短編3
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彼はどんな人と聞かれたら私は真っ先にこう答えるだろう。
「私よりも私を大切にしてくれる人」
私は胸を張ってそう言える自信がある、一週間前から始まった誕生日のカウントダウンはただのカウントダウンでは無かった。日に日に減っていく日数にドキドキするような年齢では無い、歳を重ねるのだって別に嬉しくない。なのに、キッチンで私を迎えるサンジの表情はここ数日やけに幸せそうだ。君が生まれてきてくれて幸せだ、と砂糖菓子のように甘ったるい声を出すサンジを見ていたら馬鹿な勘違いを起こしそうになる。私の生まれてきた理由はあなたと出会う為だったのかもしれない、と夢見がちな思考に脳をジャックされてしまいそうになる。
「あと一日だね」
去年祝えなかった分だと言って渡される大小様々な箱。砂糖菓子のような言葉と額に降ってくるキスを想像していた私は瞬きを数回繰り返すとサンジの顔と様々な大きさをした箱を交互に見つめる。
「クリスマスには一ヶ月以上早いわよ」
「残念、これは誕生日プレゼント」
サンジは自身の顔の横で箱を一つ、一つ振っていくとサプライズが成功した事が嬉しいのか、くしゃりとした笑みを浮かべながらこう言った。
「ほら、爆弾の音なんてしねェからさ。安心して開けてごらん」
サンジの手から箱を受け取り、上品なリボンでおめかしした箱からリボンを丁寧に引き抜き、箱をゆっくりと開ける。
「わぁ……」
箱の中から品のいい落ち着いたワンピースが顔を出す。いつから用意していたのか、値段は?と聞きたい事は山程あったが一緒に箱の中身を覗いているサンジの表情を見たら野暮な質問をする気にはならなかった。
「レディ、素敵なドレスだね」
「……選んでくれた人が素敵なの」
器用にウィンクをするサンジに私は潤んだ瞳を向ける、サンジはクスッと笑みを溢すと私の目尻に浮かんだ涙の粒を指で拭う。
「まだ泣くのは早ェよ」
サンジは私を抱えるようにソファに座り込むと私に箱の中身がしっかりと見えるように開封していく。開いた箱の中にはワンピースにハイヒール、コートにアクセサリー、全身のコーディネートが組めるアイテムが次々と出てくる。プレゼントの開封が終わるとサンジは床に転がっていた白いリボンを手に取って自身の頭に結ぶ。綺麗な蝶々結びが金髪頭のテッペンを飾り、まるでプレゼントのようだ。
「そして、最後におれ」
着飾った君をエスコートさせて、とサンジは私に片手を差し出す。去年した口約束をサンジは未だに覚えていた。
「……白にして正解ね」
「ぐるぐる巻きじゃねェけど許してくれる?」
「ふふ、今更そんな意地悪言わないわ」
プレゼントに囲まれながら、サンジの手を取る私はきっとサンジと同じように幸せな笑みを浮かべているのだろう。今なら素直に本音を口に出せる気がした。
「サンジと出会う為に生まれてきたのかも」
夢見がちで笑えてしまうような私の本音を聞いたサンジはキーンと鼓膜に響くような大きな声でこう口にするのだった。おれは君を愛する為に生まれてきた、と。