短編3
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シキの能力でそれぞれの場所に散り散りにされた私達。自身の能力は動物系の為、空気中に舞うグリーンの粒子に鼻を見事にやられて匂いで仲間を探す事も出来ずに1人トボトボと彷徨う。皆はちゃんと合流出来ただろうか、シキに捕まったナミは無事だろうか、と頭を悩ませながら凶悪な動物から身を隠していれば、どうにか村らしき場所に着く。余所者だと追い出されては敵わないと私は能力で動物の姿になる。道の端に寄って、スパイのように人目を掻い潜るのはお手の物だ。我が物顔で道を徘徊する巨大電伝虫にバレないように屋根の上に飛び乗る、あの巨大電伝虫の意図は分からないがきっと碌でも無い事に使われているのだろう。村人の姿を見れば一目瞭然だ、誰もが満足に食事すら摂れていないのが伝わる。
「(サンジのお節介心に火がつきそうね)」
屋根を伝って家と家を移動していれば、見覚えのある団体が一纏めになっていた。その中に年上三人の姿は見えないがあの三人なら大丈夫だろうという安心感がある。私は能力を解くと屋根から飛び降りる。
「サンジ、受け止めて」
私の声に即座に反応したサンジはその場でヒョイッと軽くジャンプをすると私を姫抱きにして受け止める。
「怪我は!?体調は!?あの匂いは平気だったかい!?」
怒涛の勢いでサンジの質問責めが始まる。地面に私を下ろすと私の周りを犬のように駆け回り、全身をペタペタと触りながらチェックしてくるサンジ。周りの皆はいつものバカップルかと言わんばかりに無関心を決め込んでくる。
「ふふ、一度には答えられないわ」
そう言ってサンジの頬に手を伸ばせば、サンジはやっと落ち着きを取り戻す。だが、サンジの瞳の中では碧が波打ち、瞳の外で洪水を起こそうとする。
「泣き虫なんだから」
シキに飛ばされた際にサンジは空中で私の手を握っていた。だが、その手は簡単に離れてしまった。その時のサンジはこの世の終わりのような顔をして私の名を叫んでいた。
「だ、だって……っ、おれ、離しちまった」
「でも、探してくれたんでしょ?」
先程から気になっていたサンジの目の下を撫でれば、後ろからウソップの声が飛んでくる。
「そいつ、寝ないでずっとお前のこと探してたぞ」
「……ったく、余計なこと言うなよ」
バツの悪そうな顔をしたサンジは私の背後にいるウソップに鋭い視線を向ける。涙目になりながらチンピラのような態度を取るサンジが愛おしい。
「ありがとう、サンジ」
「……おれは何もしてねェよ」
私はサンジの手を引き、階段に座り込む。そして、自身の膝をポンポンと叩く。
「膝枕でもどう?階段を枕にするよりは快適よ」
未だにロビンが見つかっていない事が気掛かりなのか、サンジは膝に頭を乗せようとはしない。だが、この顔色ではいざという時に力を発揮出来無いだろう。私はサンジの返事を聞かずにサンジの頭を自身の膝に乗せると金髪の隙間から覗く片目を手の平で覆う。
「拒否権はねェって?」
「ロビンにガッカリされちゃうわよ、色男さん」
「はは、それは困ったね」
サンジは目を覆う私の手を握って、まったく困っていないような声色でそう口にする。
「ナミもサンジくんカッコ悪いって言うかも」
「レディ達からの罵声なら喜んで受け取れる自信があるよ、おれ」
でも、君にはメロメロでいて欲しいから五分だけ寝かせて、とサンジは口元にずらした私の手の平に唇をくっつける。
「目覚めのキスは頼んだよ、レディ」
「任せて」
そう言って私はサンジの額に口付ける。おやすみのキスを合図にサンジは数日ぶりに目を瞑り、直ぐに健やかな寝息を立てる。金髪をゆるりと撫でれば、無意識にサンジの口元が幸せそうに緩む。束の間の休息はここが敵地という事を忘れさせる、穏やかな時間を過ごしながら私は近付いてくる脅威に身震いをする。野生の勘と言えばいいのか、この勘が外れてくれる事を祈りながら馬鹿になってしまった鼻をクンと鳴らした。