短編2
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「ったく、何で前日に野郎と飲まなきゃなんねェんだ」
サンジは渋々、男達の輪の中に入っていく。呆れたような表情をしながらもグラスの中身は普段よりも減りが早く、サンジの素直じゃない捻くれた照れ隠しにウソップは苦笑いを浮かべる。
「あっちはあっちで朝まで飲むってナミが言ってたぜ」
「……おれもあっちに参加してェ」
「まぁまぁ、そう言わないで」
それにあちらは男子禁制、特にサンジさんは、って言ってましたよ、とブルックは特徴的な笑い声を上げて主役であるサンジの急所に鋭い一撃をかます。
「ハッ、もしや、マリッジブルーってやつか……っ、ナマエちゃんはそれをナミさん達に相談して、る……?」
「酒も黙って飲めねェのか、アホマユゲ」
「あァ!?」
普段と変わりなくサンジとゾロは額を突き合わせ、お互いに大人げない応酬を繰り返す。仲裁という名の実力行使をして喧嘩を止めるナミはここにはいない、いるのは囃し立てる酔っ払い達だけだ。仲間の結婚に全員どこか浮かれているのだ、他人の結婚に興味が無さそうなゾロですら普段と様子が違う。タダ酒に釣られて飲み会に参加したのかと最初は思っていたがどうやら本心は違うらしい。
おれさ、そう最初に切り出したのはウソップだった。この中では常識人のウソップ、サンジとも仲間でありどこか男兄弟のような関係でもある。
「お前がナマエと結婚するって言った時さ、何か安心しちまったんだよな」
お前って結構無茶やらかすだろ、そう言ってウソップは真横に座っているサンジを見る。その瞳は困った弟を見るような優しい瞳をしていた。
「……あー、ナマエちゃんにも言われた」
「だって、あいつが一番お前を気にしてたもんな」
「サンジくんは勝手に死にそうだから私が見ててあげるってプロポーズされた」
サンジがそう言えば周りで話を聞いていた数人がおかしそうに笑った、その中でもサンジの危うさを一番近くで見た事があるルフィはニシシと歯を出して太陽のような笑みを浮かべ、自身がかぶっていた麦わら帽子をサンジの頭にかぶせる。
「っ、んだよ、いきなり」
「ん!今日だけ特別に貸してやる!」
「はいはい、ありがとよ」
照れ臭さを隠すように麦わら帽子を深くかぶるとサンジは煙草に火をつけ、煙を燻らせる。
「……プロポーズされた時、ちょっとだけ待って欲しいって保留させてもらったんだ」
「自分からしたかったのか?」
「結婚して不幸になるのはいつも女だから」
男は勝手に幸せを決め付けて女を結婚っていう枠に閉じ込める、とサンジは言う。
「おれも無意識の内にそうなったらって思っちまった」
「ハッ、ヘタレが」
「サンジは尻に敷かれる敷物の未来しか見えねェし大丈夫だろ」
一部、失礼な言葉が聞こえた気がしたがサンジは声を荒らげる事はしなかった。
「……うぅ、ナマエちゃんの話したらナマエちゃんに会いたくなってきた」
「発作かよ」
「おれは最初からナマエちゃんに恋の病なんだよ、これは一生治んねェの。うちの優秀なドクターにも治せねェ、おれ限定のビョーキ」
「頭のか?」
んだと、クソマリモ、そう言ってゾロにメンチを切るサンジに各々の想いを抱く。ある者はサンジのアニキとしてある者は弟として、ある者は息子のような気持ちでその幸せに染まった捻くれ者の横顔を見守るのだった。