短編2
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床に敷かれたバスタオルの上には私一人分の足が入れられるような盥が置かれている、その中には足首程の高さのお湯が張られている。サンジに足を誘導させられて私はそのお湯の中に足を浸す、適温のお湯が冷えた体をゆっくりと温めていく。サンジはポケットの中から小瓶を取り出すと蓋を開けて、湯気を立てているお湯の中にトントンと小瓶の中身を降って雫を数滴落としていく。途端に湯気ごと立ち上がる、ふわりと落ち着く香り。
「ラベンダーのアロマオイルを入れたんだ」
「アロマオイル?」
「痛みが和らげばいいと思って」
それにリラックス効果もあるから今の君にはピッタリだよ、そう言ってサンジは椅子に座っている私の膝に薄手のブランケットを掛けてくれる。
「それでこっちはセージ。痛み止めにもいいんだってさ」
二つのオイルが溶けて部屋の中に香りが広がる、いつの間にそんな知識を手に入れたのだろうか。前回だって痛みを訴える私の体を優しく抱いて情緒不安定な私の心を沢山支えてくれたサンジ。面倒でごめんなさい、と謝る私の額を手加減した指先で弾いたサンジはこう口にした。女の子は偉大だ、と。その時のサンジの言葉は女性に対してのリスペクトというよりも、もっと深くて切実な意味を含んでいたように思える。
サンジは私を抱えるように座り込むと鈍い痛みを繰り返している腹に手を置く。ブランケットの上から熱を送り込むようにゆっくりと手を動かすサンジ。
「……全部は理解出来なくて辛ェけどさ、例えばこの痛みとかね」
「うん」
「でも、知ろうとする事は出来るよ。アロマオイルのフットバスは痛みを和らげて気持ちをリラックスさせるとかさ、分からねェなりに調べる事はおれにでも出来る」
それがちょっとだけ嬉しい、とサンジは言う。お湯の中であたためられた足からじわじわと熱がのぼって、気だるさが抜けていくような気がした。アロマオイルの効果か、それとも自身を包む優しさのお陰か、私はサンジの胸板に体を預けて幸せな溜息をついた。
「愛だね」
「特大のね」
「手当てだね」
言葉の意味を尋ねてくるサンジに私は「手当て」という言葉の本来の意味をゆっくりと語る。
「あれってね、手を当てると痛みが和らぐから手当てって言うんだって」
「君は博識だ」
「ふふ、褒めたって何も出ないよ」
サンジの手だって痛みを和らげる効果がある、アロマオイルのフットバスだって確かに効果があったが月のものが来る度に自身に手を当てて撫でてくれるサンジの手は私にとって一番の手当てだった。
「サンジってすごいね」
「っ、くく、おれも褒めたって何も出ないよ?」
「それは嘘」
次から次へと手品のように愛情が飛び出してくる、と笑う私の肩に顎を乗せてサンジは私の手を優しく握る。
「愛情ならいくらでも」