短編3
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朝は特に冷え込む事もあり、日に日に彼女の稼働時間は遅くなっている。同室のナミやロビンも彼女の寝汚さに匙を投げたのか起こす事を諦めた。そして、特別ルールとして女部屋を一時的にサンジ限定で解放するのだ。普段だったら女部屋に一番入室させてはいけない男だが、彼女の恋人として面倒事は全て請け負ってくれと言わんばかりにナミはサンジに彼女を起こす仕事を与えた。サンジは面倒がるどころか光栄だと言って毎朝、花やハートを飛ばしながらプリンセスをキスで目覚めさせるプリンスのような顔をして女部屋に入って行く。
「ナマエちゃん、朝飯冷めちまうよ」
ベッドの脇にしゃがみこんで彼女の体を揺するサンジ。だが、その手は起こすというよりも彼女の眠気を促進させてしまうような優しさがあった。規則正しい寝息を立てながら分厚い毛布の中に頭ごと潜ってしまう彼女。そんな彼女の寝汚さに顔を顰めるどころか、可愛いなぁ、と目尻を下げてしまうサンジには正直この仕事は向いていない。
彼女の美しい顔を隠す毛布を少しだけ捲って、その閉じられた瞼にキスをする。ぴくりと震えた彼女にニヤリと笑ったサンジは彼女の長い髪を指で退かして耳に掛ける。そして、自身が履いていた革靴を脱いで床に転がすと彼女のベッドの上に上がって彼女の耳に自身の口元を近付ける。
「起きないとちゅーしちゃうよ?いいの?」
本当にしちまうからね、とセクシーな掠れた声が彼女の耳に届くがまだ彼女の瞳は閉じられたままだ。サンジは彼女の唇に自身の唇を重ねて、ちゅっ、と音を立てて唇を離す。静かな女部屋にやけに響いたリップ音は爽やかな朝にはどうも向いていない。
「起きない君が悪ィんだよ、レディ」
彼女は寝返りを打つフリをし、枕に顔を埋める。実は今日の彼女は珍しくサンジの第一声で起きていたのだ。だが、普段サンジがどうやって寝汚い自身を起こしているのか眠気で記憶があやふやな彼女は分かっていなかった。だから、今日はそれを知れる良い機会かもしれないと寝たフリを続けていたのだ。
「眠り姫の正体が寝たフリが上手なレディだったとは驚いたよ。それとも、おれのキスが効いたのかな?」
そう言ってサンジは未だに寝たフリを継続している彼女に覆い被さって、もう一度その唇にキスをした。彼女が赤く染まった顔で朝食にありつけたのは随分と時間が経ってからだった、目の前には優雅な顔で朝食を食べるサンジ。その余裕そうな表情が悔しくて彼女はテーブルの下でサンジの長い足を蹴り飛ばすのだった。