短編3
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飲み会の存在を伝えれば、サンジの顔が途端に渋くなる。そして、腕組みをしたままサンジは私の想像通りの返事を返してくる。
「こんな事、言いたかねェけど……断れねェの、その飲み会」
「行くって言っちゃったもの」
はぁ、とサンジは重い溜息を溢すと私の目の前に小指を差し出す。その行動の意味が分からず、サンジの小指を見つめながら首を傾げる私。
「何個かおれと約束しようか」
「約束?」
「それを守れるっつーなら行ってもいいよ」
未だにサンジの顔には飲み会に参加する事への不満が浮かんでいる。だが、渋々だが納得はしてくれたようだ。私はサンジの小指に自身の小指を巻き付けて大きく頷いて見せる。
「一つ目、寝ちまうほど飲まない」
「二つ目、二十時には解散」
「三つ目、必ず迎えは呼ぶ事。すぐに飛んで行くから」
四つ目、そう言って新たな約束事を口にするサンジにストップを掛ける。あまりにも子供じみた約束事につい、小指を離してしまいそうになる。
「……あのなァ、おれだってこれでも妥協してるんだよ。君があちこちで寝ちまわねェか不安だし、ウトウトしてる君が下衆な輩に食われちまったらおれは相手の野郎をぶっ殺しちまうよ」
「寝ないわ」
「いーや、君は寝るね。梅酒一杯でおねむだよ」
サンジに一言物申してやりたい気持ちはあるが普段の私を思い出して、つい黙り込んでしまう。お酒で記憶を無くしたりはしない。私の場合は無くす程の記憶が無いからだ。気付いた時にはサンジの膝を枕にしているか、見知った寝室で目が覚めるかのどちらかだ。未だに危ない目に合っていないのはサンジのお陰だろう。
「……善処します」
「善処じゃなくて約束して欲しいんだけどなァ」
あー、もう着いて行きてェ、とサンジは自身の金髪をくしゃりと掻きながら咥えた煙草から煙を吐き出す。不機嫌というよりは心配で仕方ないという顔をして私を見下ろすサンジ。
「ちゃんと電話するしお酒もセーブする」
「本当?」
「約束する」
「でも、下心がある男が君に無理矢理……」
クソ、と握り拳を作り、奥歯をギリギリと鳴らすサンジ。その拳に触れて私は一つのネタバラシをする。
「みんな、知ってるの」
「知ってるって何をだい?」
「私の番犬に噛み殺されちゃうって」
「……それっておれ?」
私はくすくすと笑いながら、蹴るだけよね、と呑気に肯定を返す。
「間違ってねェけど……随分、過激な言われようだ」
「美形が怒ると怖いもの」
自己評価が低いサンジは気付いていないが、サンジの整った顔から表情を失くすと随分と迫力がある。私の友人や知り合いに会う時は隙の無い紳士を演じているせいか余計にそう見える。底知れぬ美形が牙を剥いたらどうなるか、と周りが勝手に勘違いしたのか私をそういう目で見る人間はいなくなった。
「褒められてる?」
「とっても」
「君に格好悪ィと思われねェうちに小言は終わりにするよ」
サンジはそう言うと灰皿に短くなった煙草を押し付けて、私の腰に腕を回す。そして、すりすりとマーキングをするように体を擦り寄せた。
「ちゃんとここに帰ってくるんだよ、レディ」