短編2
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日が落ちるのが遅くなったといってもサービス残業までこなせば辺りは既に暗くなっている。暗闇が空を覆い尽くし、三日月がアクセントになり私の帰り道を照らしてくれる。行き交う人々は皆、似たような疲れ顔を引き摺って帰路を足早に歩いて行く。もう夜空を眺めて三日月を楽しむ力は残っていないのだろう、私は心の中でお疲れ様ですと労りの言葉を呟くと自身も帰路を急ぐ。
薄ぼんやりした切れ掛けた街灯の下に見慣れた影が現れる、ガードレールに腰掛けスマートフォンを触るサンジの姿があった。サンジは私の存在に気付くと片手を上げて、こちらに近寄ってくる。
「今日もお疲れ様」
頑張ってる君に差し入れ、そう言ってサンジは片手に握られていたコンビニ袋を掲げる。礼をしながらコンビニ袋の中身を覗けば、中にはチューハイの缶が数本と二つセットのアイスが入っている。こないだSNSを見ながら食べたいと漏らした独り言はしっかりとサンジの耳に入っていたらしい。
「今日もよく頑張りました、えらい」
この年齢になると褒められる事も減り、こういった純粋な褒め言葉が一番滲みたりするようになる。水滴が付いた冷たいアイスの袋が自身の頬についた。
「ふふ、冷たいわ」
「最近あちーしさ、はんぶんこ」
慣れた手付きでサンジはアイスを半分にすると片方を私に渡す。そして、コンビニ袋と自身のアイスを左手に持つと空いた手で私の手をぎゅっと握る。
「家帰ったらさ、風呂して一杯ってのも悪くねェと思いませんか?ナマエさん」
「それは名案ですね、サンジさん」
視線を合わせて二人はくすりと笑う。そして、月夜に照らされた道をゆったりと歩く。先程の気怠さはサンジの優しさと口に広がるカフェオレの甘さが何処かに連れて行ってしまったようだ。