短編3
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好きな人の事なら全て知りたい派のサンジに影響されてしまったのか、いつの間にか私達の間では一つのルーティンが出来ていた。眠る前に今日一日の出来事を報告し合うのだ、どんな些細な事でもいい。それに些細な報告でもサンジは全てにリアクションを返す、普通だったら、へー、そうなんだ、の一言で終わってしまうような会話だってサンジがいれば眠る前に読む絵本のように私の心をワクワクさせる会話に変身させてしまうのだ。
「最近ね、あなたがお弁当を持たせてくれるでしょう?」
「君の事は信用してるけど、君の食生活は信用してねェからね」
「ふふ、酷いわ」
褒められるような食生活は確かにしていない、それもこれもサンジの料理の味を知ってしまったからだ。他の料理では代用出来ない程に胃袋を掴まれてしまった。
「それで弁当がどうしたの?」
嫌いなものは入れてねェ筈だけど、とサンジは一瞬、顔を曇らす。私は急いで首を横に振ると良くない方向に傾きかけたサンジの考えを否定する。
「愛妻弁当かって聞かれたの」
「愛妻弁当?」
「普通は奥さんが作ったお弁当の事をそう言うでしょ?だから、私も逆じゃないかって思って尋ねてみたの。そしたらその人、こう言ったのよ」
愛してる妻に作るんだから間違ってないだろって、そう言って目の前にいるサンジの頬に手を添える。
「……愛、伝わってる?」
「えぇ、勿論」
毎日感謝してると伝えれば、サンジの口から明日の弁当の献立が飛び出て来る。SNSで流れてくる食べ物の写真よりサンジの口から飛び出す言葉の数々の方が飯テロだ。想像しただけで明日の昼食が楽しみになる。
「卵焼きも全部ハート形にするからね♡手紙とかも付けちまおうかな♡」
愛妻弁当と言われたのが嬉しかったのか、サンジはそう言って顔を最大限に緩める。きっと、明日のお弁当は所狭しにハートが散りばめられているのだろう。
「愛情込めて作らせていただきます」
「なぁに、改まって」
「いや、ただ、一方通行じゃねェって嬉しいよな、って」
おれの愛を食べてくれてありがとう、そう言ってサンジは戯れつくように私を腕の中に閉じ込める。サンジの愛は食べ終えてもすぐに新しいおかわりが来る、テーブルの上にはまだまだ沢山の愛が置かれて、私に食べられるのを待っている。私はご馳走様と手を合わせる代わりにサンジの柔らかな唇に自身の唇を合わせた。頭を支えるように回された右手が私の長い髪に指を絡める、マナー違反の薄く開いた瞳が私のリアクションを楽しむように細められ、ゆっくりと唇が離れる。二人の間に流れる甘い雰囲気に私は一つ確信を得る。……あぁ、次は私の愛が食べられる番だ、と。