短編3
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仕事納めしました、仕事始めはいつ、そんな他人の年末年始の予定が流れてくるSNSを画面上から消して私はスマートフォンを枕元に放り投げた。SNSのタイムラインは年末年始休暇なんてものがない職についている私にはまるで別世界のようだ。違う国の文化と言ったって過言ではない。だが、それに対して怒りを向けたりネガティブな感情を向ける事はしたくない。
「ナマエちゃんはなんて優しいんだ……っ……」
感動しているサンジには悪いが、これは私の優しさでも善意でもない。人に怒りを向けるのはとても疲れる。ただでさえ、忙しい年末年始に余計な体力を消耗したくないのだ。今だって草臥れたアザラシのようにベッドに転がり、全てのやる気を削ぎ落とした顔をしてサンジを困らせている最中だ。メイクも落としていない、服だって帰ってきた時のままでお風呂を渋る私は女としてサンジにどう見えているのだろうか。終わってる?それとも気を抜いた私も魅力的?流石に後者は言い過ぎだがサンジの普段の全肯定ぶりを考えて前向きな評価をしている事を祈ろう。
「ナマエちゃん、お顔だけでも落とそうぜ?」
「んー」
「レディの肌は一日サボると復活に一週間必要なんだろ?」
大変ねぇ、とまるで他人事のような返事を返す私。サンジの言葉が耳には届くのに頭や心には今一歩届かない。面倒臭い、疲れた、無理だけを吐き出す生き物になった私の頭をポンポンと撫でるとサンジは私の背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。
「ん?」
「おれが全部やってあげるから君は寝てていいよ」
「は?」
「頭から隅まで、ね」
待ってを掛けるがサンジの足は軽やかに脱衣所に向かう。
「待って、もう自分で出来るから」
「君に尽くすのがおれの最大の喜びだから取らねェで」
こないだは私にご飯を食べてもらえるのが最大の喜びって言ってたでしょ、とサンジのコロコロ変わる意見に物申すようにサンジの腕をペチペチと叩く私。
「どうせ、エッチなこと考えてるんでしょ」
「しねェって」
「どうだか」
ジト目でサンジを見上げれば、サンジは眉を下げてへにゃりと笑った。そして、私の額に自身の額をコツンと合わせるとこう口にする。
「疲れてる君に無体を働くクソ野郎に成り下がる気はねェよ」
言い方が悪かったのは認めるけどね、とサンジは先程の自身の発言を謝罪すると私の瞼に口付けを落とす。
「少しでも君の役に立ちたいだけだよ。でも、役に立ちてェなんて言い方をしたら恩着せがましいからさ……茶化しちまった、ごめんね?」
「……キスぐらいならしてもいいわよ」
「エッ」
「ふふ、寝てる私が起きない場所にお願いするわ」
それじゃ、おやすみと寝たフリをする私にサンジは溜息をつくと声のボリュームを落とし、独り言を漏らす。君の優しさは意地悪だ、と。