短編2
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カップルはテーマパークに行くべきじゃない、それはよく聞く話だ。アトラクションの長い待ち時間、お互いの優先する物の違い、そして段々しらけてくる会話。サンジに限って不機嫌になる事は無いだろう、と思っていた部分もあるが実際にテーマパークに来てみて感じた事はもうサンジ以外とは付き合えないという事実だけだった。
「サンジ様」
チュロスを握りながらサンジに手を合わせる私、拝むように顔の前で手を擦り合わせればサンジは喉を鳴らして笑う。急にどうしたんだい、と私の口の端についた砂糖の屑を指で掬い取りペロリと舐める姿がやけに様になる。
「ここって待ち時間とか長いじゃない?」
「あぁ、そうだね。さっきのやつは九十分待ちとかだったよね」
「でも、サンジは嫌な顔しないじゃない」
私が乗りたいと口にすれば二十分だろうが九十分だろうがサンジは嫌な顔一つせず並んでくれる、会話だって不自然に途切れる事は無いし、しらけて気まずい思いをする事も無い。
「九十分間、楽しそうな君を独り占め出来るのに何で嫌な顔をしなくちゃいけないんだい?」
サンジは自身の首に掛けてあるやけに浮かれたデザインのポップコーンケースを撫でながら、それに、と言葉を続ける。
「餌付けもアトラクション的な」
「あれって餌付けだったの?」
「おれにとったら君はアトラクションみてェなレディだって事だよ、ジェットコースターみてェにおれの心臓を振り回してメリーゴーランドみてェにおれをくるくると踊らせてメロメロにする罪深いレディ」
だから、おれは何百分でも君に付き合うよ、とサンジは顔をへにゃりと崩した。
「……サンジとしかもう付き合えないじゃない」
「っ、くく、おれにとったら好都合」
サンジが装着している狐の耳がピョコピョコと動いた気がした。ずるいキツネ、とぽつりと吐き出す私にサンジはわざと狡い笑みを浮かべてこう口にするのだった。
「キツネはマヌケなんだろ、うさぎちゃん」