短編2
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酒を飲んでもサンジの記憶はしっかりと残っていた、自身が夢だと思って告白した事もその発言内容も一字一句その頭に残っているようだ。絶句したような顔をしてサンジは甲板に頭を擦り付けて謝罪を繰り返す。
「好きになってもいいよ」
夢から醒めるのが遅いと怒鳴るのはまた今度でいい、今はこの深く下げられた金髪頭がふわりと風に揺れて、その隙間から覗く碧眼が嬉しそうに垂れるのが見たい。そして、その口から直接教えて欲しいのだ。私のどこを好きになったのか、いつもこんな夢を見ているのか、あとは現実でも私を好いているのかどうか、聞きたい事は沢山ある。
「特別にしてくれるなら」
こちらを見上げるサンジの額は甲板に押し付けていたせいか赤くなっている、告白シーンにしては少しだけ締まらないがそれもサンジらしくて笑える。なのに、こちらを見る碧だけは熱の篭った色をしている。以前、サンジが青い炎が一番温度が高いと教えてくれた事がある。その、瞳に浮かぶ碧もそうなのだろうか。
「これって、まだ夢かな?」
「私は夢じゃなかったら嬉しいけど」
「おれも」
甲板に座り込んだままのサンジはそう言って私の腕を引く。バランスを崩した体はサンジという柔らかくないクッションによって受け止められた。寝そべったサンジの上に重なるように私はサンジに抱き締められている。耳に届くサンジの狂った心臓の音はサンジの心情を表すかのように早い。
「おれさ、君のこと特別扱いしねェようにしてたんだ」
「うん」
「……さっきも言ったけどさ、いい顔されねェだろうなって」
今の私はどんな顔をしているのだろうか、自分自身の事になると途端に鈍くなる。自身の頬を触ってみたり、口元を落ち着き無く動かしてもどんな表情をしているのか分からない。サンジから顔を隠すようにその分厚い胸板に顔を埋めれば、頭上からサンジの声が飛んできた。
「っ、なのに、君はこんなにも無防備だ」
下心丸出しのおれを突き放すどころがこうやって自分からやってきちまう、とサンジは私の髪に指を通しながら話を続ける。
「もう、我慢はいらねェって事かい?レディ」
「……気付くのが遅い」
「君が特別で唯一だから慎重になるんだよ」
普段のメロリンのような過剰な愛情表現ではないサンジの穏やかで時に熱烈な愛情表現。気付いた時にはもう、私はその碧に夢を見ていた。