短編3
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私は手元の雑誌をペラペラと捲りながら女性誌の定番である恋愛特集に視線を向ける。見出しには結婚相手の選び方と書いてあるが鵜呑みにするほど恋愛初心者なわけでもない。今だって恋人からの構ってアピールを受けながらソファでのんびりと雑誌を読んでいた。
「サンジってどこまで許せる?」
構ってもらえると思ったのか、サンジは無い尻尾を振りながら私の肩に頭を乗せて手元の雑誌を覗き込む。そして、私が指差したページに書いてある文章を声に出して読む。
「結婚相手はどれだけ許せるかで選ぶ事」
サンジの場合、アウトとセーフの判断があやふやだ。女の行動に不満を訴えたり、許せないと嘆いている姿なんて一度も見た事がない。自他共に認める女への甘さが随所に滲み出ている。
「私が浮気したらどうする?許す?」
こんなサンジの地雷を踏み抜くような質問をして泣かれたらどうしようかと要らぬ心配をしていれば、私の想像を裏切るような落ち着いた声でサンジはこう口にした。
「許す許さねェの前におれはおれ自身を許せねェかも」
「どういう意味?」
「だって、満たされてたら次の相手なんて探さねェもん。そうなったら、おれが君を退屈にさせちまったんだろうな」
こてんと肩に乗っかるサンジの頭、素肌を撫でる金髪が擽ったい。
「ただの火遊びだったら?」
「それでも、最後に帰ってくる場所がおれならきっと許すよ」
「……サンジと結婚したら駄目な気がしてきた」
「全肯定して全てを許してあげるのに」
だからよ、と私はその金髪をぺちりと控えめな力で叩いた。そうすれば、サンジはその手に金髪を擦り寄せて人懐っこい犬のように戯れてくる。
「それに火遊びは一瞬だろ」
「燃え上がっちゃうかも」
「なら、おれと燃え上がろうよ」
許すとは言ったけど妬かねェとは言ってねェよ、とサンジは甘えるように私の腰に腕を回す。それを突き放そうにもサンジの腕は私を縛る錠のように離れない。
「……あー、やっぱ想像なんかするもんじゃねェ」
金髪を左右に振って、想像豊かな脳内からそれを追い出そうとするサンジ。どんな想像をしたのかは分からないが今の話の流れを考えれば、碌な想像では無さそうだ。
「しないわよ、浮気なんか」
予定もないし、と少しだけ乱れてしまった金髪を指で梳くように撫でる。元々、あまり恋愛脳というわけでもない。恋愛をしていなくても一人で生きていける自信がある、それに結婚という二文字はサンジと付き合うまでは意識した事が無かった。
「こんな面倒臭いこと、サンジとしか出来ないわよ」
随分な言い様だ、と我ながら呆れてしまうがサンジとだったらこの恋愛という駆け引きも悪くないと思える。その時点で私はこの男の全てを許しているのだろう、このテリトリーに入れた時点で結果は決まっていた。