短編2
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この時期の天気は落ち着かない。さっき晴れていた空も今では薄暗い雲を連れて、雨となって二人のデートを邪魔する。
「……ツイてねェなァ」
サンジは頭上の空を見つめ、小さく舌打ちをする。そして自身のジャケットを簡易屋根として彼女の頭にふわりと被せ、店先まで彼女の手を引いて走る。気まぐれな雨は斜めに降り出し、簡易屋根の意味はあまり無くなってしまったが彼女からしたらサンジのその気遣いが嬉しかったし自然にそういった気遣いが出来てしまうサンジにきゅんとしてしまうのは仕方ない事だった。握られた冷たい手をぎゅっと握り締めながら、自然と自身の歩幅に配慮されたサンジの走りに着いて行く彼女。
サンジは張り付いた金髪を煩わしそうに片方だけ掻き上げると彼女の方に視線を向ける。
「ナマエちゃ……は、」
彼女の名を言い掛けた口からは言葉にならない音が溢れ落ちる、サンジの視線の先には自身のジャケットを被ったままの彼女がいる。だが、その下に隠れたブラウスは雨に濡れて彼女の肌にピッタリと張り付き、やけに色っぽい下着が透けてしまっている。
「サンジ?」
「……あ、えっと、悪ィ」
勢い良く目を逸らし、サンジは謝罪を口にする。彼女はサンジの謝罪の意味が分からず首を傾げながら自身の屋根になってくれていたジャケットに手を伸ばす。
「あ、もしかしてジャケット?今、返すわね」
「そのまま!そのまま着てていいから!」
「でも、悪いわ」
そう言って遠慮する彼女の耳元に顔を寄せて、サンジは彼女のブラウスの上から彼女の素肌を撫でる。
「見えてんの」
君のセクシーな下着が、とサンジは先程までの焦りなんて無かったかのように彼女に忠告をする。
「……忘れて」
彼女はサンジのジャケットを勢い良く着込むと前が見えないように腕組みをする、気恥ずかしそうにそっぽを向くその横顔は夕日に照らされたように赤い。
「無茶言うよなァ、健全なサンジくんをナメんなって」
そう言いながらもサンジは彼女の横にしゃがみ込み、敢えて彼女を視界に入れないようにする。
「……なァ、ナマエちゃん」
「ん?」
「いつもと系統違くねェか?」
普段、彼女が好んで付けているのはもっと淡い色で清純な雰囲気のものだ。今日みたいに派手な色のものは初めて見た。魅力的な彼女にはどんな下着も似合っているがここは男所帯だ、人の恋人に手を出すようなクソ野郎はいないと信じているが万が一今日と同じ様なハプニングに見舞われ、隣にいるのが自身以外だったら?他の野郎が彼女の色っぽい下着を目にしたら?そんなしょうもない事を考えていたら、つい余計な質問をしてしまったサンジ。
「……サンジが持ってた本の女の人の真似」
「エッ」
「えっちな本はちゃんと隠しておくのね」
彼女と付き合ってから彼女が言うエッチな本の類は泣く泣く処分した、彼女に対して誠実でありたいからだ。だが、一冊だけどうしても捨てられない本がある。
「……ウソップが君に似てるって誕生日に寄越してきたんだよ」
だけど、やっぱり似てねェわ、そう言ってサンジは立ち上がると彼女に視線を向ける。
「大きさの話かしら」
「っ、くく、違ェって」
君みたいにおれをときめかせる天才は一人で十分なんだよ、とサンジは言う。
「だから、その色っぽい下着はおれの前以外では封印シテクダサイ」
「ふふ、何それ」
「野郎は狼って事だよ」
「……サンジも私のことガオーって食べちゃう?」
ジャケットの前をチラリと横にずらし、サンジの理性を試すような発言をする彼女。
「んじゃ、懲りないお嬢さんの味見といきますか」
サンジはそう言って彼女を姫抱きにするとニヤリと片方の口角を上げ、宿までの道を余裕の無い足取りで進むのだった。