短編3
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一昨日より昨日、昨日よりも今日と日に日に寒くなっている気がする。だが、温度計では誤差程度にしか変わらない。身体が強張るような寒さに苛ついたところで暖かくなるわけではない。ここで苛立ちを爆発させたって怒り損になるだけだ。年始が過ぎ、人間達は通常の生活に戻って来た。街を歩けば、重い足取りの学生や社会人をよく見る。そんな人の波を一人忙しなく歩く私は一分一秒でも早く待ち合わせ場所に着かなくてはいけない。腕時計が示す針の位置は約束の時間から三十分程オーバーしている。寒さを理由にグダグダと用意を先延ばしにしていた一時間前の自分自身に溜息が溢れる。メッセージアプリに届いたサンジからの怒涛のメッセージ、私への心配に溢れているメッセージの数々に様々な意味で涙が出そうになる。申し訳なさ、情けなさ、サンジの優しさにだ。そのメッセージに嘘偽りなく返信を返す。
『ごめんなさい、寒さに勝てませんでした』
ベッドの絵文字を最後に付ければ、サンジからの返信はすぐに返ってきた。
『今日寒ィもんね。それなら、おれがそっちに行こうか?』
サンジからの有り難い申し出を丁寧に断り、急いで自宅を飛び出した。続けて届いた「気を付けておいで」という優しい一言が私の冷え切った体を優しく包み込むようだった。
待ち合わせ場所に着けば、合流は早かった。サンジが分かりやすい場所に立っていてくれたのもあるが、サンジの私を見つける速度が只々凄いのだ。私を視界に入れた途端に輝き出す碧は少女漫画のベタな演出のようで笑える。目付きの悪い三白眼がくりくりとまんまるになり、そして、視線が重なれば、その顔は恋をしている顔になる。きっと、これは思い違いなどではない。
「本当にごめんなさい」
だからと言って、サンジの好意に甘えるわけにはいかない。色恋と礼儀は別物だ、親しき仲にも礼儀ありという言葉があるように親しい相手こそ大切にしなければいけない。
「気にしなくていいのに。それに待ってる時間も悪くなかったよ」
そう口にするサンジの鼻の頭や頬は赤くなっている。その白肌を染める赤が長い時間サンジがここで待っていた事を証明する。
「もしかして、時間より先に来てた?」
「あー……それは、ただ、おれが君に早く会いたかっただけで」
君に落ち度なんてねェよ、とサンジは私の手をぎゅっと握り、自身のコートのポケットに入れる。
「君だって手袋を忘れちまうぐれェ慌てて来てくれたんだろ?」
「……あ、本当だ」
「はは、おれはそれで十分だよ。それにさ、デートなんだから謝りっぱなしなんてつまんねェだろ」
だから、もう、この話はここでおしまい、そう言ってサンジは場面を切り替えるようにまた表情を変える。そして、慣れ親しんだ街をエスコートするように私の手を引いた。