短編2
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
男ははじめてに弱いらしい、初キス、初エッチ、初恋、彼女のはじめては全部自分が奪いたいものらしい、らしいというのも私はサンジがそう言っているのを聞いただけで全ての男性に当てはまるとは思っていないからだ。この世には初心者を笑う者だっている、はじめてを捧げたって面倒臭いと受取拒否に合う事だってある。きっと、サンジみたいに喜んでくれる男性なんて一握りだ。
「世の野郎達の事なんてこれっぽっちも興味ねェけどさ、そういう奴はロクでもねェからカウントに入れなくていいよ」
「バッサリね」
「だって、野郎だし?」
肩を竦めて、サンジはそう言った。サンジが男性に厳しいのだって今に始まった事では無いし特に驚きも無い。それもそうね、と私も軽い返事だけを返し、サンジの言うはじめてについて考えてみる。
「君のはじめては尽く知らねェ野郎に取られちまったなァ……」
しょんぼりとした様子で私の髪に指を通すサンジ、残念ながら初恋は幼い頃に済ませているし初キスも初エッチも記憶の何処かで呆気なく散らしてしまった。もっと大事にしてこの人に貰ってもらうんだったと思う程にはサンジを大事に思っているが差し出してしまったものはもう二度と戻っては来ない。
「……はじめての後悔はサンジかも」
「エッ、おれと付き合って後悔してるって事かい!?そりゃねェよ、ナマエちゃ〜〜ん」
サンジの瞳から涙が溢れてしまう前にその形の良い額を指で弾く、いてェ、と余計に涙目になってしまったが勘違いした自分を恨むのねと私は理不尽を押し付ける。
「……あなたに全部あげれば良かったと思って」
「へ」
「もっと、はじめてを用意しておくんだった」
そしたらサンジは喜んでくれたでしょう、発した声はらしくもなく憂いが滲んでいた。
「おれ、別に君のはじめてじゃなくてもいいよ」
「……さっきはあんなにガッカリしてたじゃない」
「だって、おれは君の最後になる男だから」
最後なんて滅多に貰えねェだろ、とサンジは屈託の無い笑みを浮かべる。
「キスも?」
「おれだね」
「えっちも?」
「あんな極上、他の野郎に知られてたまるかよ」
脇腹を擽られているわけでもないのに体中がこそばゆくて仕方ない、むずむずと落ち着きの無い気持ちを抱えながら私はサンジに触れる。
「最後の女にしてくれるの?」
「君がイエスと言ってくれるなら」
「そこは海賊らしく奪うじゃないの?」
「おれは理性のある紳士的な海賊だから」
そんな野蛮な真似はしねェよ、とサンジは海賊らしい悪い笑みを浮かべて私の手を引き寄せるのだった。