短編2
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扇風機の前で涼む半裸のサンジ、腰穿きにしたジーンズからは派手なパンツが顔を出している。剥き出しの背筋はシャツを羽織っている時よりも随分としっかりしている、本人が気にしているように着痩せする質なのだろう。そっとサンジの背中に近付いて、その筋肉の筋をなぞろうと伸ばした手はサンジの手に引っ張られ、その背中に乗し掛かるように体勢を崩す。
「っ、わ」
「悪戯は程々にね、レディ」
座っているサンジにおぶさっているような体勢のまま、私達は慣れたように会話を続ける。シャワーで熱が引いた体はこの蒸し暑さにも関わらず、互いの温度を求めるようにくっつく事を好む。自身よりも高い体温が心地良い、キャミソールから飛び出た腕をサンジの首に回して未だに乾いていないサンジのブロンドに文句を一つ溢す。
「また、乾かしてない」
「……あちィからそのうち乾くよ」
私が同じように横着すれば直ぐにドライヤーにクシ、ヘアオイルやら一式を持って突撃をかましてくるくせに自分自身に対しては意外と無頓着なサンジ。
「野郎なんてそんなもんだよ」
「私はサラサラなブロンドが好きなんだけどなぁ……」
わざとらしい溜息をついてチラチラと上目遣いでサンジを見つめれば、床からスッと立ち上がりドライヤーを素早く取りに行くサンジ。
「困った人ね、まったく」
私の口から飛び出した声は言葉とは裏腹に砂糖漬けのような甘ったるい音がしてサンジ並みに単純になってしまった自身につい肩を揺らしてしまう、毒されているな、と。
「なぁに、笑ってるの?」
「サンジってチョロいなぁって」
「はは、酷ェ」
おれは純粋だから君の冗談にすぐ騙されちまうの、と肩を竦めるサンジはコンセントにドライヤーの線を入れる。
「私にやらせて」
「いいの!?」
サンジが犬だったらこの時点で尻尾は引き千切れているだろう、ブンブンと一回転してしまうくらいに揺れる架空の尻尾の幻覚が見えてくるような喜びようだ。
「いつものお返し」
「昨日までのおれ、よくやった」
はいはい、と雑な返事をしながら目の前にあるサンジの後頭部に視線を落とす。特別なケアはしていないらしいが元々の髪質だろうか、嫌味な程に天使の輪が輝き、枝毛の一本すら無い。
「髪伸びたわね」
「あー、切るタイミングが無くてね」
仕事の都合だろう、サンジの髪は首筋を覆って背中に届きそうになっている。普段はその緩く癖付いた髪を一つにまとめて馬の尾のように揺らしている。
「ロン毛はお嫌いかい?」
「キスがしやすいから好きよ」
「キスかい?」
その伸びた髪が二人のキスシーンを隠すカーテン代わりになる。揺れるブロンドが私の頬を撫で、サンジの顔しか見えなくなる。そう理由を伝えれば、前を向いているにも関わらず想像が容易いニヤケ面が作られる。
「良い事聞いちまった」
この調子では、暫くはこの髪を維持するのだろう。サンジはドライヤーを握る私の手からドライヤーを奪うとスイッチを切る。そして床に手を付いて、こちらに顔を向けてくる。私の視界を埋めるようにサンジの顔が近付いて、あ、と口に出す前に私の唇はサンジに奪われていた。扇風機の風に揺れているカーテンの中でお互いの熱を交換するのだった。