短編3
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キッチンの椅子に座り込むサンジはポッキーの日だからとウソップに押し付けられた苺味のポッキーを煙草の代わりに咥えている。特別、甘い物が好きなわけじゃないが久々に食べるせいか、やけに美味く感じる。小気味いいポリポリという音を立てて、胃の中に消えていくポッキー。手に握られた小袋には数える程しかもう入っていない、サンジはまた一本、口に咥える。そのタイミングでキッチンに入ってきた彼女は目敏くポッキーを見つけてサンジを指差す。色気より食い気を優先する彼女らしくてサンジの口元はつい緩んでしまう、彼女はそんなサンジの様子に気付いていないのか小走りでサンジに近付く。
「私にも頂戴!」
餌を求めて、キャンキャンと自身の周りを駆け回る様子が犬のようだ。食べたい、食べたいと言わんばかりに可愛らしい顔でサンジの手の中の小袋を見つめる彼女。サンジはニヤリと意地の悪い顔をして小袋を背に隠す。
「だーめ、やらねェよ」
好きな子ほどいじめたくなるのは本当らしい、子供のような意地悪に彼女がどんな顔をするのか少しだけ気になってしまったのだ。むくれるか、情けなく眉を下げるか、脳内に浮かんだ何通りかの表情にサンジはつい笑ってしまう。だが、想像を超えてくるのが彼女だ。気付いた時には顎に手を添えられて口に咥えていたポッキーはポキッと音を立てて彼女に半分以上奪われていた。
「キスされると思った?」
視界を埋めた彼女の顔に期待してしまったのは仕方ない事だろう。サンジは自身の顔に掛かる彼女の長い髪に隠れ、情けない面を晒す。
「意地悪する人にはしてあげません」
べーっと舌を出す彼女の手を自身の方に引き寄せて、サンジはその唇を無理矢理奪う。
「やられっぱなしは性に合わねェの、ご馳走さん」
「なっ……!もう!」
先程のお返しだと言わんばかりにサンジはべーっと舌を出し、彼女の振りかぶる手を器用に避けながらサンジは満足げにポッキーを齧った。レディより甘ェもんはねェよ、と囁いた言葉はポッキーの小気味いい音にかき消されるのだった。