともしないフリックにナッシュが苦笑いしていると、ビクトールがフリックの脇腹を肘で小突いた
それを見た私はナッシュの手を取って微妙な笑みでビクトールとフリックに鍛冶屋に行ってきますと言って歩き出した。
少し離れた所でナッシュが口を開く
「あの2人強いな、特にフリックの方は隙も無いし俺を警戒してるよな。そんなに危険に見えるか?俺」
「あの人は心配症なのよ。」
「まぁ、俺がお前といる事も気に入らないんだろうけどな」
「過保護だからね、フリックは」
「あーゆーのが過保護ねぇ」
鍛冶屋の隣の屋台に着くと、体格が良いおじさんが笑顔でたこ焼きを売っていた。
ナッシュはたこ焼きを四つも買ってくれて、ナナミ達にも食べさせなと言って私に袋を渡してくれた。やったねと喜んでその袋をナッシュの手から取ると、いきなりグラリとまた血の衝動にかられ膝を地に着けてしまった。
「お、おいどうした?大丈夫か!?」
「う、うん貧血みたい」
「…ちょっと待ってろよ」
えっ?と私が頭を上げると、ナッシュは私の両脇に手を入れて優しく抱き上げてくれる。
クラクラとする頭を下に向けるとナッシュの首元に自分の唇が触れてしまい、ギュッと口をつぐんだ。
このままでは欲に駆られて噛んでしまいそうでマズイと思い顔を離せば
ナッシュの首元にあるまだ新めの噛み傷に目を奪われた
「…これ、もしかしてシエラ?」
「ああ。あんの妖怪オババ人の血を吸いやがって。それよりもうすぐ宿に着くからな。」
揺さぶらないようにゆっくり歩いてくれるナッシュは私の頭を自分の肩に優しく抑えてから背中をさすってくれる。
本当は血が欲しいだけとはやっぱり言えず、私はシエラの吸った傷口を食い入るように見つめていた。
宿に入れば、入った瞬間にフリックが慌てた様に私を呼ぶ声が聞こえて思わず内心笑ってしまった。
ナッシュの、貧血みたいだから部屋に運ぶと言った声を最後に衝動が強くなって来た私は胸を抑えながら意識を失った。
ふと目が覚めてまたやってしまったとため息をつく。
窓から見える夕陽はもう沈みかけていて、けっこう寝てしまっていたのが分かる
少しだけでも血を分けて貰わないとミューズでの戦いに支障がでるのが分かっていたけれど、分けて欲しいなんて自分からはやはり言いにくい。
献血と嘘を付いてまた金を渡して人様から血を貰う事にしようか何て考えていると、ノックの音が聞こえてから直ぐに私の返事を待たずに扉は開いた。
そこには怪訝な顔をしたフリックが無言で立っていたが、私が目を開けているのが分かると扉を閉めてからベッドの横に座った。
バンダナもしておらず、シャツとズボンだけの姿。風呂あがりだろうか、かすかに石鹸の匂いがした。
「フリック、また心配かけてごめんね」
「……」
そう言っても返事は返ってはこず、困惑した私は彼の腕を少しだけ引っ張った。
「ねぇ、どうしたの?」
「…お前を運んできた時に、ナッシュと話した。」
「う?うん。」
「あいつの首に噛み傷があった。何で俺に頼らなかった?」
「えっ?あれは…」
私じゃないと言おうとした時、フリックが自分の唇を少し噛んでから私に深く口付けた。
口の中に血の味が広がると優しく舌を舐められて思わず彼の胸を力を込めて押したがビクともしない。
押した途端にその手を取られてベッドに押し付けられる。唇を合わせてから何分経ったのか、何秒なのか分からないけれどゆっくりと唇が離され、彼は私の目を見ずに首元に顔を埋めた。
何も言わずにキツく抱き締められて、思わず私も彼の気持ちを察して抱き締め返してしまった。
「…ねぇ、フリック。もしかしてナッシュに妬いてるの?」
「…ああ、悪いかよ」
「…悪いとゆうか、ナッシュの首の噛み傷は私じゃないわよ」
「…えっ?」
ガバっと顔を上げたフリックの顔を見ると、耳まで赤くなっていて私は声を出してつい笑ってしまった。
「おい、笑うなよ」
「だって早とちりしすぎなんだもん」
「…あのなぁ。お前だと思うに決まってるだろ。」
「まぁ、そうよね。でも本当にあれは私じゃないわ。私も都市同盟に同族の知り合いが来てるなんてナッシュからさっき聞いてビックリしてたのよ」
「…そうか。それなら良いんだ。でも頼むから他の男の血は飲むなよ」
「何で?」
「嫌だからに決まってんだろ」
「えー何で嫌なの??ふふふ」
そう言って嬉しそうに笑う私にフリックは呆れたような顔をしたけれど、急に少し真面目な顔になると私の手を握って口を開いた
「…こんな話されても困るかもしれないが。…俺にはずっと好きな女がいた。彼女に近づく為、釣り合う男になりたかった。…でもお前が砦に来てから俺はお前を女として見てるんだなって自覚する事が多くなったんだ。」
「…フリックは好きな人がいるのね」
「…3年前に死んじまったけどな」
「…ごめん」
「いや、謝るなよ。…俺も何が言いたいかわからなくなってきた。」
そう言って赤くなった顔で目を逸らすフリックに、精一杯ありがとうとだけ伝える。そしてぼんやりと思った。恋をしたら…また必ず先に彼は死んでしまう。一緒に老いてはいけない。でも気持ちは止められなくて辛い…。
「セツナ?」
少しだけ昔を思い出して涙が出て来た私に、慌てふためいて何処か痛いのか?と聞いて来たフリックに首を横にふる。
「昔、好きだった人がいたの。彼も貴方みたいに優しいキスをしてくれたなって恋心を思い出しちゃった」
そう言って涙を拭うと、何か言いたそうな彼は一度厳しい表情に変わり何も言わずにまた自分の口を傷付けてから私の唇を塞いだ。
優しく血を与える様に深くなってゆく口付けに身を任せていると、唇が離れて今度は首筋をキツく吸われる
ん、と思わず声が出てしまうと今度は鎖骨にキスをされる。フリックと小さく私が名前を呼ぶと、手を繋いで無い方の手がシャツの中に入って来て優しく胸を撫でる
「…ちょ、フリック…」
思わず声に出してしまったけど、フリックは聞く耳を持たずにシャツのボタンを開けて胸に優しくキスをすると胸の先端を舐めながら反対の手で腰に手を回してくる
「ん、や、ふっフリック」
「…可愛いな、…いつもからかわれてるからな。お返しだ」
胸を舐められながら、腰に回っていた手が反対の胸を優しく掴んでくる。大きな手の中で私の胸がすっぽり収まると指で先端を撫でられて思わず少し大きな声が出る。その瞬間にガチャリと開いたドアに私はビクンと身体を震わせた。
サッと私から手と唇を離したフリックはドアの方に振り返ると、そこに立っていたのはぬいぐるみを持ったピリカちゃんで。
私達は口を開けたまま少し固まってしまった。
何も言わずにこちらに歩いて来たピリカはじっと私達を見つめると、ベッドによじ登ってから私のシャツのボタンを閉め始めたのでギョッとしてしまう。
それを見てフリックは苦笑いしながら立ち上がると、ピリカちゃんの頭を撫でてからはぁと深く溜息を吐いて部屋を出て行ってしまった。
「…ピリカちゃん、どしたの?」
「……」
寂しそうなピリカに首を傾げると、手を引っ張られて一階の酒場を通り過ぎてミューズ市の入り口の門に向かっていく
門から出た所で走り出したピリカを追うと、階段の下でリオウとナナミが腰を下ろしていた。リオウのその目は遠くを見つめ、いつもの様に真っ直ぐと輝いていた。