短編3
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
息を潜めて、忍のように寝室に近付くサンジの手には細長いシルバーの箱が握られている。華奢なリボンが丁寧に巻かれているその箱を彼女の枕元に置くミッションを遂行しなければいけないサンジは緊張の色を顔に浮かべて、寝室の扉を静かに開けた。そっと彼女の顔を覗き込めば、穏やかな寝顔が毛布から顔を覗かせてスヤスヤと寝息を立てている。サンジは安心したような笑みを浮かべると彼女の枕元に手を伸ばして箱を置こうとするが、それは寝ている筈の彼女の手によって阻止されてしまう。
「サンタさんつかまえた」
サンジの手に甘えるように頬を擦り付ける彼女はへにゃりとした笑みを溢すと眠そうな声でそう言った。
「……起きてたの?」
「昔、サンタさんに会うのが夢だったの」
赤くて柔らかそうなお髭のサンタさん、そう言って彼女はサンジの柔らかくも無い頬に手を伸ばす。
「夢を壊してすまねェ……」
服くらい用意するべきだったね、と特徴的な眉毛をハの字にするサンジに彼女はゆっくりと首を横に振る。
「想像よりもずっと素敵な人ね、黒ずくめのサンタさん」
彼女はサンジの首に腕を回して、ぎゅっと抱き着く。サンジはベッドの端に座ると彼女を受け止めるように抱き上げ、膝に座らせる。
「おれはサンタには向いてねェな」
「ん?」
「だって、君から貰ってばかりだろう?」
今だってプレゼントを渡すのを忘れて君を独占しようとしてる、とサンジは彼女の肩に顔を埋める。彼女はくすくすと笑みを溢すと大きな子供のようなその背中を撫でる。
「働き者のサンタさんにだってプレゼントがあってもいいわよね」
そう言って彼女は引き出しに腕を伸ばして用意していたプレゼントを取り出す。
「これは?」
「サンタさんにささやかなプレゼントよ」
それと欲張りなお願いをひとつ、と彼女は悪戯な笑みを浮かべてプレゼントの箱を開ける。
「……時計かい?」
箱に描いてあるロゴを見ても高価なプレゼントだという事が分かる。そんな高価なプレゼントは受け取れない、とサンジは戸惑ったように彼女の顔を見つめる。だが、彼女は穏やかな笑みを崩さずにサンジの手首に腕時計をはめる。
「あなたと時間を刻みたいっていうお願いかしら」
「……それってさ、プロポーズ?」
「え、ま、待って!今の無し!無しよ!」
先程までの余裕の笑みは何処にいったのか、彼女は慌てた様子で顔を赤くしてみたり白くしてみたり忙しない。
「っ、くく、幸せにしてくれ、真っ赤なサンタさん」
「もう!サンジ!」
「鼻以外も真っ赤になってる」
サンジの指摘に彼女は、うー、と項垂れるがそれを見るサンジの瞳には愛が溢れていた。いつか来るその日の為にサンジは彼女の手を握り、薬指に触れるのだった。