短編3
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ぷくっと膨れたまろい頬にサンジは自身の指を押し付ける。そして、ぷしゅうと空気が抜けた彼女のほっそりとした輪郭を撫でながら、彼女の不機嫌とも取れる態度の理由を尋ねる。
「ご機嫌斜めな理由を聞いても?」
「……」
「おれには言いたくねェ?」
なら、ナミさんやロビンちゃんを呼んでこようか、そう言ってサンジは椅子から立ち上がり、女部屋に向かおうとする。同性である二人になら話せる事もあるだろうというサンジの気遣いは今の彼女にとっては逆効果だった。サンジのシャツの裾を後ろに引くと、また頬を膨らましてサンジを見上げる彼女。
「そういうところよ」
「えっと、どういう事かな?」
サンジは彼女の不機嫌な理由に辿り着けないまま、彼女の隣に座り直す。
「……私以外を夢中にするあなたが嫌い」
彼女の嫌いの一言にサンジの繊細な心にヒビが入る。だが、彼女の言葉を咀嚼していけば、辿り着くのは嫉妬だ。嫌いの裏に隠れた好意が顔を出す。
「なァ、それって都合がいいように受け取っていいやつかい?」
「次はどんなお嬢さんがあなたに夢中になるのかしらね」
サンジはニヤけそうになる口元をキュっと引き締めると彼女の頬に両手を添える。
「頬を膨らました顔がとびきりキュートなお嬢さんかな」
「……それよりも可愛らしい子が現れたら?」
「おれには大事なレディがいるからなァ」
「人の心は揺らぐものよ」
サンジは人よりも揺らぎやすい事を自覚している。島に下りれば、美人に目を奪われてしまう事もある。それにエッチな本を買う事だってやめられない。だが、この腕で抱きたいと思う女性はこの世でたった一人だ。嫉妬という面倒臭い感情を向けられても愛しいと受け止めてあげたくなるのは今、目の前で膨れている彼女だけだ。
「おれみてェな奴は本命に出会うと身も心も変えられちまうもんなんだよ」
もう、君は知ってると思うけど、そう言ってサンジは彼女の額に自身の額をコツンと合わせた。
「それにまた君に惚れ直してもらえるチャンスじゃねェかな、って」
「……今だってかっこいい、言わないけど」
くつくつと喉を鳴らして笑うサンジ。彼女のこういう素直ではない所が愛おしくて堪らないと言えば、蔑むようなクールな視線を向けられてしまうかもしれない。
「君が知らないおれ、見たくない?」
「……狡いわ」
「はは、悪ィね。それにさ、君しか知らねェおれの方が今は多いよ」
あの頃と違ェのはそこだけ、そう言ってサンジは彼女の萎んだ頬に口付ける。変わったのは唯一がいるか。そして、サンジを変えたのは間違いなく目の前の彼女だった。