短編3
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サンジの女好きに物申したいと思った事は無い、一種の病気とすら思っている。それに私達は付き合ってない、サンジは薄っぺらい愛の言葉で私を唆そうとしているがそんな軽い愛に靡く馬鹿な女でも無い。なのに、私はふらりと別の女の尻を追い掛けようとするサンジの手を掴んで不機嫌な顔を丸出しにしている。己の不機嫌の原因は思い当たらない、ただ、サンジの意識が向く先に私以外の女がいる事に無性に腹が立った。突然、腕を掴まれたサンジは女に向けていた意識をこちらに向ける。
「ナマエちゃん?」
どうしたの、と視線を合わせるようにサンジは膝を軽く折って不機嫌な私の顔を覗きあ込む。元々、愛想の無い私が不機嫌になっていたって大した問題は無いのにサンジの顔には大事だと言わんばかりに不安そうな表情が浮かんでいる。
「……分からないの、ただ」
「ただ?」
「サンジが余所見するのが嫌だったの」
先日の宅飲みから私はおかしい、おかしいというよりも己の感情が時々絡まった糸のように分からなくなる。
『君に会いてェからだよ』
『難しい理由も君より優先してェ人間もいねェ』
ただ、好きな人に会いに来てんの、と酒臭い息を吐き出しながら私の腕を握ったまま寝たサンジの置土産は私の心に居座ったまま、中々消えてはくれなかった。
「……余所見するのが嫌だったの?」
その問いに小さく頷けば、サンジは私の心臓の位置を指差して、その感情の名前を知ってるかい?とまた新たな問いを投げてくる。だが、私が口を開く前にサンジの口から目を逸らしたい感情の名が口にされる。
「嫉妬、って言うんだよ」
「……何で私が嫉妬するのよ」
「何でおれが他の子を見たら君は嫌なの?」
サンジの中では答えが決まっているのだろう。先程とは打って変わって余裕さえあるサンジの表情が憎らしい。
「アルコールのせいよ」
「残念、今の君は素面だよ」
「……こないだのを引き摺ってるのよ」
あの日の言葉に触れてこないサンジはきっと酒と一緒に記憶まで流してしまったのだろう。好きだの会いたいだの薄っぺらいサンジの愛の言葉は私だけが知っている。
「今日もだよ」
「?」
「好きな人に会いに来てんの、おれ」
さっきだって目移りなんかしてねェよ、君が意識してくれてんのが嬉しくてさ、落ち着かねェの、そう言ってサンジは私の顎を指で掬って持ち上げる。
「まだまだ先でいいって言ったけどさ、本当は今すぐ君に届けてェよ。愛してるよりデッケェ愛ってやつをさ」
「……デッケェ愛?」
「君からしたら薄っぺらいかもしんねェけど……」
おれは君がいいとサンジは私の背中に腕を回して、また私にだけ効果覿面の薄っぺらい言葉を寄越してくるのだった。