短編3
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サンジは元々、口数が特別多いタイプではない。どちらかと言えば聞き役に回る事が多い。それに聞き上手だ、的確なアドバイスに居心地の良いタイミングで打たれる相槌。気持ちよく会話を展開させられる頭だって持っている。なのに、その話し相手が女性に変わると会話が途端に下手になる。必要以上に口を動かして、ペラペラと称賛を口にして相手の女性を置いてけぼりにする事がある。私やナミやロビン、ある一定時間を過ごした女性相手にはそんな事も無いのだが、初対面の相手の前ではどうしても話し下手になるサンジ。
「女の子と話すのは苦手?」
頬に真っ赤な紅葉を咲かせているサンジは、あー、と気まずげに金髪頭を掻くとチラリと私の方を見る。きっと、情けない姿を見せたと思っているのだろう。
「見てた?」
「ふふ、強烈な一撃だったわね」
「あぁ、ナミさん級だ」
「相当ね」
顔を見合わせて、くすくすと笑う私達は恋人同士だ。先程のサンジだって別にナンパをしていたわけじゃない。ただ、困っている女性を放っておけないサンジのお人好しが発動しただけだ。だが、返ってきたのは礼でも報酬でもない。右頬に残った見事な紅葉と強烈な罵声だ。
「……おれってさ、あんまり柄がいい方じゃねェだろ。ほら、目も三白眼で睨んでるみてェに見えねェ?」
「あんまり意識した事ないかも」
「君がそう感じてねェなら何よりだけどさ、やっぱりタッパもあるし女の子からしたら怖ェじゃん。知らねェ無愛想な男って」
私はサンジに対して怖いと感じた事は無い、それに身長だってあまり差を感じる事は少ない。それはサンジがこうやって屈んでくれたり、目を見て話してくれるからだ。
「だから、いらねェ事とか話し過ぎちまうっつーか……」
「優しいのね」
「失敗してるのに?」
そう言ってサンジは自身の頬を指差して、苦笑いを浮かべる。
「だって、私は毎日サンジの優しさの中で生きてるんだもの」
それを否定されたら悲しいわ、と腫れていない左の頬に唇を寄せれば、私がキスをしやすいように足を折り曲げてくれるサンジ。不格好ではあるが、これだってサンジの優しい気遣いに変わりはない。
「君は優しいサンジくんが好き?」
「なぁに、意地悪な顔して」
「これは君にしか見せねェ顔」
特別だと声を潜めたサンジは私を姫抱きにして、私にしか見せない表情で笑って見せる。だが、私を抱いているその腕は相変わらず優しくて意地悪とは程遠いものだった。