短編2
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細く長いサンジの指先が私の唇をなぞる、真上にあるサンジの顔を見つめれば、やけに艶めかしい視線と絡み合う。熱を帯びた、とろりとした瞳は普段の騒がしい瞳とは別物のようだ。大好き、愛してる、瞳から愛の告白が聞こえてきそうだと思った事は一度や二度ではない。付き合ってから常にサンジはそういう瞳で私を見つめている、満更でもない顔をして私はその無言の愛情を受け取り、似たような視線を返す。
今の色めいた視線は何だか落ち着かない、視線をサンジから何もない宙に移そうとすれば唇をなぞっていた指先が私の輪郭をなぞりはじめる。
「食べちゃいたい」
がおーってね、そう言って艶めかしく笑うサンジはまるで捕食者のようだ。膝に寝転ぶ私という獲物に舌舐めずをして、その男にしては弾力がありそうな唇を潤わせる。
「悪い顔」
「君を前にしていい子でいれると思うかい?」
私は顎に手を置き、わざと考えるフリをする。審議をしたって結局、答えは同じなのに。
「思わないわね」
「でしょ?」
それでは、優しいナマエちゃんのお言葉に甘えて、と唇を近付けてくるサンジの唇を指先でちょんと押し返せば、年相応な膨れ面が返ってくる。普段はルフィやウソップを子供扱いするくせにこういう時のサンジはルフィ達よりも幼い態度を取る、きっと、そういう態度を取れば私が甘くなる事を理解しているのだろう。まったく、狡い男だ。
「まだ、おあずけ」
「やだ、あ……えっと、」
そう口にしたサンジは自身の発言を撤回しようとする、自身の口から出た子供っぽい我儘に照れが出たのだろう。
「だって、サンジが言ったのよ」
甘い物は夜中に食べる方が背徳感があって美味い、って。以前、その言葉と一緒にサンジは不寝番をする私に甘い物を差し入れに来たのだ、それとオマケだと言って寝落ちなんて出来そうにない程のキスを残して梯子を降りて行った。火照った頬を夜風に晒して落ち着かせた事も付き合った今では良い思い出だ。
「あなたはデザートだもの」
「君じゃなくて、おれかい?」
おれはプディングの上のチェリーぐらいがあってるよ、とコックジョークを飛ばすサンジ。
「お似合いって事?」
「そ、正解」
柔らかくもない男の膝の上で私は夜を待ち望む。
「甘い夜が待ち遠しいね」
待ち望む私と待ち遠しく夜を待つサンジ。サンジの背後に浮かぶ夜を待つ茜色の空に自身を重ね、夜の訪れを二人で待つのだった。