幻想水滸伝2
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「シードは居るか??」
急に悪いなと続け少しだけ頭を下げたクルガンに、居ますよと返事をすると無表情でハァと小さく溜息を付いたクルガンは入りますねと私に1度断りを入れてから玄関をまたぐ
シードと違い丁寧な人だなぁ何て思いながらクルガンの背に続いて早足でリビングに戻ると
テーブルの料理を豪快に口に入れて頬張るシードに呆れながらクルガンは口を静かに開いた
「・・・シード、兵達の間で噂になっているぞ」
「ほうかよ」
「・・・」
「あのー、噂ってどんな?」
口いっぱいに頬張るシードに呆れて黙ったクルガンを見てつかさず私が入り込むように聞くと、私を見たクルガンはシードに目線を戻してから変わらぬ口調で口を開く
「シードが学園の教師に色目を使っているなどの噂が兵達の間で流れてましてね」
「・・・」
「ったく、そんな噂言ってるのどーせラウドの所のやつらだろ?」
「お前の部下だ」
「・・・」
「しかも面白がってる」
「それは・・・俺の部下だな。うん。」
「・・・似てるのねぇ」
「・・・ルカ様の耳に入る前にそうゆう行動は慎むんだな」
「へいへい」
舌打ちをしながら無言で料理を食べ進めるシードを見ていたクルガンは、シードが直ぐに帰る気が無いのが見てとれたのか1度溜息をついてから向かいの椅子に腰を降ろした
立つ尽くす私を見て待たせてもらいますねと軽く頭を下げたクルガンに、大変ですねぇ。と笑ってからフリックの為に残してあった料理をクルガンに出す事にして温め直そうと鍋に火をかけた
後ろで2人があーだこーだルカブライトの話をしているのが少し気になり、手を動かしながら耳を傾ける事にした。
敵国の女性にうつつを抜かしているなどどルカ様の耳に入って怒りを買い、万が一グリンヒルが火の海にでもなったらどうするとクルガンが静かに低い声でシードを冷静に叱る
シードはそれに対して、万が一都市同盟の女に惚れて入れ込んでる何てルカ様が聞いて怒るなら俺が処刑されるまでさ。グリンヒルは大丈夫だろと軽い口調で返しワインを流し込む
そんなシードに、幹部としての自覚が足りないと睨みつけたクルガンに私はウンウンと首を縦に振りながら
熱々の料理を皿に盛り付けてクルガンの目の前に運んだ
料理を見てから、ちょっとだけ無表情を崩して彼は嬉しそうな顔をして私に頭を下げる
「ひよこ豆とトマトのチリコンカンときのこのハンバーグです。パンとライスはおかわりありますよ」
「・・・ありがたいですが私が食べて大丈夫ですか?」
なんで?と私が首を傾げると、青雷のフリックに怒られませんか?とマジマジと言われて、彼もここにきてますよねと続けた。
「・・・うーん。大丈夫ですよ、温かいうちにどうぞ」
「フリックなら他の女に食べさせて貰ってるから大丈夫だろ」
「・・・そうゆう問題で言ったのでは無いんですけどね」
「「???」」
シードと私が首を傾げると、クルガンは諦めた様な顔をしてから小さくいただきますと言って料理に口をつける
美味しいと言って私を見たクルガンにニッコリと笑うと彼もふっと小さく笑った
「クルガンも大変ですね、シードは本当に幹部の自覚が足りにゃいよぉ。んでおかわりくれ」
「・・・飲みすぎだ。しかもお前に言われたくない」
「しかも潜入捜査とか言ってフリックまでクルガンに居るのバレてるしぃ」
「・・・あんな青1色で剣まで持っていたら誰だって分かりますよ。そちらの軍師殿は我々を馬鹿にしているんですかね」
「ぷっ確かに」
「お前もフリックの事言えねぇだろ。変装も毛色だけしか変えて無くて俺にすぐバレたじゃねーか」
すっかりいい気分で出来上がり、ごもっともだなとゲラゲラと笑う私にお前も似たようなもんだと続けて言われて水を渡される
元々ハイランドを敵だなんて思った事ないもん。とシードの手からグラスを奪った私は水を飲み干した
「貴方は産まれが都市同盟な訳では無いですしね」
「そそ、たまたまハイランドに行く途中にフリックに会って、ビクトールに仕事頼まれただけ。そこを攻撃されてシードとクルガンに会った感じ」
「・・・ハイランドに行く途中だったのかよ」
「まあ、人探しがてらね。」
小さな声で、何でフリックに会っちまうんだよと舌打ちしたシードにクルガンは少し笑う
私もそんなシードに笑ってしまった。可愛いシードちゃんとグリグリ頭を撫でれば失言だったと思ったのか顔を赤くしたシードはやめろや犯すぞと怒り口調で私の頬を抓った
急に、ざぁぁぁぁと小さく窓の外から聞こえて来た音にクルガンは雨か…と口を開いてから立ち上がる
「ご馳走様でした、雨が強くなる前に戻りますね」
立ち上がり私にそう言ったクルガンに、はーいと元気よく手を挙げると飲み過ぎないようにと釘をさされて私はまたはーいと言ってから笑った。行くぞシードと言って玄関に向かうクルガンを見送ろうと立ち上がろうとすると、腕を引かれ身体はフラリとシードの胸に収まってしまう
「にゃにすんのよ」
「・・・なぁ。」
その情けない声色に、まじまじとシードを見上げると初めて見るような悲しそうな顔をしていて私はつい黙ってしまう。
「・・・セツナ。そろそろ此処も戦場になるかもしれない。此処でならなかったとしてもいつかお前とまた戦う日が来る。俺にお前は殺せない」
「・・・」
「・・・もし、お前が戦場で俺の前に立った時は俺は逃がしてやらないし。どんな手段を使ってもお前をフリックには渡さない」
「・・・はっ??」
「俺はもう決めたからな」
シードと、口に出そうとした言葉は声には成らず
唇が私の唇を塞ぎ、後頭部に置かれた手と腰を掴まれた手は力が入っているのか動かない
何十秒だか何分だか分からなくなるような熱い口付けに私は固まってしまう
ふと、唇を離したシードは私をもう一度見てから悲しそうに薄く笑い
さっき言った事、忘れるなよと言って立ち尽くす私を背に部屋を出て行った
ぼんやりとしながら食器を片付けながら、先程のキスを思い出す。まだ顔が赤いのは熱があるのか、それとも酒のせいなのか・・・。
風呂に入りシャワーを浴びてもモヤモヤする気持ちのまま私はベッドに入った
ふと、人の気配を感じて目を開ける
私の髪を優しく撫でているフリックは風呂に入った後なのかラフな格好をして私の隣に寝転がっていた
「・・・いつ来たの?」
「・・・すまん。起こしたか?今風呂を借りた」
「何か分かった?」
「ああ、ニナからも色々聞けた。」
「・・・そう。学び舎の裏の森にニナが走って行くのを何回か目撃してるのよね」
「・・・それは俺も聞いたが答えてはくれなかった。とゆうよりもはぐらかされた感じだな」
「皆そこまでは掴めてるのね」
「リオウも知っている」
「調べる価値はありそうだね」
そう言った私にフリックは眠そうに欠伸をすると目を閉じた。ふとシードとのキスの事が頭に過ぎる
そう言えばと小声で呟いたフリックに目を開け彼をチラリと見る
「・・・俺の飯が無かったんだけど」
目を瞑りながら口を開いたフリックに、邪な事を考えていた自分は内心ビクリとしたがその内容にふふっと笑ってしまった
「あぁ、クルガンも来てたから出しちゃった。明日はちゃんと作るから」
その言葉にいつも通りのため息は帰って来ず、目を見開いたフリックは私を見て眉を寄せる
「・・・あのなぁ、クルガンも敵の幹部なんだぞ」
「シードを迎えに来ただけよ、そんなに怒らないでよ」
「何かあったらどうするんだ!」
フリックの冷たい怒鳴り声にビクリとした。今の私は教師であの2人は私の敵じゃない…と小さく呟くのが精一杯だった。
「君からしたら敵じゃないかもしれない。だが都市同盟の今の戦いにおいては敵なんだ。アイツらがもしお前を攫ってリオウに降伏しろなんて言われたらどうするんだ」
自覚が足りないと冷たい口調で言われ私は下を向いた
「・・・シードもクルガンもそんな下衆な事しないって分かるから家に入れたの。
ビクトールもフリックも良い人だから仕事を受けたの。私は私の判断で動いてる」
「・・・もしもの事だってあるんだぞ」
「うん。分かってる。…でもあの2人を戦場以外で敵だと思えない自分がいる。もし、何かあったら私が責任を取るから」
「責任て、何だよ…」
「2人がもし私に何かしようとして、リオウ達、都市同盟の妨げになるようなら私が彼等をその場で殺す」
「お前にそれが出来るのか?」
「・・・彼等がそうして来たのならそうするしか無い」
「・・・分かったよ。俺の負けだ。すまなかった」
ガバリと抱きつかれて目をパチクリさせた私にフリックは耳元ですまなかった。ともう一言呟いた
「何??どうゆう意味で謝ってるの?」
「・・・心配だっただけだ。悪かった。アイツらは悪いヤツじゃないのは俺も分かる。お前が仲良くしてるのが気に入らないだけでリオウの名前を出した俺が悪い」
「・・・・・・私もごめんなさい。本当に自覚無いんだなって今の話で分かった。・・・私は昔から雇われ兵隊だった事が多かったから、戦場以外では敵だって認識が甘すぎるのかもしれない」
「・・・お前は元々俺が巻き込んだだけだ。…それにシードはお前に本気で惚れてるからな。…お前がシードをもし選んだらと考えたら気が気じゃなかった。」
そう言ったフリックに胸が痛み少しだけ涙が出た
シードが自分に気があるってフリックから聞いていて
でも、自分の耳で聞いてないからそんな事は有り得ないかもしれないし
ただのお礼だし…そこまで考えて言い訳ばかりの自分に気付く
私はただ、シードに会いたかったのか??
そこで時が止まった様に感じた
ぎゅうっと音が出るんじゃないかってくらい抱きしめられて、自分の上に座らせたフリックは私の唇に噛み付くように口付けてくる。
笑顔が作れない私にどした?と言って顔を覗いてくるフリックを見て我に変える
忘れてしまおう。そう決めて唇をキュッと噛むと首を傾げたフリックに自分から口付けた
胸を触る左手と下着に入ってくる右手に口から吐息と喘ぎが少し漏れて雨音しか聞こえない静かな部屋にぴちゃぴちゃと指を動かす音がコダマしている様で顔が熱くなる
「は、恥ずかしい」
「・・・ふっ」
グリグリと中をかき混ぜる様な指と胸の先端を舐められ、気持ちが良くて足が少し震えてくる
我慢出来なくなった声が大きくなると、フリックがそれを塞ぐように口に舌を入れてくる。
止まる事の無い指が奥まで入って来た瞬間にビクビクと体を震わせて達した私はぎゅうっとフリックを抱き締めた
「・・・セツナ、可愛い」
目元にチュッとキスをされて、息も絶え絶えな私を押し倒すと根元まで彼が入ってきて私はまたビクリと腰を浮かす
「・・・ 」
少し息が荒いフリックの顔を見る
愛しそうに私を見るフリックの目をまじまじと見つめていると、何だよとフッと小さく笑い額に口付けされる
「・・・いや、まじまじと見るとカッコイイ顔してるなぁって思って」
「⋯何だそれ・・・・・動くぞ」
「・・・ちょ、待って」
「またない」
奥まで貫くように突かれて、ひゃっと情けない思わず声を出してしまう。するとフリックは私の唇を指でなぞりながら耳に唇を寄せた
「…可愛い声だな。その色っぽい顔も全部俺の物だ」
「・・・フリック…」
その愛しそうな声を聞きながら私は目を閉じた
喘ぎ声も気持ちよさも、フリックへの愛情も全部本物なのに
何故かシードの事が頭に過ぎる
そんな私の事を知ってか知らずか…フリックは最奥に躊躇無く自分を吐き出し、そのまままた固くなった自身を突き立ててくる
声も枯れ果てた頃、耳もとで愛してると囁かれてそのままふっと意識を失ってしまった
授業が全て終わり、言われていた通り沈んでゆく夕陽を見ながら学び舎の直ぐ脇の木の下で1人彼等を待っていると、寮に行く道からこちらにかけてくる3人を見つけて手を振った
「セツナさん!」
「久しぶりぃぃ!元気そうで何より」
「この間会ったじゃないですか」
「この間は教師としてでしょ」
リオウ、ナナミ、ピリカ。いつも見ていた面子なのに久しぶりに話をすると何故か少し大人になっている気がして新鮮な気分だ。足にくっ付いて来たピリカを抱き上げると声は出さずにニッコリと笑う
可愛いヤツめと言いながらピリカの柔らかい頬に頬擦りしていると
相変わらず騒がしいナナミが私の手を取り凄い剣幕で話し出す
「 セツナちゃん!聞いて。フリックさんて私の事が好きなんだって」
「・・・何のお話???」
「ナナミ…。多分とゆうか絶対勘違いだって」
「何かあったの??」
ニナから聞かされたとゆうナナミは理由を私に説明し出すと、途中であれれ?でも一緒にいた人って セツナちゃんの事かな?と頭を抱え出す。
その仕草が可愛くて私が大笑いすると、リオウがため息を付きながら口を開いた
どうも2人の話を詳しく聞いた所、ニナにフリックが俺には好きな人がいる。ずっと一緒に居た人だと言った様だった
「セツナさんとフリックはもう体の関係もある仲なんだし、ナナミ何て子供何だからフリックが好きになる訳ないだろ」
「・・・おーいリオウくーん。そうゆうのは内緒でってゆうか何で知ってるのー」
「セツナちゃんとフリックさんの体の関係って何??どうゆう事??」
「…ナナミ、私は上手く説明出来ないからフリックに聞いて」
「分かったー!!」
そう言って走り出したナナミの後ろ姿を目で追い、すまないフリックと呟いた私にリオウはカラカラと笑う
「もー!!リオウったら」
軽く頭を小突く私にセツナさんもフリックに丸投げじゃないですかと年相応の笑顔で笑う
ピリカを抱えながらリオウと談笑していると、なんだかゲッソリとしたフリックがニナとナナミに両腕を抱えられて引っ張られる様にこちらに向かってくる
「セツナ、リオウ、何の話をしたんだよ」
「ふふふ」
「ナナミがフリックさんの好きな人って私なのかなとか勘違いしてるから、セツナさんとフリックは大人の恋人同士だからナナミの出る幕は無いよって言っただけだよ」
そのリオウの言葉に黙るフリックに、逆にニナの顔が段々破顔してくると、フリックの胸を叩き酷いと騒ぎ出した
お手上げだよと言わんばかりのフリックは小さく溜息を付いてから私の肩に手を回すと、ニナに向かってそうゆう事だから、お前の気持ちには応えられないとハッキリとした口調で言い放った。
「・・・とゆうか、最初から好きな女がいるから無理だって何回言わせるんだよ」
「先生がフリックさんの好きな人だなんて・・・」
「・・・ニナ、隠しててごめんね。私とフリックは傭兵の砦に居た頃からの仲間でさ。こうゆう関係になったのは最近なんだけど」
「最近なんですか!?」
「う、うん」
「なら私にもチャンスありますよね!私お弁当作ってたんです、フリックさんに。やっぱり持ってきますね!じゃあ」
そう言ってかけて行くニナに口をあんぐりと開けて放心する私。
そして、どこか遠い目をしたフリックの袖を掴んで
「フリックさん、セツナちゃんと体の関係があるんでしょ?体の関係って何??」
と騒がしく聞いてくるナナミにリオウだけが大笑いしていた。
「・・・これ、俺が説明するのか?」
「・・・私は説明出来ないわよ」
「何で困った顔するの??言えない様な事セツナちゃんにしてるの??」
「いや、まぁ、そ、そうなのかな」
「フリックさん最低!叩いたりしてるの!?」
「何でそうなるんだナナミよ」
「暴力な訳無いだろ。あー、ナナミ、キスって分かるか??」
「・・・うん」
「そんな感じだ」
「ナナミ、分かったかな??」
「う、うん。前におじいちゃんがほっぺにしてくれたかな。」
「うーん⋯まあ、そんな所さ」
「フリック、少し違うと思うよ」
「ならお前が説明しろ」
まあ、最初はそうなんじゃない?と突っ込んで来たリオウの口を塞いだフリックはこれ以上余計な事を言うなと小声でリオウに耳打ちすると、リオウをそのまま引き摺りながら学び舎の中に入って行ってしまう
「ナナミ、私達も行こう。ピリカちゃんはアイリの所に戻っていてね」
「はーい」
頷いたピリカはとてとてと小さな足で寮の道を進んでいく。その後ろ姿を見送ってからナナミと学び舎の扉を入り、怪しいと言っていた銅像のある部屋に向かった
既にリオウとフリックが銅像に設置された仕掛けを解いており、2人はもうその隠し扉から裏庭に通じる森に出ていた
モンスターを蹴散らされた後を辿ると小さな小屋の様な物の前で剣を抜いたシンさんと言い争いをしているフリックを見付けた
ゆっくりと歩み進める私見たシンと目が合って軽く頭を下げる
「・・・貴方は」
「どうも」
私を見て眉を寄せるシンに、軽く頭を下げると仲間か?と聞かれて素直に頷いた。この人とは此処に来た際に挨拶をして以来全く接点も無かった
シュウさんからシンだけはなるべく打ち解けて隙を探れと手紙が来ていたから何回か頑張ってみたのだが
彼の警戒心には早々と私の心も折れて断念していた
テレーズ様に会わせる訳にはいかないと眉を寄せるシンにリオウが珍しく神妙な顔付きで頭を下げる
「テレーズさんを都市同盟の仲間に加え、ハイランドと戦いたいと思っています。どうか少しで良い、少しだけでも話す時間を下さい」
サラサラと風が沢山の葉を撫でて森が一瞬ザワザワと音をたてる、リオウの真っ直ぐな瞳にシンが剣を納めるのを見てフリックも鞘に剣をしまった
シンが付いてこいと言ってリオウとフリックを小屋に招き入れるのを見守ってから、私とナナミはドアの外で見張りをしていた。
何体かのカエルを氷漬けにしていると小屋の中からフリックの怒鳴り声が聞こえてくる
どうして死に急ぎやがる!生きてこそだろと私の耳に入って来た声が私の胸を痛みつけて胸が熱くなり涙が出てくる
そんな様子を見たナナミが小屋と私を見ながらアタフタとした様子でぎゅっと私の胸を抱きしめてくれる
「セツナちゃん⋯急にどしたの?フリックさんも何か怒ってる?」
「⋯あれは⋯悲しいのよ⋯」
悔しい、腹立たしい、悲しい、どうして…
そんな感情が入り乱れる様な悲痛な叫びに感じた
ナナミ髪を優しく撫でてありがとうと伝えると、バンと勢い良く開いた扉からフリックとリオウが出てきて私達を見つめる
「⋯ セツナ?泣いてるのか?」
「⋯カエルの液体が目に入ったの」
痛いよーと笑う私にフリックはびっくりさせるなよ。大丈夫か??と私の目を心配する様に覗き込んでくる
平気平気と笑って何か言いたそうなナナミの腕を掴むと、今日は一度帰ってゆっくり寝よと3人に笑いかけた。
次の日の朝
いつも通りの服に着替えてから学び舎に入ると、いつもと様子が違い皆広場の方に向かって小走りしている
こんな朝から何かあったのか?
リオウもフリックも特に何も言って無かった筈だ
生徒達に混ざり皆が向かう方角に走って行くと何やら叫ぶニナとハイランド兵、グリンヒル市民で揉めている様だった
ハイランド兵と揉めていると思いきや、どうやら街の人同士で喧嘩になっている様で⋯
その言い争いにニナが割って入っている様だった
遠くにリオウやフリックが見えて、すぐに駆け寄ろうとすると金色の髪をなびかせたテレーズがシンを連れてこちらに歩いてくるのが見えて私は立ち止まった
「私がハイランドに降伏し、ここを出ていきます。
グリンヒルの民同士で争うのはやめて下さい」
ハッキリとした大きな声がその場全体に響き渡り街の人達はその言葉に皆口を閉じた
真っ直ぐと歩き出したテレーズを攫うなら今かなとチャンスを感じ、ゆっくりと近づくとテレーズの前で両手を広げて行かせないと言ったのはニナだった
「ニナ⋯そこを退いて下さい」
「退きません。今回の事はテレーズさんが悪いんじゃない。食料の事⋯皆で協力せずに自分の物だと取り合って争った私達の責任です⋯」
そう言って下を向いたニナにポンポンと頭を優しく撫でたのはフリックだった
「彼女の言う通りだ。グリンヒルは必ず都市同盟が奪還する。みんなそれまでテレーズを信じて待っててくれ」
フリックのその言葉に私はと続けようとしたテレーズは口を閉じて皆を見つめた
テレーズ様、信じてますと今まで争っていた街人達は
ハイランド兵の前に立ち塞がって彼女に歓声を送っている
それを見て涙を零したテレーズをフリックが抱き上げるとシン、リオウとピリカを抱いたナナミも続けて走り出した
「テレーズは都市同盟が預かる!」
「必ずまた戻ってきます」
それを見たハイランド兵が直ぐに彼等の後を追い駆け出したのを見て紋章を発動させる
彼等の片足だけ凍らせて動けないようにしてから私も皆を追った
森に入るまでに何度か追いついて来たハイランド兵の足止めをしていると森の中からピリカの泣き声がする事に気付いて私は一度足を止めた
声が出てる事に驚いたが急がないと何かあったのかもしれない。久しぶりに全力でダッシュで声を頼りに森を走り抜ける
やっとの事でピリカを見付けると、ピリカを胸に抱いた少年に唖然とした
「⋯⋯⋯ジョウイ⋯」
「お久しぶりです。セツナさん」
泣き止んでいるピリカは私を見ているがジョウイから離れようとせずにぎゅっと抱きしめているのが分かる
彼はピリカに酷い事はしないだろうと思ったが、アナベルの事が頭に過ぎり私は立ち止まった
「⋯リオウやフリックさんはこの先です。ピリカは僕が預かります、行って下さい」
「その軍服⋯」
「グリンヒルを落としたのは僕です⋯」
「⋯ジョウイ⋯。」
ゆっくりと彼に歩み寄り、ピリカの頭を撫でる私にジョウイは寂しそうに笑う。
なんでそうなっちゃったのかな、何で敵になるのかな
どうしてアナベルを⋯色々な事が頭を過ぎったけれど出て来た言葉は一言だった。
「⋯1人で⋯大丈夫?」
「⋯ セツナさん⋯。ありがとう」
その時、急にガシャーンと物凄い雷鳴が鳴り響き突然の事に目を瞑るとヒヤリとした感触が首元に置かれ、私は動きを止めた
「⋯青雷のフリック。申し訳ないですが彼女は渡しません」
その声に目を開けると少し先の茂みからフリックとリオウが武器を構えた状態で静止している
「セツナをこちらに渡せ」
後ろで私に剣を突き付けているのはクルガンだと声で認識する
動くなよと小さく耳打ちして来たシードに眉を寄せ紋章に魔力を込めようとすると発動が出来無い事に気付きワザとシードに聞こえるように舌打ちをした
全員が動けない中、口を開いたのはリオウで。
ジョウイに優しい目を向けたリオウは昔みたいに戻れないのかなと一言だけ口にする
それを聞いたジョウイはただ、下を向いて黙っていた
あれ?何か歪みが……と思った時にはリオウの隣にはルックが居て、シードとクルガンはルックの転移に少しだけ驚いた様だけど直ぐに剣を構え直す
ルックがこちらを見てから、リオウに撤退すると言ってロッドに魔力を込めるとロッドの先から緑色の光が溢れ出す
「おい、嘘だろセツナはどうなるんだ!?」
「⋯リオウの安全が最優先だって言われてる。撤退する。」
じゃあ俺だけ置いていけと怒鳴るフリックに私はハッとして腹から思い切り叫ぶ
「ルック!!全員連れて撤退して」
「君がそう言うって分かってるよ」
思い切り叫んだ反動で勢いが付いてしまいクルガンの剣の刃に首筋が当たり自分の目の前で首から一瞬で血が吹き出したのが分かって慌てて首筋を押さえる
そんな光景を目にしながらリオウ、ルック、フリックは私の名前を叫びながらその場で一瞬で消えた
「おぃぃぃぃセツナ!?!何やってんだよ!バカヤロウ!!」
「セツナさん!大丈夫ですか!?」
「⋯シード直ぐに治療しろ」
「もうやってるだろうがっ!!」
「……タダでさえ貧血なのに何でこうなるのよぉ。皆ごめんねぇ」
「お前は喋るんじゃねぇ!」
怒るシードと焦るジョウイの声、心配そうなクルガンの顔
泣き叫んで胸に飛び込んできたピリカの背中を撫でながら私を意識を手放していった
。
急に悪いなと続け少しだけ頭を下げたクルガンに、居ますよと返事をすると無表情でハァと小さく溜息を付いたクルガンは入りますねと私に1度断りを入れてから玄関をまたぐ
シードと違い丁寧な人だなぁ何て思いながらクルガンの背に続いて早足でリビングに戻ると
テーブルの料理を豪快に口に入れて頬張るシードに呆れながらクルガンは口を静かに開いた
「・・・シード、兵達の間で噂になっているぞ」
「ほうかよ」
「・・・」
「あのー、噂ってどんな?」
口いっぱいに頬張るシードに呆れて黙ったクルガンを見てつかさず私が入り込むように聞くと、私を見たクルガンはシードに目線を戻してから変わらぬ口調で口を開く
「シードが学園の教師に色目を使っているなどの噂が兵達の間で流れてましてね」
「・・・」
「ったく、そんな噂言ってるのどーせラウドの所のやつらだろ?」
「お前の部下だ」
「・・・」
「しかも面白がってる」
「それは・・・俺の部下だな。うん。」
「・・・似てるのねぇ」
「・・・ルカ様の耳に入る前にそうゆう行動は慎むんだな」
「へいへい」
舌打ちをしながら無言で料理を食べ進めるシードを見ていたクルガンは、シードが直ぐに帰る気が無いのが見てとれたのか1度溜息をついてから向かいの椅子に腰を降ろした
立つ尽くす私を見て待たせてもらいますねと軽く頭を下げたクルガンに、大変ですねぇ。と笑ってからフリックの為に残してあった料理をクルガンに出す事にして温め直そうと鍋に火をかけた
後ろで2人があーだこーだルカブライトの話をしているのが少し気になり、手を動かしながら耳を傾ける事にした。
敵国の女性にうつつを抜かしているなどどルカ様の耳に入って怒りを買い、万が一グリンヒルが火の海にでもなったらどうするとクルガンが静かに低い声でシードを冷静に叱る
シードはそれに対して、万が一都市同盟の女に惚れて入れ込んでる何てルカ様が聞いて怒るなら俺が処刑されるまでさ。グリンヒルは大丈夫だろと軽い口調で返しワインを流し込む
そんなシードに、幹部としての自覚が足りないと睨みつけたクルガンに私はウンウンと首を縦に振りながら
熱々の料理を皿に盛り付けてクルガンの目の前に運んだ
料理を見てから、ちょっとだけ無表情を崩して彼は嬉しそうな顔をして私に頭を下げる
「ひよこ豆とトマトのチリコンカンときのこのハンバーグです。パンとライスはおかわりありますよ」
「・・・ありがたいですが私が食べて大丈夫ですか?」
なんで?と私が首を傾げると、青雷のフリックに怒られませんか?とマジマジと言われて、彼もここにきてますよねと続けた。
「・・・うーん。大丈夫ですよ、温かいうちにどうぞ」
「フリックなら他の女に食べさせて貰ってるから大丈夫だろ」
「・・・そうゆう問題で言ったのでは無いんですけどね」
「「???」」
シードと私が首を傾げると、クルガンは諦めた様な顔をしてから小さくいただきますと言って料理に口をつける
美味しいと言って私を見たクルガンにニッコリと笑うと彼もふっと小さく笑った
「クルガンも大変ですね、シードは本当に幹部の自覚が足りにゃいよぉ。んでおかわりくれ」
「・・・飲みすぎだ。しかもお前に言われたくない」
「しかも潜入捜査とか言ってフリックまでクルガンに居るのバレてるしぃ」
「・・・あんな青1色で剣まで持っていたら誰だって分かりますよ。そちらの軍師殿は我々を馬鹿にしているんですかね」
「ぷっ確かに」
「お前もフリックの事言えねぇだろ。変装も毛色だけしか変えて無くて俺にすぐバレたじゃねーか」
すっかりいい気分で出来上がり、ごもっともだなとゲラゲラと笑う私にお前も似たようなもんだと続けて言われて水を渡される
元々ハイランドを敵だなんて思った事ないもん。とシードの手からグラスを奪った私は水を飲み干した
「貴方は産まれが都市同盟な訳では無いですしね」
「そそ、たまたまハイランドに行く途中にフリックに会って、ビクトールに仕事頼まれただけ。そこを攻撃されてシードとクルガンに会った感じ」
「・・・ハイランドに行く途中だったのかよ」
「まあ、人探しがてらね。」
小さな声で、何でフリックに会っちまうんだよと舌打ちしたシードにクルガンは少し笑う
私もそんなシードに笑ってしまった。可愛いシードちゃんとグリグリ頭を撫でれば失言だったと思ったのか顔を赤くしたシードはやめろや犯すぞと怒り口調で私の頬を抓った
急に、ざぁぁぁぁと小さく窓の外から聞こえて来た音にクルガンは雨か…と口を開いてから立ち上がる
「ご馳走様でした、雨が強くなる前に戻りますね」
立ち上がり私にそう言ったクルガンに、はーいと元気よく手を挙げると飲み過ぎないようにと釘をさされて私はまたはーいと言ってから笑った。行くぞシードと言って玄関に向かうクルガンを見送ろうと立ち上がろうとすると、腕を引かれ身体はフラリとシードの胸に収まってしまう
「にゃにすんのよ」
「・・・なぁ。」
その情けない声色に、まじまじとシードを見上げると初めて見るような悲しそうな顔をしていて私はつい黙ってしまう。
「・・・セツナ。そろそろ此処も戦場になるかもしれない。此処でならなかったとしてもいつかお前とまた戦う日が来る。俺にお前は殺せない」
「・・・」
「・・・もし、お前が戦場で俺の前に立った時は俺は逃がしてやらないし。どんな手段を使ってもお前をフリックには渡さない」
「・・・はっ??」
「俺はもう決めたからな」
シードと、口に出そうとした言葉は声には成らず
唇が私の唇を塞ぎ、後頭部に置かれた手と腰を掴まれた手は力が入っているのか動かない
何十秒だか何分だか分からなくなるような熱い口付けに私は固まってしまう
ふと、唇を離したシードは私をもう一度見てから悲しそうに薄く笑い
さっき言った事、忘れるなよと言って立ち尽くす私を背に部屋を出て行った
ぼんやりとしながら食器を片付けながら、先程のキスを思い出す。まだ顔が赤いのは熱があるのか、それとも酒のせいなのか・・・。
風呂に入りシャワーを浴びてもモヤモヤする気持ちのまま私はベッドに入った
ふと、人の気配を感じて目を開ける
私の髪を優しく撫でているフリックは風呂に入った後なのかラフな格好をして私の隣に寝転がっていた
「・・・いつ来たの?」
「・・・すまん。起こしたか?今風呂を借りた」
「何か分かった?」
「ああ、ニナからも色々聞けた。」
「・・・そう。学び舎の裏の森にニナが走って行くのを何回か目撃してるのよね」
「・・・それは俺も聞いたが答えてはくれなかった。とゆうよりもはぐらかされた感じだな」
「皆そこまでは掴めてるのね」
「リオウも知っている」
「調べる価値はありそうだね」
そう言った私にフリックは眠そうに欠伸をすると目を閉じた。ふとシードとのキスの事が頭に過ぎる
そう言えばと小声で呟いたフリックに目を開け彼をチラリと見る
「・・・俺の飯が無かったんだけど」
目を瞑りながら口を開いたフリックに、邪な事を考えていた自分は内心ビクリとしたがその内容にふふっと笑ってしまった
「あぁ、クルガンも来てたから出しちゃった。明日はちゃんと作るから」
その言葉にいつも通りのため息は帰って来ず、目を見開いたフリックは私を見て眉を寄せる
「・・・あのなぁ、クルガンも敵の幹部なんだぞ」
「シードを迎えに来ただけよ、そんなに怒らないでよ」
「何かあったらどうするんだ!」
フリックの冷たい怒鳴り声にビクリとした。今の私は教師であの2人は私の敵じゃない…と小さく呟くのが精一杯だった。
「君からしたら敵じゃないかもしれない。だが都市同盟の今の戦いにおいては敵なんだ。アイツらがもしお前を攫ってリオウに降伏しろなんて言われたらどうするんだ」
自覚が足りないと冷たい口調で言われ私は下を向いた
「・・・シードもクルガンもそんな下衆な事しないって分かるから家に入れたの。
ビクトールもフリックも良い人だから仕事を受けたの。私は私の判断で動いてる」
「・・・もしもの事だってあるんだぞ」
「うん。分かってる。…でもあの2人を戦場以外で敵だと思えない自分がいる。もし、何かあったら私が責任を取るから」
「責任て、何だよ…」
「2人がもし私に何かしようとして、リオウ達、都市同盟の妨げになるようなら私が彼等をその場で殺す」
「お前にそれが出来るのか?」
「・・・彼等がそうして来たのならそうするしか無い」
「・・・分かったよ。俺の負けだ。すまなかった」
ガバリと抱きつかれて目をパチクリさせた私にフリックは耳元ですまなかった。ともう一言呟いた
「何??どうゆう意味で謝ってるの?」
「・・・心配だっただけだ。悪かった。アイツらは悪いヤツじゃないのは俺も分かる。お前が仲良くしてるのが気に入らないだけでリオウの名前を出した俺が悪い」
「・・・・・・私もごめんなさい。本当に自覚無いんだなって今の話で分かった。・・・私は昔から雇われ兵隊だった事が多かったから、戦場以外では敵だって認識が甘すぎるのかもしれない」
「・・・お前は元々俺が巻き込んだだけだ。…それにシードはお前に本気で惚れてるからな。…お前がシードをもし選んだらと考えたら気が気じゃなかった。」
そう言ったフリックに胸が痛み少しだけ涙が出た
シードが自分に気があるってフリックから聞いていて
でも、自分の耳で聞いてないからそんな事は有り得ないかもしれないし
ただのお礼だし…そこまで考えて言い訳ばかりの自分に気付く
私はただ、シードに会いたかったのか??
そこで時が止まった様に感じた
ぎゅうっと音が出るんじゃないかってくらい抱きしめられて、自分の上に座らせたフリックは私の唇に噛み付くように口付けてくる。
笑顔が作れない私にどした?と言って顔を覗いてくるフリックを見て我に変える
忘れてしまおう。そう決めて唇をキュッと噛むと首を傾げたフリックに自分から口付けた
胸を触る左手と下着に入ってくる右手に口から吐息と喘ぎが少し漏れて雨音しか聞こえない静かな部屋にぴちゃぴちゃと指を動かす音がコダマしている様で顔が熱くなる
「は、恥ずかしい」
「・・・ふっ」
グリグリと中をかき混ぜる様な指と胸の先端を舐められ、気持ちが良くて足が少し震えてくる
我慢出来なくなった声が大きくなると、フリックがそれを塞ぐように口に舌を入れてくる。
止まる事の無い指が奥まで入って来た瞬間にビクビクと体を震わせて達した私はぎゅうっとフリックを抱き締めた
「・・・セツナ、可愛い」
目元にチュッとキスをされて、息も絶え絶えな私を押し倒すと根元まで彼が入ってきて私はまたビクリと腰を浮かす
「・・・ 」
少し息が荒いフリックの顔を見る
愛しそうに私を見るフリックの目をまじまじと見つめていると、何だよとフッと小さく笑い額に口付けされる
「・・・いや、まじまじと見るとカッコイイ顔してるなぁって思って」
「⋯何だそれ・・・・・動くぞ」
「・・・ちょ、待って」
「またない」
奥まで貫くように突かれて、ひゃっと情けない思わず声を出してしまう。するとフリックは私の唇を指でなぞりながら耳に唇を寄せた
「…可愛い声だな。その色っぽい顔も全部俺の物だ」
「・・・フリック…」
その愛しそうな声を聞きながら私は目を閉じた
喘ぎ声も気持ちよさも、フリックへの愛情も全部本物なのに
何故かシードの事が頭に過ぎる
そんな私の事を知ってか知らずか…フリックは最奥に躊躇無く自分を吐き出し、そのまままた固くなった自身を突き立ててくる
声も枯れ果てた頃、耳もとで愛してると囁かれてそのままふっと意識を失ってしまった
授業が全て終わり、言われていた通り沈んでゆく夕陽を見ながら学び舎の直ぐ脇の木の下で1人彼等を待っていると、寮に行く道からこちらにかけてくる3人を見つけて手を振った
「セツナさん!」
「久しぶりぃぃ!元気そうで何より」
「この間会ったじゃないですか」
「この間は教師としてでしょ」
リオウ、ナナミ、ピリカ。いつも見ていた面子なのに久しぶりに話をすると何故か少し大人になっている気がして新鮮な気分だ。足にくっ付いて来たピリカを抱き上げると声は出さずにニッコリと笑う
可愛いヤツめと言いながらピリカの柔らかい頬に頬擦りしていると
相変わらず騒がしいナナミが私の手を取り凄い剣幕で話し出す
「 セツナちゃん!聞いて。フリックさんて私の事が好きなんだって」
「・・・何のお話???」
「ナナミ…。多分とゆうか絶対勘違いだって」
「何かあったの??」
ニナから聞かされたとゆうナナミは理由を私に説明し出すと、途中であれれ?でも一緒にいた人って セツナちゃんの事かな?と頭を抱え出す。
その仕草が可愛くて私が大笑いすると、リオウがため息を付きながら口を開いた
どうも2人の話を詳しく聞いた所、ニナにフリックが俺には好きな人がいる。ずっと一緒に居た人だと言った様だった
「セツナさんとフリックはもう体の関係もある仲なんだし、ナナミ何て子供何だからフリックが好きになる訳ないだろ」
「・・・おーいリオウくーん。そうゆうのは内緒でってゆうか何で知ってるのー」
「セツナちゃんとフリックさんの体の関係って何??どうゆう事??」
「…ナナミ、私は上手く説明出来ないからフリックに聞いて」
「分かったー!!」
そう言って走り出したナナミの後ろ姿を目で追い、すまないフリックと呟いた私にリオウはカラカラと笑う
「もー!!リオウったら」
軽く頭を小突く私にセツナさんもフリックに丸投げじゃないですかと年相応の笑顔で笑う
ピリカを抱えながらリオウと談笑していると、なんだかゲッソリとしたフリックがニナとナナミに両腕を抱えられて引っ張られる様にこちらに向かってくる
「セツナ、リオウ、何の話をしたんだよ」
「ふふふ」
「ナナミがフリックさんの好きな人って私なのかなとか勘違いしてるから、セツナさんとフリックは大人の恋人同士だからナナミの出る幕は無いよって言っただけだよ」
そのリオウの言葉に黙るフリックに、逆にニナの顔が段々破顔してくると、フリックの胸を叩き酷いと騒ぎ出した
お手上げだよと言わんばかりのフリックは小さく溜息を付いてから私の肩に手を回すと、ニナに向かってそうゆう事だから、お前の気持ちには応えられないとハッキリとした口調で言い放った。
「・・・とゆうか、最初から好きな女がいるから無理だって何回言わせるんだよ」
「先生がフリックさんの好きな人だなんて・・・」
「・・・ニナ、隠しててごめんね。私とフリックは傭兵の砦に居た頃からの仲間でさ。こうゆう関係になったのは最近なんだけど」
「最近なんですか!?」
「う、うん」
「なら私にもチャンスありますよね!私お弁当作ってたんです、フリックさんに。やっぱり持ってきますね!じゃあ」
そう言ってかけて行くニナに口をあんぐりと開けて放心する私。
そして、どこか遠い目をしたフリックの袖を掴んで
「フリックさん、セツナちゃんと体の関係があるんでしょ?体の関係って何??」
と騒がしく聞いてくるナナミにリオウだけが大笑いしていた。
「・・・これ、俺が説明するのか?」
「・・・私は説明出来ないわよ」
「何で困った顔するの??言えない様な事セツナちゃんにしてるの??」
「いや、まぁ、そ、そうなのかな」
「フリックさん最低!叩いたりしてるの!?」
「何でそうなるんだナナミよ」
「暴力な訳無いだろ。あー、ナナミ、キスって分かるか??」
「・・・うん」
「そんな感じだ」
「ナナミ、分かったかな??」
「う、うん。前におじいちゃんがほっぺにしてくれたかな。」
「うーん⋯まあ、そんな所さ」
「フリック、少し違うと思うよ」
「ならお前が説明しろ」
まあ、最初はそうなんじゃない?と突っ込んで来たリオウの口を塞いだフリックはこれ以上余計な事を言うなと小声でリオウに耳打ちすると、リオウをそのまま引き摺りながら学び舎の中に入って行ってしまう
「ナナミ、私達も行こう。ピリカちゃんはアイリの所に戻っていてね」
「はーい」
頷いたピリカはとてとてと小さな足で寮の道を進んでいく。その後ろ姿を見送ってからナナミと学び舎の扉を入り、怪しいと言っていた銅像のある部屋に向かった
既にリオウとフリックが銅像に設置された仕掛けを解いており、2人はもうその隠し扉から裏庭に通じる森に出ていた
モンスターを蹴散らされた後を辿ると小さな小屋の様な物の前で剣を抜いたシンさんと言い争いをしているフリックを見付けた
ゆっくりと歩み進める私見たシンと目が合って軽く頭を下げる
「・・・貴方は」
「どうも」
私を見て眉を寄せるシンに、軽く頭を下げると仲間か?と聞かれて素直に頷いた。この人とは此処に来た際に挨拶をして以来全く接点も無かった
シュウさんからシンだけはなるべく打ち解けて隙を探れと手紙が来ていたから何回か頑張ってみたのだが
彼の警戒心には早々と私の心も折れて断念していた
テレーズ様に会わせる訳にはいかないと眉を寄せるシンにリオウが珍しく神妙な顔付きで頭を下げる
「テレーズさんを都市同盟の仲間に加え、ハイランドと戦いたいと思っています。どうか少しで良い、少しだけでも話す時間を下さい」
サラサラと風が沢山の葉を撫でて森が一瞬ザワザワと音をたてる、リオウの真っ直ぐな瞳にシンが剣を納めるのを見てフリックも鞘に剣をしまった
シンが付いてこいと言ってリオウとフリックを小屋に招き入れるのを見守ってから、私とナナミはドアの外で見張りをしていた。
何体かのカエルを氷漬けにしていると小屋の中からフリックの怒鳴り声が聞こえてくる
どうして死に急ぎやがる!生きてこそだろと私の耳に入って来た声が私の胸を痛みつけて胸が熱くなり涙が出てくる
そんな様子を見たナナミが小屋と私を見ながらアタフタとした様子でぎゅっと私の胸を抱きしめてくれる
「セツナちゃん⋯急にどしたの?フリックさんも何か怒ってる?」
「⋯あれは⋯悲しいのよ⋯」
悔しい、腹立たしい、悲しい、どうして…
そんな感情が入り乱れる様な悲痛な叫びに感じた
ナナミ髪を優しく撫でてありがとうと伝えると、バンと勢い良く開いた扉からフリックとリオウが出てきて私達を見つめる
「⋯ セツナ?泣いてるのか?」
「⋯カエルの液体が目に入ったの」
痛いよーと笑う私にフリックはびっくりさせるなよ。大丈夫か??と私の目を心配する様に覗き込んでくる
平気平気と笑って何か言いたそうなナナミの腕を掴むと、今日は一度帰ってゆっくり寝よと3人に笑いかけた。
次の日の朝
いつも通りの服に着替えてから学び舎に入ると、いつもと様子が違い皆広場の方に向かって小走りしている
こんな朝から何かあったのか?
リオウもフリックも特に何も言って無かった筈だ
生徒達に混ざり皆が向かう方角に走って行くと何やら叫ぶニナとハイランド兵、グリンヒル市民で揉めている様だった
ハイランド兵と揉めていると思いきや、どうやら街の人同士で喧嘩になっている様で⋯
その言い争いにニナが割って入っている様だった
遠くにリオウやフリックが見えて、すぐに駆け寄ろうとすると金色の髪をなびかせたテレーズがシンを連れてこちらに歩いてくるのが見えて私は立ち止まった
「私がハイランドに降伏し、ここを出ていきます。
グリンヒルの民同士で争うのはやめて下さい」
ハッキリとした大きな声がその場全体に響き渡り街の人達はその言葉に皆口を閉じた
真っ直ぐと歩き出したテレーズを攫うなら今かなとチャンスを感じ、ゆっくりと近づくとテレーズの前で両手を広げて行かせないと言ったのはニナだった
「ニナ⋯そこを退いて下さい」
「退きません。今回の事はテレーズさんが悪いんじゃない。食料の事⋯皆で協力せずに自分の物だと取り合って争った私達の責任です⋯」
そう言って下を向いたニナにポンポンと頭を優しく撫でたのはフリックだった
「彼女の言う通りだ。グリンヒルは必ず都市同盟が奪還する。みんなそれまでテレーズを信じて待っててくれ」
フリックのその言葉に私はと続けようとしたテレーズは口を閉じて皆を見つめた
テレーズ様、信じてますと今まで争っていた街人達は
ハイランド兵の前に立ち塞がって彼女に歓声を送っている
それを見て涙を零したテレーズをフリックが抱き上げるとシン、リオウとピリカを抱いたナナミも続けて走り出した
「テレーズは都市同盟が預かる!」
「必ずまた戻ってきます」
それを見たハイランド兵が直ぐに彼等の後を追い駆け出したのを見て紋章を発動させる
彼等の片足だけ凍らせて動けないようにしてから私も皆を追った
森に入るまでに何度か追いついて来たハイランド兵の足止めをしていると森の中からピリカの泣き声がする事に気付いて私は一度足を止めた
声が出てる事に驚いたが急がないと何かあったのかもしれない。久しぶりに全力でダッシュで声を頼りに森を走り抜ける
やっとの事でピリカを見付けると、ピリカを胸に抱いた少年に唖然とした
「⋯⋯⋯ジョウイ⋯」
「お久しぶりです。セツナさん」
泣き止んでいるピリカは私を見ているがジョウイから離れようとせずにぎゅっと抱きしめているのが分かる
彼はピリカに酷い事はしないだろうと思ったが、アナベルの事が頭に過ぎり私は立ち止まった
「⋯リオウやフリックさんはこの先です。ピリカは僕が預かります、行って下さい」
「その軍服⋯」
「グリンヒルを落としたのは僕です⋯」
「⋯ジョウイ⋯。」
ゆっくりと彼に歩み寄り、ピリカの頭を撫でる私にジョウイは寂しそうに笑う。
なんでそうなっちゃったのかな、何で敵になるのかな
どうしてアナベルを⋯色々な事が頭を過ぎったけれど出て来た言葉は一言だった。
「⋯1人で⋯大丈夫?」
「⋯ セツナさん⋯。ありがとう」
その時、急にガシャーンと物凄い雷鳴が鳴り響き突然の事に目を瞑るとヒヤリとした感触が首元に置かれ、私は動きを止めた
「⋯青雷のフリック。申し訳ないですが彼女は渡しません」
その声に目を開けると少し先の茂みからフリックとリオウが武器を構えた状態で静止している
「セツナをこちらに渡せ」
後ろで私に剣を突き付けているのはクルガンだと声で認識する
動くなよと小さく耳打ちして来たシードに眉を寄せ紋章に魔力を込めようとすると発動が出来無い事に気付きワザとシードに聞こえるように舌打ちをした
全員が動けない中、口を開いたのはリオウで。
ジョウイに優しい目を向けたリオウは昔みたいに戻れないのかなと一言だけ口にする
それを聞いたジョウイはただ、下を向いて黙っていた
あれ?何か歪みが……と思った時にはリオウの隣にはルックが居て、シードとクルガンはルックの転移に少しだけ驚いた様だけど直ぐに剣を構え直す
ルックがこちらを見てから、リオウに撤退すると言ってロッドに魔力を込めるとロッドの先から緑色の光が溢れ出す
「おい、嘘だろセツナはどうなるんだ!?」
「⋯リオウの安全が最優先だって言われてる。撤退する。」
じゃあ俺だけ置いていけと怒鳴るフリックに私はハッとして腹から思い切り叫ぶ
「ルック!!全員連れて撤退して」
「君がそう言うって分かってるよ」
思い切り叫んだ反動で勢いが付いてしまいクルガンの剣の刃に首筋が当たり自分の目の前で首から一瞬で血が吹き出したのが分かって慌てて首筋を押さえる
そんな光景を目にしながらリオウ、ルック、フリックは私の名前を叫びながらその場で一瞬で消えた
「おぃぃぃぃセツナ!?!何やってんだよ!バカヤロウ!!」
「セツナさん!大丈夫ですか!?」
「⋯シード直ぐに治療しろ」
「もうやってるだろうがっ!!」
「……タダでさえ貧血なのに何でこうなるのよぉ。皆ごめんねぇ」
「お前は喋るんじゃねぇ!」
怒るシードと焦るジョウイの声、心配そうなクルガンの顔
泣き叫んで胸に飛び込んできたピリカの背中を撫でながら私を意識を手放していった
。