短編3
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ひんやりとした風が頬を撫でる、この時期の寒さは痛みになる。ピリっとした痛みに顔を顰めれば、隣を歩いていたサンジが心配そうに私の顔を覗き込む。
「……寒い」
繋いだ指先はサンジから与えられる熱でどうにか人らしい体温をしているが、それ以外が寒くて仕方ない。マフラーを口元まで上げても飛び出た半分が寒くて、つい何度も顔を顰めてしまう。デートだというのに不細工な顔ばかりしている自分自身が嫌になってくる、お洒落は我慢だという昔からの教えに従って無理して履いたミニスカートすら憎い。二人の間で揺れる手を自身の方に軽く引っ張り、私は一つ我儘を口にする。
「あっためて」
何でもいいから、とアバウトな注文をする私の横でサンジは自身の顎を触りながら、ンー、と悩ましげな声を出す。この辺りは店も少ないし、上着を貸すにもサンジだってコートを一枚羽織っているだけだ。勿論、それを引っペ返してやろうとも思っていない。
「……嘘、冗談」
困らせたいわけではない、ただ、口から出てしまっただけだ。私の寒いは眠くないのに口から眠いと出てしまうようなものだ。つい、出てしまっただけの一言。なのに、サンジは撤回を申し出た私の手を引き、自身の腕の中にしまう。
「人通りが少なくて良かった」
人がいたら君に殴られちまうから、とケラケラ笑うサンジに私は唇を尖らして抗議する。
「人を暴力女みたいに言わないでちょうだい」
「実際は?」
「アッパーかしら」
「っ、はは、ほらね」
人前で触れ合うのはやはり恥ずかしい、サンジの特大の愛情表現は何処にいようが目立つのだ。良い意味でも悪い意味でも、他人の目に晒されてしまう。
「あったけェ?」
「もっと、ぎゅってしてくれなきゃ分からないわ」
「……ったく、そういう可愛いのどこで習ってくんの?」
「さぁ、どこでしょう」
サンジは抱き締める腕に力を入れて、私の頭に顎を乗せる。わざと体重を掛けるように乗せられたそれが酷く愛おしい。
「おれ以外に試しちゃ駄目だよ」
「試したら?」
「君を隠しちまうかも」
こんな風に、そう言ってサンジは私をコートの中に隠す。キャーとわざとらしい悲鳴を上げれば、頭上から笑い声が聞こえてくる。
「それじゃ逆効果だよ、レディ。喜んでるって勘違いしちまう」
正解だと言ってあげたい、あなたに神隠しのように隠されて二人の世界に行くのならそれはそれで悪くない、と。
「おれは君が思ってるほど聖人じゃねェんだ」
だから、唆さねェで、と耳の近くに落とされた甘い誘いに体中の熱が上がる。誘いに対する期待からか、それとも悪い男の声にだろうか。唆したのはどちらかなんて今更、言うまでもないだろう。