短編3
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別におっさんの前だし気にするこたねェよ、とサンジくんは私の幼い部分を許してくれる。以前は歳の差を気にして出来るだけ大人でいようと立ち振る舞っていたが、その安心感のある背中を前にしたら飛び付きたくなってしまう。それに恋愛に淡白なフリをしても、私がやれば恋愛経験の足りなさを白状するようなものだ。くっつきたい、触れたい、キスをしたい、と歳相応に甘えているぐらいがサンジくんにとってはベストらしいと気付いてからは遠慮なく甘えさせてもらっている。今だって欠伸をしながらボーッとベッドに座っているサンジくんの背中に忍び寄って、腕を広げて飛び込んだ。だが、あと数センチという距離でサンジくんは体を反転させて私を前から受け止める。
「なぁに、可愛いことしてんの」
「あちゃー、バレちゃった」
バレバレ、そう言ってサンジくんは私の鼻の頭にキスをする。まだ、目覚めの一本は吸っていないのか、煙草の香りは普段よりも薄い。珍しいね、煙草、と人差し指と中指で煙草を挟む仕草をすれば、サンジくんは納得したようにあぁと短い返事を返してくる。
「今朝は先に甘ェのを貰っちまったからさ」
「甘いの?」
「これ」
私の唇をツンと指の先で突いて、すっげェ甘ェ寝言を溢すから唇ごと奪っちまった、と悪戯な笑みを浮かべるサンジくん。だが、私からしたらキスより甘い寝言の方に気を取られてしまう。
「夢に見るぐれェおれのこと好き?」
結われていないウェーブ掛かったブロンドがカーテンのように下りてくる。そして、ブロンドのカーテンの中で私は秘密を打ち明けるように好きの一言を囁く。
「……あー、かわい」
こっから出したくねェ、とサンジくんは私を髪の中に隠す。頬をなぞる毛先が擽ったくて身を攀じる私。
「こーら、逃げねェの」
「ふふ、だって、擽ったい」
髪を耳に掛けたサンジくんは私を抱き寄せると膝に私を乗せる。そして、スマートフォンから無慈悲に流れる二つのアラームに大人げない舌打ちを一つ溢す。用意したくない、と顔に書いてあるサンジくんの腕からするりと器用に抜け出した私はベッドから冷たい床に足を下ろし、こちらに伸びてくるサンジくんの腕を引く。
「ビシッとキメたサンジくんが見たいなぁ」
狙ったような上目遣いでそう伝えれば、腕を引かれながら立ち上がるサンジくん。
「……おれの扱いが上手くなったね、レディ」
「いつまでも子供だと思ってた?」
「おれは出来た大人だから子供には手を出さねェよ」
こんな事したら犯罪になっちまう、とサンジくんはキャミソールから覗く無防備な私の肩に痕を付ける。
「あ、また!」
その顔を押し退けようと反対側の腕を伸ばす私。だが、サンジくんはするりと腕を避けるとそのまま先に洗面所に向かう。
「さぁて、今日も君の素敵なサンジくんになりましょうかね」
後ろ手をひらりと振るサンジくんの背中に飛び付き、その大きな背中に顔を埋める。
「……もう、十分じゃない」
くぐもった私の告白はきっと、サンジくんには聞こえているのだろう。返事の代わりに心地の良い笑い声が前から返ってきた。