短編3
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「綺麗な人が好きって」
「うん、可愛い系ってよりは綺麗系だよな」
「……化粧映えする顔って」
「んー、化粧に限らずさ、君の色付いた表情っつーかさ、笑ったり怒ったり喜んだりしてる顔を見てェし、おれが引き出してェっていう我儘かな」
蕩けた表情でそう語るサンジ。そして、サンジはこちらに手を伸ばすと私の唇を親指で拭う。へ、と情けない声を漏らす私にくすっと控えめな笑みを漏らしたサンジ。
「きっと、そいつよりおれの方が君に似合う色を知ってるよ」
「……私が彼の好みを勘違いしてたみたい」
サンジの指に滲んだその赤はもう私には必要ない。私が男をフォローするような発言をするのが気に入らないのか、サンジはブツブツと男を貶すような発言を繰り返す。
「サンジ」
「……君の好きな野郎を悪く言いたくないが、君を作り変えちまうのは違ェだろ」
「作り変えられたんじゃなくて、私が勝手にした事よ」
私はポケットからハンカチを取り出すとサンジの汚れた指先を拭う。遠慮して手を引っ込めようとするサンジの手をギュッと握り、私は勘違いの裏側に隠した恋心のネタバラシをする。
「私ね、サンジが好きなの」
忘れられない誰かになりたかった、そう言ってサンジのもう一つの手から手配書を抜き取ると自身の顔の横に並べて、へらりと笑って見せる。
「ふふ、それにしても、その相手が過去の私だったなんて出来過ぎじゃない?」
「は……エッ、おれ?」
サンジは自分自身の顔を指差すと挙動不審な言動を繰り返す。だが、次第に状況を飲み込んでいったのか、しなしなと力が抜けたように床に崩れ落ちていくサンジ。
「お、おれ、本気にしちまうよ……?」
覆った手の隙間からこちらを覗き込むサンジはこの出来過ぎたシナリオのようなネタバラシを信じ切れないのか、何度も私にそう確認する。この二年以上に渡る苦しいだけの片思いに終止符を打ちたい気持ちが不安を上回っている私はサンジの前にしゃがみ込んで、その項垂れる金髪頭をくしゃりと撫でる。
「そのままの私でいい?」
似合わない口紅も吊り上がったアイラインも落として私のままでいていいか、とその情けない顔に問い掛ける。
「君らしくいて」
君が君を好きでいられるように、とサンジは言う。その言葉にまた胸がギュッと潰れたように痛んだ。好きはいつも苦しい、間違いなくしない方が楽だと言い切れる。なのに、苦しいの後ろに好きがついて回るのだ。
「(……撃ち抜かれたのは、)」
きっと、どちらもだろう。