短編3
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友人に誘われ、飲み会に来てみれば、そこは飲み会の会場ではなく合コンの会場だった。そして、恋人であるサンジが居心地悪そうに端の席に座っていた。周りには可愛らしい女の子が沢山いるのにサンジは騒ぎもせず、帰りたそうな雰囲気すら醸し出している。最初は何でこんな所にいるのよ、と自分自身の現状を棚に上げてサンジに少しの怒りすら湧いていた筈なのにそんな態度を見れば、嫌でも理解出来てしまう。この男も此処に着いてから今回の飲み会の趣旨を知ったのだろう。黙り込んでいるサンジは甘い顔立ちも相俟ってか、女の子の視線を独り占めしている。だが、そのクールぶった表情の裏には私に不義理を働いた事への罪悪感が隠れているのだろう。帰ったら何て伝えよう、何て謝ろう、そんなサンジの考えが透けて見えるようだ。未だ入り口にいる私には気付いていないのか、サンジはひたすらに無表情を貫いている。私は友人にだけサンジの事を耳打ちすると彼女の手に会費を二人分握らせる。これで今日は見逃して、と手を合わせれば彼女はこちらこそ悪い事をしたと会費を返して来ようとするが、私はそれを受け取らずにサンジを指差してこう口にする。
「お金はいいから、あの人持ち帰ってもいい?」
彼女から了承を得た私は部屋には入らずにサンジにメッセージを送る。
『私がお持ち帰りしてあげる』
そんな巫山戯た文章を送り付ければ、サンジはすぐにキョロキョロと辺りを見渡して私を探す。
『中に入ったら帰れなくなっちゃうから入り口の外にいるわね、会費は私の友達に渡してあるから出れるタイミングで出てきて』
私は友人の背中を押すと、ひらりと手を振る。いい人が見つかるといいわね、とその申し訳なさそうな顔に伝えれば彼女の顔に笑みが戻った。
入れ違いでサンジは外に出て来た。今は十二月、雪は降っていないが気温は一桁。そんな中、サンジはコートを腕に引っ掛けたまま、薄手のジャケットだけを羽織ってこちらに近寄って来る。
「ナマエちゃん!すまねェ!」
土下座でもしてしまいそうなサンジの顔を上に上げさせる。
「飲み会って言われたんでしょ?」
私もそうだったの、とサンジの腕の中でクシャクシャになったコートを受け取ると皺を手で伸ばしてサンジに着せる。
「……信じてくれるの?」
「あら、疑って欲しいの?」
「ち、違ェけど……普段のおれを見てたら信用出来ねェだろうなって」
サンジは自分自身の金髪をくしゃりと掻くと、褒められた行動してねェだろうし、と自嘲を浮かべる。確かにサンジの女好きは筋金入りだ、頭の中だって桜が吹雪いて万年ピンク色をしている。エッチな本だってサンジは隠しているつもりだろうが一切隠し切れていない。
「でも、浮気はしないでしょ」
「君がいるのに他の子を味見してェなんて思わねェよ」
「今日、あなたに味見して欲しそうな子が沢山いたわよ」
「……まったく覚えてねェって言ったら笑うかい?」
普段からレディ、レディ言ってる野郎が合コンに来た女の子の顔を一人も覚えてねェなんて笑い話にしかなんねェよな、と苦笑いを浮かべたサンジは私の手を引いて駅の方に歩き出す。
「レディがいる場所から初めて逃げてェと思った」
随分とお利口になってしまったサンジに次の言葉が上手く出て来ない。別にサンジの女好きを今更矯正してやろうなんて思っていない、それにサンジと付き合った時に浮気と本命を分けてくれるなら浮気でも何でも許そうと私自身に誓ったのだ。なのに、サンジは浮気なんてしないし合コンの場であんな表情を浮かべる始末だ。
「……ばか」
「……今回のはおれが悪ィよな、すまねェ」
鈍いサンジは私の八つ当たりの原因に気付く事はない、サンジの半歩後ろを歩く私の口元が緩んでいる事にも気付かずに謝罪を繰り返すサンジが愛おしくて私は繋いだ手を離して、その大きな背中に抱き着いた。今まで言えなかった我儘と共に。
「お金はいいから、あの人持ち帰ってもいい?」
彼女から了承を得た私は部屋には入らずにサンジにメッセージを送る。
『私がお持ち帰りしてあげる』
そんな巫山戯た文章を送り付ければ、サンジはすぐにキョロキョロと辺りを見渡して私を探す。
『中に入ったら帰れなくなっちゃうから入り口の外にいるわね、会費は私の友達に渡してあるから出れるタイミングで出てきて』
私は友人の背中を押すと、ひらりと手を振る。いい人が見つかるといいわね、とその申し訳なさそうな顔に伝えれば彼女の顔に笑みが戻った。
入れ違いでサンジは外に出て来た。今は十二月、雪は降っていないが気温は一桁。そんな中、サンジはコートを腕に引っ掛けたまま、薄手のジャケットだけを羽織ってこちらに近寄って来る。
「ナマエちゃん!すまねェ!」
土下座でもしてしまいそうなサンジの顔を上に上げさせる。
「飲み会って言われたんでしょ?」
私もそうだったの、とサンジの腕の中でクシャクシャになったコートを受け取ると皺を手で伸ばしてサンジに着せる。
「……信じてくれるの?」
「あら、疑って欲しいの?」
「ち、違ェけど……普段のおれを見てたら信用出来ねェだろうなって」
サンジは自分自身の金髪をくしゃりと掻くと、褒められた行動してねェだろうし、と自嘲を浮かべる。確かにサンジの女好きは筋金入りだ、頭の中だって桜が吹雪いて万年ピンク色をしている。エッチな本だってサンジは隠しているつもりだろうが一切隠し切れていない。
「でも、浮気はしないでしょ」
「君がいるのに他の子を味見してェなんて思わねェよ」
「今日、あなたに味見して欲しそうな子が沢山いたわよ」
「……まったく覚えてねェって言ったら笑うかい?」
普段からレディ、レディ言ってる野郎が合コンに来た女の子の顔を一人も覚えてねェなんて笑い話にしかなんねェよな、と苦笑いを浮かべたサンジは私の手を引いて駅の方に歩き出す。
「レディがいる場所から初めて逃げてェと思った」
随分とお利口になってしまったサンジに次の言葉が上手く出て来ない。別にサンジの女好きを今更矯正してやろうなんて思っていない、それにサンジと付き合った時に浮気と本命を分けてくれるなら浮気でも何でも許そうと私自身に誓ったのだ。なのに、サンジは浮気なんてしないし合コンの場であんな表情を浮かべる始末だ。
「……ばか」
「……今回のはおれが悪ィよな、すまねェ」
鈍いサンジは私の八つ当たりの原因に気付く事はない、サンジの半歩後ろを歩く私の口元が緩んでいる事にも気付かずに謝罪を繰り返すサンジが愛おしくて私は繋いだ手を離して、その大きな背中に抱き着いた。今まで言えなかった我儘と共に。