短編3
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私の黄色い声援はテレビ画面に映る推しに向けられている。サービス精神旺盛な推しはシャツをペラリと捲って、彫刻のように美しい体をファンの子に晒している。着痩せする質なのか、シャツに隠れている体は成長途中の青年のように儚げに見えるのに実際は綺麗なシックスパックだなんてギャップにも程がある。はぁ、と悩ましげな溜息を吐けば、隣から被せるような舌打ちが飛んでくる。
「嫌なら見なくていいのに」
「おれと君の時間なの!コイツがこんな時間に割り込んで来るから、お、おれは……!」
「ただの歌番組じゃない」
私との時間を邪魔するイコール敵、野郎イコール敵という過激な考え方をしているサンジはテレビ画面に映る私の推しをこれでもかと睨みつけている。視界の端で揺れる金髪を軽く叩けば、サンジは叩かれた頭を押さえながら私を見上げる。
「……おれだってファンサぐらい出来るもん」
サンジがファンサねぇ、と揶揄するように口元に意地の悪い笑みを浮かべる私にサンジは少しだけムッとした顔をする。推しの出番は終わったしサンジのアイドルごっこに付き合うのも悪くないかも、と呑気に考えていた私の前にハートが現れる。サンジの長い指が綺麗なハート型を作り、その中からサンジの鮮やかな碧がこちらを覗く。視線が重なれば、甘い笑みを浮かべたまま宙にハートを描き、フーッとこちらにハートを飛ばしてくるサンジ。
「ね、出来るでしょ?」
少しだけ得意げになって首を傾げるサンジは芸を褒めてもらいたい犬のようだ、見えない尻尾が落ち着き無く揺れている。私はサンジの金髪を両手でわしゃわしゃと撫でながら、頭を抱え込むようにしてサンジを抱き締める。
「……ナマエちゃん?」
「あー、悔しいぐらいに可愛い」
サンジがアイドルだったら同担拒否になってたかも、と口にすれば下から擽ったそうな笑い声が聞こえてくる。
「君だけのサンジくんで安心した?」
問い掛けに素直に頷けば、サンジは垂れた目元を更に垂れさせて私の背中に腕を回してくる。
「ファンサ過多じゃない?」
「っ、くく、違ェよ。これは恋人限定」
君はファンじゃなくておれだけのレディだよ、とアイドルソングのワンフレーズのような台詞を普通の顔をして言えるサンジはアイドルでもおかしくはない。
「……それにおれは安売りしねェ質だから安心していいよ」
着ているワイシャツの裾をぺらりと捲って鍛え抜かれた体を晒すサンジ。筋肉を付け過ぎると女の子に嫌がられると微調整を繰り返した体は靭やかな筋肉が付き、コックにしておくには勿体無い程に整っている。サンジは自身の筋肉の筋を指で撫でると臍の横に付いた痕をトントンと指で指す。こんなのが見つかったらスキャンダルになっちまうから、と白肌に散る花弁を見せ付けてくるサンジは意地の悪い顔をして私に視線を寄越すのだった。