短編3
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手が小さい=女の子らしいというのは偏見だ。女の子というよりも幼い子供のようなムチムチとした手は出来る事ならポケットに一生封印しておきたい。少しでもマシに見えるように伸ばした爪は少しの衝撃でパキッと折れてしまった、不揃いの爪はコンプレックスを際立たせ、余計に自身の手を嫌いにさせる。
「ナマエちゃん?」
折れた爪に合わせて長さを整えていれば、後ろからサンジに声を掛けられる。サンジは私の横に来ると短くなった私の爪を指先で撫でて、またオーバーなリアクションをする。
「花弁みてェだ」
そう言って胸を押さえて私の爪の小ささを花弁に例えるサンジ、花弁なんて過剰評価にも程がある。
「そんなに綺麗なものじゃないわよ」
サンジの美しい手が羨ましい、整えられた清潔な指先もスラリとした指も私とは真逆だ。あなたの方が綺麗だわ、とサンジの手の甲を指先で撫でれば、サンジは苦笑を浮かべる。
「つまんねェ野郎の手だよ」
こちらに向けられたサンジの手が私の手を包み込む、関節の数が一つ違っていてもおかしくない程にサイズの違った二人の手。これならコンプレックスが見えなくて済む。出来る事ならポケットではなくサンジの大きな手の中に封印しておきたい。サンジは私が一番コンプレックスを見せたくない相手であり、私のコンプレックスを忘れさせてくれる相手でもある。
「……ずっと、繋いでて」
「君にしては珍しいね」
「コンプレックスを見なくて済むもの」
子供みたいだから恥ずかしいの、と手をひらりと揺らせば、サンジは私の手首に唇を寄せる。
「なぁに、コンプレックスごと愛してくれるの?」
「頭のテッペンから指の先まで愛してるけど?」
当たり前だとでも言うようにサンジは平然とした様子で答える。
「レディらしい手だ」
サンジの長い指先が私の指に絡まる。そして、先程の私の発言をなぞるようにサンジはこう口にした。
「っ、くく、それにさ、子供みてェな君の手に触られて興奮してるおれはクソガキ以下かな?」
夜のおれを思い出してみて、と耳元で囁かれたサンジの声は子供とは呼べない程に成熟した男の色気を纏っていた。